GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】   作:ゼフィガルド

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24戦目:説得しよう!

「貴方達と対戦してから、セリトはGBBBBを心から楽しんでプレイしてくれるようになりました。本当の意味でフレンドになれた気がします」

「フッ。そう言うことなら、俺達も嬉しいぜぃ!」

 

 対戦を通して、セリト達とのクランと交流を築いたアラタ達であったが、タオは複雑そうな顔をしていた。

 

「自分だけのフェイバリットレコを作るんだって、楽しくミッションに行ったりね。彼に触発されて、ウチのクランじゃ美プラ改造が盛り上がっているんですよ」

「へへへ。楽しいだろ? 晒し首にならない様に気を付けろよ!」

「はい! 既に1名晒されましたが、大丈夫です!」

 

 何も大丈夫じゃない。しかし、リーダーと思しきプレイヤーがこんなに笑顔で答えているのだから、やめろと言う訳にも行かなかった。

 

「果たして。ボクがやったことは良かったんやろか?」

「良いと思いますよ。窮屈な思いをしながら、ゲームするよりはずっと」

 

 タオの悩みを和らげるかのように、シーナが慰めの言葉を掛けてくれたが、なんか違う気がした。

 

「どうして無法ばかりに楽しみが集約されるんでしょう?」

「年頃の男子なんてね。皆、アホなのよ。アホ」

 

 コウラが溜息を吐く中、カルパッチョがバッサリと切って捨てていた。だが、これに反論する者がいた。マシマである。

 

「アホって言うか、そう言ったリビドーや情熱ってのは上手い具合に発散させていかなきゃいけないのさ。晴らし方が分からねぇままの人生は苦しいんだ」

「GBBBBは、そう言った物の廃棄場じゃ無いんだけれど」

「ですが、リン。世の中にはそう言った内側に秘めた感情を作品で表す『昇華』と言う物もあるそうなので」

「文はクレバーガールだぜぃ!」

 

 マシマの理屈にリンが苦言を呈し、文が冷静な解説をしてアラタが褒め称える。和やかな空気に皆が笑っている中、1人だけ表情が陰っている者がいた。

 バカなことをする奴は多いが、聡い奴も多い。彼女が落ち込んでいることに気付いた者達が声を掛けた。

 

「シーナ。どうしたの?」

「ちょっと、暗いじゃねぇか。なんかあったのかぃ?」

「なんかあったの?」

 

 リン、アラタ、カルパッチョの3人に指摘され、彼女は少し驚いた様子を見せたが、少し考えた後……意を決したように話し始めた。

 

「実は、皆さんにお話しなければならないことがあります。……私が、この先GBBBBをプレイできなくなるかもしれないのです」

「なんだって!?」

 

 アラタを始め、皆が驚いていた。現在、このクランにおいて男性陣と女性陣。ロマンと合理性を繋ぐ鎹(かすがい)的な立ち位置にいる彼女が居なくなられては、皆が困る。慌ててリンが問うた。

 

「理由は?」

「……実は、先日。ゲーム画面を放置していた所、親に見られてしまって」

「あっ……」

 

 一瞬でリンは納得した。マシマ達は目を逸らした。

 忘れがちだが、シーナは良い所のお嬢様である。その割にはファンキーな趣味をしているが、普段は礼儀正しく真っ当に過ごしているのだろう。多分。

 

「親からは『なんて頭のおかしなゲームをしているんだ! こんな物をプレイするのは止めなさい!』と非常に御立腹で……」

「うーん。不思議ね。こう言うのって、大抵は理解がない親の言い掛かりってパターンなのに否定できないのよね」

 

 コウラが神妙な顔をしていた。もしも、これが何かしらの物語とかならゲームなどの現代的な遊びに理解がない親からのいちゃもんなのだが、残念ながら完全に否定することが出来ない。チラっとロビーを見た。

 

「ブィーン! ブィーン! 俺はガンダムレーサー!!」

「ガリリリリィー! 俺はヘリアンサス!!」

 

 ロビーではガンダムの顔を細長く引き伸ばしたミニ四駆みたいなのと、向日葵(ヘリアンサス)という名の、バグみたいな自律破砕機がレースをしていた。

 

「こんなにも楽しい空間だというのに……」

 

 シーナがしんみりしていたが、コウラには彼女の御両親の気持ちが微妙に理解できてしまった。年頃の女子に見せるには、あまりに刺激の強い光景ばかりだったからだ。

 

「どうにかして、説得とかは出来ねぇのか?」

「幸いにも、ここで生まれた交流に関してはお父様達も興味があるようです。もしも、皆さんのお時間を頂けるなら……お話させて頂けたらと」

 

 こういった場で無条件に奪わない辺り、彼女の趣味に比較的理解のある御両親なのだろう。そんな人達をブチギレさせたのが、GBBBBの現状でもあるのだが。

 

「全員と話すのは時間が掛かり過ぎるだろうから、お父様には男子陣が、お母様には女子陣が。って形で、どうだ? 同性なら少しは話も通じやすいんじゃないか?」

 

 普段はふざけているマシマも割と真面目に取り合っているのか、実に妥当な提案をして来た。ただ、タオが困っていた。

 

「でも、ボク。そんな上手いこと話せるやろか?」

「こう言うのはノリで行くもんだぜぃ」

 

 アラタとマシマは割と口が回るにせよ、タオはそんなに口が上手い方ではない。

 一方、女子陣はと言えば、受け答えに関しては印象の良いコウラもいるし、配信で弁を鍛えまくったカルパッチョも居るので、層は厚かった。

 

「なんか、行けそうじゃない?」

 

 カルパッチョは自信がありそうだった。確かにGBBBBの治安はアレだが、少なくともシーナの周囲は真っ当な人間が多い。周りは周りと言うことで説明すれば、御両親からも理解は得られそうだった。

 だが、シーナは不安そうにしていた。まだ、何か心配の種がありそうな、引っ掛かる物がある様な顔をしていた。

 

「シーナさん。大丈夫よ。周りに変なのもいるけれど、私達は真っ当だし、普通にカッコいい俺ガンプラを作っている人達もいるから、そっちの線で説得して行きましょう?」

「……はい」

 

 コウラが優しく励ましていたが、それでも彼女の不安は拭い切れていないようだった。皆が楽観的に考える中、ふと。タオは以前にあった出来事を思い出していた。

 

「(……まさか)」

 

 もしも、以前のままだとしたら。今回の説得が上手く行った所で意味がない。ただ、見間違いだったかもしれないし、確証はない。……アラタにウィスパーチャットを送った。

 

『アラタ。ちょっとお願いがあるんやけど』

『うん? なんだい?』

 

 皆が安堵して、普段の空気に戻っている中。タオはアラタにだけ用件を伝えていた。

 

~~

 

 夜中のことである。ビアンカのメンバーもログアウトした頃、アラタとタオは自分がINした際の告知設定を切り、オンライン状態を隠すという設定をした後、使用するガンプラも変えてGBBBBにログインしていた。彼らの告知欄が鳴った。

 

「ほら。シーナがログインして来たやろ?」

「本当だ……」

 

 ソロ歴が長いこともあって、ログイン告知の切り方もオンライン状態を隠す方法も知らないのだろう。もしも、どちらかを知っていたら危うい所だったが、ここばかりは彼女の脇の甘さに助けられていた。

 以前、タオは『エイリアンVSプレデターVSふみな』の会場に、彼女が入って行ったのを覚えていたので、もしかしてと思い、待ち伏せをしていた。

 彼女が使っているガンプラ『ガンダムチクラミーノ』は、割とカラーリングが派手なので遠目にも目立つ。彼女がスッとマイルームに入った横で、ロビーでは今日もプレイヤー達による饗宴が繰り広げられていた。

 

「はい。こちら、先日のカルパッチョ配信を記念してトランスフォーマー会場です。トランスフォーマーの再現機体かカルパッチョちゃんで来て下さいね」

 

 何故、彼女がTFと同列に並べられているのかは疑問だったが、こういった状況でも慌てないのがアラタだった。

 

「とりあえずコンボイとメガトロンのレシピを持って来たぜぃ。タオ、お前はコンボイで頼む!」

「わ、分かった」

 

 手配が早すぎる。あまりに時間を掛けていたら、肝心の瞬間を見逃してしまうので、タオはレシピに則り手早くコンボイを作っていた。

 前のバージョンから再現している人も多数いた為、組み立て方が確立されていたのは非常に大きかった。

 

「フッフッフ。お前も良くできておるワイ」

「まぁ、レシピ通り作ったからね」

 

 アラタのメガトロンもそれなりの完成度に加え、態々中の人調にまで喋り方を合わせている位の丁寧さだった。

 2人は直ぐにトランスフォーマー会場に入れたが、中にいたのは殆どメガトロンとカルパッチョ再現機体だった。

 

「この愚か者ME☆GA!」

「お、お許し下さい……」

 

 先日の動画再現でキャッキャ盛り上がっている様子をご本人が見たら何を思うのか。いや、多分。SNSに上げられ、本人がブチギレそうな気もするが、それは兎も角として。

 

「アラタ。シーナが来たで!」

 

 会場に入って来たシーナの機体は『ガンダムチクラミーノ』ではなかった。

 カルパッチョの再現機体に加えて、スタースクリームの特性をも兼ね備えた、完璧で究極な愚か者の再現をしていた。

 

「まさか! シーナが! ……いや、あんまり意外でもねぇな」

 

 お淑やかに見えるが、コマンドーや洋画などにも詳しいし、割と好み自体はぶっ飛んでいる彼女である。これ位の真似はしても自然な気がした。

 

「アラタ。どうする?」

 

 ここで声を掛け、彼女を捕まえるか。そして、問い質すべきかとタオが考えていると、アラタはカルパッチョリームへと近付いた。

 

「ハッハッハ。カルパッチョ君、今日はサプライズがあると聞いたんだがね」

「!?」

 

 どうやら、シーナ側もメガトロンの中身がアラタだと気付いて驚いていた様だが、直ぐに気を取り直していた。

 

「はぁい。今日は、ニューリーダー誕生の日ですよ!! 祝え!!」

「カルパッチョ君!? えぇい! 増長したか! この愚か者ME☆GA!!」

 

 流石、当日に主役を務めた男の再現度は半端なかった。ロビーで対戦は出来ないが、各々が似た様な遣り取りを繰り広げている中、タオも棒立ちしていては怪しまれると言うことで2人の輪の中に加わるべく言った。

 

「もういい! もうたくさんだ! 裏切者を破壊する!!」

 

 かくして、メガトロン、コンボイ、カルパッチョという最後に異物が混じった奇妙なやり取りが夜中に繰り広げられることになった。……全員楽しそうだった。

 

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