GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
イラトゲームセンターに設置されているガンプラシミュレーターはGBBBBともリンクしているが、現在のモードでは適用されていない。というのも、マイスターとアラタの両機体はパーツレベルが高いので、初心者では相手にならない。何も出来なかったというゲーム体験は良くない。と、インフォちゃんの判断だった。
故に、フラットルールと呼ばれる物が適用されており、お互いのパーツレベルを固定した上でバトルが行われていた。ビルドの腕による多少の上下はあるにしても、マイスターもアラタも強かった
「(私だって!)」
GBBBBのプレイ時間は積み重ねて来た。パーツも沢山集めたし、ビルドについては何度も見返して来た。機体も動かしていたし、最近はミサやビアンカの皆に、俯瞰的な動き方についても学んだ。何としてでも追い付きたかった。
最初の頃は一緒にプレイしていた。けれど、ビアンカが賑やかになるにつれて、自分よりも空気が読める人が増えた、強い人が増えた、面白い話が出来る人が増えた。バカなことが出来る奴が増えた。
「手加減はしない」
アラタが操縦するカルラのバックパックから『OTOS-815/J サハスラブジャ』が射出された。C.E的に言うとドラグ―ンのバリエーションであるが、GBBBBと多少挙動は違うのか、攻撃の頻度は控えめになっていた。
「(そうか。ある程度、調整されているんだ)」
GBBBBで見たファンネル系の挙動であれば振り払うのは難しかっただろうが、この攻撃頻度ならばどうにかして捌ける。ただ、自分が戦っているのはドラグーンではない。カルラだ。
「まさか、リンが来ているとは思わなかったよ!」
『OWC-QZ18 対モビルスーツ強化刀』を展開したカルラが肉薄して来た。射撃戦に持ち込まなかったのは、回転率を上げるために単機での決戦を狙ってのことだろう。リンのガンダムフレールもビームサーベルを引き抜いた。
「偶々ね! 私も、アラタと戦える機会がやって来るとは思わなかったよ!」
きっと、アラタのことだから自分を見捨てるような真似はしないだろう。
だけど、クラン戦の時も目立った活躍は出来なかったし、イベントがある時は大体自分は選ばれない。今回のバトルトーナメントも不参加で終わりそうだ。自分が透明な存在になって行くことが我慢できなかった。
「丁度良かった! どれだけ、リンが強くなったのか。気になっていたんだ! 最近、あんまり一緒にミッション行ったり対戦出来たりしていなかったからな!」
カルラの二刀流の攻撃を1本のビームサーベルだけで防ぐことは出来ない。シールドを使って防いだりもしているが、いずれ弾き飛ばされることだろう。また、張り付けば張り付くほど背面からサハスラブジャの攻撃が降り注いでくる。
「私の成長に! 驚かないでね!」
すると、リンはシールドを前面に構えてスラスターを吹かして来た。背面に浮かぶサハスラブジャを振り切り、バックパックからヴェスパーを展開した一撃を放とうとしたが、カルラの胴体部分から閃光が走った。
大口径高出力ビーム砲『OWC-Z199 超高インパルス砲 アドゥロ・オンジ』だ。通常ならば、直撃を避けるために離れるだろう。だが、リンは組み付いたままだった。両者の最高火力が同時に放たれた。立っていたのは……フレールだった。
「危なかった……」
アラタのカルラはヴェスパーの一撃で脚部が焼け溶けていた。
しかし、リンのフレールはアドゥロ・オンジの一撃を受けて胴体に大穴が空いていた。辛うじて、胴体は繋がっているが機体は停止していた。
「でも、俺の勝ち」
モニタに勝敗を告げるメッセージが浮かび上がった。遠い様に感じていた相手だったが、こうしてガンプラバトルをしてみて分かった。彼は直ぐ近くに居る。
負けて悔しい気持ちは当然ある。でも、それ以上に感じ取れた物の大きさに、リンは思わず拳を握り締めていた。
~~
結局、アラタ達は大量の少年少女……に加えて、彼らの知り合いまでやって来たので延々と筐体でバトらされる羽目になり、筐体が熱を帯び始めて来た頃にようやく解放された。
「なんで、途中でやめたら駄目だったんですか?」
「あのゲーセン前に集まって来た人達を見ただろう。あそこで止めたら、ガンダムが原因で動物園状態になる所だったんだぞ」
「ゲーセンってそんなに怖い所だったんだ……」
ゲッソリしたアラタとは対照的に、タクマの顔に疲れが見えなかった。久々にゲーセンに来たリンも、今日ばかりは客が持つ熱量に恐れていた。
彩渡商店街がガンプラバトルの聖地と言うこともあるのだが、やはりプロプレイヤーのバトルは強烈に人を惹き付ける物があるのだろう。こうして、日が傾くまでバトルをしたいという客が途絶えな………。
「あの。タクマさん? ミサさんのことは?」
「…………」
一瞬で顔を青褪めさせたタクマが震える手でスマホを確認すると、いっぱい通知が来ていた。チラリと覗くと『何かあったの?』と最初は心配していたが、徐々に『まだ?』とか、短い物になっていた。
アラタのバトルの余熱を感じさせない程に、リンがタクマに対して冷たい視線を送っていた。
「とりあえず、返したら?」
「もう、返している」
『ゴメン。色々と事情があった。直ぐに向かう』と言って、彼は小走りに走り出したので、アラタ達も一緒に走った。
辿り着いたのは小料理屋『みやこ』という場所で、深呼吸をして店に入った。すると、女将がタクマの顔を見て『まぁ!』とわざとらしいリアクションを取っていた。
「タクマ君じゃない。久しぶり! 元気にしていた?」
「あ、はい。あの、その……」
「隣にいる男の子は後輩? それとも、弟さん?」
「後輩です。ガンプラバトルに関してはマジで尊敬しています。それ以外のフォローで来ました」
「うぉおお……。アラタってリアルじゃ、そう言うキャラなんだ」
リンが知っているアラタはお調子者であるが根の部分は常識人だと思っていが、リアルだと割と生意気なタイプの後輩だった。ビアンカ内で言えば、カルパッチョが一番雰囲気的に近いかもしれない。
「面白い後輩君ね。お酒は出せないけれど、ウチは料理もおいしいから」
「楽しみにしています。ねぇ、先輩」
「……ミヤコさん。ミサ、来ています?」
何故、さっきから女将が彼女に付いて触れなかったのか。と言えば、タクマ自身に問わせる為だろう。すると、彼女はニッコリと笑みを浮かべながら言った。
「奥の方で待っている」
「ありがとうございます」
かつて、過去に大規模な事件にぶつかって来たし、何なら世界情勢を左右するアクシデントにも巻き込まれたが、ここまでプレッシャーを感じたことは無かった。だが、逃げるつもりはなかった。
奥の席に辿り着いた。テーブルの上には突き出し以外にもビール瓶が空けられており、少しだけくたびれたスーツを着た女性がいた。
「お姉ちゃん」
リンが呼ぶと、クルリと振り向いた。ニッコリと笑いながら手を振っていた。
「お~、リン来たんだ。君が、アラタ君かな? うわ。結構ギャップ凄いね」
「どうも、ミサさん。リアルじゃ始めまして」
アラタは頭を下げつつ、視線をタクマの方に送っていた。何故、ミサはさっきから自分の方に触れないのだろうか。もしや、シカトされているのだろうか。
「ミサ。ちょっとイラト婆さんの所で拘束されていて」
「え~。別にいいよぉ? 6年間待たされたんだから、数時間程度どうってことないよ~~?」
滅茶苦茶怒っている!! タクマの視線がアラタへと向かおうとして、頭を振った。ハッキリ言って、ここに至るまでのタクマは情けないムーヴをしていたが、いざ彼女を目の前にした時、踏ん切りが付いた。
「ゴメン。こんなに待たせて」
短い言葉だった。だが、彼が誰にも見せないまま溜め込んで来た後悔と謝罪があった。ガンプラに関しては、ビルドもファイターとしてもこんなに器用なのに、1人の人間としてはあまりに不器用だった。
他の客達も騒いでいるが、自分達の周辺だけが静まり返っている様に思えた。すると、ミサは震え出して大声を上げて笑った。
「本当、キミって! 相変わらず不器用なんだね!!」
するとミサはスマホを操作して、チャットアプリを開いた。そこにはリンとのやり取りが表示されており、イラトゲームセンターに拘束されているから遅くなる。という旨のことが書かれていた。
「お、俺を騙したのか!?」
「実際に待たされたんだから、これ位されても文句言うなよ~~」
顔には出ていないが、少しアルコールが入っているらしい。即座にアラタとリンが隣合わせになる様に座った。残す席はミサの隣しかない。
「アラタ君?」
「なんすか。お酒飲める側と飲めない側と分かれだけですけれど。なぁ、リン?」
「そうだよ? だって、隣にアルコールが入ったコップがあって、間違えて飲んだら大変じゃん?」
「うぉー。2人共えらいぞー」
ミサがタクマを拘束する様にして腕を掴んでいた。そして、彼に小さく囁いた。
「来てくれて。ありがとう」
色々とあった。ゲーセンで馬鹿をシバいたかと思えば、唐突な勝ち抜き戦が開催されたり、6年ぶりに再会したと思ったらとんだイタズラをされて。
でも、彼女の一言を聞いて、来て良かったと心から思えた。肩に掛かる体重を心地良く思いながら、彼はメニューを開いた。