GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
「よし! ちゃんと死んでいるぜ!!」
変態ビルダーズを通報した翌日、晒し首一覧に彼らの名前が載っているのを見て、アラタはガッツポーズを決めていた。自分達の力でオシオキできなくても、運営からのキルに敵う者は誰もいない。
「公序良俗違反やしね。しゃーないよ。また、帰って来そうな気もするけど」
自宅の端末で無理ならありとあらゆる手段を使って帰って来そうな気がする。そこまでして、ふみなパイセンの尊厳を破壊しようとする熱意だけは認めざるを……いや、認める必要もない。
「けど、対人戦とミッションが全く違うって言うのが分かっただけでも大きな収穫だ。トロンさんとかにも聞いたけれど、やっぱりミッションを一通りクリアしてから対戦するのが普通らしいぜ」
「先が長い話やなぁ……」
だが、実際に対戦の奥深さ、組み立てたガンプラの性能を十全に発揮する為にはミッションのオールクリアは必須であるらしい。
「下準備だと思うことにしようぜ! 今日はリンが居ないから一緒にミッションを進めるのが無理だとしても、俺達だけでも先に進めとかないか?」
「せやね。僕らが強なったら、リンを誘導するのも簡単になるやろし」
その場合は、再び同じミッションに挑まなければならないという煩雑さも生じるが、雑談をしながらでもやればあっという間に過ぎる。
2人がミッションカウンターでクエストを受注しようとすると。あの、と声を掛けられた。見れば、ふみなの素組のアバターがあった。
「私も一緒に行っていいですか?」
アラタとタオが言葉に詰まった。ガンプラでふみなを使っているのは良い。このGBBBBの代表格、あるいは骨子とも言える存在だからだ。問題は彼女が使っているパイロットアバターが『ホシノ・フミナ』であったことだ。
GBBBBはガンダムゲーであり、ガンプラを動かすのをメインにしているが、作中登場人物のアバターは存在していない。恐らくだが、版権とか色々と難しい物が関わっているのだろう。
だが、アバターで再現しようとする者達は少なからずいる。今、話しかけて来た相手も、その類の人間かと思ったが再現率が半端ない。
「アラタ。どないする? なんかヤバそうな雰囲気やで」
「確かにな。ふみなパイセンを使う奴には気を付けねぇと……」
GBBBB内でふみなパイセンのガンプラを購入している奴を見たら8割以上がロクでもない使われ方をする。残りの2割は被害者担当だ。多分、彼女は後者だと思われた。
「駄目ですか? パーツレベルも合わせているのですが」
シュン。となっている。果たして、彼女を放り出して良いのだろうか?
ロビーを見回すと、OPパーツのリクトライオンフェイスとデスサイズヘルのバックパックを使ってキングギドラふみなが闊歩していたり、風雲再起の脚部に胴体を極限まで縮小することで、ふみなパイセンの頭部から下が完全に馬になったふみなホースが散歩していた。
インスピレーションを受けたバカ共が、ビルダーズパーツで角や長い耳を生やし、ふみな牛やふみなロバを作ったりと。今日も元気に尊厳破壊が行われていた。
「ここで僕らが彼女を保護しやんと、きっと嫌な思いをすると思うんよ」
『ホシノ・フミナ』は非常に人気の高いキャラクターである。その見た目から、ちょっとムフフな目に遭っているファンアートも見るが、果たしてGBBBB内の惨状と比べてどちらがマシか。
それは兎も角として、態々アバターまで彼女の姿にするという力の入れ様である。他ユーザーの玩具にならない訳がない。
「間違いねぇ。なんだか、猛烈に今のビルドを変えたくなって来たぜ」
今のアラタはふみなタンクを使っているが、流石に気が咎めたのかマイルームに戻って、以前の機体であるガンダムタンクへと切り替えていた。
「あの。参加しても大丈夫ですか?」
「勿論やで!」
彼女がミッションに入ったことを確認すると、タオは出撃のボタンを押した。
ロビーに集まっていたビルダー達が一斉にコチラを見た。見ろよ、普通のふみなだぜ。いや、待てパイロットアバターもふみなだ。珍しいな、普通のビルダーだ。等、様々な呟きが聞こえて来た。
「(変な人らに絡まれる前にはよ出撃して!!)」
しかし、思い立ったら行動する連中である。ノーマルふみなの周囲を、先程の有蹄類ふみな達が囲って様子を観察していた。
当の本人は特に嫌がることなく、周囲のガンプラを観察していたが、間もなくミッションへと出発した。
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「ミステリアスガァル! なんで俺達と組もうと思ったんだ?」
出現するギャンやアッガイ達を倒しながら、アラタが出会ったばかりの彼女に声掛けをしていた。自分では決して真似することが出来ないコミュ力に、タオは感心するばかりだった。
「皆さんが楽しそうだったので」
「そりゃもう、このゲームは楽しいぜぃ。ガンダム好きで始めた訳じゃねぇのか? てっきり、ビルドファイターズトライが好きな物だとばかり」
「皆が使っているMSでしたので。アバターもそれに合わせて設定しました」
不思議な受け答えだった。話しぶりからするに、どうもガンダム好きでも無さそうだし、ふみなパイセンに愛着がある様にも思えない。
「なるほど、完全初心者って訳か。でも、大丈夫だ! 作品を知らなくても、こういった場所で知る切っ掛けを作れば良いんだからな」
「はい。私はガンプラを組み立てたり、遊んだりする人達のことを知りたくて始めました。よろしくお願いします」
ガンダムではなく、ユーザーのことを知る為に始めた。と言うのが少し、特殊な観点の持ち主だと、タオは感じていた。
「(意識調査とかに来ているんかな? もしくは、なんかのレポートとかかな?)」
GBBBBおよびガンプラバトルに関するレポートは、軽んじられる物ではない。
世界的規模になった興業としてユーザーの意識調査や研究と言うのも立派な学問になっており、マーケティングなどでは非常に重宝されている。
「にしても、パイロットアバターの設定が凄いな。そんなに再現率の高いパイセン見たことねぇぜ。まぁ、最近変なのを見過ぎて感覚がマヒしているからってのもあるけれどな!」
「何故、皆さんは『ホシノ・フミナ』を使った特異なビルドをするのでしょうか?」
彼女自身の顔で言われると責められている様な気がした。私の顔で何してんだと。一ユーザーとしてタオが後ろめたさを感じる中、自らも加害者ビルダーとなっているアラタは頭をひねっていた。
「それは、ホラ。アレだよ。普通の俺ガンプラを作っても見向きもされないけれど、面白いガンプラを作ったら皆目を引いちまうのさ」
「それは確かだと思います。実際、『普通』にカテゴライズされるカスタムと『ネタ』に類するカスタムでは、後者の方が圧倒的に『GoodBuild』を集めていますから」
タオが懸念していることでもある。普通にカッコいいガンプラを作って、SNSなどで掲載しても反応は芳しくないことが多い。これに関しては幾らか理由として思い当ることはある。
「カッコいい系とかやと。なんていうか、正しい評価せなアカン。みたいな厳かさがあるから迂闊に感想言われへんのよね」
「どういうこった?」
「例えば、アラタのガンダムタンクって、ガンダムの汎用性とタンクの走破性を考えて組み合わせたんよな?」
「そうだぜ!」
「でも、初見で『GUNDAM 0079 The War For Earth』の再現凄いですね! って言われても『は?』ってならへん?」
「褒められることに何か違いが?」
ふみなアバターが実に不思議そうにしていると、アラタは何となく理解していたようだ。
「あ~。なるほど、俺はオリジナルのつもりで作ったけれど再現で作った。って言う風に言われると、そうじゃないんだよな~。って一言、言いたくなるよな」
「その一言を受けるのが嫌って人が多いんね。でも、ネタ系は笑った。とか、ウケるでええから、反応する側も楽なんよね」
加えて、ネタと言うのは非常に意図が面に出やすい為、誤解される可能性も低い。送り手と受け手がスムーズに交流できるという側面もあってネタ俺ガンが重宝されやすいのだろう。
「なるほど。反応ありきでガンプラを組み立てる、と言うのがメインになっているのですね」
「GBBBBはガンプラを見せ合う場でもあるからね」
「好きな様に組み立てるのが一番楽しいと思うけどよぉ」
WAVE2に移った瞬間のことである。画面にノイズが走り、操作を受け付けなくなったかと思ったが、直ぐに元に戻った。この感覚にアラタとタオは覚えがあった。
「なぁ、タオ。今のって」
「また、何かバグが起きているかも。難易度は変わっとらん。モードも制圧ミッションになっている。次で変化が起きるかも」
既に数度遭遇していることもあって、タオのチェックは手慣れた物だった。彼らが覚悟をしていると、ふみなアバターが言った。
「WAVE3のみ、マッチングモードに切り替わっています。このWAVEをクリアしたら、対人戦になります」
自分達でも知りえない情報をスラスラと述べていた。ここで、ふとタオは最初の彼女との会話を思い出した。遊んだりする人達のことを確認したい……。
「(そうか。彼女がバグチェッカーの人やったんやな)」
「アラタ。どうする? いったん中断するか?」
「私としては進むことを希望します」
「そう言うことやったら、行ってみよか」
ミッションから対人戦へと切り替わる仕様なども確認したいだろうし。と考えながら、タオ達はWAVE2のミッションをサクッとクリアしていた。
そして、転送された先。ふみなアバターが言う様に、確かに対人戦の場所へと切り替わっていた。相手は……普通の俺ガンプラだった。
「おや? 私達の対戦相手は君達かい?」
カオスガンダムのヘッドパーツが特徴的な黒色の機体は、頭部の印象もあってヴィランめいた雰囲気を醸し出していた。隣に引き連れている2人はボボボーボ・ボーボボとクルル曹長を模したガンプラだった。
「両隣にしか目が行かねぇじゃねぇか!!」
「ハハハ。凄いだろ? 正に、カオスたる私に相応しいチームメイトだと思わないかね?」
「カオス? まさか、フリーダムフリートの?」
「GBBBB内のトップクラスのクランに所属するメンバーですね」
前回のマッチングは事故っぽかったが、システム的には問題の無いマッチングだった。だが、今回のマッチングは別物だった。モノホンの事故だ。
どうやら、この様子は相手方にも伝わった様でチームメンバーの動揺が見て取れた。すると、カオスと呼ばれているリーダー格の男性が手を叩いた。
「よし。入団したばかりの君達の実力が見たい。お三方。お手合わせ、お願いできないだろうか?」
3VS2でのバトル。と言うことになる。本願であるカオスは出て来ないし、入団したばかり。と言うなら、ガチガチに強いということは無いと思いたい。
「タオ。やってやろうじゃねぇか。俺達も1勝を上げてぇ!」
「せやね。前回みたいなことも無さそうし、真っ当な勝負ってことやけれど。……君の方は大丈夫?」
ふみなアバターの方を見れば、彼女は静かに頷いていた。相手は別タイトルの再現機体だが油断はできない。むしろ、ネタに走る奴の大抵は強いという認識があった。
「よし。それでは、勝負を始めてくれ!」
カオスの宣言と共に、3機と2機による戦いは始まっていた。彼らの繰り広げる戦いを、カオスは興味深そうに観察していた。