GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
かくして、始まったバトルトーナメントへの切符を入手する為のイベントは凄まじい様相だった。上位クランのメンバーはすーぱーふみなで遊ぶのを止め、ハック&スラッシュ用のガチ機体へと変えていた。
メイスだけではなく、ひっそりと目立たずにぶっ壊れていたシュヴァリエサーベル系統の武器もナーフを食らっていたが、そんな物は上位陣のプレイスタイルには全く影響を及ぼさなかった。
「散開。コンボ数を稼いでくれ」
前回のマイティーストライクフリーダムガンダムのイベントに引き続き、ボスは『SDガンダムワールド 三国創傑伝』から董卓プロヴィデンスが登場していた。
このボスは通常のSDガンダム形態でHPが半分まで削れると、凶竜形態へと変化してHPが全快するという仕様があった。ただ、ベテランプレイヤー達はこれらのギミックを踏み倒すプレイングを発見していた。
「オラァアアアアアアアアア!!」
3機の両腕に装備されたダブルビームガトリングガンが一斉に火を噴き、凄まじい勢いでコンボ数が稼がれていく。
次々とバフが付与され、同時にSD董卓プロヴィデンスのHPが半分近くまで削れたのを見計らって、全員が集まって一斉にEXスキルを起動した。
「「「ガンダムスパーク!!」」」
短時間で高威力のEXスキルが複数回叩きこまれた為、董卓プロヴィデンスはSD形態から変化を挟むことも無く撃破されていた。
上位クランは、攻撃パターンが緩慢なSD形態の内に倒しきるという手法を編み出していたので、周回効率は凄まじかった。
「ず、狡くない……?」
これらの攻略方法は動画でも拡散されており、視聴したリンの率直な感想がコレだった。勿論、ビアンカのメンバーにこんな真似は出来ないので董卓プロヴィデンスと丁寧な殴り合いをしている。
「運営としても、この挙動は予想だにしていなかったのでしょう。恐らく、修正される頃には規定数のドロップアイテムが吐き出されているかと」
「すーぱーふみなの次はイベントミッションすら玩具にするんか……」
文が冷静な分析を続けている横でタオが愕然としていた。ロビーでは超低確率品であるはずの参加権を入手した報告が相次いでおり、それがまたミッションを盛況させていた。
「なんで出ないのよ……!」
「まぁまぁ、先輩落ち着いて」
周回を重ねているが、一向に出る気配が無いのでコウラが滅茶苦茶不機嫌になっていた。アラタが必死にご機嫌取りに走っているが、空気は悪くなる一方だった。そんな中、カルパッチョは余裕そうな表情をしていた。
「落ち着いてよ、コウラちゃん。そんなにカリカリしてもしょうがないって」
「なんか、策でもあるのか?」
イライラしているコウラが口を開くよりも先にマシマが聞いた。すると、彼女はヤレヤレと言った感じのエモーションを繰り出しながら語り始めた。
「良い? バトルトーナメントなんて言ってみれば客寄せイベントみたいな物。だとしたら、大会に呼ぶのは話題になりそうなプレイヤーが所属しているクランが優先的に選ばれると思うのよね」
「そうだな。無名のクランからスターが誕生! って言うのも美味いだろうけれど」
大体、そんな展開は稀である。そう言ったチャレンジをするにしても、手堅い要素を手元には置いておきたい物だ。
「まず、フリーダムフリートは確定で選ばれると思うのよね! カオスとか有名人が所属しまくっている訳だし。他にも上位クランも選ばれるだろうけれど、上位層で埋まったら目新しさが無い訳だし、数チームは新規も入ると思うのよね。そこで、私達ってワケ!」
言っていることは道理なのだが、絶妙に滲み出るウザさは彼女のアバターの可愛さが無ければ中和出来ない物だった。
「今を時めく覚醒使いでマイスターからも見初められているアラタ。元プロのマシマ。マイスターと知り合いっぽいミスター。そ! し! て! カオスから理不尽な追放を受けた、人気動画配信者の私……。こんな珠玉の人材が揃ったクランを採用しない手はないと思うのよ!」
「いや、追放自体は真っ当なモンやったと思うんやけど」
残念でもなく当然な追放の件についてはスルーされていた。新進気鋭のクランとしてビアンカは多少有名ではある。実際に、SNSや掲示板の予測では『ビアンカ』もバトルトーナメントに出るのではないか? という、推測は散見された。
「ですが、逆にこうも考えられませんか? 話題になっているクランですら弾かれる位に、GBBBBの運営は公平である。と言うことの証明の為に落とされると言うことも……」
「文は心配性ね~。どうせ他の上位クランが出ても最終的にはマイスターに蹴散らされて終わりだろうしね。運営的にも最終盤面は『覚醒者』VS『覚醒者』にしたいだろうし、採用できるのはアラタか中二病ハゲ位よ」
動画配信者と言うこともあり運営の意図に沿った台本作りもエミュレートできていた様だが、とにかく口が悪かった。遅かれ早かれ追放という運命は避けられなかったんじゃないかと思う位に。
「でも、全部憶測でしかない。現に今もドロップしていないじゃない」
「コウラちゃんがっつきすぎ~! 仮に私達が早々にゲットしたら、それこそ運営の作為が疑われるじゃん? 『あ、このクランは早々に通過させる気だったんだな』って。こう言うのは終盤で、目立つクランが抜けたのを見計らって……最後に私達がドラマティックにゲット。ってワケ! だから、今周回しているのはアリバイ作りなのよ!」
道理でコウラと比べて全くイライラしていない訳だ。彼女には既に手に入っている未来が見えているのだろう。運営や配信側に回ったことがある経験に裏打ちされた確信だった。
「でも、カルパッチョさんが言っているのって、全部想像でしかないですよね?」
しかし、そんな彼女の推測に冷や水をぶっかけたのはシーナだった。
確かロジックは成り立っているかもしれないが、本当にそうであるかは別である。このまま回し続けて、最終的に出ないで終わることも十分にあり得る。
「そうよ。でも、私が運営側ならそうするけれどね。盛り上がる展開ってのはね、お膳立てしないと成り立たないのよ。例えば、私達が仮に落ちたとしてさ。新規の名もないクランがエントリーしたとして、ソイツらが話題になると思う?」
上位クランにボコボコにされて終わるだけだろう。もしかしたら、実力を秘めた者達が居て……なんて展開もあるかもしれないが、本当に強いなら既に何処かで話題になっている。
カルパッチョの言うことは筋が通っているが、通っているのだが。だとしたら、全員の中に一つの考えが共通されることになる。
「では、仮に私達がドロップアイテムを獲得出来たら。それは運が良かったのではなく、運営に選ばれていた。と言うことになるんですか?」
文が言った。ドロップアイテムとは言うが、ランダム要素が絡むとは言え運営が操作できる部分も含んでいるハズだ。こんな話を聞いた後では、獲得できたとしても素直に喜べるかどうか。
「そうよ。でもさ、私達がイベントに挑むのはドロップアイテムを手に入れる為? 違うでしょ? マイスターや上位クランの連中にぶつかる為でしょ? だから、私達はドロップアイテムが出る未来に向かって回し続ければ良いのよ」
「なんつーか。舞台裏と脚本を覗き見て進行する行儀の悪さみてぇなのは感じるな……」
珍しく、アラタが悪態を吐いていた。GBBBBというガンダムの世界を楽しんでいたら急に舞台袖に連れて行かれた様な、そんな冷や水をぶっかけられた気分になったのだ。
「……なんかそう考えたら、怒っている自分もバカらしくなって来た。私は先に落ちるわ。後はお願い」
コウラもすっかり怒りが冷めたのか、皆を残して先にログアウトしていた。
タオ達もモチベにかなりブレーキが掛けられていた。自分達の努力や射幸心も、運営の掌の上だと言われたら歯止めが掛かるのも仕方がない。
「アレ? もしかして、解散の空気出ている?」
事の発端であるカルパッチョは周囲の反応を見て慌てていた。本人的には、何時までもレアドロが出ないことに対する憤りを慰める為に、ロジックを立てて説明しただけだったのだが。
「出ていますね。カルパッチョの説明は論理的であり、理解しやすい物ではありましたが……」
「サンタクロースを信じている子供に親の着替えシーンを見せる位のえげつなさだったぞ」
「いや、ほら。だって、コウラちゃん機嫌悪かったし!?」
人の機微には割と聡い方なのだが、得意分野になると途端に自慢が先走って周囲が見えなくなるムーヴは本当に、フリーダムフリートから追い出されるムーヴのネタ元になった航空参謀とそっくりだった。
「いや、収めてくれたのは良いんだが。その。出来ればアイシング位のを求めていたのであって、気化光線みたいなのをぶつけて欲しかったわけじゃねぇんだ」
「なにこれ! 私が悪いの!?」
びみょ~な空気にした責任を問われたと思ったのか、今度はカルパッチョがキレ散らかし始めた。彼女の推測が正しいかどうかはも書くとして、バトルトーナメントの枠は確実に埋まりつつあった。