GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】   作:ゼフィガルド

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46戦目:久々にめぐってみよう!

「(少し、早く来すぎたか?)」

 

 マイスターことナギツジ・タクマは久方ぶりに彩渡商店街に足を運んでいた。

 自分が来るまでは寂れていたのに、今では随分と賑わっている。自分達の活躍が功を奏して、ガンプラファイターの聖地となっているらしい。

 

「(少し、見て回るか? いや、でも……)」

 

 この商店街においてミサは皆の娘の様な存在だった。それを6年間放置していた。となれば、店先で追い返されても何も不思議ではない。

 何処か別の場所で時間を潰そうと踵を返した所に、中学生位の男子がいた。手にしているスマホを操作すると、タクマのスマホが鳴った。受信したメッセージと同じ文言を少年が読み上げていた。

 

「現着です。どっちで呼べばいいですか?」

「タクマで。ちょっと、ギャップに驚いている」

 

 自分より頭1つ分位小さいので、中学生位にしか思えない。当たり前だがアバターの姿が本人とは限らないにしても、あまりにギャップが大きかった。

 

「なんか、俺の顔に付いています?」

「思ったよりテンション低いなって」

「これでも割と人見知りするタイプなんですよ。GBBBBだから周りのテンションのお陰で、あんなキャラ出来るだけで」

 

 GBBBBはプレイヤーを変貌させるだけの力場が形成されているのは言わずもがなだ。ひょっとして、魔改造ふみなとか作っている連中も普段は真面目なサラリーマンだったり、学生だったりするかもしれない。

 

「それにしても、随分早く来たね。約束の時間まではたっぷりあるけれど」

「折角だから、ガンプラファイターの聖地って言われる程の場所を見て回りたかったんで。良かったら、タクマさん。案内して貰えませんか?」

 

 この提案は彼の気遣い、あるいは企みから来ているのだろう。でなければ、自分が引き返そうとしたタイミングに姿を現すとは思えない。

1人で回るのは気が重いにしても、自分で自分を後押しする為にも目の前の提案は魅力的だった。

 

「分かった。と言っても、俺も久々に来たから色々と変わっているかもしれないけれど」

 

 かくして、男二人による商店街巡りが始まった。タクマが知っている頃よりも様変わりしていることもあって、案内しているタクマも変化に驚いていた。

 

「凄いな。俺が知っている頃は、大抵の店はシャッターが降りていたんだけれど」

 

 今は何かしらの店が入っており、いずれも『ガンプラの街』と言うことを強調するような関連グッズが多かった。

 

「ガルパンみたいな感じで、アニメやサブカルチャーでの町興しってのもありますからね。経済効果もバカにならないとか」

 

 だとしたら、自分達が尽力したことには大いに意味があった。

 商店街を行き交う子供の手には、ガンプラの箱とニッパーが入ったビニール袋が握られていたりして、次世代へと続く様子が垣間見えた。

 トイショップが幾つも立ち並ぶ中、タクマはどの店舗にも見向きせず、小さな店舗の前で立ち止まった。1つ、深呼吸をした。

 

「タクマさん。この店は?」

「ミサのお父さんがやっている店」

 

 勇気を出して一歩踏み出した。ガンプラの聖地と言う割には、他の店舗よりも規模は小さいし、ヒッソリとしていた。

 

「いらっしゃいませ……おや、タクマ君?」

「どうも。お久しぶりです、ユウイチさん」

 

 タクマが頭を下げていた。それだけで、ここがマイスターと呼ばれる程のガンプラファイターの始まりの地であることが推察できた。

 

「元気にしていたかい?」

「はい。ミサはここに来たりとかは……」

「いや、あの子はまだ会社だよ。折角、立ち寄ってくれたんだ。何か買って行かない?」

 

 チラチラとアラタはタクマの方を見ていた。居酒屋でもおごってくれる予定なら、ここでも何か買ってくれたりしないかな? と、キラキラした視線がブラックナイトスコードカルラに注がれていた。

 

「タクマ君。その子は?」

「俺の知り合いです。その……情けない話になるんですが、久々にミサに会うのに、ビビッて一緒に付いて来て貰いました」

「あ、やっぱり気にしていたんだ。あの後、色々とあったからね」

 

 ユウイチが苦笑いをしていた。仔細を聞きたいのだが、駄弁るだけでは店に迷惑が掛かる。タクマはカルラのパッケージを指差した。

 

「アラタ君。アレ以外にも何か?」

「アルティメットニッパーも……」

 

 図々しすぎる。しかし、呼び出したのは自分なのでこれ位の対価は支払うべきか。手痛い出費を被りながら、作業用スペースでカルラを組み立て始めたアラタを他所に、タクマはユウイチから色々と話を聞いていた。

 

「ガンプラの聖地ってことで有名になって、ウィル君達とも業務提携して百貨店と商店街は共存の道を辿ることになったけれど、基本は彼の助けありきで成り立っているような感じだね」

「どういうことですか?」

「商店街は個人経営の店も多いから、増えたお客さんに対応しきれないんだ。だから、表には観光客向けのお店を出して、僕達は少し目立たない所で無理なく経営させて貰っているよ」

 

 有名になるのも良いことばかりではない。オーバーツーリズムなどの例でもある様に、対応力を上回って人が流れ込んで来ることもある。

 

「なんか、アイツに掠め取られたような気がしますが……」

「いいや。あのままだったら、商店街は皆で仲良く倒れるしかなかった。細々でもやって行ける環境を整えてくれたことは感謝しているよ。彼と交渉になるような材料を持って来てくれた、タクマ君達にもね」

 

 ガンブレ学園の生徒と言うだけにあって、普段からツールを持ち歩いているのか。アラタはバッグから色々と取り出していた。

 ミサ達はガンプラで町興しを図ったようだが、実際には整うまではかなりの紆余曲折はあったらしい。言ってみれば、成功し過ぎたのだろう。

 

「有名になり過ぎるのも考え物だな」

「有名になり過ぎると言えば。タクマ君もガンプラファイターとして、かなり有名になったよね。一時期、ミサに挑戦しに来る子達が後を絶たなくて」

 

 タクマがそーっと視線を逸らしていた。そんな様子を見て、ユウイチは苦笑いを浮かべていた。

 

「あの子が怒るのも無理はないけれど。でも、親として君の選択も分かるんだ。やっぱり、娘の相手には手堅い職業を望んじゃうしね」

「その通りだと思います。プロの世界で、勝利が掴めなくて辞めていく選手は何人も見て来た。俺もそうなる可能性はあった。そんな生き方に誰かを付き合わせる訳には行かない」

 

 愛があれば。なんて、言葉は綺麗ごとでしかない。収入がなければ生活が出来ないし、そんな生活の果てに待ち受けているのは破滅しかない。

 

「こう言っちゃなんだけれど。手に職を付けてから、趣味でやって行く内に徐々に切り替えていく。とかじゃダメだった?」

「遅すぎる。もっと、早く長く深く。この世界を進みたいんだ」

「カッコいいこと言っているけれど、割とダメ人間みたいな思考ですね」

 

 真っ当な生活を放り捨てて、遊びに人生をベットする生き方は狂気にも近しいのだが、ガンプラバトルが流行っているからこそ出来る生計の立て方だった。

 

「……正直、今の話を聞いていると。ミサから身を引いてくれたことは、親としては頷く所だけれどね。まぁ、続きは今晩にでも話してあげてよ。彼も完成させたみたいだし」

「でけた!!」

 

 本格的な仕上げは家かガンブレ学園でやるにしても、カルラは素組でも素晴らしいプロポーションだった。

 

「色々と話してくれて、ありがとうございます」

「僕も久々に君と話が出来て楽しかったよ」

「うんうん。じゃあ、少し長く滞在し過ぎたと思うので、このRGガンダムRX-78Ver.2.0も買ってお店に貢献を……」

「いっぱい組み立てるんだぞ」

 

 半ばヤケクソになりながら、タクマは該当商品も購入していた。あまりの嬉しさに小躍りしていた。

 

~~

 

「タクマさん。早速、組み立てたガンプラ。動かしてみたいんですけれど」

「なんだか、アラタ君を見ていると。緊張していた俺が馬鹿みたいだ」

 

 組み立てたカルラを動かしたくて堪らないアラタは、シミュレーターが置いてあるゲーセンまで足を運んだ。店内では、少年少女がガンプラバトルに興じる微笑ましい光景が繰り広げられていた。

 

「あ。タクマさん、お久しぶりですね」

「インフォちゃん。イラト婆さんは?」

「ちょっと、用事があって席を外しています。連絡を入れましょうか?」

「いや、いい。アラタ君、あっちの筐体が空いて」

 

 いる。と、言おうとした所で、先に大柄な男が入って行った。すると、業務用ロボットであるインフォちゃんが『あ』。と声を漏らしていた。

 

「困りました。今のお客さん、迷惑客です」

「卑猥なガンプラ使うとか?」

「ガンプラで卑猥とはどういうことですか?」

 

 脳内までGBBBBに侵されているアラタの予想に対して、インフォちゃんは全く理解出来なさそうだった。リアルとネトゲのノリは違うのだ。

 ゲーム画面を見ていると。少年少女が動かしているガンプラをちぎっては投げ、ちぎっては投げてというクッソ大人げないことをしているプレイヤーがいた。

 

「アイツ、もしかして。タイガーか?」

「はい。6年経ってもしょうもない人間のままです。体ばかりが大きくなって、ペチャパイよりも何も詰まっていません」

 

 タクマの知り合いでもあるらしい。インフォちゃんの言葉がバグよりも刺々しかったので、アラタは戦慄していた。

 筐体からは不機嫌そうな少年少女が出て来た。泣いているかと思いきや、皆がスマホを手にしていた。

 

「アイツ、晒してやろうぜ!!」

「拡散準備オッケー!!」

「予想よりだいぶ凶暴だった」

 

 ホビーアニメなら泣きじゃくる少年少女を慰めて敵討ちするシーンだが、自分達が何もしなくても報復は達成されそうだった。ただ、リンチの領域に行きそうなのでアラタが慌てて止めに入った。

 

「マァマァ。ここは俺が代わりにボコすことで溜飲を下げて貰うってことで」

「うーん。しょうがないなぁ……」

 

 なんで、加害者を保護しないと行けないのか。アラタは溜息を吐きながら、素組のカルラを筐体に読み込ませた。

 しっかり仕上げていないのでパーツレベルはあまり高くないが、モニタでの立ち回りを見るに、相手のレベルはあまり高くなさそうだった。

 

『ヘヘヘ。俺がこうしてやらないと、このゲーセンの回転率上がんねーからな。お前もどうせ、ミーハーだろ? 素組で来るなんて、ガンプラなめんじゃねぇ!』

 

 見事なまでの三下アトモスフィアを漂わせながら、タイガーと呼ばれた男の機体は突っ込んで来た。アラタのカルラは『OWC-QZ18 対MS強化刀』を引き抜いていた。

 

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