GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】   作:ゼフィガルド

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27戦目:拉致ろう!

『クラン戦もいよいよ終わりに近付いてきました。今回は新興のクランが主体となっていましたが、ミスター。どうだったと思いますか?』

『ミッションでCPUと戦うのとは違い、戦場での駆け引きやクランメンバーとの連携など。課題も多く見えたと思う。この経験はGBBBBを楽しんで行く上で、きっと役に立つと思う!』

 

 ロビーに設置されたモニタでは、レコとミスターガンプラが今回のクラン戦を総括していた。アラタ達、ビアンカのメンバーも今回のクラン戦を振り返っていた。

 

「個人的に一番驚いたのは、皆のガンプラが普通だったことなのよね」

 

 戦績よりも何よりも、GBBBBには思ったよりも普通のプレイヤーが多いことにリンは驚いていた。ロビーにしょっちゅう蔓延る魑魅魍魎を見過ぎたせいで感覚が麻痺していた。

 

「変なのが悪目立ちしているだけだから。……さて、今回のクラン戦を通して個人の課題が見えて来たから、次回からは意識して動ける様にしましょう」

「タオ君はテンパり過ぎだし、リンちゃんは突っ込み過ぎ。文ちゃんとシーナちゃんは、周りに左右され過ぎ。アラタ君とマシマは動けているけれど、他のクランメンバーを意識し過ぎている感じだねー」

 

 コウラに促され、カルパッチョが軽く評価していた。動画配信者と言うこともあり、非常に的確な物だった。

 

「初めて、本格的にPvPをやるんならこんなもんじゃねぇかな? 低ランク帯はマトモなマッチングにならねぇしな」

「そうよね。ここら辺は改善して欲しいんだけれど」

 

 マシマやコウラの言う通り、低ランク帯はサブ垢や初心者狩りの様な連中がいたり、連携を取って動く相手が少ないのでマトモな経験が積めない。

 本格的に対戦らしい対戦をする為には、ある程度のレベルを積む必要がある為、中々にPvP人口は増え辛い。

 

「これを切っ掛けにもっと対戦して行けると良いな! じゃあ、最後の相手は何処だぃ?」

 

 モニタの方を見れば、最後の対戦カードが発表されていた。表示された名前を、マシマが読み上げていた。

 

「ニシワキエンジニアリングか……」

「おぉ、聞いたことあるぜ。佐成メカニクスと並ぶ位に有名だよな」

「どっちもガンプラバトルで名を轟かせた老舗のプロチームやね。GBBBBにも進出して来たんかな?」

 

 アラタとタオが補足を付け加えてくれたが、新興クランにしては大分強そうな相手だった。

 

「貧乏だった頃と比べて、随分と立派になったモンだ」

「もしかして、昔、所属していたとか?」

 

 マシマが懐かしむように言ったので、カルパッチョが反応していた。図星だったのか、普段は饒舌な彼が罰の悪そうな様子をしていた。

 

「はい、その通りです。マシマさんは昔、ウチに居たんですよ」

「うわぁ!? 急に出て来た!?」

 

 音も無く静かにヌーっとオレンジ色の機体が現れたので、タオが悲鳴を上げていた。ジム・カスタムの頭部に連邦系のパーツで統一している様だった。

 

「貴方がニシワキエンジニアリングの?」

「ユーキと申します。対戦、よろしくお願いします」

「はい。よろしくお願いします」

 

 セリトの物とは違い、社会人としての礼節を弁えた挨拶は聞いていて気持ちが良い物だった。これにはアラタもキャラ付けを忘れて、素の対応をしていた。

 

「マシマはプロだったの?」

「まぁ、そんな所だ」

 

 文の質問に対して、曖昧な解答をしていた。ただ、腑に落ちる点は多かった。

 クラン戦において彼の動きは冴えていたし、明らかに経験者の物だったが、プロ出身だとは思わなかった。

 

「その様子だと話していないんですね」

「態々、話すことでもないからな。俺はゲームを楽しみに来ているんだ。プロの世界のゴタゴタはもうごめんだ。楽しくやろうぜ?」

 

 いつもの様な軽薄な態度だった。ただ、ユーキはニコニコとしながらマシマに握手のエモーションを繰り出していた。

 

「なら、ウチに戻って来ませんか? 今となっては、ウチも有名になって色々なスポンサーが付いたので、あそことは手を切ったんですよ」

「いや、そういう話じゃなくてだな……」

「楽しくやるんですよね? ニシワキエンジニアリングの皆も、マシマさんが帰って来たら喜ぶと思いますよ! 僕も戻って来て欲しいと思っています!」

 

 猛烈なプッシュだった。あまりに押しが強かったので、2人の間にアラタが割って入った。

 

「な、何か色々とあるみてぇじゃねぇか。良かったら、俺らにも分かる様に話してくれねぇか?」

「良いですよ。まずは、黎明期のことからですね」

 

 かくして、ユーキによりニシワキエンジニアリングの歴史が語られた。

 最初は有志で集まったこと。マシマが皆を勇気付け、励まし、切磋琢磨し合ったこと。地元の大会で有名になったが、貧乏だったので大規模の大会に出られず悔しい思いをしたこと……。

 

「念願のスポンサーが付いて、ようやく大規模な大会に出られるようになったころ。連中は言ったんです! 『ウチの選手を編入して目立たせろ。ゲヘヘ』と。……最初は僕が外れる筈でした。ですが! マシマさんは言ってくれたんです! 『晴れ舞台に立たせてやれねぇで、リーダーが務まるかよ』って!」

「なぁ、ログアウトして良いか?」

 

 黒歴史をバラされている訳ではなく、むしろ彼の誇り高いガンプラファイターとしての歴史が語られているのだが、軽く公開処刑めいた光景になっていた。ただ、ユーキの熱量は増々ヒートアップして行くばかりだった。

 

「そして、スポンサーが派遣したカスをリーダーとして戦いましたが、初戦敗退。どう考えても向こうが悪いのですが、スポンサーは『直前になって和を乱したマシマに責任がある』とか抜かしやがったんです。どう考えても悪いのはお前らだ! って、思いましたね」

「す、すげぇ! マシマはなんてカッコいいんだ!!」

 

 あまりに突飛な話なので受け止め切れない者が大半の中、アラタは甚く感動していた。これにはユーキも気を良くしていた。

 

「アレから、他のスポンサーを取り付けられるようにと全員で修行して、この度はGBBBBにも進出したんですが。いや、まさかマシマさんもプレイしていたとは! どうして、教えてくれなかったんですか?」

「え、いや、暫くは気楽に楽しもうと思って……」

「じゃあ、今度は一緒に楽しみましょう! 皆が待っていますよ!」

 

 チラリと見たら、何時の間にかサーバーに『ニシワキエンジニアリング』と思しきガンプラ達が集まっていた。軽くホラーだった。

 

「……ユーキ。良いか? よく聞けよ? 俺は肝心な時に責任を放り投げちまったんだ。その時点で、プロとしての俺は死んだ。そして、今もお前達はプロとして躍進している。もう、お前達は俺から卒業しているんだよ」

「はい。で?」

 

 言葉は通じるが話が通じない恐怖があった。このままでは埒が明かないと悟ったのか、マシマはアラタの機体に凭れ掛かった。

 

「そして、俺が次に選んだのがここってワケ。リーダーのアラタは鍛え甲斐もあるし、暫くはここでやって行くと決めたんだ。だからお前らの所には……」

 

 ニシワキエンジニアリングの機体が一様にしてアラタの方を向いていた。当の本人は蛇に睨まれた蛙の様に固まっていた。

 

「なるほど! マシマさんが期待する程ですから、余程なんですね! 次のクラン戦! 楽しみにしていますよ!!」

「おうよ! 期待しておけよ! もしも、俺の目に狂いがあったら、お前らの言うこと何でも聞いてやるからよ!」

「今、何でも聞くって言いましたね?」

「あ、いや。ちょっと」

 

 ユーキ達は言い訳や弁護を聞くつもりはないと言わんばかりに一瞬でサーバーから抜けた。……彼らが去った後、マシマを取り囲んでの尋問会が開催された。

 

「なんで、あんなこと言ったんですか?」

 

 まず、文から淡々とした質問を食らった。あんな余計なことを言わなければ、追い込まれることも無かったというのに。

 

「は、話を早く切り上げたいと思ったら、つい口から出ちまったんだ……」

「プロって一つの失言が問題になる世界なのに」

 

 コウラもドン引きしていた。SNSでの発言1つで、仕事を失うプロも珍しくはないというのに、どうしてあの場で軽口を走ってしまったのか。

 

「ていうか、メッチャ慕われてますやん。なんで、戻らへんのですか?」

「ちょっと期待が重いというか……。もっと、こう軽い感じで付き合いたいんだけど、向こうの熱量が凄くて」

「一体、何をしたらそんなに……?」

 

 リンとしてもここまで慕われる人間なんて初めて見たので、一体何をして来たのか滅茶苦茶気になっていた。

 

「大したことはしてねぇよ。ガンプラバトルの指導をしたりとか、練習相手になったりとか。後、親から『いつまでもガキみたいなことやっているんじゃねぇ!』とか言われていた奴の家まで頭を下げに行ったり、チームメンバーが働いたりしている間に、ソイツの弟妹の面倒見たりとかだな」

「もしかして、マシマってスパダリだったりする?」

「何言ってんだ。一緒にガンプラバトルしてぇんだから、それ位はして当然だろ」

 

 カルパッチョからの冷やかし混じりの質問に素面で答えていた。同時に、ニシワキエンジニアリングの連中が彼を連れ戻そうとする理由も理解した。アラタが肩を叩いた。

 

「帰るべき場所。ってのは、あると思うんだぜぃ?」

「俺を見捨てるんじゃねぇ!?」

 

 むしろ、何故そこまでして来た連中の元に戻りたいと思わないのかが理解できなかった。

 

「でも、精神的に依存し過ぎているから脱却を目指した。ということもあるのかもしれないわ」

「流石、コウラちゃん。実に冷静な分析だぜ。てなわけで、アラタ。俺の目に狂いが無かったことの証明になってくれ」

「プロ相手に何処までやれるか。あと一人は誰にするか……」

 

 タオとリンは首を横に振っていた。シーナが少し困った様な表情をしている中、文が挙手していた。

 

「プロと戦えるのは良い機会です。私が行ってもいいですか? お2人が付いてくれるなら、心強いです」

「物怖じしないのは良いね。よっし、じゃあこの3人で行くか。俺の自由なGBBBBの為にも!!」

 

 かくして、1人の男の身柄を掛けたクラン戦が始まろうとしていた。

 ……ニシワキエンジニアリングが移動したサーバーにいた者達は、彼らの様子をこの様に語っていた。阿修羅すら凌駕する存在がいた、と。

 

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