GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
「おい。ボーボボが使っているの。覚醒じゃね?」
ロビーも騒めいていた。覚醒使いは存在が稀有な為、大抵は話題になるのだが、今まで彼の名前が挙がったことが無かったからだ。
この期に及んでの隠し玉として温存していたのか? あるいは、ボーボボが生み出す無軌道・無秩序な立ち振る舞いが覚醒っぽく見えているだけではないのか? この場に真相を知る者は誰もいない。
「よし! 皆! ちょっと待ってて!!」
リンがVCをオフにした。彼女は席を離れると、バタバタと姉のいる部屋へと向かった。昨日みたいなことがあったらアレなので、ちゃんとノックもして。
「お姉ちゃーん! タクマさーん! 聞きたいことあるんだーけどー!」
「なに?」
大分持ち直したらしく、ミサは平生と変わらない様に見えた。部屋の隅ではタクマがガンプラの調整をしていた。すると、充電されていたスマホが鳴った。相手はカドマツだ。
『まさか、マジで一日嬢ちゃんに付きっ切りだとは思わなかった。今、GBBBBの様子を見ているか?』
「いや、見ていない」
リンが部屋の様子を見れば、一ヵ所にランナーが集められており、きっと調子が戻った後は2人でガンプラを組み立てていたか、ベタベタしていたのだろう。塗料とかを。
「そうだ。お姉ちゃん達にGBBBBの様子を見て欲しくて来たの」
『お、そりゃ丁度良かった。スマホの画面じゃなくて、大画面で見て貰った方が分かりやすい』
リンに案内され、彼女の部屋に上がった。PCではGBBBBが起動しており、バトルトーナメント3回戦の様子が映し出されている。タクマとミサが注目したのは、ボーボボの挙動だった。
「これって覚醒? でも、なんか雰囲気が……」
「ブラックナイトスコードカルラの時とよく似ている」
『正解。とは言え、未だ疑いの段階だ。ゲーム的におかしなことをしているとは断定できないから調査には踏み切れないが、嫌な予感がする。気を付けろよ』
通話が切れた。新たな覚醒者が見つかったという様な事態ではないらしいが、リンにはサッパリ分からなかった。
~~
鞭からクロースタイルになったボーボボとガンダム・タンクの拳法がぶつかり合っていた。覚醒者同士の激突なんて滅多に見られる物ではない。
アラタの機体は緑色の光を放つガーディアン覚醒であり、防御に重きを置いた性能を持っている。対する、ボーボボは赤色の光を放ちながら、攻撃性能に関する能力が上がるアサルト覚醒を用いていた。
「ボボボボッ!!」
「テメェなんざ怖かねぇ!!」
お互いが叫んでいることもあって、まるで戦いは猛獣同士の生存競争めいた物であった。お互いにゼロ距離で四肢を叩きつけ合っている。近代兵器を用いた、原始的な戦い。……男子ハートを持っている観客達は大いに盛り上がっていた。
一方、コウラの方はクロカンテ戦で積み重ねたダメージに加え、カオスと言う強者を相手に押されていた。
「コウラ君。君もね、決して動きは悪くないんだ。合理的な思考も、強いと思った武器を直ぐに取り入れる柔軟性も良い。だけれどね、君には足りない物がある」
また、男性特有のロマンだとか訳の分からない物を上げられるのかと警戒していると、カオスの機体から金色の光が放たれた。
「この! GBBBBに蔓延る混沌(カオス)を楽しもうとする心意気だ!! 定番! 合理性を遥かに乗り越える無軌道! 無秩序を楽しめぇええええええ!」
「私はね……そう言うおふざけが大っ嫌いなのよ!!」
先程、ジャイアントスイングによって破壊されたファンネルの修復とリキャストが終えたので、大量のファンネルを射出した。カオス1機に張り付き、全方位から襲い掛かる。
通常のプレイヤーでも対処は困難であるし、多少腕に覚えがあるプレイヤーはダメージ覚悟で突っ込んで来るだろう。だが、カオスは違った。
「私は!! 不可能を可能にする!!」
彼はバックパックから『M2000GX 高エネルギー長射程ビーム砲』を取り出すと、ファンネルに向けて砲撃を行うと同時に大回転を始めた。
先程、ボーボボが行った友情攻撃(一方的)を独りで疑似的に再現して見せたのだ。幾ら距離を取ろうが、点ではなく面での攻撃であった為。これまたファンネルたちは次々に潰されていた。
「なんでよ!!?」
「キミは合理的ではある。だからねぇ、簡単に想像が付くんだよ! カオスとは! 既存の物を識り、逸脱するということ!! 常識だの定石だの環境だのはなぁ、思考停止したお利口さん気取りが言うことなんだよぉおおおお!!」
機動力を向上させるライトニング覚醒。その脅威は、ガンブレ学園に収納されていたライブラリーでも見たこともあるしある程度の対策も考えていたが、今のブラックロータスの機動は自分が捉えられる物ではない。だからと言って、コウラは諦めない。
「(なら、相手の攻撃の瞬間に合わせて……!)」
「そこでだ、コウラ君! 私は君が一発逆転のカウンターや奥義を持っていようが関係のない撃破方法を思いついた!!」
ブラックロータスの手には二丁のビーム・マグナムが握られていた。直ぐにコウラは盾を構えた。だが、カオスは防御を嘲笑う様にして飛翔した。盾が覆えない箇所に向けての攻撃を始めた。
自分の力には多少の自信があった。フリーダムフリートに所属できるだけの知識や操縦技術もあったし、このビアンカを引っ張って行く主力メンバーであるという自覚もあった。だと言うのに。
「(全然、届か……ない!)」
カルパッチョも1機は道連れにしたと言うのに、自分はカオスに満足にダメージすら与えられていない。意気揚々と出場して、このザマでは格好が付かない。相手が悪い。と言えば、それまでだが。
徐々に減って行く機体の耐久力を見ながら、コウラは自分が何をできるか考えていた。ブラックロータスに触れる事すら不可能だというのなら、先程。カルパッチョがやっていたことを思い出した。空中戦を繰り広げていたが、地上の方を見た。アラタとボーボボが組み合っている。
「(アイツの真似をするのは癪だけれど)」
ガンダム・サファイアは糸が切れた様に地面に落ちていく。ドリルランスを構えて、地上へと落下して行き……ボーボボの機体を串刺しにして、地面に縫い留めた。
「ぎゃあああああああ!!」
「アラタ!!」
「分かったぜ!!」
今の衝撃で、ボーボボの機体から脚部が吹き飛んだので、アラタはすかさずグラウンドブレイクをぶち込んだ。彼を撃破すると同時に空中から放たれたビーム・マグナムの一撃がガンダム・サファイアを貫き、爆散した。
「こうなるのは予想していた。一騎打ちだ」
「3度目の正直だぜぃ!」
互いにクランリーダーだけが残った。両者の覚醒状態はまだ続いている。
両者、距離を取ってからの射撃戦へと移った。アラタのバックパックから光の翼が展開され、ライトニング覚醒を使っているカオスの機体に少しでも追いすがろうとしていた。
「こうした、大舞台にまで来てくれたことを嬉しく思うよ! そして、そのバックパックを未だに使い続けてくれていることも!!」
「俺のガンダム・タンクをここまで引き上げてくれたバックパックだぜぃ。アンタとの勝負がなかったら、ここまでは来れなかった!!」
「嬉しいことを言ってくれるじゃない!!」
しかし、ライトニング覚醒の機動力を前にしてはバズーカは命中しない、ガーディアン覚醒の防御力の前には、ビーム・マグナムも微々たるダメージしか入らない。持久戦に持ち込んでも良いが、楽しくはない。
と、すれば2人の考えは1つ。両者、デスティニーガンダムのバックパックからアロンダイトを引き抜いた。
巨大な刀身がぶつかり合い、火花を散らす。鍔迫り合いになった瞬間、お互いの頭部からバルカン砲が放たれた。与えるダメージは微々たる物だが、重要なのは相手の体勢を崩すことにあった。
「ッチ!」
ライトニング覚醒特有の機動力で、カオスはその場から脱してアラタのガンダム・タンクに何度も切り掛かった。流石にガーディアン覚醒を使っていても積み重ねてきたダメージバカにならない。
「私は今! 至上の喜びに打ち震えている! キミの様な好敵手と心行くまで戦い! その上、君を貰い受けることが出来るのだから!」
「ここまで熱い告白を受けたのは初めてだぜぃ!! だけどなぁ、悪いが応えることは出来ねぇ!!」
最早、告白めいた有様になっているが本人達はあまり気にした様子もなかった。それだけ、このギリギリのせめぎ合いを楽しんでいると言うことだろう。
アロンダイトが宙を舞った。アラタが徒手となり、拳法で攻撃を仕掛けた。カオスが手にしていたアロンダイトが弾かれたが、彼が本来持っていたビームサーベルがガンダム・タンクの腕を切り飛ばしていた。
「まだだ!!」
だが、切断された面から緑色の光を放つエネルギーが放出され、巨大なビームサーベルの様になった。フドウ戦の時にも見せた、バーストブレイカーだ。だが、カオスのビームサーベルにも同じような金色のエネルギーが迸った。
「キミに使えると言うことは、私にも使えると言うことだ!!!」
「うぉおおおおおお!」
巨大なエネルギーの奔流同士がぶつかり合う。周囲への余波もすさまじく、ブラックロータスのパーツも外れ、アラタのガンダム・タンクのパーツも吹き飛んでいく。衝突が収まった場所には、ボロボロになったガンダム・タンクとブラックロータスが居た。
「フフフ。どうやら、最後の最後で勝負の女神は私に微笑んだ様だ」
アラタのガンダム・タンクは両腕が吹き飛び、脚部も外れていた。だが、カオスの機体はどのパーツも軋んではいたがバックパックが吹き飛んだ位だ。後はグラウンドブレイクを決めれば、フリーダムフリートの勝利だ。アラタが叫んだ。
「見せてやる。俺が! 仲間と結んだ絆の力を!」
「ほざけぇ!」
この後に及んで絆の力ウンチャラで何とかなるとは思わない。負け惜しみだろうと思い、ビームサーベルを振り下ろそうとした時のことである。ガンダム・タンクの胸部がパカっと開き、中からシュルツム・ファウストが飛び出して来た。
「え?」
「仲間に渡した力は、ここにある」
完全に意識外にあったし、ライトニング覚醒が切れていたこともあってボロボロだった機体に2発のシュルツム・ファウストが直撃した。上半身が吹き飛び、そのままよたよたと歩いて……ブラックロータスは倒れた。
『勝負あり!! 勝利したのは、ビアンカです! まさかのフリーダムフリート敗退! これは大番狂わせです!!』
新生のクランがベテランクランに勝利した。ジャイアントキリングとしか言いようのない結果に観戦していたプレイヤー達が湧きたつ中、同クラン所属のドーラは冷たい目をしていた。
「おっぱいミサイルにやられるなんて情けない。やっぱり、リーダーは私の方が相応しい様ね。グスタフ」
「……俺もそう思う。お前は?」
グスタフに視線を向けられた3人目も控えめに頷いていた。
「……僕もそう思う」
「よし。じゃあ、情けないリーダーに代わって、私達がフリーダムフリートを代表して、マイスターと戦おうじゃないか」
フリーダムフリート程のクランであれば、出場チームを幾つかに分けることも出来る。その分、イベントをガン回しする必要があったのだろうが、彼女達は見事に達成していた。
4回戦まで勝ち残った彼女達が強豪であることは間違いなく、周囲からも注目を集めていた。
「見ろよ。ドーラ達だぜ。やべぇよ、やべぇよ」
周囲のプレイヤー達からも畏敬の念を集めていた。何故なら、ドーラ達の機体は3機とも全く一緒の姿。
モビルドールメイの頭部にウェザリングをかまして、髪の毛を緑色にしてシナンジュなどの袖付き系のボディを使って、彼女のアバターを再現した通称ドーラ部隊と呼ばれる3機が練り歩いていたからだ。カルパッチョもここまで自己顕示欲は凄くなかった。
「……出来れば奴と戦ってみたい」
グスタフは2回戦のリプレイ動画を見ながら、セリトが操る真TALE・レコの活躍に注目していた。