GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
バトルトーナメント4回戦当日。試合はゴールデンタイムに行われるので、早く帰り過ぎても時間を持て余してしまう。故に、アラタこと新田は部室で時間を潰すことにしたのだが、先客が居た。
「珍しいですね、丹生先輩。たまにしか部活に顔を出さないのに」
「今日は特別な日だから」
彼が部室にやって来るのも珍しいが、中で作業をしているのはもっと珍しい。
他に誰かいないかと思ったが、今日に限ってコウラもユイもいない。ショウゴも今日はバイトの日だと言っていた。なら、自分も帰ろうかと考えたが、ここで時間を潰すと決めていたのを変えざるを得ない。というシチュエーションが気に食わないので、いない物として彼も作業をすることにした。いつもは賑やかな部室が嘘のように静かだった。
「新田君。良い物を作る様になったよね。昔は型にハマった感じがあったけれど、今はとても自由だ」
「……どうも」
GBBBBでの経験が大いに影響していることは間違いない。一昔前の自分なら、美プラを組み立てようものなら惰弱と切り捨てていただろうし、対魔忍を組み立てようものなら某アコードの様に『ハレンチだぞ!』と訴えていただろう。
「向こうでは良い友人と出会えたんだね」
「おかげさまで。でも、丹生先輩も友人は沢山いるでしょ? なんたって、ガンブレ学園の英雄サマなんですから」
かつて、ガンブレ学園はガンプラバトルが強ければ、大体のことは思い通りになるという嘘みたいな状態が罷り通っていた。そんな状況を打破したのが丹生であり、同期の生徒達の間では彼を知らない者はいない。
「慕ってくれる人はいる。頼りにして来る人もいる。でも、友人と言えるのはユイ姉ェとショウゴ位だ」
「コウラ先輩は違うってのか」
「僕は都合がいい男じゃない」
先輩であることも忘れてタメ口を利いたが、丹生からは重く低い返事が返って来た。思わず、新田は閉口してしまった。
つい威嚇するような口の利き方をしてしまったが、新田としても彼の主張は理解できるのだ。今までの付き合いからも分かるが、コウラには押しつけがましい所がある。なまじ道理が通っており、本人も遂行しているので断り辛いというのがまた付き合い難さに繋がっているのだろう。
「一緒に学園を変えたってのに、その接し方は無いんじゃないんですか?」
「僕には僕の考えも気持ちもある。不機嫌さでコントロールしようとして来る相手に従う気は無い」
新田がふと思い浮かべたのはマイスターことタクマだった。ミサのことが気掛かりであたふたしていたのは見ていて面白く思ったし、何年も待たせて本気で申し訳なく思っていたいじらしさは傍で見届けたいと思える物だった。
対する、丹生は正反対だった。あまりに毅然とし過ぎている。物静かではあるが、彼自身の意思が苛烈すぎる。コウラが態度を硬化させるには十分すぎる。釣られて、自分が意固地になって行くのが分かる。
「調子を崩す訳には行かないから、今日は出来ないけれど。もしも、平日に行っていたらちょっとガンプラバトルを申し込んでいた所でしたよ」
「問題ないよ」
作業を終えたのか、丹生は完成したガンプラを新田の目の前に置いた。モビルドールメイをベースに、袖付きのボディなどを使って作ったチームリーダーのアバターを再現した機体だった。数日前、新田がGBBBBで見た物と同じだった。
「アンタ」
「今晩は楽しくなりそうだ」
陰気だと思っていた男が始めて見せた笑顔は、普段の印象を覆す位に獰猛で攻撃的な物だった。なお、手には別の女の再現美プラが握られている模様。
新田が戦慄する中、彼は丹生が作った美プラを撮影してユイへと送信しようとしたが、相手の方が先にスマホの画面を見せて来た。
「もう送ったし」
「くるっとる」
ご丁寧に『今夜、僕がGBBBBで参加する美プラ^^』と煽る様な文章を打っていた。ドン引きするかと思いきや『可愛いね!』という実に、何を考えているか分からない返事が来ていた。
果たして、この学園の不条理を破った男の正体や如何に。それも今晩の手合わせで分かるかもしれなかった。
~~
「と言うことがあったんですけれど、フドウ先生は知っていました?」
いつぞやに作った、ミサとフドウに加えてサナと言う女性を招いたチャットルームで尋ねていた。すると、少し遅れてチャットで返事が来た。
「相談は受けていたね。幾ら、ガンブレ学園を変えたと言っても彼自身は面倒臭がりの普通の子だよ。愚痴も不満も溜まるさ」
「話聞いていたら、肝がメッチャ冷えるんだけれど」
ミサも自らの行いを顧みて、肝を冷やしていた。もしも、一歩間違えていれば自分が見放される側になっていたことは十分にあったし、よりを戻せなかった未来もあり得たのだ。
「でも、タクマさんはミサさんと離れたくなかったんでしょ? 素敵だと思うな」
「フヘ。フヒヒ」
「なんか聞いたことが無い様な気持ち悪い笑い方をしている」
サナに素直に褒められたので、ミサの口から腑抜けた声が漏れていた。
もしも、この人間関係の仔細まで知った場合、コウラの彼女に対する当りは更に厳しい物になりそうだった。
「アラタ君。フリーダムフリートの幹部が強いのは今更言う間でもないけれど、抜擢される程には彼も強い。ガンブレ学園を変えたエースとの対峙、教師としてぜひ見守らせて欲しい」
「教え子達の成長。ぜひ、見て下さいね」
「私もロビーから見守っているからね」
「私も! 私も!!」
ミサとサナからも応援を受け、彼はチャットアプリを落とした。そして、バトルトーナメント用のメンバーが集められたVCへと移動した。
『アラタさん。この戦い、美プラファイターとして絶対に負けられねぇ!』
『私も。ここまで来たのだから、負けたくない』
『気合十分じゃねぇか。それじゃあ、向こうがGBBBB名物である美プラで行くなら、こっちはノリと勢いだぜぃ!』
試合開始時間になり、各選手が集められた。今回の出場選手と使用機体は余程珍しいのか、レコは難しい顔をしていた。一方、ミスターガンプラは非常に楽しそうだった。
『いよいよ4回戦。準決勝だ。ここに来て面白いマッチだ。片やフリーダムフリートの第2部隊。ドーラと彼女を守る騎士2人による『クイーンズ・グロウリー』。GBBBBのクラン戦やイベント戦では珍しい、美プラによって編成されたチームだ。バトルと言う激しい舞台における損傷で美観を損ねることを嫌って、使用を控えるプレイヤーも多いが、戦いの中で輝く美もあるはずだ!』
ガンプラであるなら決して美プラも区別しない。ネタの様に思えるが、ドーラが率いる部隊はマイルームやロビーに留まってしまうプレイヤー達を鼓舞する勇ましさが備わっていた。
「美プラはね! 持ってて、嬉しいコレクションじゃないんだよ! ここがGBBBBだってことを忘れているのかい!!」
サディストの様に見えて、よく聞くと励ましの言葉が多いので彼女のファンになる者は後を絶たない。人気と実力、両方に裏打ちされた強豪チームだ。
『対するは。今、最もGBBBBを騒がせている新興チーム。覚醒使い! 元・プロ! 都落ち配信者! そして! 私の相方であるレコ君を再現した機体で殴り込んで来た! このクランは正に無法地帯だ! チーム『ビアンカ』!!』
ガンダム。世界観や設定が違えど、誰もがあのスタイリッシュな造詣に憧れて、この世界に入って来る。俺の手でもカッコいいガンダムが作りたいと。だけれど、ガンプラを組み立てるのは難しいかも。置き場もないし……。
そんな者達の夢をかなえてくれるGBBBBにおいて、ビアンカリーダーの機体は異形だった。キュラキュラとガンタンクの履帯を走らせ、上半身だけは誰もが持っているRX-78-2で固めている。だが、バックパックだけはデスティニーの物を使っている。有体に言えば『ネタ機体』だった。
『うわぁ~。凄いですね! まさか、バトルトーナメント準決勝で美プラ大集合ですよ!!』
GBBBBのレポーターであるレコが再現された、セリトの『真TALE・レコ』。もはや、このゲームで見ない日が無い程に有名な機体。もはや、象徴と呼んでも差支えが無い機体『すーぱーふみな』。
『こんな巡り合わせがあるから! GBBBBは面白いんだ! さぁ、君達の戦いを見せてくれ!』
『私を使うんですから、今夜の試合はバッチ盛り上げて下さいね! セリト選手!』
まさかの選手名指名まで行っていた。このノリはもはやGBBBBにも受け入れられていると言うことか。両チームの選手がフィールドに入り、選手達の様子が映し出される。全員が同じビルドをしているが、細かい所は違うので個性が出ていた。その内の1機が首を掻っ切る動作をしてみせた。
「(上等だよ)」
あの美プラを動かしているのが誰なのか。アラタは直ぐに分かった。部室内では陰気な空気を放っていたが、学園一つを変えるには十分すぎる程の威勢の持ち主であるらしい。間もなく、戦いの火ぶたは切って落とされた。