GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
『バトルトーナメントへの出場を掛けたイベントミッション。お疲れさまでした。これを切っ掛けに沢山のプレイヤーがクランに入ったり、新たな交流の輪が広がったことは、運営としても喜ばしく思います』
『だが、残念なことに不正も少なからずあった。例えば、サブアカウントを大量に量産してクランの平均レベルを下げて、ミッションの易化を図る者達はいた。サブアカウントは規約でも禁止されている』
やはり、今回のイベントミッションにおいては誰もが思いつく手段であったらしい。どれ位の単位でBANされたかは定かではないが、いつもの猥褻物陳列罪による晒し首では無いので、ロビーは騒がしくなっていた。
『栄えある幸運のチケットを掴んだ者達は――』
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土曜日。タオとセリトは休みを利用して、ガンブレ学園の見学に訪れていた。自分達以外にも見学に訪れている中学生は多数いて、意外なことに女子も結構多かった。
「なぁ、タオ。事前にアラタさん達に聞かなくてよかったのか?」
「何もガンブレ学園におるって決まった訳やないし」
もしも、明日の学校見学をよろしくお願いします! なんて言って、相手が全然違う学校の生徒だったら赤っ恥を搔く所だ。多感な中学生には中々耐え難い。
「本日、皆さんの引率を担当する『フドウ・リュウセイ』です。よろしくお願いします」
周囲の中学生達が騒めいていた。タオも驚いた表情をしていたが、セリトだけは首を傾げていた。
「有名な人なのか?」
「メッチャ有名な人やで! 数々の大会で優勝した経験のあるガンプラファイターやで。プロに入ってからも結果は残しとったけれど……」
この学園に来ている時点で、見学者の大半はガンプラに興味があることは明白だ。そんな彼らを超有名人に出迎えさせる。という所から、この学園が生徒の募集に積極的であることが伺えた。堪らず、見学に来ていた生徒の1人が質問をしていた。
「フドウ先生は、この学園でどの教科を?」
「シミュレーターの調整や指導。AI関係とか色々だよ」
もはや、ガンブレ学園所とではなく彼個人に興味津々な学生も多いが、ここで止まっていては見学が進まないと踏んでか、フドウから切り出した。
「今日は学園内見学。それと、在校生との交流の時間も設けています。気になることは色々と聞いて下さい」
かくして、ガンブレ学園の見学が始まった。この学園は高校と大学が一つになっており、タオ達は高校生の校舎を見て回っていたが、時折大学生と思しき生徒の姿も見えた。
「この学園は研究機関としての側面もあるから、こうして大学生が高校生のデータを取る為に、やって来ることもあるよ」
「採ったデータはどんな風に使われるんですか?」
「よりよい操作性の為に使われたり、後はAIに組み込まれて選手の練習相手になったりとかだね」
「もしかして、そのデータとかって。GBBBBとかでも使われたりしとるんでしょうか?」
普段は控えめなタオだが、ガンプラ好きとしては聞かずにはいられなかった。他の学生も同じことを思っていたらしく、フドウも笑顔で頷いていた。
「そうだね。ここで採取したデータは幾らか使われているよ」
フドウが案内したのは大量のシミュレーターが設置された部屋だった。
筐体の中では学生がガンプラを操縦しており、中央のモニタにはバトル風景が映し出されていた。片方はゴッドガンダムにガンタンクの胴体を取り付けた、近距離向けなのか支援機なのか良く分からない機体だった。
「なぁ、ひょっとしてアレ」
セリトがボソッと呟いていた。こんなトンチキなビルドをする人間をタオ達はよく知っている。まさか、このゴッドガンダム・タンクを使っているプレイヤーが?
格闘機が射撃をぶっ放しまくっているという、中々にゴッドガンダムの持ち味を損ねることをやっている一方、対戦相手はと言うと。V字アンテナのEz-8であったが、ボディが軽量化されているのか細身だった。
砲撃の嵐を掻い潜り、あるいは少し大型のシールドで防ぎながら懐へと飛び込んだ。まるで、相手の得意距離に誘っているかの様だった。
『クソがー!!』
三下&嚙ませ犬めいた叫びが筐体から聞こえて来た。ゴッドガンダム特有の拳法を繰り出していたが、対するEz-8は相手が突き出した拳をビームサーベルで切り払うと同時に、背面のバーニアを吹かして急旋回して相手を背面から串刺しにしていた。勝敗は一瞬で決していた。
「オイこら! 新田! なんで、手加減しねぇんだよ! 皆の前で恥掻かせやがって! こういう時は先輩の顔を立てるモンなんだよ!」
ゴッドガンダム・タンクと思しき機体を操作していた筐体から出て来たのは、如何にもチンピラと行った感じの風貌をした男だった。
対戦相手の筐体から出て来たのは、タオ達と背格好が殆ど変わらない中性的な顔立ちの男子だった。
「すいません。復讐のレクイエム見ていたら、ガンダムEXの真似がしたくなったので。こんなことに付き合ってくれるのは、ショウゴ先輩位しかいません」
「時と場合を選べ! 俺が! ボロ負けしている姿を! 後輩になるかもしれない子らに見られてんだよ!」
タオ達はこの濃いやり取りに目を丸くしていたが、フドウは笑っていた。どうやら、ガンブレ学園では日常茶飯事であるらしい。
「とまぁ、学生同士でバトルしたり、ガンダム関係の映像を作ったりすることもあるんだ。この部屋にある筐体はだね……」
フドウが説明に回る最中、新田と呼ばれた男子の視線がタオとセリトへと向けられていた。
GBBBBのアバターは特に拘りがなければ、リアルの顔をディフォルメした物が使われている故、向こうも気付いたのかもしれない。近付いて来た。
「もしかして、GBBBBとかやっている?」
普段のVCではアバターに相応しい低く野太い物だが、目の前の男子は声変わりしていないのか、声が高い。
「……アラタ?」
「あ、やっぱり。タオか。見学に来るなら一声掛けてくれたらよかったのに。じゃあ、横にいるのはセリト君?」
「始めまして」
「あ? 新田。ソイツらと知り合いか?」
「ほら、前に話していたGBBBBの」
新田はショウゴと呼ばれているチンピラに説明をしつつ、タオに紙切れを握らせていた。
自分達は見学している最中なので、引率のフドウに迷惑を掛ける訳には行かない。まさか、本当にアラタがガンブレ学園にいるとは思わなかった。
「リアルとアバターの差が大きすぎやろ……」
「最初、なんで中学生が? って、思ったよ」
GBBBB内ではお調子者の黒人枠だったが、リアルでは何処となく生意気そうな後輩と言うギャップにタオが混乱していた。
シミュレータールームの案内を一通り終えた後、データの分析と開発を行っている部屋へと訪れていた。そこでは眼鏡を掛けた大人しそうな女性が待機していた。
「さっきのシミュレータールームなどで集められたデータがここで集積され、色々なことに役立てられているよ。サクライ君、説明をお願い」
「はい。えっと、始めまして。サクライ・マリカです。ここで集められたデータは収集され、ガンプラの開発などに役立てられます。また、AIにも蓄積され……」
IT関係の知識はサッパリなタオは馬耳東風と行った具合で、さっきのシミュレータールームのことばかりを考えていた。
この部屋の案内も終え、次は部活動の見学と言うことで案内されたのだが、部屋に入るや否や、タオ達を出迎えたのは。
「は~い、皆さん歓迎。ソーラー・レイ☆」
ヤベー女だった。桃色の髪をした女性はキメポーズまで付けていたが、全員無反応だった。そんな彼女を押しのける様にして前に出たのは、黒髪の女性だった。
「以上、ミガクラ先輩の渾身のギャグでした。副部長のコウラです。本日はよろしくお願いします」
「コウラさん。それは無理があるやろ……」
アラタと違って、コウラはリアルの顔をアバターにしていたこともあって、これは判別し易かった。先程の遣り取りで連絡が行っているのか、コウラの視線がこちらへと向けられている。
部室の広さや設備は中学生の物とは比べ物にならず、見学に来ている学生達は、展示されているガンプラに目を輝かせていた。タオも部室内を見渡して、ある物を探していたが。
「アラタのガンプラはそれよ」
「あ、どうも」
コウラが指差した先にあったのは、確かによくできたガンプラではあった。だが、不思議なことに『よくできている』以上の感想が湧いてこなかった。
「なんか、ゲーム内のアセンを見ていると信じられないって言うか」
ガンプラにあまり詳しくないセリトでも、アラタの普段のはっちゃけぶりも無く、かと言ってギャップ的な上手さも無いので戸惑っていた。
「あいつ自身。自分が型にハマっているってことを気にしているから、GBBBBでは色々とやっているのよ」
ある意味、真面目と言うか。部活動の説明に関してはミカグラが延々と話していたので、こうしてコウラが個人的な会話をしていても問題は無いのだが、こっそりとフドウが近付いて来た。
「コウラ君。もしかして、この2人がビアンカの?」
「はい、そうです。あ、そうだ。タオ、セリト。今日のバトルトーナメントの相手、この人達だから」
……たっぷりと時間を置いた後、タオとセリトは大口を開けて驚いていた。