GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
「それでは、今から在校生との交流会の時間を設けます」
一通りの施設や部活動の見学を終えた後、フドウがやって来たのは多目的ホールだった。待機している生徒達の中には、新田の姿もあった。
特に指示がある訳でもないので、好きな生徒と話してもいい。となれば、タオとセリトが彼の元へと向かうのは当然だった。
「いや、まさか。こんな唐突なオフ会化するとは思わんかったわ」
「こっちもだって。今晩のバトルトーナメント、相手はフドウ先生だけど勝てる気があんまりしないんだよなぁ」
チラリと横目でフドウを見れば、手を振り返された。どうやら、向こうも自分達が対戦相手と言うことは把握しているらしい。
「そうだ。フドウ先生が強くても、他の2人が弱かったワンチャンスあるんじゃ?」
「流石に、その情報までは聞き出せなかった」
セリトが一縷の望みを聞いてみたが、相手はプロプレイヤーの経歴を持つ男。情報管理能力も当然備わっている。
「ちなみに。教師になってから実力が落ちたとか、新Verに対応していないとか。そう言うこともない?」
「無いぞ。普通に強い」
1回戦目から絶望的な状況だった。こうなったら、タオはフドウのベストメンバーが集まらない様に祈禱するくらいしか出来なかった。そんな、彼の様子を見た新田は笑っていた。
「いや、タオってビックリする位にGBBBBとスタンスも変わらないな」
「変えようって思ったことはないからな。そう言うアラタは、GBBBBと全然キャラも違うし、びっくりしたわ」
GBBBB内ではお馴染み黒人キャラでウザいセリフを吐きつつ、素の部分はまともかつ、付き合いも良い。
だが、先程のシミュレータールームにおける対戦相手とのやり取りを見るに、こちらでは少し生意気で皮肉屋的な印象を受けた。
「なんか、カルパッチョさんに近い気がする」
「アイツ見ていると放っておけないんだよなぁ」
タオもセリトと同じ考えだった。普段のカルパッチョのムーヴ全般はアレだが、新田が付き合っているのは自分を見ている様で放っておけないというのもあるかもしれない。
「なんで、GBBBB内ではあんなキャラ作りしているん?」
ネット上においてキャラを作るのは珍しいことではない。現実では大人しい人間が非常に攻撃的になっているかと思えば、カスとしか言いようのない人間がネット上では聖人君子の様に振舞っていることもある。
「……部室にあった、俺のガンプラ見た?」
「うん。よく出来ていたとは思うけれど」
「正直言って、印象に残らないだろ?」
「うん。ディスプレイに並んでいる1作品。みたいな感じだった」
言い難そうにしていたので、代りにセリトが言った。実際、タオも口にはしなかったが同じことは思っていた。
「何となく分かるかもしれないけれどさ。リアルは結構冷めがちでさ。何に対しても無難にまとめようとする癖があるから、ネットの方で弾けてみたら考え方もちょっとは変わるかなって」
無難を超えて常識すら弁えないGBBBBは、彼の殻を打ち破るには打って付けの場所だった。真似してはいけないビルドすら存在している
「それで、なんか変わったん?」
「GBBBBの先達を見習って、すーぱーふみなの改造品を試作してみたんだが」
「なんで、よりによってそれを選んだん?」
ガンダムタンクじゃダメだったんですか? という、タオの疑問を他所に新田はスマホで件の改造ふみなを見せてくれた。
データ上でも笑って済ませられない魔改造だが、リアルで仕上げた魔改造ふみなはもっと笑えなかった。
「別の先輩に見せたら『作り直せ! こんなモン世に出すな!』って言われて、お蔵入りしている」
「引く」
『TALE・レコ』なんて物を作っているセリトですら引いていたが、新田は無言でスマホをスワイプさせた。すると、TALE・レコをスクラッチしたと思しきガンプラが写っていた。一瞬で食い付いた。
「え!?!?!?」
「作ったのは良いけれど、他にもっと完成度が高いのがあったからお蔵入りしている。……アラタになってから、色々と発想力みたいなのは上がっていると思う」
良い影響かどうかは兎も角として、新田の想像幅を広げていることは間違いなかった。学校見学に関係ないことばかりを話しているが、時間は過ぎゆく。フドウが両手を叩いた。
「今日の見学はこれにて終わりです。この学園のことを少しでも知って頂き、皆さんが志望する切っ掛けになれば幸いです」
色々と有意義な話が出来た者もいたのか、皆が満足そうにしていた。
ゾロゾロと帰り始める彼らを傍目にタオ達は暫く待っていた。すると、フドウが寄って来た。
「新田君。もしかして、個人的に彼らを案内したいと思っている?」
「やっぱり、部外者の人達を連れ回すのは駄目ですかね?」
「いや。個人的に付いて行っても良いよ」
何か悪そうなことを企んでいる顔だった。すると、彼らが立ち上がり向かったのは、一度は案内された新田達の部室だった。
中に入ると、コウラが部室の掃除をしていた。彼女は新田の方を見ると一瞬笑顔になったが、背後にタオ達がいると分かると途端に真顔になった。
「何か忘れ物?」
「(うわ。きつ)」
ふと、タオは思い出した。何故、アラタが素性を隠していたのか。
その原因は、目の前にいるコウラにばれない為だ。現在のビアンカでは頼れる先輩兼カルパッチョ以上の爆弾として扱われているが、リアルの彼女もやはり刺々しい雰囲気を放っていた。
「いや、例の隠している奴を」
「……はぁ。私、ゴミ捨てて来るから。終わったら言って」
ランナーの類がぎっしりと詰まったゴミ袋を握って、彼女は部室から出て行った。セリトが呟いた。
「もしかして、コウラさんって新田さんの彼女ですか?」
「違うぞ。本当に彼女なら、もうちょっと健全な関係を志望する」
どうやら自分が思う以上に彼らの関係は複雑であるらしい。フドウの方にチラリと視線をやってみたが、彼は肩を竦めるばかりだった。後、手掛かりがあるとするならば……。
「アラタ。あの、ミカグラって人とコウラさん。普段は……仲良いんよな?」
「シャディク、ミオリネ、スレッタって感じの仲だな!」
「キ~ミ~は誰とキスをする~」
場を和ませようとフドウが歌っていた。要するに、そう言うことなんだろう。
問題は配役がどうなっているかと言うことだが。ここで機嫌が悪くなる配置なんて決まっている。一番の疑問があるとすれば。
「ミオリネはアラタ?」
「違う、違う。別にいる。今日は学校に来ていないみたいだけれど」
推定スレッタ枠のことも気になったが、ここら辺はおいおい聞いて行くことにしよう。それよりもセリトはさっきから部室を見回している。
「アラタさん。ここまで連れて来てくれたってことは、俺に例のアレを見せてくれるんでしょう? ヘヘッ」
「あんなに欲しがりさんな目をされたらな。安心しろよ。この部室は誰もいねぇ。まるで日曜日みてぇじゃねぇか」
「復讐のレクイエム面白いよね」
セリフから直ぐに察したのか、フドウから細かいツッコミが入っていた。
自身以外のクランメンバーが全員打ち首にされた経緯を持つセリトだったが、やはり彼も打ち首になるポテンシャルを秘めた男だった。部室内の引き出しの二重底。そこにTALE・レコは保管されていた。
「俺とセリトの友情の証だ。受け取ってくれ」
「アラタさん……」
「僕よりも一緒に過ごした時間は遥かに短い筈なのに、この贈答式は何?」
おまけに渡されているのが垂乳気味に改造されたレコだったので、なおのこと最悪だった。セリトもセリトで最初の頃に持っていた羞恥心は何処に行ったんだろうかとか。色々と言いたいことはあった。
「懐かしいな。俺もこうして、アルテミスを受け取ったんだよな」
「自分から思い出を汚していくんは止めた方がええと思いますよ?」
プロプレイヤーの意外な一面を見ることになったが、何も嬉しくなかった。マシマは相当普通な人間だと言うことを強く意識した。ちなみにタオも何かあるかと聞いてみた所。
「ごめん。SDは勉強中なんだ。難しい……」
極めて真っ当に断られた。どうやら、SDガンダムの知識は本当にあまりなかったので、タオとしては普及出来ただけでも良しとしていた
「それじゃあ、贈答も行われたし。ここらで良いかな? 今晩はよろしくね」
最後の最後で。プロプレイヤーとして惜しみの無いスポーツマンシップと共に、フドウはタオ達を校門まで見送りをしてくれた。