GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
GBBBBがゴールド・ラッシュならぬギャン子・ラッシュで賑わっている中。バトルトーナメントの2回戦はしめやかに行われていた。
『さぁ、いよいよバトルトーナメント2回戦が始まりました。残ったのはいずれも実力派クラン! 今夜の戦いは、先日のクラン戦でも見た組み合わせ! 『ビアンカ』と『ニシワキエンジニアリング』です! 選手達のガンプラも見てみましょう!』
『うむ! バトルに入る前のアセンブルを見るのもまた一種の楽しみだね!』
いつもよりレコの熱が入っているのは、胸中に湧き上がっている不安や緊張を掻き消す為かもしれない。AIと言うにはあまりに有機的な所作であった。
ミスターガンプラも乗って上げている所を見るに、彼もまたギャン子・ラッシュが及ぼす弊害を薄々感じていたのかもしれない。
『アラタ選手のガンプラは……バトルトーナメント前までは上半身全部がガンダムだったのに、今は頭部だけを残してガンタンクになっていますね』
『まぁ、やっぱりガンダムの細さとガンタンクの太さはバランスが悪いからね』
上半身に対して下半身が強靭過ぎると思ったのだろう。結局、胴体までガンタンクのガッシリとした物になっていた。
『シーナ選手のガンダムチクラミーノはスマートにまとまっていますね。ウイング系だと、どうしても背中を盛りたくなってしまう所ですが』
『上手に引き算をした。という印象を受けるね! ビアンカ内でも彼女はあまり公式戦に姿を現さないから、どんな戦いぶりを繰り広げてくれるか。楽しみだよ』
2機目までは実にスラスラとした実況が行われていたが、問題はビアンカの3人目のメンバー。セリトの機体紹介に入った時である。
『え?』
彼の機体は正にレコだった。事実はさておき、コスチュームの構造上垂気味に見える胸のライン。肉付きの良い太ももはドムのパーツで丁寧に再現されている。
武器がビームサーベルとかビームリボンなら可愛い物だが、使われたら滅茶苦茶痛そうなスクリュー・ウェップを選んでいる辺りに、使用者の趣味嗜好が垣間見えた。
『す、すごい再現度だ。……思慮分別は兎も角として』
ミスターガンプラがレコの方をチラチラ見ながら、頑張ってコメントを選んでいた。当の本人はと言えば、あらゆる感情が入り混じった壮絶な表情をしていた。プログラムが悲鳴を上げている様にも見えた。
『試合開始ィ!!』
ニシワキエンジニアリングの紹介もせず、速攻で言い切ったのは彼女が己のアイデンティティを守る為だったかもしれない。
AIと言う無機質な存在で居られたハズの彼女は『ブチギレ』という感情のロジックを再現できるくらいに有機的だった。
「うぉおおおおおお!!」
真っ先に飛び出したのはセリトの『真TALE・レコ』だった。機体の胸から大量のミサイルが飛び出して行った。どうやって組み込んだかは謎だが、あそこに大量のマイクロミサイルランチャーが設置されているらしい。
「散開はするな! 以前は各個撃破されたから、今度は一点突破で行くぞ!」 ユイ! シールドビットを!」
「分かった!」
開幕から怒涛の弾幕が張られたが、ユイの『ニシワキサバーニャ』から射出されたシールドビットが3機の周囲に展開された。だが、この展開を望んでいたと言わんばかりに、セリトの機体の胸元が開いた。
「うぉおおおお! これが! 俺の!! 真TALE・レコだぁああああああ!」
勢いよく、2つのシュツルムファウストが射出された。ギリギリで理性が働いたのか、先端がピンクに塗装されていると言うことは無かった。これでは運営も裁くことはできない。猥褻が一切ないからだ。
~~
「やりやがった!! あの野郎!! やりやがった!!!」
外部で試合を見ていたマシマは思わず叫んでいた。周りのプレイヤーはギャン子・ラッシュの熱に中てられていたこともあって大いに盛り上がっていた。
「せ、セリト君……」
果たして、あの日。彼と熱い戦いを交わして、このGBBBBに定住させたのは良かったのだろうか?
あのまま詰まらないと思わせて別ゲーに移住させた方が、彼の性癖は拗れずに済んだのではないだろうか? タオの胸中に若干の後悔が湧いていた。
「ねぇ、リンちゃん。一緒にアイツを追放する署名をアラタに出さない?」
「いいね! カルパッチョさん! 私、賛同するよ!」
動画配信者としても身内にBAN候補がいるのは都合が悪いらしい。リンもノリノリで頷いていたが、流石にミスターが止めに入った。
「待ちたまえ! 美プラによる再現ならギリギリ生かしておいて良いハズだ。いや、正直に言うとちょっぴり追い出したい気持ちが湧かないこともないが、ギリギリで公序良俗内に収まっているんだから酷いことはしない方が良い!」
「メッチャギリギリを強調するやん」
上には上がいるから、下々の者が見逃される訳ではない。
だが、腹立たしいことにバトルの様子だけを見ればセリトは確実にレベルアップしている。プロとの試合に付いて来れているのだから。
「うぉー! やれーっ! TALE・レコー! お前がGBBBBに新たなTale(物語)を刻み始めるんだーッ!!」
応援しているプレイヤーのガンプラがこぞってふみなだったり、メイだったり、ギャン子だったりする様子はGBBBBの最果てをよく表していた。レコ達の懸念は、彼女の再現ガンプラによってなされるという最悪な展開を迎えていた。
モニタ内ではガーディアン覚醒を使ったアラタにユーキが冷静に対処するという、白熱したやり取りがあったのだが、それらを遥かに凌駕する熱気がロビーに渦巻いていた。
「コウラ。どうして、皆はアラタやユーキの高度な遣り取りの方に注目をしないの?」
「男ってバカなのよ。バカ」
文はジッと覚醒状態のアラタを追い詰めていくユーキ達のコンビネーションを注目していたのだが、途中でカットに入るセリトばかりが注目されている。
こんなに見所のある試合だと言うのにネタしか見ない、バカ共に対してコウラは大きな溜息を吐いていた。一方、マシマは目尻を抑えていた。
「アレだけむっつりしていた奴が、今はこんなにも喜び勇んで醜態を晒……美プラを使うだなんて。俺ァ、嬉しいよ」
「マシマさんはセリト君の何なん?」
女性陣から冷たい視線を向けられているマシマに問いかけつつ、タオはモニタの方を見た。一番被害を食らっている、モデル元はどういう反応をするんだろうか? さっきから、ミスターガンプラの実況ばかりが聞こえて来る。
『ニシワキエンジニアリングの皆は凄いね。以前、ガーディアン覚醒を見たこともあるから、チーム単位での対策を講じてきている。対するビアンカもアラタ選手とシーナ選手、それとセリト選手の丁寧なカバーが光るね』
意外と試合自体は真っ当に進んでいた。レコの方はと言うと、情報の処理が追い付いていないのかフリーズしている様に見えた。
彼女の状態はさておき、試合は動く。ガーディアン覚醒でアラタ達が防御を固めるなら、ニシワキエンジニアリングのメンバーはコンビネーションでガチガチに固めていた。覚醒時間は有限である為、防御に対して防御は有効な手段だった。ビアンカのメンバーも攻めあぐねていた。
『セリト!! お前が切り開くんだ!』
『でも! そうしたら、このガンプラが……』
そう。これこそが美プラがガンプラバトルにあまり出て来ない理由である。
バトルにおいて破損するのは当たり前のことだが、美プラの場合は著しく見た目を損ねる。中には、ボロボロになった美プラを愛でるリョナラーもいるが、ふみなを魔改造して楽しんでいる時点で全員が似たような物だった。瞬間、黙っていた実況が吠えた。
『おーっと! まさか、セリト選手! 私を模した機体を使って無様な醜態を晒すのでしょうか!!』
『……え? レコちゃん!?』
『やるなら! 最後までやって! 試合を!! 盛り上げて下さいね!!』
今まで黙っていた分、吐き出された彼女の実況は試合のみならず観戦者達まで盛り上げていた。アホである。バカである。だが、機体に乗った期待に応えねば、男が廃る。シーナも叫んでいた。
『行って下さい!! バカタレの異常美プラ愛好者!!』
単なる暴言だった。彼はサバーニャやニシワキX-01の弾幕を掻い潜り、彼らのコンビネーションの中に切り込んでいた。
『なんだと!?』
『うぉおおおお!!』
そして、彼ら全員をスクリュー・ウェップでシバいていた。堅牢なコンビネーションを鞭で弾き飛ばした所に、シーナの機体が突っ込み、アラタも突撃しての大乱闘になっていた。
「……レコ姉さん。恋、している?」
文が呟いた言葉は誰にも届かなかった。実況者であるレコが特定の選手を応援するというシチュエーションも含めて、GBBBBは類を見ない程の盛り上がりを見せている中、別のサーバーで様子を見ていたカオスは拍手を送っていた。
「コレがAIとGBBBBのマリアージュ……カオスだ!」
「何やってんのこいつら……」
「良い……」
早々に第2回戦を終えたカオスは幹部であるドーラ、グスタフと一緒に、この混沌極まる試合光景を見ていた。
カオスのテンションが上がる中、女性であるドーラは普通にドン引きしていたが、傍に佇んでいる黒人マッチョのグスタフは感心していた。GBBBB史上、最も盛り上がった一日になっていた。