GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
「という、顛末だったそうです」
ガンブレ学園、ガンプラ部。顧問であるフドウと先輩のコウラと一緒に昼食を取っていたアラタこと、新田は昨日の出来事を勝手に暴露していた。これを聞いたフドウはカラカラと笑っていた。
「ミサさんから色々と愚痴は聞いていたけれど、少しでも2人の間が縮まったらよかったよ。サナと一緒に心配していたんだ」
「流石にツォーン(比喩)ぶっ放したのはビックリしましたけれどね。ひょっとしたら、今も介抱されているかも」
「良い大人が何をしているんだか」
フゥと。コウラが溜息を吐いていた。ここら辺は常識的に考えれば制動が利きそうな物だが、6年という時間はブレーキを緩くするには十分すぎたらしい。
「それだけ溜め込んでいた物があったんでしょうよ。で、コウラ先輩。バトルトーナメント3回戦はやっぱり、フリーダムフリートみたいですね」
『ニシワキエンジニアリング』を相手に勝利を収めたビアンカだったが、3回戦でついに彼らとぶつかることになった。こればっかりは万全のメンツで挑みたいと言うこともあり、コウラとカルパッチョが選抜されていた。
「カオスさんね。一時期は世話になっていたこともあったから、彼の実力を間近で見ることもあったけれど、プロ並よ」
「俺も彼らのバトルトーナメントの戦いぶりを見たけれど、僚機のメンバーも相当に強い。多分、トウマ位はあると思う」
プロの世界に身を置いていたフドウが評する位なのだから、カオスは相当に強いのだろう。事実、アラタは今まで彼に勝ったことがない。
「ただ、気になることもあるんだよね。アレだけ強いプレイヤーが、どうしてこっちでも話題にならなかったんだろうって。……加えて、彼。覚醒使いでもあるんだよね?」
GBBBBで強者と言われているプレイヤーは、実機や筐体の方で成績を残していることも多い。中には本当にGBBBBから初めて昇り詰めた人間もいるが、極少数である。
「はい。以前、俺とカルパッチョで下克上をしようとした時に見ましたが、俺のと違って、金色に光っていましたね」
「今聞いても、何やってんの? ってなるわね」
あの時の動画配信に出ていた奴らで正気だった奴は誰もいなかった。
白昼夢レベルで理不尽な展開の連続だったからこそ、とんでもない再生数になっているのだが。
「もし、彼の経歴から調べることが出来れば、バトルスタイルも掴めるかもしれない。サクライさんに許可は取っているから、データベースにアクセスしても大丈夫だよ」
「良いんですか? そこまでして貰って?」
「うん。知りたいと思う生徒の意欲を叶えるのが教師の仕事だから。……それに、俺達に勝った相手が、3回戦敗退するってのは悔しいしね」
教師としての責務にほんのり混じった私情が微笑ましかった。昼食を食べ終え、コウラと一緒に部室から出ようとした時である。バタンと扉が無造作に開かれた。
「あ、コウラちゃん! 新田君! フドウ先生! これから、お昼? よかったら、私達と一緒に……」
達。と、複数形になったので彼女の後ろを見れば、背の高い男性が1人。新田は不愛想な表情を隠さずに行った。
「もう、食べ終えたんで。どうぞ、遠慮なく使って下さい。ユイ先輩、丹生先輩」
「そうね。新田、早くデータルームに行きましょう」
スタスタと2人の脇を擦り抜けて行った。何とも言えない気まずい空気が漂う中、ユイは溜息を吐いていた。
「先生。私達どうすれば良いんだろう?」
「定番だけれど、ガンプラバトルして和解ってのは?」
フドウが提案してみたが、ユイは首を横に振っていた。ガンブレ学園の生徒として提案してみたことはあったそうだが。
「受けてくれないんだよね……」
思ったよりも彼らの関係は重傷であるらしい。教師として勝負を強制させたところで良い結果は生まれないだろう。どうした物かと考えていると、今まで黙っていた丹生が手を挙げた。
「大丈夫。近々、僕が2人と戦うことになるから」
「え? 何かあるの?」
フドウが尋ねると、丹生は首を縦に振っていた。具体的な方法は分からないが、算段はあるらしい。解説を求める様にして、ユイに視線を送ってみれば、彼女はビシッと決めていた。
「こんなギスギスの雰囲気を解消して、フドウ先生には楽にさせてあげるから、ガンプラをしっかりと磨いておいてね」
「????」
このユイという女性は脈絡もなくガンダムのセリフを引用して来るので、度々理解不能な存在となるのだが、丹生は分かっているのか。懐から取り出した扇子を開いていた。
どういうセンスしているんだ? という、フドウの疑問はさておき、ユイ達も弁当を広げ始めた。『選り取り見取り!』と言いながら、丹生に食べさせている姿を見て、フドウは胸焼けを起こしていた。
~~
「それで。カオスに付いて、何か分かったの?」
その日の夕方のことである。今晩の参戦メンバーであるカルパッチョを加えた、相談会をしていた。
「どうやら、彼。昔からガンプラファイターで覚醒使いでもあったらしいのよ。だから、覚醒の練度は向こうの方が上でしょうね」
「あの、カサカサ動き回る覚醒でしょ? あの頃のアラタはあまり強くなかったけれど、今はカチコチガーディアン覚醒を使えるんだし、勝負は五分よ」
推定中身が男だとされる、この女。調子に乗りやすい性質ではあるが、物事を見極めるシビアさを併せ持っている為、何かとロマン的に考えやすいビアンカの面々を諫める役をも担っていた。
五分。とは良い見立てだろう。メンバー的には1回戦以来のベストメンバーと言えるし、上位クランに十分食いつけるだけの戦力は揃っている。一同が仔細を詰めようとした所で、拍手のエモーションを送りながら近付いて来る機体があった。
「五分とは。随分、強気に出たものだね」
「カオスさん……」
「カオスじゃねぇか。挨拶に来たのか?」
「それと、2回戦突破のお祝いも兼ねてね。初めて会った時とは比べ物にならない位に強くなった。成長した君と戦えるなんて、私は嬉しいよ。これもコウラ君の指導の賜物かな?」
「はい。アラタはよく伸びるので鍛え甲斐がありますから」
「へっ。3度目の正直を見せてやるんだぜぃ!」
ついに、3回戦目にてリベンジになるのか。上半身がRX-78へと戻ったガンダムタンクが拳を突き出そうとした所で、横から介入して来る奴が1人。
「ちょっと待って。なんか、私が当然いない物として扱われているのはどういうこと?」
「うん? 何を期待しているんだ? この愚か者めが」
どうやら時間と距離を置いてもしっかりと遺恨は残っていた。だが、ここで反省する訳がないのが彼女だった。
「ハッ。今に見ていると良いわ! アンタはこの超有能人気配信者を追放した、愚か者としてGBBBBに名を知らしめるのよ!! 帰って来てくれ! って言われても、もう遅いんだからね!」
「結構WEB小説とか読むタイプ?」
アラタの質問はスルーされたにしても、ここまで前振りが凄いともはやワザとやっているんじゃないかと思う位だった。対する、カオスは鼻で笑っていた。
「そんな品性下劣なことを捲し立てる奴を追い出せてスッキリしているよ。だが、君『達』には狼藉を働かれたからね。私もやり返さないと沽券に関わる。そこでだ。……私達が勝った場合は、アラタ君を貰おうか」
「え?」
「何を驚いているんだ。私のクランを乗っ取ろうとしたんだから、それ位はやり返させて貰うぞ」
カルパッチョの陰に隠れて忘れがちだが、謝罪したとは言えアラタも狼藉には参加していた。あの場で戦わないという選択もあったと言うのに、彼は戦うことを選んでいたのだから。
「はぁ~~~!!? 人が所属しているクランのリーダーを奪おうだなんて! 恥を知りなさい!!」
「恥を知るべきはお前だ! 先日の配信も見ていたが、あの奇声は何だ!! 品性を疑うぞ!!」
バトルトーナメント3回戦に赴く者達としては、あまりに相応しくない低次元な遣り取りだった。……というか。
「カオス。お前、そんな風に叫ぶんだな……」
「ハハハ。身内の幹部だから多めに見ていたが、コイツには不満しかないよ。陰で、私のことを中二病のオッサンと言っていたのも知っているんだからな!」
むしろ、我慢していたカオスがよっぽど大人だったんじゃないだろうか。ここまで抑えて来た彼の我慢の限界をどうして批難することが出来るだろうか。
「器の狭い奴ね!!」
「器の中で跳ね回って破壊しようとしたお前が言うんじゃァない!」
「責任転嫁!? 本当、呆れた奴ね!! もういいわ。アラタ、コウラ。次の試合でコイツに目に物を見せてやりましょう!!」
2人してあまり頷きたくなかった。頷いたら、コレと同類だと思われるからだ。なので、彼女を無視して直接カオスに言うことにした。
「次の試合。そっちの挑戦を受けて立つぜぃ!」
「フフフ。君なら、応えてくれると思ったよ! やはり、原石は人の手で磨かれてこそ。だからね! コウラ君、君と戦えることも楽しみにしている。残りはついでで相手をしてやろう」
「は? 嘗めんなハゲ」
最後の最後までマナーとかネチケットとは無縁な会話を繰り広げていた。……気を取り直して、3人は今晩に向けた最終確認を進めていた。