GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
背後で、トランスフォーマー勢とカルパッチョ再現勢がニューリーダー寸劇を繰り広げている中、アラタ達は会場の外でシーナから話を聞いていた。
「白状します。実は、GBBBBのロビーを見られたのは、この催し突撃が切っ掛けだったのです」
「前に『エイリアンVSプレデターVSふみな』の会場にもおったもんね」
「もしやと思っていたのですが、やはり見られていたのですね……。はい、その通りです。あの会場で私はビルダーズパーツモリモリマッチョウーマンを使っていました」
「なるほどな……」
アラタに動揺が少ないのは、何処かで納得していた部分もあったからだろう。
そもそも、彼女との出会い自体が大分GBBBBらしかったのに、今日に至るまでの彼女は大人しすぎた。きっと、こういった場で発散していたのだろう。
「でも、なんでそんなことしとったん?」
「……アラタさんなら分かってくれると思うんですが、リアルって行儀よく真面目に生きないと『怒られる』じゃないですか」
「まぁな。堅苦しいぜぃ」
アラタの様な普通の人間でさえ、現実では大人しくしているのだ。令嬢ならば、なおのこと貞淑さを求められることだろう。
「両親から色々と習い事を学ばせて貰ってもさほど興味を持てず、自分の意思で始めてみたGBBBBも効率に則れば作業ですし、真っ当なビルドをしてもピンと来ない。――その中で、私はネタ勢に出会ったのです」
「な、なんで、そんな状況でそこに突っ込んでもうたん?」
もしも、これがビルドファイターズみたいなガンプラ系のアニメなら、渇いていた感性を満たす様な素晴らしいガンプラに出会う所なのだが、ここはGBBBBである。基本は百鬼夜行だ。
「再現だったり、下劣だったり、理解不能だったり……。ですが、自分だけの欲望を満たしている彼らが美しく見えたのです」
セリトの時と言い、このゲームは青少年に良くない影響を与えまくる力場が形成されているのかもしれない。真面目な人間ほど道を外れやすい所に、社会性を感じずにはいられなかった。
「シーナ。俺も分かるぜぃ。魂の解放? みたいなのを感じるよな!」
「魂の解放! 言い得て妙ですね!」
そう言えば、アラタも悪影響を与えられた側だったことを思い出した。
そんなに魅力的に映るかと思い、背後のトランスフォーマー会場を見たら、いつの間にかメガトロンだけではなく、ブリッツウィングやアストロトレイン枠まで集合してトリプルチェンジャーの反乱を始めていた。
「み、認めるわ! カオスは中二病の痛々しいおっさんよ! ……でも、私には行動力があるわ! 偉そうにするんじゃねぇ! 慇懃無礼のクロカンテ野郎!」
「カオスさん! 誤解です! 本当の裏切者はカルパッチョです!」
本人がいない所で好き勝手にやっている。全体的にエミュが雑い。プライバシーとかは到底望めそうにはないが、楽しそうな空間であることには間違いない。
「兎も角、シーナはこの無法地帯っぷりに染まった訳やんな?」
「はい……。それで、父にバレた結果。『こんなゲームをしているから頭がおかしくなるんだ!』と言われまして」
「とんでもねぇ言い掛かりだ!」
「事実やん」
アラタがプリプリと怒る傍ら、タオはシーナの父親が抱える心労を慮らずにはいられなかった。
「私、皆さんやGBBBBと別れたくありません! また、ロビーにいる皆さんに混じって、この空気を謳歌したいんです!」
「俺もだぜ! 話してくれてありがとうよ。なんだか、仲間としての距離がグッと近付いた気がしたぜ!」
アラタが笑顔でサムズアップをしていたが、タオは突如ぶちまけられた性癖に戸惑うしかなかった。ついでに、御両親の説得の難易度が爆上がりしていた。
「し、シーナ。御両親を説得するなら、この事を話しとかなアカンと思うねん。じゃないと、会話に齟齬が生じるし」
「そんな! リンさんやコウラさんにドン引きされるじゃないですか!」
こんだけ好き勝手をやりながらも、交友関係は保ちたい欲張りさんだった。アラタの顔が険しい物になった。
「シーナ。いずれはバレるんだ。でぇじょうぶだ。2人はお前の人柄をよく知っているし、コウラ先輩もそんな薄情な人間じゃねぇ。俺達を信じろ!」
カッコいいことを言っているのに、話している内容が『GBBBBに跋扈する魑魅魍魎共の一味』という物なので、1つも引き締まらなかった。
だが、アラタの激励はしっかりとシーナの心に響いていた。誰かに期待されたイメージじゃなく、誰かが選ぶ趣味じゃない。
「私だけが作っていく性癖(ガンプラ)があって良いんですね?」
「そうだ。決して、お前は1人じゃねぇ。その胸に秘めた刃で、自分を縛り付ける鎖を解き放って行こうぜぃ!」
「滅茶苦茶汚い水星の魔女を見た」
エリクトも祝福を拒否するレベルの会話だった。素面で居続けなければならなかった、タオの心労は如何ほどか。それでも、会話の着地点を見つける為に必死に言葉を紡いだ。
「じゃあ、明日。ちゃんとリンやコウラさんに打ち明けよな?」
「はい!」
何かしらの衝突事故が起きなければいいのだが、現時点で遭遇している事故に比べたら大したことは無いか。なんて思っていたのは、彼が疲弊している証でもあった。
~~
「という訳なんだ」
翌日のことである。皆を集めた上で、シーナの暴露大会が始まった。
絶句する者、無反応な者、大笑いする者、マジギレする者。反応はそれぞれであったが、最初に反応したのはカルパッチョだった。
「何、勝手に人をフリー素材みたいに扱ってんのよ!?」
「だって、あの配信。あまりに面白かったので! ブフフ」
お嬢さまが上げて良い笑い方じゃなかった。リンとコウラは絶句していたが、マシマは大爆笑していた。
「いや、良いと思うぜ! リアルじゃ出来ねぇことをやれる! ってのは、ゲームの醍醐味だもんな! お嬢にも通じて嬉しいぜ!」
「お嬢?」
「……シーナってお嬢様っぽいからな。だから、お嬢ってこった」
文の疑問に対して、マシマの回答に多少のラグがあったことは引っ掛かってはいたが、彼女もそこまで否定的ではなかった。
「勿論、リンさんやコウラさんがいる前では、そう言ったガンプラは持ち出しません。お約束します」
「……そうね。分別を付けるならまぁ」
コウラも渋々と言った様子で了承していたのは、シーナの人柄を知っているが故だろう。同時に、アラタと違って距離の遠い相手なので遠慮している部分があることも否定は出来なかったが。
「でもまぁ。考えてみれば、今までそれっぽい節はあったしね。私達を信じて打ち明けてくれたなら、反故にする訳にはいかないよね」
リンは個人の感情と義理がせめぎ合っていたが、打ち明けてくれた誠実さを取った。完全に、という訳ではないがシーナも胸に抱えていた物を降ろせて、安堵の溜息を吐いていた。
「なんだか、ご両親への説得も上手く行きそうな気がして来たぜ。シーナ! その話し合いの時間って言うのは?」
「……その必要はない」
シーナのボイスが突然、野太い物に変わった。VCをしている人物が代わったのだと言うことは直ぐに分かった。
「すみません。実は、この事を打ち明けた時の皆さんの反応を聞く為に、後ろに待機して貰っていたんです」
つまり、自分達の素の反応を見たかったと言うことか。口裏合わせやおべっかなどを認めない厳格な雰囲気が伝わってくるようだった。
「ウチの娘、いや。ここでは『シーナ』か。この娘は何事にも淡白でな。懇意にしている友人もおらず、ネットで悪い遊びや交友関係にハマってしまったのではないかと心配していたのだが」
しかし、同時に娘を思いやる慈しみにも満ちていた。ネットの交友関係が健全な物だけではないと言う、リテラシー能力もキチンと備えていた。
「こんなバカげた趣味や嗜好を笑いもせず、真摯に向き合ってくれる良い友人達と巡り会えた様だ」
「お父様……」
「最近はシーナも笑うことが増えた。微笑むじゃなくて、爆笑とかそっち方面なのは気になるが、これからもよろしくお願いします」
モニタ前だというのに、全員が一律にお辞儀してしまった。父親と思しき気配が遠ざかった後、リンが言った。
「シーナのお父さん。良い人だね」
「はい。素晴らしい父ですよ」
「そっか……」
シーナの心からの言葉に、リンは寂しそうに相槌を打っていた。
事態が解決するのを見計らったかのように、少し離れた場所で待機していたミスター専用ゲルググが近付いて来た。
「クラン戦の健闘を称賛しに来たつもりだったんだけど、何かお取込み中だったかな?」
「良き仲間との出会いを祝福していたんだぜぃ。進めば二つだ!」
「何か良い物を手に入れた様だね! では、欲張って3つ目! クラン戦の勝利も取って行こうじゃないか!」
「なんでクランメンバーでもないアンタが言っている訳?」
「まぁまぁ。カルパッチョさん、その憤り。私と一緒にクラン戦で晴らしましょう!」
アフロに対して嫌な思い出があるのか、カルパッチョが刺々しくなっていた。そんな彼女の手を引いて、シーナは満面の笑顔を浮かべてクラン戦へと向かった。