GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
「おあ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“!」
目を覚ましたサナはスマホに流れる大量の通知を見て、叫びながら走っていた。既にGBBBBではバトルトーナメントの1回戦が行われており、自分達の代理で出た2人が撃破され、フドウだけが残っている。
相手チームの2機は熾烈な予選を勝ち抜いて来たこともあって、ガンプラの完成度も高く、動きも良い。このままでは数の優位に押し切られるのも時間の問題だった。本来ならば、今の自分に出来ることなんてない。ハズだが、彼女はとあるガンプラショップの前にいた。営業時間外であるが、彼女が来たのを見計らってシャッターが開き、店主であるオノが叫んでいた。
「ドアホ!! なんで、こんな日に寝過ごしとんねん!?」
「本当にちょっと横になるつもりだったの! ねぇ、2人共撃破されちゃったけれど……」
「ここだけの話。僕の機体、ギリギリ生きているんですよ」
店内の奥の方ではニシがPCを立ち上げ操作していたが、彼が使っているジム・スナイパーは残骸と言っても差支えがない状態だった。今更、戦線に戻って復帰するなんてことは無理だろう。
だが、上半身だけとなった機体の手には大型のロングレンジ・ビーム・ライフルが握られている。たった、一発だけの参加権。
「どうする。最後まで僕がやろうか?」
たった、1発で戦局がひっくり返せるとは思えない。だが、このまま何もしないで寝て過ごしただけ。と、言うのは御免だった。
規約的に言えば代理プレイは引っ掛かる所ではあるが、今は置いておく。サナは小さく頷き、ニシが席を退いた。マウスを握る手に汗が滲む。機体の各所が破損している為、狙いを定めるのも難しい。周囲の空気がピンと張り詰める。
「(多分、僕なら無理だな)」
「いっけえぇえええええええええ!」
~~
「……は?」
アラタを目の前の光景が信じられなかった。全く予想だにしていなかった方向から飛んで来たビームによって『クレインクイン』の攻撃がカットされ、怯んだ一瞬に、ヘリオスがバックパックから取り出した大型ビームソードによってマシマの機体が切り裂かれていた。
「詰め。ミスったか……!」
撃破される一瞬。ビームが飛んできた方向に向けて、カウンタースナイプを放った。マシマの機体が爆散すると同時に、遠方で生き残っていたジム・スナイパーも爆散していた。
「これで一対一だ」
マシマとの2機掛かりなら勝算もあった。だが、自分一人で倒せるのだろうか。
三下のセリフを吐きたくなった。これで負けても予定調和という形になる様に保険を掛けておきたかったが、アラタはキュッと口を結んだ。
「ここで来て負けられるかよ!」
ガンダム・タンクから緑色の光が放たれる。現在、彼が持つ最強の覚醒技である『ガーディアン覚醒』だ。機体の強度が増し、蓄積したダメージが修復されて行く。フドウは即座に距離を取った。
「(『覚醒』か。タクマさん位しか使えないと思っていたけれど、まさか教え子が使えるとは思っていなかった)」
「(拳法で攻めるか? いや、下手に突っ込んだら相手の思う壺だ。なら、射撃戦に切り替え……)」
先程の戦いでボディの砲塔が溶断されたことが本当に痛かった。両腕のポップ・ミサイルランチャーは手数こそあるが、火力に乏しい。かと言って、デスティニーのバックパックの『M2000GX 高エネルギー長射程ビーム砲』は予備動作が長く当てづらい。
そもそも、射撃戦の火力では劣っている自分が距離を取るメリットは少ない。近距離戦で翻弄されるかもしれないという怯えを振り切り、バックパックから『ヴォワチュール・リュミエール』による『光の翼』が出現した。
「来い!!」
「行くぞォ!!」
ガンタンクの履帯が地面を舐め上げ、一気に飛翔する。対するヘリオスはビームライフルを連射するが、アラタはガードしながら突っ込んで来た。想像以上に防御力が上がっているらしく、ビームライフル程度では決定打にはならない。
しかし、先程ミサにはなったこともありバラエーナ収束プラズマ砲もダブルサテライトキャノンもリキャストを要している。ならば、やることは1つ。ビームサーベルを抜き放った。
「食らえや!!」
ガンタンクの腕で拳法を放つという、兵器としての設定を考えたらあり得ない挙動であるが、これはガンプラバトルである。理屈やロジックを超えた動きが実現していた。
対する、フドウはビームサーベルで突き出された腕を弾き、胴体に突き刺そうとしたが、ガンダム・タンクの空いた方の腕からも拳が突き出されていた。重量級の安定感故に繰り出せた一撃だったが、フドウも直ぐに対応して相手の拳に合わせて掌を突き出していた。パルマフィオキーナだ。エネルギーが迸り、ガンダム・タンクの腕が吹き飛ばされようとする中、アラタは更にコマンドを入力した。
「まだだ!!」
彼が使っているのはガンタンクの腕である。同時に射撃武器の四連装ポップ・ミサイルランチャーとしても機能しており、突き出した腕からゼロ距離で放たれたミサイルがパルマフィオキーナの射出口にねじ込まれた。
ヘリオスの腕部に走っていたエネルギーと干渉し合い、小規模の爆発が起きた。両機体の片腕が吹き飛んだが、勝負はまだ終わっていない。
「こっちも終わっていない!!」
リキャストが終わり、まず至近距離でバラエーナ収束プラズマ砲が放たれた。ガンダム・タンクの半壊していた頭部が吹き飛び、胴体の一部が溶けた。
だが、アラタも残された腕を叩きつけた。ヘリオスの腕がひしゃげ、ビームサーベルを取り落した。同時にポップ・ミサイルランチャーを至近距離で放った。両機体の両腕が吹っ飛んだ。だが、ヘリオスにはバックパックに取り付けられているツインサテライトキャノンが残っていた。
「これで!!」
終わりだ! と叫ぼうとした時、フドウは見た。頭部と両腕が吹き飛んだアラタのガンダム・タンクの両腕から漏れ出る緑色の光が巨大なビームサーベルの様になっていたのを。
「バースト!! ブレイカァアアアア!!」
巨大な緑刃がヘリオスを通過した。ずるりと、上体がずれて落ちた。そして、少し遅れて爆発した。勝敗は決した。レコの宣言が響き渡る。
『勝負あり! バトルトーナメント第1回戦を勝ち上がったのは! チーム・ビアンカです! よもや、1回戦からここまで白熱した戦いが見られるとは! 健闘を繰り広げた、両チームに惜しみの無い賞賛を!!』
両腕と頭部を損傷し、胴体もボロボロになったガンダム・タンクを動かしながら、アラタは深呼吸をしていた。
「つっぇええ……」
今まで、クラン戦などで対人戦は幾度か繰り返して来たが、ここまで苦戦したのは初めてだった。チームメンバー的にもベストな物を選んだし、自分だけが使える覚醒なんて物を使って、本当にギリギリで勝利を掴んだ。
しかも、相手はベストメンバーとは言えるメンツでも無さそうだった。ハッキリ言って、GBBBBと言う舞台と状況でなければあり得ない勝利だった。
「こんなんじゃ勝っても自慢できねぇよ」
それでも捥ぎ取ることが出来た勝利の余韻に、アラタは暫し浸っていた。
~~
「アラタ、凄いやん!!! まさか、フドウさんに勝つやなんて!!」
戻って来たアラタ達を待っていたのは、タオ達の惜しみの無い称賛だった。今までの相手と比べ、格上も格上だったが見事に勝利を取って来たのだ。
いつもなら軽快な返事をしていたが、想像以上に集中力を使ったのか。アラタにリアクションをする余裕は無さそうだった。
「アラタ。お疲れ様。まさか、フドウさんに勝てるとは思わなかった」
「悪い。俺が油断しなかったら、もう少し楽に行けたんだけれどな」
マシマが申し訳なさそうにしていた。彼ほどのプレイヤーが相手に止めを刺し損ねるなんて失態、自分でも起こす訳がないと思っていたのだろう。
「あるいは、全てはこの一撃に掛ける為に撃破されたフリをするなんて真似に特化していたのかもしれない。にしても、フドウ君。全然、腕が落ちていなくてビックリしたよ。ハハハ」
勝利の余韻に浸っている中、裏の方ではミサとしてアラタやフドウと会話しているチャットルームに追加で『SANA』という人物が入って来た。
「ごめぇええええん!! リュウセイ!! 私、寝落ちしてて!! ニシさんにわがまま言って、一発だけカット用のビームを撃たせて貰ったんだけれど!」
「やっぱりか。あんなタイミングに合わせられるの、サナしかいないと思っていた。おかげで教え子と最高のバトルが出来たよ。ありがとう」
「リュウセイ……」
「カーッ! 惚気か。カーッ!!!」
何故か負けたはずのフドウ達の方が良い雰囲気を放っていたので、ミサが妬みや嫉みを見せていた。
代理プレイは規約に引っ掛かる行為であるが、寝落ちで最後まで不参加と言う不完全燃焼で終わられるよりかは良いと思った。
「フドウ先生、ミサさん。この『SANA』って人が?」
「あ、始めまして。君がアラタ君? リュウセイから話は聞いているよ。セト君に似た教え子がいるって。私はサナって言うの。よろしくね!」
「こちらこそ、よろしくです」
思わずPC前でお辞儀をしていた。『ミヤマ・サナ』と言えば、フドウ・リュウセイと言う凄腕プレイヤーに隠れがちではあるが、奏海高校の黄金期を築いた立役者の一人である。
「今、サナちゃん何しているの?」
「私? ガンプラ関係の会社にね。広報で働いているの。もう、毎日忙しいけれど、こうやってリュウセイや皆と一緒にやるGBBBBだけが癒しでねぇ。……アレ? そう言えば、ミサさん。タクマさんとはどうしたんですか?」
「は?? 余裕の嫌味か???」
「あ……。ごめん」
急に圧を強めたミサを見て察したのか、サナは謝っていた。それがまた余裕っぽく見えて、ミサを刺激するのだが。ただ、ここまで集まっているのを見てアラタは考えた。
「もう、マイスターも呼んで良いんじゃねぇかな?」
「あ、いや。それはちょっと……」
「>似た者同士」
いざと言うときにビビる所はソックリだった。久々に集まったというレジェンドの話を聞きながら、アラタはこの上なく贅沢な感想戦をしていた。GBBBBをやっていて、かつてない程の充実を感じた1日であった。