GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
後、今回はストーリーが進まないおまけ話です。予想以上に私は2人のべたべた話が書きたいらしい。
「あ“あ”あ“あ”あ“あ”ぁ“あ”」
ミサは悶絶していた。社会人になってから辛いことはあってもハズすことが無かったハメを思いっきり外した結果、副作用で苦しむ強化人間めいて悶絶していた。
と言っても、この展開も予想していたのか。今日は休みにしていたのは賢明な判断だった。あるいは休む前提で悪酔いすることを決めていたかもしれない。
かつてない程に情けなく弱弱しい姉を見ながら、リンは付きっ切りで看病しているタクマを見た。
「本当に良いんですか? お仕事とかは?」
「俺の仕事は自由が利きやすい。リン君も学校があるから、早く行った方が良い。君のお姉さんの看病は俺がする」
昨晩に吹っ切れたのか、女々しい彼の姿は無かった。登校するリンを見送った後、彼はカドマツに連絡を取っていた。
「カドマツ? すまない。連絡が遅れた」
『良いってことよ。にしても、この時間に連絡って。まさか、お前ら……』
「顔面にツォーンを放たれた。鼻にも入って、逆流して咽た」
『そう言う報告は要らない。付きっ切りで看病していたって所か。今日は嬢ちゃんの面倒見といてやりな。仕事はこっちに任せろ』
「助かる」
事情を知っている相手の心遣いを有難く受け取りながら、タクマは台所に行って冷凍されたご飯や卵を取り出して、雑炊を作り始めた。1人暮らしが長かったこともあり、自炊くらいは出来る様になっていた。
「ミサ。空きっ腹だと胃が荒れる。何か入れておいた方が良い」
「ありがと……」
タクマ手製の雑炊を啜りながら、何とか上体を起こしていた。未だに全身が重い。昨晩の記憶が途中から消えている。今、自分はパジャマを着ている。恐らく、リンが手伝ってくれたのだろう。
「あの、タクマ? 私、途中から記憶が無いんだけれど、何かあった?」
「知らないふりをしても無駄だ。ミサに聞こえる様にカドマツに話したからな」
彼なりの反撃だった。悪酔いした挙句、顔面にツォーンをぶっかけは6年間放置されたにしても、あまりに酷くはないか。
「えっと……ごめん」
「羽目は外し過ぎて、体を壊さないようにな。ロボ太、迎えに行くんだろう?」
なんで、知っているの? と、聞こうとして。彼の視線が本棚に向けられていることに気付いた。自分と彼を繋ぐ要素に加えて、これだけ関連書籍が並んでいるのなら察することも出来るだろう。
「うん。私、諦めていないから。ロボ太のこと。勿論、君のことも。ねぇ、聞かせてよ。ここならGBBBB内でログを取られたりすることも無いだろうからさ。私の前から消えた後、何があったの? カドマツが身を隠したのって。……ナジールさんの件だよね?」
ピンとタクマの気が張った。周囲に注意を払いながら、ドアとカーテンを閉めた。念の為にミサのスマホもOFFにしていた。
「昨晩、みやこさんの所で少しだけ話したけれど。あの事件が与えた世界的な影響は多い。それこそ、ガンダム00に近い物がある」
機動戦士ガンダム00。いわゆる『ニュージェネレーション』と呼ばれる、宇宙世紀などに属さないガンダム作品の一つである。勿論、ガンプラバトルにも参戦しており、タクマも愛用している。
「今更、振り返る程でもないけれど。ガンダム00のストーリーって」
ガンダム作品としては非常に珍しく、西暦と言うリアルでも馴染みの深い記年が使われている。まるで、自分達の未来を予想していたかのように。作品内でも重要な施設である『軌道エレベーター』は実現した。
だが、制作側は何処まで未来を見通していたのか。作中では枯渇した化石燃料に代わる太陽光発電システムによるエネルギー供給が確立されるが、これらの恩恵を受けられるのは超大国のみであり、小国では絶え間ない紛争が起きている……という状況を終わらせる為に4機のガンダムが武力介入をしていき、やがて大国と世界をも巻き込んで行くという物語だ。
「宇宙エレベーターを利用した太陽光発電システム。これが完成すれば、人類はエネルギー問題を解決できるだろうが、ナジールが居た様な石油輸出国には致命的なダメージを受ける」
中東における石油は国の礎を支える程の重要な資源だ。もしも、大国がこれらの依存から脱却すれば、世界情勢は本当に00の様になってしまう。
限りある資源、何時尽きるか分からない有限のエネルギーから無限のエネルギーへ。多くの人達にとっては新たなる未来でもあるが、旧来の体制で細々と生きている者達にとっては悪夢のような話だった。皆を照らす光の中では生きられない者達に手を伸ばすべく、抗った者がいた。
「ナジールさんって、今はどうしているの?」
「少なくとも俺達では接触できない。どうなったかも分からない。……ただ、あの事件はアレで終わっていない」
当然だ。石油輸出国は彼がいた国の話だけではない。そもそも個人が起こした事件として、あまりにも規模が大きすぎるのだから協力者がいたと考える方が自然だった。
「じゃあ、まさか。私達が狙われて……」
「たかが、ガンプラバトルが強いだけのガキを捕まえて報復してもメリットが薄い。もっと言えば、俺達の代りなんて幾らでもいる」
幾ら世界的に有名だろうが、所詮はゲームが強いだけの人間など幾らでも代りがいる。……ただ、そうはいかない人間がいる。
「カドマツ。は、そうはいかないよね」
「宇宙エレベーターの制御AIのウィルス除去、落下阻止。00的に言えば、アザディスタン関係の国々からの恨みは凄いだろうな」
冴えないおっさんだと思っていた彼は、とんでもない人間になっていたらしい。そりゃ世界を二度も救えば、そうなるか。
「アメリカに武者修行に行った。って、言っていたけれど。本当の所って、カドマツと一緒に保護して貰っていたの?」
「いや、本当は俺まで付いて行くつもりはなかったけれど、ウィルに条件を出されたんだ。カドマツが技術者としてポテンシャルを引き出せるように、俺も同行する様にって。実際に向こうでのバトルもまぁ……楽しかったけれど」
「あのやろう」
自分には何も事情を説明しないで! と思ったが、最初から自分の扱いは妙に軽かった覚えがある。付属品みたいに思われていたのだろうか。
「かと言って、高校生の身分で働くとしたら。タイムズユニバース所属のプロとして身を立てるしかなかった。後は、ミサには説明した通りだ。GBフェスタの時はガンプラバトルの市場価値が損なわれるかもしれないから、叩いて来いって言われて向かわされたけれど」
「ケッ。企業の犬が。……ちょっと待って、じゃあまさか。GBBBBのスポンサーにアイツいるの?」
「居るに決まっているだろう。世界のタイムズユニバースだぞ」
6年間の間に彩渡商店街を呑み込んだだけではなく、世界的にも躍進していたらしい。……自分はその全てに放って行かれたが。
「ちょっと待って。じゃあ、ウィルは自分がスポンサーしているのにミスターガンプラを呼んだの?」
「流石に蟠りは解消しているだろ……」
ウィルとミスターガンプラ。2人の間には結構な確執があるのだが、ガンプラバトルなどを通して解消されたのだろうと納得した。
自分は放って行かれたが、ある意味。そのおかげで平穏無事に暮らせていたのかもしれない。
「今は、2人共大丈夫。なんだよね?」
「……微妙な所だ。世界的にも落ち着きは見せて来ているが。世間もエネルギー問題が解決しそうになって、次はAIに目を向けている」
こういった状態こそ一番何かが起きやすい。だが、世間としては過ぎ去った事として次の段階へと目を向けている。
「ガンダム00に次いで、次はビルドダイバーズ。ちょっと、ガンダムって未来を先取りし過ぎていない?」
「未来の話だぞ」
最近は未来への解像度も上がって来ている。むしろ、フィクションに現実が寄って行っている時代なのかもしれない。
「これで。成長させたAIが使われて、軌道エレベーターが侵略されて、太陽光発電システムをクラッシュさせようとする。みたいな、流れにはならないよね?」
「止めろ。本当にありそうな気がするだろ」
システム面にどれだけ気を遣おうとも人間が作る以上、セキュリティホールは発生してしまう。完璧な物を作れる奴はいない。
「な~んで、ただのガンプラバトル好きが、そんなことを考えないといけないのかねぇ……」
はぁ。とクソデカい溜息を吐いた。ただ、寂れた商店街を盛り上げたくてガンプラバトルによる町興しを図っただけなのに、何時の間にか世界規模で注目されることになっていた。
「だったら、ガンプラバトル好きらしく。ガンプラのことを考えていたら良い。……そう言えば、俺が渡したガンプラは?」
「タクマと話が出来るまでは、仕舞っていたんだけれど」
収納棚から、ガンプラ専用のプロテクタースーツを取り出していた。中には、彼が渡したフルスクラッチのガンプラ『カーネーション』が納められていた。
「『無垢の愛』って柄にもない」
「使ってくれたりとかは?」
「いや、私にはアザレア・ブレイジングがあるから。かと言って、使われないのも勿体ないし、動いている所は見たいからリンに渡そうと思っている」
「そ、そうか……。出来たら、ミサに使って欲しかったけれど。仕方ない」
自分の愛機があるなら優先したいのも分かるし、無理強いは出来ない。ただ、彼女が大切に思っている人の手に受け継がれるなら、それも良いだろう。
「ねぇ、タクマ。私の酔いが醒めるまでもっと話してよ。6年間に起きたこと。あったこと。昨日は私が話してばっかりだったからさ」
ここには二人以外誰もいない。誰かに聞かれることも無ければ、恥じる必要もない。
「そうだな。俺が最初にアメリカで出会ったのは、マイ・リトルポニーでケモナーになった奴が作った風雲再起ガンプラで」
「初っ端から特盛やめない?」
もしや、コイツがGBBBBの無法地帯を許しているのはアメリカの自由な気風に冒されたからではないのか。日本の発想の先を行く超大国の話を聞きながら、ミサの酔いは否が応でも醒まされて行った。