GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
GBBBB本体のサーバーが存在する会社ではちょっとした騒ぎになっていた。多少のバグならスタッフが悲鳴を上げる程度で済むのだが、今回は訳が違う。
「まだ、ブラックナイトスコードカルラはモデリングの段階だぞ……」
マイスターからの申請を受けた一部のスタッフは困惑していた。
GBBBBのクライアントには今後も実装される予定の機体データもあるが、バグで動くなんてことはあり得ない。何故なら、まだ組み立ての段階だからだ。
「誰かがデータをぶっこ抜いて動かしているってことだな。どうしても、マイスター達と絡みたい奴がいるみたいだな」
落ち着きを払った様子でマイスター達の交戦風景を見ているのは、無精ひげを生やした中年の男だった。暢気に感想を漏らしているが、手元のPCではとんでもない速度でプログラムが組まれている。彼のスマホからマイスターの悲鳴が漏れていた。
『カドマツ! まだなのか!?』
「どうも相手はかなりのクラッカーみたいだな。色々と転送のコマンドを組んでいるんだが、妨害されてよ。でも、ようやく行けそうだ」
『え!? カドマツいんの!?』
「よぉーっす。ちょっとした同窓会だな。よっし、2機分転送すんぞ」
相手が仕掛けた妨害を乗り越えて、カドマツと呼ばれた中年は現場に2機の俺ガンプラを送り出していた。だが、彼の仕事はコレで終わりではない。
「だけど、誰が一体? それに、カルラの挙動も気になる。ストライクフリーダムのコンパチって訳じゃないし、何よりもあの赤い発光は……。折角、頼まれてた新機体の調整していたってのに」
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「お!?」
アラタは目を見開いていた。マイスターとミサが別機体へと乗り換えたのだ。
マイスターはGBBBBの覇者であり、象徴とも言える存在である。ケルディムガンダムをベースにした『マイスターガンダムスーパーストーム』へ。
ミサの機体は偽装用のゲルググではなく、ゴッドガンダムの兄弟機という設定の下で組まれた『ブレイジングガンダム』だった。
「ミサ。そのカラーリングは、アザレアを?」
「そう。やっぱり、乗り慣れた機体は違うね!」
元々、あまりゲルググの様な重量機体は得意ではなかったのか『アザレアブレイジング』へと乗り換えた、ミサの動きはまるで違っていた。
ドラグーンが一斉に襲い掛かるが、彼女は両前腕部に搭載されたスラスターを使って、空中でマニューバ機動を取って包囲射撃を回避していた。
「腕は衰えていないようで何よりだ! アラタ君!」
「うぉおおお!」
ミサへの包囲射撃にドラグーンを割いたので、アラタとマイスターに対する攻撃頻度が下がった瞬間を狙って、2人はスラスターを吹かしていた。
だが、カルラはまるで驚いた世数も無く、2本のビームソードを展開して振るっていた。人間の反応速度を超えていた。
「俺はケチらねぇぜ!!」
アラタのガンダムタンクが緑色に光った。マイスターとの同行の切っ掛けにもなった『ガーディアン』覚醒であったが、攻撃力のバフを受けまくっているカルラに対しては、効果覿面だった。
交差した2本のビームソードはガンダムタンクを真っ二つには出来ず、中ほどで止まっていた。RX-78-2の頭部に搭載された砲門が狙いを付けた。
「ヘヘヘッ。食らいやがれ!!」
アラタが使っているアバターの元ネタは『GUNDAM0079TheWarForEARTH』という、実写ガンダムをゲーム化した非常に意欲的な作品であり、ファンから度々ネタにされている。ガンダムタンクも同作品のネタである。
その作中でガンダムが一番使っていた武器はビームサーベルでもビームライフルでもなく、頭部に取り付けられたバルカンだ。
『……!?』
至近距離で放たれたバルカンはカルラの装甲を食い破る程の威力を発していた。加えて、ビームソードがアラタの機体に食い込んで離れない。
直ぐに武器を放棄し、腕部のガントレットに内蔵されたクローで引き裂こうとしていたが、ここまで隙を晒してマイスターが何もしていない訳が無かった。
「落ちろ」
両腕に構えたショットガンの引き金を引いた。アラタのバルカンとは比べ物にならない程の威力でカルラのパーツが引き裂かれ、吹き飛ばされて行く。
まるで、銃弾がスパークしているのではないかと見紛う程に衝撃的な威力だった。マトモに食らって倒れ込んだが、爆散する様子はない。
『調整完了』
損傷したカルラが再び立ち上がった。パーツが欠けた部分からは紅い光が漏れ続けており、やがて修復されて行く。
「おいおい。一体、コイツは何なんだ!?」
「ボサっとするな! 追加で攻撃を!」
スーパーストームが再びショットガンの引き金を引いたが、放たれた散弾は避けられた。すると、マイスターの機体へと肉薄し、信じられない速度でガントレットに内蔵されたクローを突き出して来た。
「うっ!?」
寸での所で避けたが、攻撃を掠っただけで左腕のGNシールドビット部分が飛んでいた。彼でさえ避けられない攻撃があるのかとアラタは息を呑んでいた。
『この反応。恐らく、AIだ』
「カドマツ。さんか? AIって言うと……偶にゲームとかで見る、CPUの超反応みたいな奴ってことか?」
『アラタ。だっけ? 理解が早くて助かる。敵機の攻撃速度やパターンを解析していたが、それしかありえない』
人間には思考の時間もあれば、機体コマンドを命令する時間もある。
だが、同じプログラムならばラグは殆ど無くせるのではないか。加えて、マイスター程のプレイヤーが相手なら、データも豊富に揃っているだろう。
「こっちも、ドラグーンの攻撃捌けたから、そっちに向かうけれど。カドマツ! 対処は無いの!?」
『早期の決着だな。戦っている間にもマイスターのデータは取られて行く。随時、適した動きに更新されて行くだろうさ』
実際、徐々にマイスターは押され始めていた。GBBBB最強のプレイヤーが使う最強の機体さえ追い込む程の力を持っているのか。自分達が介入する隙なんてあるんだろうか?
「そうだ。スーパーストームのデータが取られまくっているなら、コマンドクアンタの方は!?」
『あっちも豊富にデータを取られているよ。……あ、いや。待てよ? 1機だけ新機体がある。これは公にデータは取られていないが』
「マイスターにぶっつけ本番で新機体を使えってのか!? 無茶だ!」
まるでガンダムの機体乗り換えイベントみたいじゃないか。だが、迷っている時間はない。
カルラのドラグーンのクールタイムが終わり、アラタのガーディアン覚醒も切れ、マイスターの行動パターンが完全に解析されたら詰みだ。ミサが叫ぶ。
「タクマァ!! アンタのとっておき使って、ソイツ撃破しろだって!」
「まだ、習熟訓練は熟していないんだぞ!?」
「今の所、勝ち目はそれしかなさそうだぜぃ!! マイスター!! 時間は俺達で稼いでやるよ!」
もはや、カルラの動きはガンプラの駆動限界を超える物だった。バキリと嫌な音が響く。使用者の、機体に対する愛着の無さが見える様だ。
ガンダムタンクとアザレアブレイジングが割って入った。ガーディアン覚醒が残っているアラタのガンダムタンクも先に受けたダメージで損傷していることもあり、機体のHPが削られて行く中。ミサも背面から攻撃したりもしたが、信じられない速度で反応されていた。
「カドマツ。なんで、反応できるの!?」
『AIってのは、先行入力ってのが出来るんだよ。相手が予め何をやって来るかってデータが豊富にあるから、データに則って先んじてコマンドを入力することが出来るんだよ。嬢ちゃんも結構大会出てデータは取られているしな』
攻撃を裁かれただけでなく、反撃も食らっていた。だが、時間は稼いだ。マイスターはスーパーストームから更に機体を乗り換えていた。
「……グラディエーター・エクシア。いや、騎士(ナイト)エクシア! 出るぞ!」
エクシアの頭部にガンダムMk-Ⅲの物を使った胴体、両腕の肩部には『G-3』の文字。脚部はGN-XⅢの物を甲冑風に加工していた。バックパックには電磁ランスとマント、そして腕部に折りたたまれたGN-ソードⅢ。
「そうだよね。6年の間に『創世超竜譚』もあったもんね」
こんな緊迫した状況だというのに、ミサは何処か懐かしんでいた。騎士エクシアとカルラ、まるで西洋ファンタジーの様な造詣をした2機の機体がぶつかり合った。