GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
「Zzzzz……」
この寝落ちをしている女性。名を『ミヤマ・サナ』という。かつて、奏海高校のガンプラ部では華々しい成績を打ち立て、その縁で関連会社に就職していた。
だが、元々要領はあまりよろしくない為、いざ社会人として働き始めると毎日がドタバタしていた。普段は、仕事を終えた後はGBBBBタイムなのだが、この日の仕事は特に忙しかったのかヘロヘロだった。彼女がこんな状態になる30分前に漏らした言葉と言えば。
「ちょっと横になるだけ」
それはもう寝ると同意義である。よりによってバトルトーナメントと言う重要な日に爆睡をかましてしまったが、社会人として頑張っている彼女を責められる人間がいるだろうか? 彼女の枕元ではスマホが引っ切り無しに鳴っていた。
~~
かくして、バトルトーナメントの第1回戦は始まった。ビアンカ側はフルメンバー。MBブレイカーズは万全とは言い難い状況であったが、リーダーであるフドウの闘志には些かの陰りも見えなかった。
「ミスター。フドウさんを抑えて貰って良いですか?」
「OK。って、私いつも格上の相手ばかりしているなぁ!」
「それだけ信用されているってことさ!」
対戦相手が分かってから練習を重ねていたのだろう。ビアンカのメンバーの動きに迷いはなかった。ミスターはフドウの『ガンダムヘリオス』を抑えに入り、アラタとマシマの2機は、オノに襲い掛かっていた。
「なんでや!?」
「あ~。さっきの待機画面でオノさんのガンプラ完成度からどっちを狙うべきかを判断したんでしょうね」
「なんやて!?」
オノと呼ばれたハイテンションな関西弁男性と比べて、ニシと呼ばれている男性は何処となくシニカルさを感じさせる雰囲気の持ち主だった。
だが、彼の推測通り。アラタとマシマがオノへと狙いを付けたのは撃破のし易さを狙ってのことである。つまりは、嘗められている。
「ファンネル!!」
マシマの『クレインクイン』のバックパックからファンネルが射出された。
先日のクランバトルでは牽制程度の火力しか出なかったが、アッパー調整が入ったことにより、猛烈な勢いでオノの機体に襲い掛かっていた。加えてアラタが大量の攻撃を打ち込んでいる。
「落とさせて貰うぜぃ!」
「それは、僕達のことを甘く見過ぎじゃないかな?」
アラタ立ち止まった数瞬後。彼の目の前にビームが横切った。見れば、遠方からニシの機体が狙撃をしていた。
幾ら本メンバーではないにしても、フドウが引き入れる程の相手なのだから弱い筈がない。オノも直ぐに反撃に転じていた。
「オノ・カスタムの出番やでぇ!」
「グフ・カスタムか! 復讐のレクイエムの影響でよく見るぜぃ!!」
こっちはガンダムタンクを使っているので、グフ・カスタムは天敵の様な物だが、そう言った運命を打ち破ってこそのGBBBBである。
一方、マシマもオノにファンネルを貼り付けたまま、ニシの迎撃に当たっていた。彼の機体はジム・スナイパーをベースにしたガンプラだった。
「僕の相手はプロですか。ちょっときつ過ぎますね」
「へぇ、俺のこと知ってんのか?」
「はい。こう見えてガンプラショップで店員をしているんでね。店に入って来る雑誌で、一時期貴方の名をよく見ていましたよ。その機体も」
オノと違って、ガンプラの完成度も含めて油断ならぬ雰囲気を放っていた。
こちらの正体を知っていると言うことは一切、油断も何も無い相手と言うことだ。ジム・スナイパーはリュックに偽装したマイクロミサイルランチャーを大量に放った後、マシマに目掛けてスナイパーライフルを打ち込んでいた。
――
「ブレイジングガンダムは使わないんですか!」
「後で、チャットルームで話してあげるよ!」
接触通信を用いて、ミスターとフドウは戦場でぶつかり合いながらも昔話に花を咲かせていた。いや、昔話と言うか。
「後、聞きたいんだけれどさぁ! マイスターの正体がタクマってこと。キミ、知っていた!?」
「は!? マイスター、タクマさんなの!?」
「アイツ。私のことを放って6年間プラプラしていたら、こんな所にいるんだよ! ひどくない? 酷くない!!?」
愚痴だった。とは言え、バトル自体は真っ当に行われている為、動画映えはする。ただ、やはりミサの方が押され気味だった。
片や暫く現場から離れていた者。片やプロプレイヤーとして活躍した後、学生達相手に指導などをしつつ腕を磨いていた者。どうしても実力に差は出てしまう。
「>6年放置は流石にない」
「でしょ!? とか言って、そっちはサナちゃん放置したりとかしてないよね?」
「GBBBBで遊んだり、出掛けたり、ガンプラ組み立てたり、バトルし終えた後は一緒に食事に行ったりしている――」
なんて羨ましい関係なんだと思いながら、ミサの機体は憤りを晴らすかのようにツインブレードを振り回していた。そして、フドウが続きを叫んだ。
「友人だ!!」
「クソボケーッ!!!!」
ガン! と、ミサの機体がヘリオスの頭にツインブレードを振り下ろしていた。
結構な一撃だったのか、頭部パーツが少し歪んでしまったが、ヘリオスの戦闘能力には全く支障がなかった。
「>恋愛脳が過ぎる」
「でも、フドウ君は甲斐性があって凄い! 教師もしてアラタ君や皆から尊敬の念を集め、サナちゃんとの交流も続けるスーパーダーリンめ! 23歳独り身の怒りを思い知れ!!!」
それを向けるべきは自分ではなく、サナなのでは? と思ったが、何時までも攻められている訳には行かない。
振り下ろされたツインブレードをビームサーベルで弾き、がら空きになった頭部を空いた方の手で掴もうとした所でタックルされた。
「あの時に君の機体は見ているからね」
「憶えてくれていて、光栄だ!」
ヘリオスのバックパックからバラエーナ収束プラズマ砲が展開され、放たれた。ミサは咄嗟にシールドで受け止めたが、あまりの一撃に耐え切れずに溶解していた。使い物にならなくなったので放り捨てた。距離を開けたのは悪手だった。バラエーナ収束プラズマ砲とは別の砲塔が現れていた。
「嘘。連射できるの!?」
「セステットキャノン!」
続いて放たれたのは、先程より更に強力なツインサテライトキャノンだった。シールドが潰された以上、避けるしかないが相手の攻撃範囲は広く、ミスター専用ゲルググでも逃げ切れなかった。
光の奔流が脚部を消し飛ばし、バランスが崩れた所で全身が呑み込まれ、彼女の機体は撃墜された。
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「ッシャアァ!」
「やっぱり、現役の子強いって!!」
ミサがフドウと戦っている間、アラタはオノの機体を撃破していた。とは言え、彼の機体も無傷と言う訳では無く、頭部はヒートサーベルで割られ、胴体部分の砲塔は溶断されていた。
「こっちも終わったぜ」
マシマの方を見れば、バックパックのファンネル部分が潰されていた。
恐らく、オノへの攻撃頻度を減らす為に潰したのだろうが、流石にプロ相手はきつかったのだろう。ジム・スナイパーの残骸が転がっていた。そして、2人共ミサが撃破されたことは分かっている。ガンダムヘリオスが自分達を見下ろしていた。
「マシマさん。先生ェに一泡吹かせてやりてェんだけど」
「喜べ、リーダー。明日から、お前は先生を倒したクラスで一番の人気物になるぜ!!」
全機体がスラスターを吹かせた。今までの戦いが前座と思えるほど、激しいぶつかり合いが予想された。
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GBBBBの長ったらしい規約の中にはユーザーのデータを収集することに対する許可という項目も入っている。ゲーム中の接触通信の内容も外部には漏れないが、運営はしっかりと把握しているのだ。
『ガンプラの出来よりも気にしないといけない事。結構あるんじゃねぇか?』
カドマツからチクチクされているマイスターはそっと目を逸らしていた。6年の放置は自分が思うより、かなり相手に負担を掛けていたらしい。
モニタ内で激しい戦いが繰り広げられている余波は、GBBBBのエースプレイヤーへの攻撃にも繋がっていた。