GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
『残す所、僅かとなったクラン戦。今回は注目のカードです! プロ選手も多数在籍する『ニシワキエンジニアリング』と、覚醒使いに反骨系実況者等が在籍する面白愉快なクラン『ビアンカ』! 下馬評では前者に分がありますが。ミスターはどう見ますか?』
『順当に行けばニシワキエンジニアリングだね。だけど、何が起こるか分からないのがGBBBBだ! アッと驚くような試合展開を見せてくれるかもしれないね』
実際、掲示板やSNSでは『ニシワキエンジニアリング』に分があるという意見が多めだったが、出場選手の中に覚醒使いと元・プロプレイヤーがいると言うことで、ビアンカ側の勝利もあり得るのではないか? という推測が飛び交っていた。
「前バージョンとの挙動の違いや、GBBBBのプレイ時間はこちらが上回りますが……」
「パーツレベルとかビルダーズランクじゃない。もっと、根本的なガンプラファイターとしての総合力は向こうが上だろうよ」
マシマは冷静に判断していた。ここら辺はアマチュアとプロの埋めがたい差がある。だが、アラタは楽しそうだった。
「でも、プロプレイヤーと戦えるなんて嬉しいぜぃ。以前に、ウチの学園にもゲストでプロが来てくれたこともあったけれど、学ぶことも多かったからな!」
「へぇ。誰が来たんだ?」
「クズノハ・リンドウさんだな。ちなみに一方的にボコられた」
「あのおっかない嬢ちゃんか。ま、一度ボコられた経験があるならビビったりはしねぇだろ。それじゃあ、やってやろうじゃねぇか!」
フィールドに両クランの機体が降り立った。ユーキ以外の機体はジンクスをベースにしたガンプラとケルディムガンダムをベースにしたガンプラだった。3機ともオレンジのカラーリングをしており、この配色がチームカラーであるらしい。
「各機散開! マシマさんは僕が抑える。ユイ! トーヤ! 覚醒使いを重点的に当たってくれ!」
ユーキが先行し、マシマと接敵をしている傍ら、2機の僚機がアラタを抑えに掛かっていた。流石にプロのチームというだけにあって、連携は見惚れてしまいそうになる程、綺麗だった。
「ユーキ。随分、大きく出たな。お前1人で俺を抑えられると思ってんのか!」
「いいえ。ですが、足止めは出来ます。ユイもトーヤも強くなったんですよ。果たして、彼が持ち応えられるかどうか」
「ヘヘッ。あの優男が随分、交戦的になったモンだ!」
お互いに接近し、ビームサーベルを引き抜くかと思いきや、ユーキの『ニシワキX-1』は短くスラスターを吹かし、一瞬で距離を開けると頭部のバルカンとペイルライダーの両腕に装着された腕部ビームガンを一気に放った。
普通のプレイヤーならば近接武器で対応をしようとしてしまい、攻撃が空振ると同時に斉射を食らってしまうのだが、マシマは挑発に乗らずに堅実にシールドで防いでいた。
「これ位は防いで貰わないと、楽しくありませんからね!」
「
サンボル版フルアーマー・ガンダムの肩部からミサイルが射出されるが、マシマのクレインクインのバックパックから射出されたファンネルがミサイルを迎撃していた。……そして、それらを同時に葬る様にしてニシワキX-1が装備していたビームマグナムが放たれ、爆発が起きた。
「向こうも派手にやっているじゃねぇか!」
マシマとユーキが激戦を繰り広げている中、アラタもユイとトーヤの猛攻に晒されていた。
「うぉおおおおおおおおおおお! マシマさんが黒人ハゲに寝取られたぁああああああああ!!! 許せねぇええええええええええ!」
ケルディムガンダムベースのガンプラ『ニシワキサバーニャ』を使用しているパイロットが金切り声を上げていた。
声質からして、彼女が『ユイ』と呼ばれている女性なのだろう。プロらしい品性は何も見えないが。
「アラタ。様子のおかしい人です」
「ユイって名前の人はこうなりやすいんだ。俺は詳しいんだ」
多分、アラタの知り合いにも『ユイ』という同名の人物がいるのだろう。これに匹敵するレベルがいるのは空恐ろしくもあるが。
「マシマさんは俺達のレジェンドなんだ。お前達には渡さんぞ!!」
ジンクスベースのガンプラ『ニシワキジンクス』はGNランスを振り回して、アラタの機体を激しく攻め立てていた。
文のすーぱーふみなが援護に回ろうとしても、ユイの機体がGNバズーカで牽制して来る為、中々に近づけない。その上、サバーニャの脚部から繰り出されるGNライフルビットによって、アラタは実質1.5人分の負担を強いられていた。
「へへへ。そんなに憧れている人間がよ、新天地で歩み始めた一歩を妨げるのは、どうかと思うぜぃ!」
ガンダムタンクのバックパックから『ヴォワチュール・リュミエール』が起動し、光の翼が展開される。ハイパートランスと呼ばれる、一定時間機体の能力を向上させるものだが、相手のトーヤも直ぐに反応していた。
「トランザム!」
00系で固めているだけにあって、当然の様に『ニシワキジンクス』はトランザムが使えた。機体が赤く発光し、同じ様に機体性能が向上する。
ガンダムタンクがバックパックから引き抜いたアロンダイトとGNランスがぶつかり合ったが、エースプレイヤーから獲得したパーツ性能はトーヤの物を上回っていた。GNランスが宙を舞った。
「舐めるなよ!!」
ニシワキジンクスは脚部から引き抜いたGNサーベルを投擲したが、アロンダイトで叩き落されていた。すると、何と彼は宙へと跳び上がり自分を援護してくれていた、GNライフルビットを掴み取り、その銃口をガンダムタンクへと向けた。
「何ッ!?」
咄嗟にアロンダイトを盾の様に使って防いだが、吹き飛ばされた。すると、無手になったニシワキジンクスが飛び掛かり、抱き着いて来た。ジンクス頭部に内蔵されたバルカンの砲門が開いた。
――
「戦場が引き剥がされますね……」
ユイの誘導によって、文はアラタやマシマから遠ざけられていた。GNバズーカとOPによる遠距離での戦いが主体と思い、幾度か接近を試みているのだが近接戦になると、バックパックからGNピストルⅡを引き抜いてのガン=ガタにより相手を制することが出来ない。
「お前が一番弱いことは分かっている! だから、さっさと潰させて貰うからね! そして、マシマさんと一緒にVCしながら夜を明かすのよ!」
「別に私達に勝ったからと言って、戻って来る訳ではないのですが」
天然なのか煽っているのかは兎も角として、文の言動は相手を刺激したのか、攻撃はより激しくなっていた。
文の機体は、ビアンカ内でも珍しく素組である。故に、特殊な技は出来ないにしても、他のプレイヤーと比べて非常に冷静ではあった。
「(発射のクールタイム、傾向を確認。この機体のスラスター容量からしても、ギリギリで届く。アラタの耐久力も減って来ている。距離的に駆け付けられるのは、私だけ……)」
「痺れを切らしたか!」
すーぱーふみなが飛び出した。ユイの射撃の腕は確かだった。偏差撃ちも含めて、プロとしての技量を感じさせる物であったが、逆にその正確さが文にとっても読みやすい物になっていた。
どうしても、スラスター容量の関係上。直進を迫られる時は、バックパックから展開したシールドファンネルで防いで、肉薄した。だが、相手も負けじと左腕のGNシールドビットを展開していた。
「行く……!」
「来い!!」
1本目のビームサーベルでGNシールドビットを叩き割る、代りにビームピストルのグリップによる殴打で頭部が弾き飛ばされた。
通常のプレイヤーならば相手を固定するカメラが使えなくなり、碌な攻撃が出来なくなるのだが、文は正確に相手に攻撃を叩きつけていた。両腕から引き抜いたビームサーベルで相手のGNピストルを切り裂いた。
「なんで、攻撃を当てられるのよ…!」
「まだ、倒れない……!」
だが、相手も残った方のGNピストルで胴体に銃撃をぶち込んでいた。極限状況でのダメージレースを制する一撃が交差しようとした瞬間、文の機体が緑色に光った。
――
「うぉおおおお!!」
ニシワキジンクスに組み付かれた時、アラタの中で覚醒が起動していた。今、必要なのは攻撃を耐え切る防御だと。彼の意思に呼応する様に、ガンダムタンクから緑色の光が放たれた。
今まで、ガンダムタンクは見た目の重厚さとは裏腹にペラッペラの装甲のせいで散々にやられてきたが、今回は違った。至近距離での接射バルカンを全て弾き返していた。
「こんなの、ありかよ!」
「残念だったな。ここはプロのフィールドじゃねぇ。GBBBBだ!」
ニシワキジンクスに組み付かれたガンダムタンクは急加速をして、近くの壁へと激突した。防御力が増していたアラタの機体は無事だったが、ニシワキジンクスは今の一撃で脚部が弾き飛んだ所を、ガンダムタンクに踏みつけられブレイクしていた。
――
ダメージレースを制したのは文の機体だった。ビームサーベルも叩き付けた後、残ったガトリングガンとビームピストルによる接射合戦だったが、先に機能を停止させたのはニシワキサバーニャの方だった。
「……機体の耐久力、攻撃ヵ所的に考えて。先に機能が停止するのは私のハズでした」
だが、一瞬自分の機体が緑色に光った時、相手の攻撃ダメージが軽減されていたのを観測していた。勿論、自分の機体にダメージを軽減する想定外の機能は付いていない。
「アラタ。貴方は新しい力を」
――
「まさか、2人が……」
GBBBBでの挙動は違うとはいえ、ユイもトーヤもプロプレイヤーとしての立ち回りや経験を積んでいたハズだというのに、アマチュアに負けるのは予想外だった。
「な? 俺が見込んだ奴は面白いだろ? 本気になるのが馬鹿らしい。なんて考えが、バカらしくなっちまう程に! GBBBBには面白いが溢れてんだよ!」
「違いありませんね!!」
既に両機体ともボロボロだったが、ビームサーベルを手にした2機は擦れ違い、互いの胴体を切り裂いていた。
「……せめて、後輩相手には格好良く勝ちたかったんだけれどな」
「それは欲張り過ぎですよ」
両機体、ほぼ同タイミングで爆散した。フィールドに試合終了のアナウンスが流れた。
『な、なんと! 勝ったのは『ビアンカ』です! アラタ選手が見せてくれました『覚醒』が決め手となりましたね!』
SNSやロビーが盛り上がり、クラン戦終盤の注目カードは多くのプレイヤーを満足させる物となった。
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「マシマさん。僕達は気付いたんです。素晴らしい人は皆で共有するべきだと」
「なんだって?」
試合終了、ユーキ、ユイ、トーヤの3人はビアンカへと挨拶に来ていた。
戦いを通して考え方が変わったのかユーキ達はマシマを無理に連れ戻すつもりはなかった様だが、問題発言はしていた。
「そうなの。マシマさんはもっと皆に共有して貰ってねぇ、皆が心にマシマさんを飼う様になればいいと思うの」
「アラタ。ユイって女はヤバいのしかいないの?」
「俺に聞かないでくれ」
コウラがジロリとアラタを横目に抗議していたが、そんなことを言われても本人的にはどうしようもない。
「最後は勝てると思っていたけれど、俺も力が足りなかった。次は勝つ。プロとしての矜持を見せてやる」
「その時は、またよろしく頼むぜぃ」
トーヤから申し込まれ、アラタは意気揚々と引き受けていた。ヤバい人達だと思っていたが、終わってみれば爽やかにヤバイ人達の集まりだった。
「マシマさん。偶にはウチにも遊びに来て下さいね」
「行けたら行くわ!」
「来ない人の常套句やね」
タオが静かにツッコミを入れながら、マシマの身柄と過去を掛けた戦いの後にはクラン同士の友情が築かれていた。