GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
『はぁーい! 今日も、アラタ君が遊びに来てくれました~!』
カルパッチョの動画配信の登場人物として、アラタは馴染んでいた。
美少女やイケメンアバターが蔓延る中で黒人スキンヘッド男性という濃さに加えて、洋画でお馴染みの面白枠まで兼任する癖に、ミッション中には覚醒なども交えて画面映えをさせてくれるので人気者になっていた。
「このままじゃ、アラタが寝取られる。脳が破壊されてしまうわ」
アラタのいないビアンカでコウラが素っ頓狂なことを言っていた。誰もが思ったことを文が口に出した。
「コウラさんはアラタさんの何なのですか?」
「先輩よ。後輩が承認欲求モンスターになる前に、何とかして連れ戻さないと。このままじゃ、あの女の物になってしまうわ」
ただの先輩の癖にここまで所有権を主張するとは。タオの脳裏には『0083』のヒロインの顔が思い浮かんでいた。……そんなに粘着質な女性ではないが。
「私もカルパッチョさんの動画を見ていますが、視聴者コメントでも『ビアンカ』のメンバーというよりかは『フリーダムフリート』のメンバーとして見られている節はありますしね。先に既成事実を築き上げてから、取り込むつもりだったのかもしれませんね」
「既成事実!?」
「(メッチャ反応するやん……)」
シーナの心配とは別ベクトルでコウラも何かを心配していた。普段は素っ気ない癖に所有権が掛かると、感情を剥き出しにする辺りは実にガンダムチックなキャラ付けだった。
「でも、コウラさん。取り戻すってどうやって?」
「抗議するのよ。ちょっと、アラタにメッセージを送ってと……」
リンが心配になってメッセージを覗き込んだところ『最近の態度について』という、題名からしてゲンナリする見出しの文章が書かれていた。流石に見かねたのか、シーナが止めた。
「待って下さい。コウラさん。気持ちが先走るのは分かりますが、不機嫌さで相手をコントロールしようとしては遠ざかるばかりです。リアルの付き合いもあるでしょう? 穏当に行きましょう?」
「……そうね。ちょっと冷静じゃなかったかも。動画配信が終わった後にでも打とうかしら」
流石に配信中に打っても読まれることはないだろうしと思って、ビアンカのメンバーは動画を見ていた。今日はフリーダムフリートの紹介だった。
『今日はフリーダムフリートでサプライズをしちゃいまぁす!』
『一体何をするって言うんだぃ?』
アラタが大仰に驚いた素振りを見せながら向かった先にいたのは、クランのリーダーであるカオスだった。待機していると言うことは何かしらがあると言うことは聞いていたが、内容までは知らないと言うことだろう。
『カルパッチョ君。それに、アラタ君も随分と馴染んだようだね。一体、何の用かな?』
『今日はですねぇ。なーんと、カルパッチョちゃんとアラタ君によるフリーダムフリートの乗っ取りをしちゃいまーす!』
『『え?』』
クランルームと思っていた背景は突如としてPvP用のステージへと変貌し、カルパッチョの機体はビームサーベルを構えていた。これにはカオスも慌ててビームサーベルを引き抜いていた。
『カルパッチョ君! 何のつもりだ!?』
『フッ。今や、私は動画配信者としての力と影響力を高め、覚醒使いのアラタ君を引き込んだ。ここで貴方を倒せば、フリーダムフリートのニューリーダーは私よ!!!』
『いや、何もTFの映画が公開されたタイミングだからってぇ!?』
カルパッチョが乱心していた。実際問題、トップを倒したからって組織が乗っとれる訳が無いのだが、視聴者はコレがネタか蛮行なのかイマイチ判断がし辛い所だった。……とりあえず、概ねはそう言うネタだと解釈していた。
『えぇい! 渉外という地位に付けてやったというのに! アラタ君を囲って増長したか、この愚か者めが!! 2人まとめて葬ってやる!!』
『だってさ、ボス!!』
『何言ってんの!?』
今日も普通の配信がされるかと思いきや、突如として始まった寸劇に全員が見入っていた。ただ、全員のリアクションに芝居がかった物が無い為、ガチでやっているんじゃないか? という、推測がSNSや掲示板で飛び交っていた。
普段はノリがいいお調子者の体で言っているアラタが素に戻って対応している辺りが、マジモンっぽさを演出していた。
「あの。コウラさん? コレ、マジやと思います?」
タオが遠慮がちに尋ねていた。人は自分よりイカれた人間を見ると却って冷静になると言う物で、先程まで怒りに囚われていたコウラも冷静になっていた。
「多分、これはマジね。あの女、自己顕示欲えげつなかったし……」
「でも、視聴者は皆ネタとしか見ていないみたいですね」
リンもコメントを調べたところ『神展開』『チャー研』『トランスフォーマー』等、好き勝手に書き込まれていたが、シーナは神妙な顔で頷いていた。
「でも、考えてみれば良い手かもしれません。こんな寸劇風に下克上をしたら、失敗しても『ネタ』で済みますし、万が一成功すればトップを打ち倒したと言うことで、組織内の立ち位置を誇示できますし」
「なるほど。エンターテイメントに見せかけた政治的行為という訳ですね」
文も納得していた。さて、動画の方はと言えばカルパッチョがミッションに連れ回した甲斐もあって、アラタも戦えるようになっていた。一足先にリベンジマッチが組まれていたが、今回は2対1だ。
『ここまで来て負けるもんか。2対1に加えて、修行もして来たし、覚醒も使える上、俺は元グリーンベレーガンダムだぜ!!』
『GBBBBの顔になるべきは私よ! まずは、アンタを倒して、最終的にマイスターも倒してやるんだから!!』
『お前達になぁ。出来るわきゃねぇだろぉぉぉっ!!』
何故か、使われていないハズのターンXのパーツが見えた気がした。とは言え、流石に覚醒持ちと似た様な力量を持つ2人の相手は厳しいのか、カオスも押されていた。
「え? これ、勝ったらどうなるん?」
「別に勝負に勝ったからと言って、役職が移るシステムがある訳ではありませんが」
文の言う通り、強制的に権利を移すシステムはGBBBBには存在していない。とは言え、大衆が見ている動画内で負かされたら、彼の風評には大きく影響することだろう。
心なしかコメントも流れなくなって来た辺り、皆が固唾を飲んで見守っている。戦況が動き出したのは、アラタが覚醒を使い出した時からだ。
『あんときはダメージを与えられなかったが、今は違うぜぃ!!!』
最初は巻き込まれた風であったが、戦っている内に有利を悟ったのか、かなりやる気になっていた。ガンダムタンクという見た目だが、近接武器は『拳法』という、それなりに強力な物を使っている。
『ぬぐぅううううう!!』
『ニシシシシシ!! これからはカルパッチョ・フリートチャンネルね!』
カルパッチョに配信がてらに鍛えられたアラタは想像以上にレベルアップしていたのに加えて、実力者であるカルパッチョの援護もあってカオスは押されていた。パーツが吹っ飛び、HPが確実に削れて行く。
「もしかして、行けるんじゃない?」
リンもテンションが上がっていた。いや、別にアラタが勝った所で何がある訳でもないのだが、強敵を倒せたら気分は上がる。その場合、フリーダムフリートはカルパッチョに乗っ取られるのだろうか?
「そしたら、アラタがNo.2になる訳ね」
ナンバートゥー。と、妙にコウラの発音が良かったのは兎に角として、もしかしていけるんじゃないか? という、多くの視聴者が抱く感想をタオ達も抱いた所で、カオスが吠えた。
『調子に乗るなぁあああああああああ!!』
『は!?!?』
カオスの機体から金色の光が放たれた。丁度、アラタの機体から放たれる物と同質のものであるらしく、ブラックロータスの機動力が跳ね上がっていた。
アラタも対応するが、流石に地のレベルが違う為、ブーストを掛けたカオスの機体の攻撃速度に対応しきれず、機体はボコボコにされていた。
『やられ千葉ァ!!』
ガンダムタンクは吹っ飛び、頭部だけがゴロゴロと無惨に転がっていた。残されたカルパッチョは両手を上げていた。
『お、お許しください。カオスサン……』
『貴様の高飛車な態度には我慢に我慢を重ねて来たが、もう限界だ!! 追放してやるからな!!』
『ここはGBBBBではなくG1だった?』『カルパッチョリームとカオストロン様』『何やってんだコイツら……』。等、コメント欄が大いに盛り上がる中、『終』という雑なテロップと共に配信が終了した。
「……実は全員で白昼夢を見ていたとか、そう言うオチは無いよな?」
念のためにタオが皆に尋ねてみたが、首を振っていた。しっかりと現実だった。
配信が終了して数分後のことである。アラタとカルパッチョが、タオ達のいるロビーに現れた。
「俺は付き合わされたってことで許して貰えたけれどよ」
「ほ、本当に追放されました……」
仲がよろしくないと思われるコウラでさえ言葉が出なかった。あんなギャグみたいな追放劇がある? と。
そんな彼女を慰める訳じゃないし、何なら追いうちを掛けんばかりにロビーにはスタースクリームとメガトロンのガンプラが溢れていた。
「ちょっと待って。ホンマに理解追い付かんねんやけど」
そう言うネタとか企画じゃなかったのか。念の為にカルパッチョのネームをクリックして、所属を確認したが『ビアンカ』に変わっていた。……マジで追放されたらしい。
「まるで理解できません。これが人間……」
「文。そこまで追い打ちを掛けなくてもいいから……」
リンがフォローを入れていた。恐らく『これが人間……』というのが、こんな奴が人間だというのか。という煽りの意味として受け取った故だろう。
取り方次第では暴言その物になるが、カルパッチョは凹んでいた。名前からして地中海ばりの陽気さとテンションだけで突っ込んだが、現実は甘くなかった。
「あまり気を落とさないで下さい。こちらでもよろしくお願いしますね?」
「……うん」
シーナが慰めた所で小さい声が返って来た。かくして、人員が奪われる所か増えるという奇妙な顛末で、アラタの遠征は幕を閉じた。