GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
バトルトーナメントが佳境に入り、そうでないユーザー達もモビルドールサラを求めて、ミッションに突撃する中。3回戦で敗退したカオス達の元に、とある人物が訪れていた。
「これは、これは。マイスター殿。私達の様な敗北者に何か御用ですか?」
「話したいことがある。私のVIPルームに来て欲しい」
カオスがクロカンテへと視線を投げると、彼は静かに頷いた。VIPルームへと招待された彼は内装を一瞥して、述べた。
「随分と殺風景な部屋ですな。GBBBBの頂点たる者、もう少し気を遣っても良いとは思うのだがね」
「生憎、ガンプラ以外の物はあまり必要としていない生活をして来たのでね。こっちの方が慣れている。早速だが用件を切り出そう。元・GBBBBスタッフである君に問いたい」
カオスは特段驚いた様子も無さそうだった。自分が呼び出された時点で、ある程度用件を察していたのかもしれない。
「なんだい? 私がGBBBBを恨んでいるとか。ぶち壊してやる。と、目論んでいるとでも思っていたかい?」
「正直に言うと、疑っている。このGBBBBでは、バグなどで説明できないクラッキングが幾らか散見されている。相当にセキュリティも厳重である筈にも関わらずだ。こんなことが出来る人間がいるとすれば、内部の人間か。もしくは、かつて内部にいた人間としか思えない」
マイスターの言うことは最もだ。外部の人間よりも内部にいた人間の方がクラッキングは行いやすい。加えて、カオスは元・GBBBBスタッフと言うこともあり、何かしらの遺恨があると考えれば動機も十分だった。が。
「とんでもない。私ならば、散発的なことをせずにウィルスなどをばら撒きながらデータを収集しつつ、GBBBB内にバラ撒かれているAI端末からマザーAIにハックするという道筋を立てるね」
「……お前じゃないのか?」
「信じて貰えるとは思っていない。知識も動機も十分すぎるからな。……私はかつて、このGBBBBがAIによって運営されると聞いた時は怒りを覚えたよ。折角の、ガンダムシリーズが。大量集積されただけのデータに営まれると聞いた時にはね」
現在、どれだけのネットゲームが生まれてはサービスが終了して行ったか。それらの膨大な運営データを取り込んだ上で、GBBBBは営まれている。
「人間だって今まで取り込んで来た経験やデータをもとにサービスなどを企画・開発している。AIだってやっていることは変わりない」
「いいや、奴らがやっていることは真似事に過ぎん。シンギュラリティ等期待するべくもない。運用している君達がAIの弊害を知らぬわけでもあるまい?」
当然、GBBBB側もAIの弊害は把握している。ネット上の膨大なデータを取り込む為、時には誰かの知的財産や著作権を犯してしまうことだってあり得る。
「果たして。今まで開催して来たイベントのソースコードもサ終したMMORPGから引っ張って来た物かもしれんしね」
「運営側も細心の注意を払っている」
「だったら、最初から人の手で組めば良い話だろうが。そんな下らぬ実験場に、私の愛したガンダムが使われるなら! ……とも考えたがね」
するとカオスはコンソールを開いた。ロビーにはサラのパーツを手に入れて大喜びする、すーぱーふみなとギャン子の群れに加えて、ガンダムらしさが欠片も見当たらない俺ガンプラ共が跋扈していた。
「このGBBBBを作り上げているのは貴様らではない。彼らだ。何にも囚われない、想像の海(カオス)で暴れ狂う彼らを見て思ったのだよ。AIごときが、我々からガンダムを奪える訳がないとね」
「それで良いのか……」
もれなく、すーぱーふみなやギャン子の尊厳は奪われているのだが、必要な犠牲であるらしい。何なら、モビルドールメイも同一性を奪われている気がする。とは言え、彼から十分すぎる程のガンダム愛は聞けた。
「気になるなら、私のログでも何でも確認すればいい。私はこのGBBBBが終わることは望んでいない」
「そうか。疑って悪かった」
マイスターのアバターがペコリと頭を下げた。確かに内部犯ならもっとスマートに攻める方法もあっただろう。特に実装されていないカルラを動かした件に関しては、サーバーに及ぼす影響が大きすぎる。
「構わない。ただ、元・スタッフとして気になることがあるのだが。良いかね?」
「なんだ?」
「このGBBBBはAIが運営していると言っていたがね。彼らのセキュリティは万全なのか?」
「詳しい話は俺も分からないが、相当に念入りに固めている」
タクマは情報工学についてはあまり詳しくないので何とも言えないが、かなり厳重な物だと言うことは聞いている。
「AIがね。膨大なデータを用いて、セキュリティを堅牢にしようとね。人の想像は必ず上回る。良いことでもあるんだが、悪いことでもある。君なら、特に実感を持って分かることだろう?」
「……何のことかな?」
「そうだった。君はマイスター・ジンだったね。失礼、6年ほど前にそんな事件があったという話だ。有名だろう?」
どれだけ厳重にしようと都度破られているのだから、二度あることは三度ある。加えて、昨今は心当たりのある事件が多い。
「時間を取らせてすまない」
「いやいや。私は敗退して暇人だからね。だが、時間を取られたんだから少しは褒美が欲しいな」
「なんだ? GPか? 限定パーツか?」
「実は私、6年前の事件があってからね。ガンダムに乗って世界を救った少年、少女のファンになってしまってね。特に少年が使っていた機体が気に入って、間近で見ることが出来たら、凄く嬉しいと思うんだ」
現在、GBBBBではコマンドクアンタは店売りとして実装されていない為、もしもお出しできる人間がいるとすれば再現で作られた物か本人位しかいない。
ともすれば、それは身バレに繋がることではあるが疑いをかけた上に時間まで取ったのだ。返礼はあってしかるべきだと考え、マイスターは機体を切り替えた。
「これで良いか?」
目の前に現れたのは、正に件のコマンドクアンタであった。すると、カオスは彼の周りをグルグルと回り始めた。
「おぉ、こんな間近で見られるとは……。公開しないからスクショは」
「すまない。この部屋ではスクショおよび録画機能は一切使えないんだ」
「そうか。いや、じゃあ目に焼き付けて行くから」
慇懃無礼な様に見えて、実は丁寧なだけの愉快なおっさんだった。……だが、実の所。タクマは冷や汗を流していた。
「(もしも、GBBBBのユーザーが真っ当で普通な人間ばかりなら、カオスはこの運営に牙を剥いていた。と言うことでもあるんだよな)」
その場合はどれだけの被害が出ていただろうか。それと同時に、ガンダムをこよなく愛する人間を犯罪者にしていたかもしれなかった。と思うと、タクマはモニタに移る数多のユーザーに感謝を……。
『うぉおおおおおお! シュピーゲルも来るのかぁああああああ! 俺の対魔忍ふみなと、お前のシュピーゲルふみな、そしてお前のニンジャスレイヤーふみなと忍者バトルしようぜ!!』
『水の様に~~~! 優しく~~~!! 花の様に激しく~~~!!』
腕を4つに増やした茶色いハイ・ゴッグが激しいダンスを繰り広げていた。元ネタがマイナー過ぎて分からないだろうと思っていたら、急にキャプテンガンダムが現れて元ネタを解説し始めていた。
『僕、分かるで!! 『SDガンダム外伝 機甲神伝説』に出て来たネオジオン族よな!!』
『なんだ、このキャプテンガンダム!?』
特に打ち合わせも何も無くこんなやり取りが始まるガンダムゲーはGBBBB位しかないだろう。カオスも大層満足そうにしていた。
~~
『カドマツ。スポンサー達が『AIの風評被害をどうにかしろ』って、抗議が来ている。最近、あっちこっちで誤動作が起きているからね』
「ウィル。無茶を言うな、GBBBBだけじゃなくて全国のAIの面倒を見るなんて、俺には出来ないぞ」
昨今、各地で相次ぐAIの不具合にユーザーからは不満が寄せられていた。各方面で対応はされているが、こうも立て続いて異常が起きれば不満は募って行く。
『心当たりがある奴は、とっくに刑務所からオサラバしているしね。本当に、そっちの国の司法はどうなってんの?』
「あるいは。司法に保護されていた方がマシな目に遭っているかもしれんがね」
両者にとって覚えのある人物がいるらしいが、所在は掴めていない。回り回って、GBBBBに影響するのだから何もしない訳には行かなかった。
『関連企業とかの対応は僕がやるにしても、GBBBBって最高のプレゼン場所で商品価値を示さないと、スポンサーも納得してくれないからさ。諸々の悪評を吹っ飛ばす位に、良い運営を頼むよ』
「はいはい」
連日、各メディアに出ての解説に加えてGBBBBのスタッフ業もやっているのだから、カドマツの仕事量は膨大な物になっていた。それでも、彼にはやり続けるだけの事情があった。
「(お前が歩んでいただろう未来を見る為に、俺も踏ん張らないとな)」
彼が操作しているモニタには、マイスターのクランに所属する騎士風のアバターをした男性が映し出されていた。