GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
『クラン戦は大いに盛り上がり、次はビルドメインのイベント『主人公風』のカスタマイズイベントが始まりました!』
モニタではレコが実況しているが、よ~く見れば彼女の額には青筋が浮かんでいる、一緒に司会をしているミスターガンプラも言葉を選んでいた。
『う、うむ! ヒロイックな作品が多数投稿されて、私も嬉しいよ!』
『そうですね! でも、中には残念な作品を投稿するプレイヤーもいるんです』
モニタに晒し首になったプレイヤーと一緒に投稿されたガンプラが表示されていた。とりあえず、対魔忍ふみなやメイはギリギリで生かされていたが、限界の先に向おうとして肌色のベアッガイ尻尾を付けた者達は晒されていた。
『ロビーで闊歩している分でもアレですが、自分から首を差し出して来た連中は容赦なく晒して行きますのでね! 後、これはちょっと注意して欲しいんですけれどね。ゲッターとかマジンガーみたいな、他作品の再現機体も遠慮して欲しいですね!』
『うむ。流石に『主人公風』の俺ガンプラのランキングにマジンガーとかゲッターはね! 色々、怒られるからね! 再現度は凄いんだけれどさ!』
あまりに投稿数が多かった為か遂には注意喚起まで入っていた。
だが、ベテランプレイヤーのトロンを始めとした、クラン『OG』の連中は笑っていた。……それを見透かした様に、通告には続きがあった。
『後、ヒュッケバインならガンダムとしても通じるから良いだろう。みたいな発想も止めましょうね! バニシングされる可能性がありますんで!』
OGの連中は嘆いていた。脱法、あるいはジェネリックガンダムでコンテストを狙っていた連中にとっては、凶報以外の何物でもなかった。
「こんなに注意が入るガンプライベントなんてここ位やろうなぁ……」
ロビーに響く悲嘆の声を聴きながら、タオはGBBBBのアナーキズムぶりを感じていた。いや、実際には打ち首やら何やらで治安活動はされているが。
そんな広報活動をBGMにいつもと変わらぬ様子を繰り広げているのは、ビアンカの初期メンバーだった。
「なんか、昨日からお姉ちゃんが上機嫌なんだよね」
「へぇ。リンってお姉ちゃんがおるんや」
「うん。ちょっと歳が離れているけれどね」
タオがリンの家族構成を知って反応を示している中、全てを知っているアラタは、いつもの様にお調子者ムーヴをしていた。
「きっと、良いことがあったんだぜぃ。リンのお姉ちゃんってどんな人なんだぁ?」
「しっかりしている様に見えて、割とだらしないんだよね。でも、凄く優しいんだ。後、チラッと聞いた話だけれど、昔は強いガンプラファイターだったんだって。今は忙しいからやっていないけれど」
「そうなんや。じゃあ、リンがGBBBBを始めたのもそこら辺が切っ掛けなん?」
「うん。お姉ちゃんと一緒に遊べたらな~と思って、誘ったけれど。社会人って、やっぱり忙しいみたい」
時間も体力もある学生と違って、社会人は両方が奪われがちである。
だからこそ、アラタは実感していた。そんな数少ない時間を使って妹の様子を見に来ている、姉の甲斐甲斐しさを。
「じゃあ、何時でも一緒に遊べるように強くなるしかねぇ! ほら、見ろ! 丁度、『主人公風』カスタマイズイベントに合わせて、クエストで手に入る経験値もアップしているみたいだぜ!」
『主人公風』の機体を活躍させよう! と言うことで、公式からミニイベントの様な催しが開催されていた。ビルダーズランクとパーツレベルを上げるまたとないチャンスである。
「ええな! よっしゃ、リン! 僕らも一緒に……」
「ちょっと待って」
ここに来て珍しくリンからストップが掛った。いつもはこういった挑戦があれば、真っ先に参加するのが彼女であったのだが。
「どうした?」
「いや、このメンバーで参加したら多分、アラタが活躍しているのをサポートするだけになっちゃう気がするんだよ」
これにはタオも何も言えなかった。初期メンバーではあるが、アラタの実力は2人からは大分掛け離れた物になっていた。
「じゃあ、俺は後ろから応援を?」
「いや、戦力は欲しいんだよね。タオ、心当たりはある?」
現在、ビアンカのメンバーでログインしているのはここにいる3人位である。欠けた1人が簡単に埋まる物ではない。と思っていると、タオがロビーの方を指差していた。
「嘘だぁああああああ!」
そこにはTALE・レコで落ち込んでいるポーズをしているセリトが居た。恐らく、先程の晒し首一覧に知り合いがいたのだろう。順調にGBBBBに染まっていた。
実力的にはタオと似た様な物ではあるし、リンも一度組んだことはある相手だが、思いっきり嫌な顔をしていた。
「セリト君おるけど。誘う?」
「……強くなるためには仕方ない!」
「そんなに悲壮な決意が必要な相手なのかぃ?」
アラタの中にいるセリトはタオと熱いバトルを繰り広げた、彼の友人。でしかない為、リンがここまで嫌がる理由が分からなかった。
直ぐに話が付いたのか、3人はパーティを組んでミッションへ向かった。残されたアラタが何をしようかと考えていると、赤いゲルググが丁度ログインして来た。
「おや? アラタ君1人かい?」
「おぅよ。タオとリンが修行に出てな。俺は1人って訳だ」
「ふぅむ。実力差が開いていることを気にしているかもしれないね」
やっぱり、外から見ても実力差が開いている様には見えたらしい。
アラタとしては、今でもタオとリンはフレンドだと思っているが、実力差があり過ぎると一緒に遊ぶことが難しくなる。というのは悩みだった。ウィスパーチャットへと切り替えた。
「さっき、リンが言っていたぜ。ミサさん機嫌が良いって。アレからマイスターと連絡を取り合ったりはしているのかぃ?」
「取っているね。ついでにカドマツとも取り合ったりして、何とか時間の都合付けて会おうって話をしたりとかね」
どうやら先日の一件のお陰で、2人の間に出来ていた溝は埋まりつつあるらしい。GBBBBというゲームを介して、拗れた人間関係が修復されて行く様を見るのは嬉しくもあった。
「そいつぁ良かった。後は、リンともっとオープンに話せるようになったらいいとは思うんだけれどよ」
「まだ難しいんだよね。なんて言うか、何処に触れて良いかというのが分かり辛くて、つい『忙しい』って言っちゃうんだよね。……ちょっとだけ、リアルの話になるんだけれどさ」
どうやら、リンは幼い頃に両親を亡くしているらしく、リアルでは塞ぎがちになっているのだとか。学校でも上手く行っていないらしい。
「やっぱりか。学校とかの話になると、タオもリンも意図的に避けていたしな」
「そう言うのって分かるんだよね。だから、どういう話をしたらいいか分からないんだよね」
学校の話は本人もあまり触れて欲しくない所だろうし、だからと言ってコッソリとGBBBBにログインしているという話をしたら、相手に何と思われるか。
「……さっきよ、リンがミサさんのことを話していてよ。昔は強いガンプラファイターだったって、言っていたぜ。GBBBBの影響もあるんだ。その点から話してみたりするってのはどうだ?」
「え~。なんか、自慢で嫌味ったらしくならない?」
「とんでもねぇ。これ、かなり前の話なんだけれどよ。クラン名を決めるときに、リンが『アヤト・ファイターズ』って名前を出していたんだ。興味、あると思うぜ?」
思ったよりも、妹は姉に対して興味があるらしい。ただ、そんな彼女をこれ以上傷付けることになるのではないかと、想像以上にビビっていたらしい。
ひょっとして、マイスターと別れた日から自分の中でガンプラに関係することが思った以上に引っ掛かっていた。いや、ガンプラだけではなく人に立ち入ることに対して臆病になっていたかもしれないと考えていた。
「少しは話してみても良いのかな?」
「おぅよ。それに、リンは今。強くなりたい真っ最中だ! ミサさんが指導してくれるなら、喜ぶと思うぜ! なんたって、リンは成長途中のボンバーガールだぜぃ」
今は全く分からないが、とりあえず成長途中みたいな物は感じ取った。なんだか、彼の話を聞いているとミサも笑えて来た。
「ありがと。ちょっと、リアルの方でも色々と話してみようと思う。キミって不思議だよね。コウラちゃんにも同じ感じで話しているの?」
「いや、先輩はもっと気難しいというか……GBBBBでは、かなり抑えてくれているんだよ。アレでも」
「えぇ……」
もしや、彼の気づかいはリアルで鍛えられた物なのかもしれない。
それからも。リン達が帰って来るまでの間、暫しアラタはミサの思い出話を聞いていたのだが、それを更に遠方から見つめる機体が1機。
「……」
『6年の時。閉ざされていた妹の心を開き、親身に相談に乗ってくれる後輩系男子か』
「やめろ、カドマツ」
GBBBB最強のプレイヤーの勇ましさは、ロビーに蔓延る晒し首をも恐れない勇猛果敢なプレイヤー達の中に埋もれていた。