GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】   作:ゼフィガルド

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23戦目:ぶつかろう!

 セリトは現代っ子だった。生まれた時からPCやSNSが普及しており、幼少期から付き合っていかなければならない環境で生きていた。

 学校での付き合いはネットを介して家まで持ち運ばれ、話題を合わせる為に動画の視聴からゲームのプレイ、ソシャゲのログインに加えて、細心の注意を払ってSNSなどで発信もしなければならない。

 

「めんどくせー……」

 

 そんな彼に取ってGBBBBとは数あるゲームの一つでしかない。ガンダムなんて、テレビの特集で組まれている浅い知識しかないし興味もない。

 だが、やる気のある友人に歩調を合わせなければならないので、強いパーツや最適なレベリング方法はきちんと調べて臨んでいる辺り、彼の真面目さが窺えた。この付き合いの良さが、彼が誘われる所以でもあるのだが。

 

「そ、そんな。ワシらの同士である天剣絶頂ケツアナヘヴンズソードが運営の魔の手に!」

「対魔忍の尻穴に突っ込んだだけなのに、血も涙もねぇ!!」

「す、救いは! 俺達性癖エビル四天王に救いはねぇのか!?」

 

 このゲームはどういう訳か治安が終わっていた。他のゲームはSNSなどに転載することも考えてユーザーも発言に気を使ったりしていのだが、独自の道を極(キ)めている連中にブレーキは存在していなかった。

 

「フフフ……」

 

 だが、セリトは彼らが嫌いではなかった。共感と同調を求められる世界に生きている中、キモがられ唾を吐かれる様な物で練り歩いているバカ共には一種の尊敬すら抱いていた。

 でも、自分には真似は出来ない。もしも、そんなことをすれば学校では『変態』の烙印を押され、孤立せざるを得なくなる。そんな恐ろしい未来は御免だった。

 

「セリト。そろそろ、クラン戦が始まるぞ」

「分かった。行くよ」

 

 フレンドから誘われて、彼はクラン戦に向った。手にした武器は超大型メイス、OPパーツにはヒット数を稼ぐ為のマイクロミサイルランチャー、そして、アトミックバズーカ。全て、愛着がない。

 

「なぁ、セリト。このゲーム、面白いか?」

「楽しんでいる、楽しんでいる」

 

 こうやって返すのが正しいのだと考えての発言で、実際の思惑からは切り離された物だった。

 

「そっか。ごめん、なんだか詰まらなさそうにしている気がしたからさ。武器も効率用の物を使っているし、俺達に気を使ってくれているのかと思って」

「ハクスラはゲームの基本だろ。そんなに、俺が気を使っている様に見えた?」

「うん。武器以外の機体のビルドとかさ。本当はあんまり型にハマったの、好きじゃないんだろ?」

 

 フレンドに指摘され、セリトは驚いていた。浅い付き合いだと思っていたが、相手は思ったより、こちらを見ているらしい。

 

「なんで、そう思うんだ?」

「だって、お前。よく、ロビーにいるヤバい奴ら見ているし」

 

 フレンドが指差した先には、先程の変態エビル四天王(残り3人)が、持ち前の性癖を集めた、ふみなを持って来ていた。

 

「ここはですね四肢王走破として、腕も足もむっちむっちで尻もでっかく。グランドふみなで恵体の良さを宣伝しなければならんと思うんですよ」

「いやいや、ここはウォルターガンダムの様にですね。ウォルターふみなを使って、顔とボディの良さを喧伝すべきですよ」

「え、怖……。普通に中華娘ふみなじゃダメ?」

 

 ふみなの頭部と胴体にジ・オのMGを最大スケールにしてくっつけた物の横には、腕の位置を変えて胴体にめり込ませ、足をボールの物にした飛頭蛮ふみなより笑えないタイプの物を使っている者がいた。

 最後の1人は、ふみなの頭部にドラゴンガンダム、シェンロンガンダム、アルトロンガンダムを組み合わせ、ABCマントを取り付けた割と普通な物を使っているだけに前者2人の異様感が浮き出ていた。

 

「……もしかして、俺。あーいうのが作りたいとか思われている?」

「うん。全員の噂になっているぞ」

「ふざけんな! 俺がそんな変態な訳無いだろ!」

 

 これにはセリトも心外だと言わんばかりに吠えた。自分は普通なのだ、あんなのと一緒にされて堪るかという心からのメッセージだった。

 

「そ、そうか。悪かった」

「分かれば良いんだよ。じゃあ、クラン戦行くぞ」

 

 そして、セリト達がクラン戦へと向かった後のことである。ウォルターふみなを使っていたユーザーに、運営からの注意喚起が飛んでいた。

 

~~

 

『さぁ、クラン戦が始まりました!』

 

 両クランが対戦フィールドに降りた。出場メンバーが表示され、互いの姿が映し出される。互いに偵察した通りの機体を使う中、タオだけが先日使っていたウィングふみなを使っていた。

 

「タオ、本当にその機体で大丈夫なの?」

「これで、ええねん。好きな機体を使ってええんがGBBBBやからな!」

「そうだぜぃ。しっかりと、レベル上げを手伝ったからリンも安心してくれよな! それじゃあ、行こうぜ!!」

 

 アラタのガンダムタンクが飛び出した。履帯がフィールドを舐め上げ、相手グループへと突っ込んで行く。真っ先に飛び出して来たのは、先日にも見たセリトの機体だった。全身に装着されたマイクロミサイルランチャーが火を噴いた。

 

「対策済みさァ!」

 

 アラタは、デスティニーのバックパックから『M2000GX 高エネルギー長射程ビーム砲』を取り出して、宙を舞う大量のミサイルを薙ぎ払っていた。フィールドで大量の爆発が起きる中、セリトは既にアトミックバズーカを構えていた。

 

「アラタ!!」

「問題ねぇ! 突っ切れ!」

 

 リンの動揺を掻き消す様にして、アラタが指示を飛ばした。放たれたアトミックバズーカは直撃することは無かったが、巨大な爆風によって各機散開することになった。

 

『おーっと! セリト選手による分断により、タイマンのシチュエーションが3つも作られました! どちらの拮抗が先に崩れるか!』

 

 レコの実況にも熱が入る。日が浅いプレイヤー同士の戦いでもしっかりと見ごたえはあるのだ。バトルをリードしていたセリトと対峙したのは、タオが使うふみなだった。

 

「お前、男の癖にそんなん使うの?」

「せやで。GBBBBは何を使ってもええんやで!」

 

 アトミックバズーカにもマイクロミサイルランチャーにもクールタイムは発生しているが、セリトは直ぐに超大型メイスを構えた。決まれば、一瞬で相手を撃破することも可能だろう。

 対するタオが取り出したのは、重機関砲だった。現在、GBBBBで実装されている唯一の実弾ガトリングであり、タオも好んでいるコマンドガンダムの得物でもある。それも2丁。

 

「うぉおおおお!」

 

 放たれた弾丸が装甲を食い破らんとセリトの機体へ襲い掛かるが、彼はラジエーターシールドを構えて、攻撃を防いでいた。

 

「チッ!」

 

 シールドの耐久力には問題ないが、持ち手の方が衝撃に耐えられない。セリトの機体は攻撃面にはかなり力を入れているが、防御面はからっきしだ。

 ダブル重機関砲の衝撃に耐えきれず、ラジエーターシールドが吹っ飛ばされた。超大型メイスを前面へと構えて、肉薄する。攻撃が幾らか吸われはしたが、吹っ飛ばすには至らなかった。

 

「吹っ飛べ!」

 

 メイスが振るわれた。咄嗟に反応はしたが、手にしていた重機関砲が弾き飛ばされた。しかし、タオは直ぐにコマンドナイフ……ではなく、アーマーシュナイダーを取り出していた。

 

「来いや! そんなまとめサイトと効率動画塗れの装備なんて捨てて、掛かって来いや!!」

「言うじゃんかよ!」

 

 挑発めいたセリフだったが、意外と理には敵っている。

 この距離でマイクロミサイルランチャーを撃ったとしても当たらないし、アトミックバズーカもリロードは間に合わない。一度は、タオの重機関砲を吹き飛ばしたが、攻撃を掻い潜って拾われたら引き撃ちされて終わりだ。

 彼は超大型メイスを捨てると、脚部に装備されていたバエルソードを引き抜いた。奇しくも、両者二刀流での対面となった。クロスファイトへと移行する。

 

『おーっと! タオ選手とセリト選手! ゼロ距離での切り合いだ!』

 

 レコの実況の傍ら、アラタが一足先に敵機を撃破し、リンの援護に回っていた。

 タオの機体とバエルが切り結んでいる中、2人の間だけで接触通信がONになっていた。

 

「セリト君。やるやん! 正味、何しても詰まらなさそうにしていて声掛け辛かったんやけど、結構ノリもええやん!」

「お前も。いつも、クラスでプラモ弄っている陰キャだと思っていたけれど、結構お喋りじゃねぇか!」

 

 バエルソードがふみなの左腕を切り飛ばし、アーマーシュナイダーがバエルの左腕を切り落としていた。

 ゲームのテンションが高じて喋りが荒げる。なんてのは、年頃の男子にはあるあるだ。SNSや大衆の倫理観も気にしないで、年相応の……悪口混じりの掛け合いに移行していた。

 

「大体、なんやねん! セリトスペシャルって! バエルのカラーリング変えただけで、センスさなさすぎやろ!」

「俺、知ってんだぞ! このGBBBB内で、ソイツ使っているのヤベーヤツしかいねぇってよ! キメーんだよ!!! クソナード!!」

 

 ふみながバエルソードを蹴りで弾き飛ばし、徒手になったバエルは手刀でアーマーシュナイダーを叩き落していた。

 

「貰った!!」

 

 セリトスぺシャルのバックパックから電磁砲(レールガンが放たれた。タオのふみなは咄嗟に伏せたが、ウイングのバックパックが弾き飛ばされた。

 すると、ふみなが跳び上がり、飛ばされた副翼の懸架アームのラックからビームサーベルが零れ落ちていた。

 

「使いたいモン! 使って!! 何が悪いんじゃぁあ!!」

 

 残った右腕でキャッチし、空中で振り被った。眼前へと迫りくるビームサーベルを見ながら、セリトはポツリと呟いた。

 

「……カッコいいな」

 

 ビームサーベルがセリトスペシャルを切り裂いた。間もなくして、機体が爆散し、レコが高らかに宣言した。

 

『試合終了~! チームビアンカの勝利です!!』

「タオ! やったぜぃ!!」

「私達の勝利だよ!!」

 

 アラタとリンが喜んでいたが、タオは未だに戦いの余熱が引いておらず、高まったテンションを落ち着けていた。

 

~~

 

 初のクラン戦が終わった後、タオは待ち合わせをしていた。

 試合後、タオの機体から何かしらの感銘を受けたセリトは『俺も組み立ててみたい機体があるから見てくれ』と言われたので、彼が来るのを待っていた。

 

「(どんな機体やろ?)」

 

 ひょっとして、彼も抑圧されていただけで美プラに興味があるんだろうか。ネタ機体が蔓延るロビーを眺めていたし、何か彼の感性に触れた物があったのだろうか。

 

「待たせたな」

 

 VCが聞こえたので彼の機体を見た。固まった。

 何処かのレシピを参考にしたのか、再現機体はレコだった。見た目は可愛いのだが、非常に問題になるカスタム点があった。胸周りだ。

 

「俺、本当はロビーでレコの再現を見る度に思っていたんだ。垂乳度が足りないって……でも、こんなこと言ったら頭おかしいと思われるんじゃないかってビビっていたけれど、お前が堂々とふみなを使っているのを見て自信を持ったんだ。俺も好き勝手にやって良いんだって」

「え?」

 

 もしや、ふみなを使っているだけでそこまでの印象が根付くんだろうか? だとしたら、あまりに酷い風評被害だ。

 

「なんだか、このGBBBBの楽しみ方が分かって来た気がするよ」

「せ、せやね。出来るだけ公序良俗を乱さんように……」

 

 あまりよろしくない方向で同級生を目覚めさせてしまったらしい。向かった先には、中華ふみなや太ましいふみながいた。彼らの輪に加わって行く級友を見ながら、タオは頭を抱えていた。

 

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