GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】   作:ゼフィガルド

29 / 141
 アップデート記念にうpです。


29戦目:パイの中を確かめよう!

 クラン戦も終わり、GBBBBにいつもの日々が戻って来た……と言うことは無かった。何故なら、今日は審判の日であったからだ。

 

「ジゴクだー!!」

「アバーッ!!」

 

 ロビーではユーザー達の悲鳴が響き渡り、多くの機体がマイルームと行き来していた。この現状を説明する様にして、モニタにはレコとミスターガンプラによる解説が行われていた。

 

『はい。今日はGBBBBのアップデートです! 以前より問題となっていましたが、ゲームバランスや対人戦を考慮して、メイス、超大型メイスの派生攻撃の調整が入りました!』

『クラン戦が終了するのを見測っての調整だね』

 

 運営もクラン戦が終了するまでは待ってくれていたらしい。数多くのプレイヤーの周回を手伝い、時にはPvPで一撃即死コンボとしても使われていた武器であるが、この度。無事にナーフを食らっていた。

 PvPにあまり興味はなく、俺ガンプラを作りたいが故に周回をしていただけのカジュアルユーザーにしてみれば、便利なアイテムを剥ぎ取られたと言うことで悲鳴が上がっていた。

 

「ボクらは猛威を体験する前にナーフされたんね」

「俺は良いと思うぜ? 人間、楽を覚えると流されちまうからな」

 

 タオ達はついぞメイスの壊れっぷりを体感することがなかった。ただ、マシマを始めとしたベテランプレイヤー達は頷いていた。

 

「私も新しい得物を探さないとだけれど、アレを使っていると本当に作業になるのよね」

「現時点では専用サーベルとかシュヴァリエサーベルが候補だけれど、こっちも修正を食らっているのかしら?」

 

 コウラもカルパッチョも次の周回向けのアセンを考えている。ロビーには悲鳴を上げているプレイヤー以外にも、今後について考えていく者達も多く散見された。……ただ、悪いことばかりでもない。

 

『逆に。今までは攻撃頻度の問題などで使用者が少なかったファンネル系の武装にもアッパー調整が入りました』

『この調整は難しいと思うよ。強すぎると、ファンネルオンラインになってしまうからね。他にも細かなバグや修正なども入ったみたいだね』

 

 現在、ユーザーに及ぼす影響が大きいアップデートはこの二つだろう。

 周回作業やサバイバルの難易度が上がったと批難する者もいれば、メイス一色で代わり映えの無い光景が改善されると称賛する者達も居た。――だが、これらは全て些事である。

 

『そして。皆さん、お待たせいたしました……』

 

 モニタの映像が切り変わる。広大な宇宙を掛ける白銀の機体。手には、特異なシルエットをした『バリアブルロッドライフル』。推進機も兼ねた武装は、見た目も合わさって、さながら魔女が使う箒の様でもあった。

 

『以前より告知していました『ガンダムキャリバーン』! そして『マイティーストライクフリーダムガンダム』も正式実装です!』

 

 先程まで、ロビーで上がっていた喧々囂々が一斉に歓声へと変わった。皆、ガンダムが大好きなのだ。

 ショップにはプレイヤーが殺到し、あっと言う間にロビーがキャリバーンとマイティーストライクフリーダムガンダムで埋め尽くされて行く。

 

「いやぁ、盛況だねぇ」

「あ。ミスター」

 

 いつもと変わらぬ様子で現れた赤いゲルググにリンが反応していた。最近はあまり姿を見せなかったが、こういう盛り上がる日にはキッチリと現れるらしい。

 

「クラン戦お疲れ様! と言いに来たんだけれど、この様子だと新機体を確かめたくて、仕方がない感じかな?」

「勿論だぜぃ。俺もディスラプターを撃ってみてぇ! 前に、マイスターと戦った時に威力は見せて貰ったからな!」

 

 作中でも凄まじい威力を見せた武装はどうなっているのか。一早く確かめてみたいと思うのは、アラタだけではなくGBBBBのプレイヤーの大半が思うことでもあった。きっと、今頃ラクスは喉が枯れんばかりに承認しまくっていることだろう。

 

「その試乗会。私も参加させて貰えないだろうか?」

 

 ミスターに次いで現れたのは素組のマイティーストライクフリーダムガンダムだったが、パイロットアバターとプロフィールを見たメンバー達が驚いていた。

 

「ま、マイスター!?」

「マジかよ……」

 

 コウラが驚愕のあまりに固まり、マシマも言葉を失う中。カルパッチョはチャンスを物にせんと近付いていた。

 

「以前より、お慕い申していました。一緒にフリーダムフリートとか言うクランを駆逐する様子を動画撮影しませんか?」

「止めようね」

 

 ミスターとしても畏まる程の相手なのか、カルパッチョの機体に制動を掛けるエモーションを繰り出していた。

 

「あの動画は久々に爆笑したね。でも、サークラや乗っ取りを促す動画を配信するのは止めようね」

 

 マイスターからも注意されるレベルの横暴だった。こんな所にマイスターが居たら騒ぎにもなりそうなのだが、周囲はマイティーとキャリバーンだらけなので、彼一人がコッソリ混じっても中々に気付かれない。

 

「マイスターとなら是非とも一緒に行きてぇぜ。あと一人は……」

 

 全員の視線がリンへと向いた。腕前は兎も角、ミーハーでやる気もある彼女ならば必ず立候補すると思っていたのだが、手を挙げたのは意外な人物だった。

 

「すまない。私に行かせて貰えないだろうか?」

「え? ミスターさんがですか?」

 

 シーナも驚いていた。普段は先達として、皆を見守るようなスタンスが多い彼が、自分から申し出るとは思っても居なかったからだ。

 

「私としてもアラタ君と彼を指名したい。良いかな?」

「か、構わねぇけれど」

 

 片やGBBBBのNo.1プレイヤー。片やレジェンドにソックリさんながらも腕前も確かなベテランプレイヤー。普段はお調子者だが、根は割と真面目で小心者な彼は若干縮こまっていた。そんな彼の肩を、カルパッチョが叩いた。

 

「動画撮って来て♡」

「嫌です……」

 

 撮れ高はえぐそうだが、色々と問題になりそうなので速やかに断った。かくして、アラタはとんでもねぇ大物と一緒にミッションへと向かうことになった。

 

~~

 

「クラン戦の戦いぶりは見ていたよ。特に最終戦の覚醒は運営の方でも色々と協議されていてね」

 

 どうやら、単純に一緒に遊びたいだけではなく、自分達だけが使える『覚醒』の件について、他に聞かれたくない故のお誘いだったらしい。

 

「そんなに問題に?」

「あぁ。覚醒にもいくつか種類があって、私達も使ったことのある攻撃特化の『アサルト』、カルパッチョ君の謀反動画でカオスが見せてくれた機動性特化の『ライトニング』。そして、先日君が見せてくれた防御特化の『ガーディアン』なんだが、これについては少し問題になっている」

「う~む。そもそも、一般プレイヤーが使えないバフが見逃されている。というのも、私は気になるんだがね」

 

 この中で唯一覚醒が使えないミスターも疑問を呈していた。

 実際に、大半のプレイヤーが使えないバフを使える。というのは、チート行為にもあたる物ではないか? という意見も少なからずある。

 

「私達が使っていたアサルト覚醒のバフは、いわゆるハイパートランス系EXよりも倍率が低い上に重複しないらしく、武器の残弾容量位しか影響がない。と言うことで見逃されていたんだが、ガーディアン覚醒によって得られるバフの倍率は、どうやらかなり高いらしい。実際、至近距離であれだけバルカンを浴びても、アラタ君の機体にダメージが通っていなかっただろう?」

 

 幾らバルカン。と言っても、至近距離で食らえば少なくないダメージになるはずだが、あの時は攻撃が通ってすらいなかった。

 

「そのおかげで逆転は出来たが」

「人の勝利にケチを付けたくはないが、一部のユーザーだけが使える能力で絶対的な差が出来てしまうとユーザー離れにも繋がる。現状の運営としては『ガーディアン』覚醒は使わないで欲しい。と言うことだそうだ」

「そもそも、覚醒ってコントロールできるモンなのか?」

 

 コマンド1つで切り替えられる物ではなく、その時の感情などで左右される為、難しい注文だった。

 

「だから、こうして一緒にミッションに行ってデータを取っているんだよ。ある程度、採取できれば『ガーディアン』覚醒が機能しない様にプロテクトを掛けられる。お互いにGBBBBを長くプレイして行く為にも付き合って欲しい」

 

 アラタとしても頷くべきだとは思っていた。覚醒、等と格好良く言っているが、実際の所はチートじみた行為なのだから。

 だが、プログラムだけでは説明できないニュータイプ的なオカルトめいた物にまで規制を掛けられるのは、なんだか世知辛い物を感じた。

 

「マイスター。君はそれでいいのか? もっと、強い相手と戦いたかったんじゃないのか? 全力に枷を付けられ、君は納得するのかい?」

「納得はしていない。ただ、GBBBBには多数のスタッフや企業の将来が掛かっているんだ。万全は期したい」

 

 アラタの代りに、ミスターが声を上げてくれた。マイスターとしても、やはり本意ではないらしく、歯切れの悪い返事だった。

 

「私が今、使っているアバターにあったことを知っていても、スポンサーに忖度するの?」

 

 ミスターガンプラ。ガンプラファイターならば誰もが知っているレジェンドであり、現役は引退したが、解説などで多数の場所に姿を現している。彼の過去と何かしらの接点があったのだろうか?

 

「彼と同じ道化の道を辿っているのかもしれないな」

 

 マイスターが苦々しく呟いた。きっと、彼ほどのトッププレイヤーにもなれば企業やスポンサーからの案件もあって、本人が思う以上に自由は少ないのかもしれない。と、彼の息苦しさの片鱗を見た様な気がした。……が。

 

「お前!! それが! 私を放ってまでアメリカに行った奴が言うことか!!」

 

 ミスターの声が突然甲高い物になった。アバターも切り変わり、女性の物になると、マイスターが渋い顔をしていた。

 

「ミサ。待て、落ち着いてくれ」

「前は逃げられたけれど、今度はちゃんと詰めるからな!! アラタ君に証人になって貰うからね!!」

「??????」

 

 まず、ミスターの正体がミサと呼ばれる女性ユーザーであることにも驚いていたし、2人が旧来の友人っぽいことにも驚いていた。

 GBBBBのトッププレイヤーであり、ミステリアスな雰囲気を漂わせていたハズのマイスターがたじろいでいる激レアな光景を目撃していたのだが、何も分からないアラタは宇宙猫の様になっていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。