GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
「木の葉隠すなら森の中。変装するにしても味気ないガンプラが近くに居たら、直ぐに勘付かれるだろう」
セリトの後を付けることになったアラタ達は、マシマからレクチャーを受けていた。確かに、即興で組み上げたテキトーな機体では怪しまれる。故に、変装用の機体でも凝った物を作れと言うことだ。
「それもGBBBBにいる様な機体ってことだな?」
「流石、リーダー。話が早いぜ」
この2人はテンションが似ているのか、物凄いスピードで話が進んで行く。とは言え、タオも言わんとしていることは分かった。
「要するにネタ機体……その。魔改造ふみな的な物で来いってこと?」
「そうだ。3機ともバラバラのコンセプトだったら、怪しまれるからな。よっし、今から3分で組むぞ!!」
マシマとアラタは直ぐにビルドに入ったが、タオは困惑していた。今までSDガンダム系ばっかり作っていたので、HGなどは弄ったことが殆ど無い。
「(SDとHG系って相性が悪いんよなぁ。特に、すーぱーふみなみたいな美プラは等身の関係上、壊滅的に合わん)」
タオも一度試したことはあったが、あまりのバランスの悪さにプレビュー段階でビルドを断念した程だった。
仕方なく、普通に素組のすーぱーふみなを作った後に……ウィングゼロカスタムのバックパックを付けたエンジェル的な物を作った。
「(誰もが考えるんやけど、どうしても機体とのジョイント部分が露出しているのが気になるんよなぁ)」
造形的に仕方がない問題ではあるのだが、これのせいでどうしても天使っぽさが出せない。このジョイント部分こそが良いという意見も分かるが、美プラに使用してしまうと有機的であることにこだわってしまう。
本当に簡単な操作だが、ジョイント部分を胴体に埋め込むようにして軸を調整して、直接生やしているっぽく見せた。
「後は、天使っぽく武器は金龍の弓にしてっと」
3分程度のクオリティならこんな物だろう。ビルドを終えて、ロビーに出るとアラタ達がいた。
「おぉ! タオのは結構良いじゃねぇか!」
「天使風か。スタンダードに可愛いさを押し出したのは強いよな!」
2人が褒めてくれたのは嬉しかった。ただ、肝心の2人の『ふみな』はどうだったかというと。
アラタの物は以前に作ったふみなタンクだったのだが、手がガンダンクの物ではなくズゴックの物になっていた。ふみっなー3とか言う機体名になっていた。
「実は、ガンダムタンクの格闘武器を『拳法』にしていたのは、コイツの布石でもあるんだぜぃ?」
「パイロットが死にそうやね……」
このGBBBBにおいて、ゲッター系は非常にありふれた再現機体となっている。皆、マスターガンダムの頭部を何だと思っているんだろう。
「普段はガンダムタンクとして使って、ネタの時にはゲッターにもなる。フレキシブルなビルドだと思うぜ」
そう言う、マシマはと言えばボディにアルケーガンダムを使い、脚部は極小化したボールの物を使っていた。
そして、Zプラスのバックパックのスケールを最大まで弄り、ビルダーズパーツのシールドブースターも組み合わせて戦闘機ふみなを作っていた。ご丁寧に両門にガトリングを取り付けている。
「この3機。陸・海・空を支配するV作戦めいた揃いを感じるぜぃ!」
「そのVの後にAKAとか続かん?」
タオの訴えも空しく、VAKA3機はセリトを観察することにした。
彼がいるサーバーは、以前に文も訪れたことがあるネタ機体などの展示会的な所で、自分達以外にも魔改造ふみなもいたし、それに留まらない機体も居た。
「レコちゃんを再現してみました!」
ミッションや対戦の実況をするレコも人気者なのか、こうしてガンプラで再現しようとするプレイヤーは少なくはないし、余程なことをしない限りは好意的に受け止めて貰っている。
「毎度思うけれど、この情熱は凄いよね」
実際の所、ガンプラのパーツを有機的に見せるというのは中々に難しい。
肌っぽいカラーリングはどの色合いが良いのか。色分けでコスチュームを再現したり、ビルダーズパーツで身体的特徴を表してみたりと。打ち首にされる者も多いが、幾らでも情熱と時間を注ぎ込めてしまうだけの奥深さがある世界でもある。
「見ろよ」
マシマに言われたので、遠くの方から観察しているセリトを見れば、ジィっとして動いていない。ただ単にプレイ端末の前から離れているだけと言えば、それまでだが。……と思えば、カメラ位置を変える為か細かく動いたりしている。
「もしかして、美プラが好きなんじゃねぇのか?」
特段、珍しいことではない。タオの同級生にも美少女アニメが好きな者はいるし、中には公言したりグッズを身に付けたりしている者もいる。
「でも、やっぱり公言していたらちょっとなぁ」
昔よりもオタク趣味が表向きな物になったとはいえ、やはり距離を取る人間は少なからずいるし、揶揄されることもあるだろう。
「特に美プラとかは、フィギュアとほぼ変わらねぇからな。中々、男子には弄り難いだろう?」
マシマの言う通り。多感な時期に美少女系の造形物を弄っている。となれば、クラス内におけるヒエラルキーはあっと言う間に転落するだろう。
例え、GBBBB内でも。いや、むしろ。美少女ガンプラをこれだけ好き勝手に弄った挙句、ロビーで晒しているプレイヤーと同じ様なことをすれば、何を思われるか。……タオが、そんな常識を噛み締めている横ではいつぞやの対魔忍ふみなが落ち込みポーズを取っていた。尻を突き出している(様に見える)。
「た、確かに。こんな現状やったら、ふみなを使うプレイヤーは変な目で見られるよな……」
「なんか、文にスゲェ申し訳なくなって来るぜぃ」
自由と無法地帯は違うのだ。流石にロビーに広がる打ち首寸前な光景を見るに耐えかねたのか、セリトの機体がロビーから出て行こうとした所で、タオの告知欄が鳴った。何事かと思えば、プロフィールカードに『Good Build!!』が1件送られていた。
「(まさか)」
送って来た相手はセリトだった。自分のプロフィールカードを見たと言うことは、自分達が付けて来たことは相手も気付いている訳で。何か声を掛けようとしたが、既にログアウトした後だった。
「興味があるって言うんなら、話は早ェ。このGBBBBにどっぷりハマらせてやろうじゃねぇか」
「そうだぜぃ。このGBBBBは無法地……とんでもなく、フリーダムなんだからよ」
マシマの素性は知らないが、アラタもこのGBBBBで自由なガンプラの虜になった人間だ。柵に囚われない奔放さを楽しんで欲しいのだろう。タオにも、その気持ちが無い訳ではないのだが。
「このGBBBBを……?」
落ち込んでいる対魔忍ふみなと重なる様にして、ヘヴンズソードみたいに頭部の尖ったアバターが落ち込みのエモーションを取っていた。ケツアナに突っ込んでいる様に見えた。
果たして、同級生をこんな世界に引き込んでいい物かと、タオの良心は揺れざるを得なかった。
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「すいません、こんな時間に」
「構わないよ。私も明日は休みだからね」
暫く、時間が経った後。タオは、最近会っていないミスターを見つけることが出来たので、相談をしてみた。
コウラも相談相手としては悪くないのだが、いざと言うときに理論や合理性が先行してしまうことがある為、こうしたことはミスターの方が適していると考えていた。そして、先程までの出来事を話した。
「と言うことなんやけど。なんか、交流を持つ切っ掛けみたいなんが出来たらなぁって思うんです」
「はっはっは! 簡単じゃないか! 真似したくなる程、格好いい姿を見せれば良いんだよ」
すると、ミスターは自らを指差すエモーションを取ってみせた。あまりに当たり前のことだった。
そもそも、自分がSDガンダムを使いたいと思ったのも、設定を読み解いていく内に、コマンドガンダム達の魅力に取り付かれたからだ。
「でも、余計なお節介やないか。って風にも思うんです」
「良いじゃないか。余計なお節介で。応えるも応えないも相手次第だ。気負い過ぎる必要はないよ」
大して、仲良くもない相手。クラスメイトという接点以外は何も無い相手に、こうして四苦八苦しているのも滑稽な物だが、同じゲームで盛り上がりたい。というだけの話だった。……リアルでも話せたら楽しそうだという、他愛のない理由だ。
「そう、ですもんね。ゲームやもんね」
「そう。ゲームだからこそ、もっと楽しむべきさ! ……公序良俗の範囲で」
モニタを見れば、先程のケツアナヘヴンソードが晒し首一覧に晒されていた。ああはなるまい。と、タオは心に決めつつ、クラン戦用のアセンを考えていた。