GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
「まだ、調査中やってさ」
先日、突如として高難易度に放り込まれた件について、タオは運営へとメールを送っていたが『調査中です』という返信が来ただけだった。
敗北ペナルティがある訳ではないし、何なら一足先に高難易度に挑戦してパワーレベリングめいた真似も出来るかもしれないので、ユーザーに利する類のバグかもしれないが、タオ達は効率厨と言う訳でもなかった。
「普通に遊びたいのよね。普通に」
リンとしては、弱すぎず、強すぎずな相手に手ごたえを持って挑める。と言う体験が欲しくて、プレイしている所はあった。
「普通。と言ったら、このゲーム対人戦のコンテンツもあるんやけど、リンは興味ある?」
ミッションをハック&スラッシュで攻略するのも楽しいが、ユーザー同士でのPvPもGBBBBにおいては名物だ。
ユーザー達の個性が溢れる俺ガンプラ同士がぶつかり合う様子は観客達を沸かせてきた。
「無いことはないけれど。その……」
チラリとロビーを見た。どうやってビルドしたのか本当に分からないが、ヨッシーやカービィなど、ロボですらない他社のキャラクターが闊歩しており、いずれもパーツLvはマックスだし、ユーザーランクも非常に高い。
「さ、流石にレベルに合わせたマッチングにはなると思うんよ?」
流石にレベルが違い過ぎたら一方的な蹂躙にしかならない為、マッチングは同じ様なレベル帯で行われる。
ロビーにいるのはネタガンプラだけではなく、自分達と同じ様な低レベル帯の俺ガンプラもいたが、いずれもキメラな物が多い。
「タオ。なんで、皆。キメラ系を使っているの?」
「ミッションをクリアする為に高レベルのパーツを拾って使う。を繰り返していると、なり易いんね。でも、これも良いことやと思うで!」
拘りがない。とも見られかねないが、場合によっては拾ったばかりのパーツ同士が組み合わさり、ユーザーも予期せぬ造詣が生まれる場合もある。
また、使い込んでいる内に味が出て来て唯一無二のアセンブルになることもあるので、タオはこういったキメラ造詣も一つの味だと認識していた。
「なるほどね。なんか、両腕のパーツが違うと座りが悪いというか」
「あ、そうか。リンと僕は前作知っているからね。あの時、腕パーツは両腕セットやったもんね」
GBBBBに至り、俺ガンプラは更に進化したと言うことでもある。2人が雑談に興じていると、マイルームからアラタが出て来た。
「おぅい。何の話をしているんだぁ?」
先日のベテランプレイヤーの助力に感激した彼は、タオとリンも予想していた通り、ふみなの改造に手を出していた。
頭にふみなを据えて両腕、脚部パーツをガンタンクにするという、いたってスタンダードなビルドだった。
「ちょっと対戦もしてみやんかって話をしとってん」
「あ。そう言うことなら待ってくれ。買ったばかりでパーツのレベルが低いんだ」
普段は特定の語録ばかりを使うBotの様な振る舞いが目立つが、意外と気遣いなどはしているらしい。再び、マイルームに戻ろうとしたアラタをリンが止めた。
「なら、試運転がてらに行ってみない? ミッションとかなら1回が長いけれど、対戦ならすぐに終わるだろうし」
「なるほどな。そんな発想をするリンはクレバーガァルだぜぃ」
「せやね。じゃあ、僕らも対戦デビューしてみよか」
トレーニングモードもあるが、実戦形式の練習でなければ意味がない。チームを組んだタオがミッションを受注しようとした所で、彼らを呼び止める声が響いた。
「待ちたまえ!」
現れたのは、こんな混沌ひしめくGBBBBにおいて正統派の俺ガンプラだった。
赤と黒に染めたゲルググにゼフィランサスFbの特徴的なバックパックを装備した、まとまったMSだった。パイロットアバターはサングラスを掛けたアフロの男性だった。
「アンタ、一体誰だい?」
それに対して受け答えしたのが、アラタのスキンヘッドの黒人男性だった為、洋画みたいな絵面になっていた。タオとリンは噴き出していた。
「申し遅れた。私はミスターガンプラ! ……の魂を継ぐものだ!」
「要するに、そっくりさんやね。ミスターガンプラ程の有名人やとなりきりセットとかも売っているから」
「その割には、このパイロットアバターを使っている奴を見ないぞ?」
ネタMSに次いで、パイロットアバターも創意工夫が多い。カッコいい系から可愛い系。ネタ枠でも何でもござれではあるが。
「そこはほら。やっぱり拘りたいやん? ガンプラのビルドと一緒よ。素組でやる人もおるにはおるけど」
要するに。なりきりセットだけで使っている人は珍しいと言うことらしい。言った後に、工夫のない相手と揶揄してしまったのではないかとタオが己の失言に気付いて謝ろうとしたが。
「ハッハッハ! 気にしないでくれ! 私はこの姿が気に入っているんだ! それで、君達は対戦に行こうとしたね?」
「うん。私達と同じ様な相手とマッチングしないかな~って」
「それは止めておいた方が良い。対戦待機中ユーザーのガンプラを見てみると良い」
ミスターガンプラ(もどき)が画面を開くと、対戦待機中の相手は低レベルながらも武装が整っていたり、全身にOPパーツが付けられていたりと。どうにも準備が万端すぎる様に見えた。
「えらい、装備が整っているいうか。もしかして、サブ垢?」
「それもあるだろう。後は動画とかで対人戦のおすすめ装備なども紹介されたりしているから、多分。何の備えも無しに行っても、一方的にやられるだけだと思うね。準備不足だよ」
昨今は攻略動画などが手軽に視聴できるようになった為、ユーザー間でも強い装備と言うのはある程度共有されている。
それはベテランユーザーではなく、始めたばかりのユーザーでも知識を持っているか否かで差は出る。
「え~。じゃあ、対戦できないじゃん」
リンが不満を垂れた。コンテンツとして用意されているというのに、楽しめないのは面白くない。
「そう、今のままじゃできない。だからね、準備をするんだ!」
「それって、ミッション行ったり。動画で知識を集めて来い言うことですか?」
「それも悪くない。だけど、手っ取り早い方法がある。強い人達のバトルを見るんだ!」
再びメニュー画面を開き、マッチング画面から観戦を選んだ。すると、上位陣同士の様子が映し出された。GBBBBのナレーションや実況を務める『レコ』が試合の状況を解説していた。
『さぁ~! 皆さん、今回のマッチングはクラン同士でのバトルみたいですね! えーっと、チーム『ゲッター』と『OG』ですね!』
ゲッターと呼ばれたチームはマスターガンダムの頭部を真っ赤に染め、ゴツメのアセンブルで組んだスーパーロボットめいた機体をリーダーとして、他の2機はOPパーツの太陽炉を頭部へと移植させた2番手、ズゴックの丸みのある腕を両手に据え、脚部をタンクにした3番手がいた。
対する『OG』のメンバーは、リーダーをトロンの『ガンダムフリューゲル』が務め、似た様なアセンブルでカラーリングがスカイブルーの奴とブリッツガンダムめいたカラーリングの機体が並んでいた。
『うーん。両チームとも想像力が豊かですねー! 私、このゲームがガンダムゲーであることを忘れそうになりました!』
司会者として出来る限りユーザーと運営に配慮した発言であった。
だが、両チームとも実力は確かであった。いわゆる強武器に頼らず、機体の設定や雰囲気を活かしながらも、観客を大いに盛り上げる戦い方をしていた。勝ったのは『OG』チームだった。
リン達は溜息を漏らしていた。ミッションの快進撃と違い、複雑で煩雑な読み合いがガンプラバトルと言うエンタメを高次な物にしていた。
「彼らがこの段階に至るまでミッションで沢山練習をしただろうし、対人戦もしているだろう。だから、まずは機体の動かし方を知る為にもミッションを沢山やった方が良い。と、私は勧めるよ! でないと、対戦も楽しめないからね!」
ミスターガンプラのアドバイスに反目を抱いていたリンだったが、こんなガンプラバトルを見せられたら大人しく従うしかない。タオも頷いている中、アラタが首をひねっていた。
「でも、なんで上位陣は強い武器を使わないんだ? この超大型メイスとか専用サーベルが強いんだろう? 俺達を助けてくれたプレイヤー達も使っていたぜ?」
どうやら、アラタはふみなーズに助力された際に、彼らのアセンも確認していたらしい。意外と抜け目がないことにタオが感心していると、直ぐにミスターガンプラが答えてくれた。
「簡単さ。その二つは遠からず修正が来るからさ。武器性能に頼ったバトルは続かないって、一定以上のプレイヤーは理解しているんだよ」
道理である。俺ガンプラと言う、ユーザーの個性を出す場で突出して強い武器はビルド幅を狭める為、運営からのナーフが待ち受けていることは想像に容易い。言い換えれば、対人戦は簡単に強くなれるという訳ではないらしい。
「なるほど。だから、好きな機体で戦える様に練習を重ねるべきや。言うことですかね?」
「その通り! だから、君達に取って最新ミッションである『HLV防衛』の任務を受けて来ると良い。遠い道のりも、フレンドとなら楽しめるさ!」
変な見た目の割には言うことは真っ当だった。特に反対する理由もないので、やる気になったタオがミッションを受けている中、アラタとリンは別の試合光景を観戦していた。
『次の対戦チームは『ちいかわ』と『ふみなーズ』ですね!』
先のミッションでも助けてくれたカプルを使った『ちいかわ』以外にも『ハチワレ』と『ウサギ』が再現された3機と、肌色にカラーリングされたOPパーツをふみなの各所に取り付けた、絵面的にとても厳しい3機が並んだ。
『おい、ちょっとカメラ止めろ』
レコの声がドスの利いた物になり、試合が一時中断された。3人が無言になっていると、タオの機体が手を振りながら近付いて来た。
「アレ? どないしたん?」
「よし! ミッションに行こうぜ!」
「そうだね!」
アラタとリンが声を張り上げ、3人はミッションに向かった。彼らが出発したのを見計らって、ミスターガンプラは溜息を吐いた。
「本当。私が現役の頃にふみなちゃんが解放されていなくてよかった……」
安堵する彼の隣を、ボーボボを再現した俺ガンプラが通り過ぎて行った。