GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
今日もGBBBBではユーザー達による、ふみなパイセンの尊厳を凌辱するかの様な俺ガンプラがロビーを練り歩き、ガオガイガーやマジンガーに見立てたガンプラがエモーションと言う、ロビーでのアクションを繰り広げていた。
「もしも、私達の世界にサカイ君が居たら英雄として扱われているよね」
「同時に肖像権の侵害と名誉棄損の幇助で訴えられてそうよな……」
「だとしたら、とんだアンラッキーボゥイだぜぃ☆」
一般ユーザーであるリン、タオ、アラタの3人は今日もGBBBBの混沌に身を置いていた。彼らの隣をビームサーベル自身になった俺ガンプラが横切り、カプルをちいかわに見立てた奴がグルグルしていた。
「前のミッションを受けた時に思ったんだけれどさ。ミッション中って他所の人らが入ってきたりとかするのかな?」
「マルチってことは無いから、介入とかはないハズなんやけど。まだ、βテスト中やからね。不具合も好評やったら、本実装されるかもしれへんよ」
現在、GBBBBのミッションは最大3人までパーティを組めるが、前回の様にそれ以上の人員で進む場合もあるかもしれない。
予想外の出会いと言うのはネトゲの醍醐味である。偶然、同じミッションを遂行している最中に出会い、交流を育むというのも良い物ではあるが。
「予想外のマッチング……」
リンがチラリとロビーの方を見た。飛頭蛮の亜種とでも言えるのか、どデカふみなパイセンヘッドを乗せたタンクがキュラキュラとロビーを進んでいるかと思えば、某TOYでストーリーなスペースレンジャーの様なボディにパイセンのヘッドを取り付けた奴もいた。機体名は『バズライト・ふみなー』だった。
「こ、これと一緒にミッションを」
リンの中でミッション中の光景が思い浮かんだ。殺到するエネミーガンプラ、激しい攻撃を前にパーツアウトを起こし、立ち上がれなくなる自分達。
攻撃が眼前へと迫り、危機一髪! と言った時に、荒れ地を走破して来た、ふみなタンクが目の前の敵を跳ね飛ばすのだ。助かった! と、自分達が期待を抱くと、今度は空からやって来たバズライト・ふみなーが大量のミサイルを射出して、敵MSを掃討して行く……。
「嫌よ! 私、もっとカッコいい機体に助けて貰いたい!!」
助けてくれるなら誰でも良いという訳ではなく、シチュエーションも選びたいという欲張りさんだった。すると、アラタがリンのご期待に添えそうなMSを指差していた。
「じゃあ、あっちのスティールヘイズはどうだ? そこにいるガオガイガーもカッコいいぜぇ。あっちにいるエグゼイドも良いじゃねぇか!」
「なんで、ガンダムゲーで別タイトルの再現機体を勧めるん?」
タオから見ても感心したくなる再現度であったが、ガンダムゲーのシチュエーションとして勧めるべき相手かどうかは疑問だった。
「別のマルチロビーに切り替えても似た様な光景が繰り広げられてそうね……」
スタンダードにカッコいい俺ガンプラもいるのだろうが、出会える可能性は低い気がした。こうなってはお姫様をしている場合ではない。強くあらねばならないと、リンは決意した。
「だから、皆でミッションに行こう。私達だけでやって行けるように」
「そんな悲壮な覚悟決めてやるゲームでも無いんやけどなぁ」
「勿論だぜぃ」
疑問符を浮かべるタオになんも考えて無さそうなアラタの賛同もあって、彼らは、ミッションを進めることにした。
~~
「うーん。もっと、色々なミッションを受けられたら良いのに」
GBBBBを始めたばかりのアラタやリン、ロビー勢のタオは殆どミッションを解放していない為、受注できる物が少なかった。
リンとしてはさっさと強くなって、色々なパーツを集めてGPも稼ぎたいと考えているが故に、もどかしい物があった。
「いきなり強くなれたら、直ぐに飽きてまうからね。じゃあ、今日は何の雑談しながらやろか。やっぱり、このゲームを始めた理由とか?」
初期の方のミッションと言うこともあって、難易度も高くないのでガチで攻略の為のVCに集中する必要はない。ゲーム中の交流は実際に大事だ。
「タオはやっぱりガンダム好きで?」
「そうそう。前の筐体でやるタイプがね、SDガンダムは動かされへんかったけど、新しくなった奴は家からでも出来るし、SDガンダムも動かせる様になったから始めたんよ」
「ゲーセンにおいてあった大型筐体の奴だよね? 私はプレイしたこと無いけれど、お姉ちゃんがよく遊んでいたって言ってたなぁ」
「そうそう! 世界大会も開かれたりして、結構盛り上がってたんよ!」
プレイヤーとして遊び始めたのは今作からであるが、やはり色々な俺ガンプラが見られると言うことで、以前から興味はあった様である。また、リンも身内が前作をプレイしていたという縁があったらしい。
「じゃあ、最初から2人には縁があったってことなんだな! 俺にはそう言ったもんは一切ないぜ!」
「アラタはどういう経緯なん? 前に、面白そうって理由で始めたとは言うてたけど。何処で知ったん?」
「学校の掲示板で見たんだ。最近e-sports関係とかで掲示物にもゲーム系の物も珍しくなくなって来ただろ?」
「僕の学校には、そう言うのは無いけれど……」
とは言え、珍しいという気はしなかった。先の話にもあった様に、俺ガンプラを用いた競技は世界規模で開かれているし『奏海高校』を始めとして、ガンプラ部がある学校も存在している。
「そうか。言う程なんだな。リンの学校は?」
「え? あ、いや。見たこと無いね」
VCで雑談が出来る程度には、ゲームの方は順調に進んでいる。前回の様にトラブルに巻き込まれることも無く、順調に進んでいるかと思いきや……画面にノイズが走った。一瞬、ビープ音が鳴ったが直ぐに戻った。
「おい、タオ。今のは何だぁ?」
「バグかなぁ? βテスト中やし、そう言うこともあるやろ。でも、このまま落ちたら嫌やし、一旦リタイアしとく?」
ミッション中にリタイアしたら、その時点で獲得していたパーツなどが持って帰れるが、回線が落ちた場合は報酬すらない。不安定と感じたら、クエストリタイアするのが定番ではあるが。
「大した報酬もないし、またプレイし直すのも面倒だから進もうよ」
「俺もリンに賛成だぜぃ」
「さよか。じゃあ、進もか」
ここでリタイアしてもうまみは少ないし、落ちたとしても損害も少ない。ならば、このまま進んでしまおうとタオ達がWAVE2のミッションであるターゲットを撃破した後のことであった。
「……あれ?」
「止まっちゃった」
「不具合だぜぃ」
ターゲットあるストライク達を倒したというのに次のフェーズへと移行しない。やはり回線が落ちてしまったのだろうかと思ったが、数分ほどすると次のエリアへと移っていた。
「なんや。ちゃんと、動いたわ」
「あ、見て!」
最終WAVEで現れたのは、鳥や翼竜を彷彿とさせるようなシルエットの巨大MA。ハシュマルだった。
「前回のミッションのガンダムより手ごわそうだぜぃ!」
だからこそ、戦い甲斐がある。アラタが意気揚々と飛び出し、攻略の足掛かりを掴むために攻撃を仕掛けようとした時のことである。腕部クローが振るわれ、彼の機体は一撃で大破した。
「やられ千葉ァ!!」
「……え?」
「嘘やろ!? 一撃!!?」
確かにボスは強力だとしても、こんな初期のミッションでここまで強い相手が出て来るハズが無い。タオは急いでメニューを確認した。
自分達は『Standard』で受けていたハズだ。道中の時もさほど強くはなかったハズだというのに。
「タオ。どうなっているの!?」
「難易度が『NewType』になっとる……」
全ミッションを制覇したプレイヤーだけが挑戦できる最高難易度だ。
とてもじゃないが、自分達が受けられる物ではない。クエストリタイアを選択しようにもコマンドが反応しない。
ハシュマルの攻撃の激しさは前回のPGガンダムとは比べ物にならない物であり、一撃でも掠ればHPが全て持って行かれる。
「タオ。わざと食らって、ギブアップしない? また、難易度下げてやり直そうよ」
「せやね。別にペナルティがある訳やないし」
タオがリンの提案を呑み込んだ。棒立ちになった2機にハシュマルがもう接近する、攻撃のモーションに入った。必殺の一撃が振るわれようとした時、彼らの背後から空を引き裂きながら到来した弾頭がハシュマルに直撃した。
巨大な爆風が広がり、敵機の装甲が一気に引き剥がされて行く。何事かと思い、タオとリンが振り向いた先には砲撃手が居た。ザクタンク グリーン・マカクの脚部にふみなの頭部を乗せた……ロビーにもいた、ふみなタンクだった。
「アレ? なんで初心者がここに?」
彼らの頭上を飛び越えて、全身に装着したOPのマイクロミサイルランチャーを全門解放して一斉に解き放ったのは、やはり先程ロビーで見たバズライト・ふみなーだった。
2機の攻撃は最高難易度のハシュマルの装甲を引き裂き、各所で爆発を引き起こしていた。装甲が脆くなったタイミングを見計らって、現れたのは白く染め上げたカプルを『ちいかわ』に見立てていた、アイツだった。
「ヤーッ!!」
まるで、本家でやっていた『さすまた』を突き出す様にして超大型メイスを連続で突き出していた。
驚くべきは、凄まじいまでの高DPSでハシュマルの装甲が次々と爆発を引き起こし、バリアを展開してもなお突き破り、瞬く間に撃退していた。
「「…………」」
自分達が手も足も出ない相手が、こんな短時間で撃破されていた。
ただ、この3人も不思議そうにしていた。どうして、こんな所に初期プレイヤーがいるのだろうかと。
「おーい、起こしてくれ~」
「あ、ゴメン」
リザルト画面に入り、ロビーに戻った後。先程の3人に謝辞を述べた後、理由も説明すると『運営に報告する』とだけ言われて、別れた。
「あの3人。格好良過ぎるぜぃ!!」
突如として、巻き込まれたトラブルを颯爽と解決し、恩に着せることも無く去って行く。彼らが纏う古強者の様な風格に、アラタは甚く感動していた。
「ホンマ、こんだけ変なマッチングが連続するのは何でなんやろうなぁ。ちょっと、調べてみなあかんな」
とりあえず、タオは運営窓口に報告だけをしていたが、リンはずっと黙ったままだった。
「リン? どないしたん?」
「まさか、本当にアレに助けられるなんて思っていなかった! ちょっとカッコいいと思っちゃったよ!!」
もっと、ドラマチックな物を期待していたが現れたのは、面妖なふみな2機とちいかわカプルだったのだが気に入らなかったらしい。
「よぅし、リン。俺達もあんな風になれる様に頑張ろうぜぃ! まずは、すーぱーふみなを入手して」
「やらないからね!!」
アラタの中に、先程のベテランプレイヤー達の雄姿は深く刻み込まれていたらしい。タオの中にとある予感が過った。
「(きっと、アラタのガンダムタンクの上半身がふみなになるんは、遠ないやろな)」
その場合、自分もSD使いであることを活かしてネタに走るかどうかを、割と本気で考え始めていた。