GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】   作:ゼフィガルド

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63戦目:素直になろう!

「(やっぱり)」

 

 『クイーンズ・グロウリー』の3人目のプレイヤーは丹生だ。薄々と気付いてはいたが、可能性から目を逸らしていた。

 どうして、自分にGBBBBをプレイしていることを教えてくれなかったのか。決まっている。避けられているからだ。不幸なことに、彼女は理由が思い浮かばない程に愚鈍でも無かった。

 

「(なんで、私があそこにいないの?)」

 

 後輩の力にもなれず、意識をしている相手と手合わせすることも能わない。周囲の熱狂とは裏腹、心が冷え切って行く。どうして、自分はここに居るのか。

 彼女の異変はビアンカのメンバーにも伝わったのだが、誰も事情を知らないので何と声を掛ければ良いのか分からなかった。

 

「……コウラちゃん?」

 

 そんな折のことである。彼女に声を掛けたのは、スカイブルーカラーのウィングガンダムをベースにした俺ガンだった。コウラに代わり、シーナが対応した。

 

「お知り合いですか?」

「はい。彼女と同級生のユイです」

 

 彼女のパイロットアバターが表示された時、真っ先に声を上げたのはタオだった。

 

「あ。お姉さん、ひょっとして見学会の時に案内してくれた人? 皆さん。歓迎、ソーラー☆レイとかやっていた様な」

「あの時、来てくれた子かな? でも、その話は止めようか」

 

 本人的にも触れられたくない領域の話であるらしい。タオの情報を得て、以前に聞いたアラタの話も含めた、リンはおおよその事情を察した。

 

「(今、アラタと戦っている人、この人、コウラさんで三角関係ってこと? いや、ここにアラタを加えて……)」

「何の用よ?」

 

 コウラの声には敵意が滲み出ていた。だが、ユイは臆することも無かった。

 

「一緒に2人の勝負を見届けようと思ってさ、こういう機会って中々に無いから」

 

 これは偶然ではない。自分に続いて、アラタも2人のことを避けているからだ。原因を作ったのは、やはり自分だ。2人の間に生じた空気に呑まれ、誰もが閉口する中、ミサが声を上げた。

 

「色々と積もる話も多そうだけれどさ、まずは試合の方を見届けてみない? 多分、2人にとって無関心でいられる内容では無いだろうからさ」

「お姉ちゃん……」

 

 コウラはオプションウィンドウかログアウトをクリックしようとしてキャンセルした。ロビーに設置された巨大モニタには2人の勝負が映し出されている。

 

~~

 

「予想はしていたけれどよぉ!」

 

 あの時、丹生の機体が輝いたのはトランス系のスキルと言う訳ではなかった。カオスと同じく、金色の光を放っている。ライトニング覚醒だ。

 

「あっちの筐体での覚醒は動作が重くて好きじゃないんだよね。こっちは本当に遊んでいて楽しいよ。ねぇ、アラタ君?」

 

 軽快な機動からのアトミックバズーカと言う無茶苦茶なアセンブルで破壊の限りを尽くしていた。ガーディアン覚醒のお陰で耐えているが、爆風に阻まれて距離を詰めることが出来ない。

 

「畜生!!」

 

 射撃戦では不利なことは明らかだ。だが、アトミックバズーカも決して無限という訳ではない。本来なら使用に著しい制限が掛かっているハズなのだが、アビリティカートリッジで大幅に弾数を増やしているのだろう。

 

「懐かしいなぁ。僕も、前はこんな感じでアトミックバズーカぶっ放しまくっていたんだよね。あの時は筐体の不具合で、とある手順を踏めば無限に撃てたんだよ」

 

 数年前まで、ガンブレ学園で使われていた筐体はかなり特殊なモデルだったらしく、一般で使われていた物とシステム何もかも違っていたと聞いた覚えがある。今は一般モデルに統合されているが。

 

「今更、自慢かぁ!? 英雄サマよぉ!」

「何が英雄だ。ちょっと、強かっただけでどいつもこいつも押し付けやがって! 勝手に決め付けやがって!」

 

 途中から接触通信ではなくVCが漏れていた。ロビーで見ている者達の殆どは、何のことかは分からないが、一部の者達には刺さっていた。

 

「テメェも話そうとしなかっただろ! 黙っていたら、何も伝わらないってガンダムで学んでねぇのか!」

「誰も聞こうともしなかったじゃないか! 僕を置いて、話を進めて!」

 

 アラタの機体のバックパックから『ヴォワチュール・リュミエール』が噴出し、ガンダム・タンクが一気に飛翔する。

 一方、丹生の機体『ドーラ・ピューパ』改め『ユイ』は引き撃ちを徹底していた。ライトニング覚醒もあり、アラタの機体が追い付くことはできないにしても試合としては盛り上がりに欠ける物になっていた。

 

『徹底的に勝ちを狙っていく戦い方だね』

 

 ミスターガンプラもコメントし辛そうにしていた。同試合で行われていた、ドーラとセリト達の戦いがあまりに劇的な物だったこともあり、丹生の戦い方は顰蹙を買っているのかロビーでもブーイングが起きていた。これには彼も意気消沈するかと思いきや、むしろ恍惚とした表情となっていた。

 

「自分がやりたい戦い方をするって本当に気持ちいいなぁ!! おぉい! アラタくぅん! どうだぁい!」

 

 ガンブレ学園の英雄、救世主、ハーレムの主……。多くの生徒が彼にイメージを押し付け、偏見を積み重ねて来たのだろう。だが、ようやくアラタも彼のことが分かって来た。

 

「こんの! クソ野郎ぉおおおおおおお!!」

 

 コイツは善良でも何でもない。普通に性格も悪ければ、割と色々なことを面倒臭がる人間で。生真面目なアラタからすれば『クソ野郎』という評価が一番しっくりと来る相手だった。

 

「はぁああああああい! クソ野郎でぇえええええす!」

 

 アトミックバズーカの砲撃を辛うじて避けて、ようやく肉薄できる! と思うと、丹生の方か接近して来た。両手に展開したビームサーベルには金色の刀身が伸びている。バーストブレイカーだ。

 

「うぉおおおお!?」

「落ちろ!!」

 

 カオスの時は打ち合いになったが、今回は一方的に食らわされる側に回った。ガーディアン覚醒の上からでも機体のパーツと耐久力が吹っ飛んでいく。逡巡する時間は無かった。

 

「うぉおおお!!」

 

 ガーディアン覚醒の力を攻撃の為ではなく、防御の為に放った。すると、丹生のバーストブレイカーで削られた体力と吹き飛んだパーツが元に戻った。

お互いにバーストアクションを使って、覚醒の為の力は使い果たした。ならば、残るは地力だけだ。

 

「アラタァアアアアア!」

 

 アトミックバズーカが外れたら一貫の終わりになりかねない。故に、至近距離において丹生は2本のビームサーベルを選んだ。

 アラタもバックパックからアロンダイトを引き抜いて薙ぎ払ったが、丹生の機体が姿を消した。見れば、しゃがみ込んで胴体を切り裂こうとしていたので一気に前進させた。履帯が『ユイ』を轢き潰さんと迫る中、避けると同時にガンダム・タンクの履板を切り裂いていた。

 

「しま……!?」

「じゃあね」

 

 ここに来て、丹生は尚も慎重だった。第3回戦で見た隠し玉のシュツルムファウストを避ける為に背面へと回り込んだ。2本のビームサーベルを掲げ、アラタのガンダム・タンクへとビームサーベルの刃が迫りくる中、彼は正面を向いたまま、バックパックの『M2000GX 高エネルギー長射程ビーム砲』の砲口を背面に向けたまま、展開して引き金を引いた。

 赤青のエネルギー砲が『ユイ』へと降り掛かり、ガンダム・タンクにの胴体をビームサーベルが切り進む。僅か一瞬の交差。ガンダム・タンクはギリギリ上半身と下半身が繋がっているだけで、丹生の機体は上半身が吹き飛んでいた。

 

『勝負あり!!』

 

 レコの宣言と共に、バトルトーナメント4回戦の勝敗は決した。先程までロビーに蔓延っていたブーイングは一転して、歓声へと変わった。

 

~~

 

「お疲れ様」

 

 戻って来た彼らを真っ先に迎えてくれたのは、ミサだった。3回戦と同じく、最後の最後まで勝負の行方が分からない程の接戦だった。セリトがサムズアップで返す中、アラタは周囲を探していた。

 

「コウラ先輩は?」

「フリーダムフリートに行ったよ。アラタ君も行く?」

「……いや。明日、会って話すことにするよ」

「うん。そうすると良い。今日はもう休みなよ。連絡事項とかがあれば、私達が聞いておくからさ」

 

 ミサの厚意に甘え、アラタはログアウトした。チャットツールを開こうとも考えたが、直ぐにシャワーを浴びて寝ることにした。

 

――

 

「おはよう」

 

 朝一番のことである。部室に向かったアラタを待っていたのは、丹生だった。昨晩の様相が嘘だったかの様に、元の調子に戻っていた。

 昨日の感想から言おうか。それとも労いの言葉から始めようか。どれもが回りくどく感じた。

 

「アンタがコウラ先輩を邪険にしているのを見てムカついていた。一緒にガンブレ学園を解放した仲間って聞いていたのに」

「僕もイラついていた。僕が断れない状況を作って、動かしておいて、勝手に相棒面して、一方的に喋ってばっかりで」

 

 どちらが先にぞんざいに扱って来たのか。学園を救ったという英雄譚の中には、彼らの人間性が記された部分は無い。

 

「俺、丹生先輩が何を考えているのかって考えたこと。一度も無かった。本当は、先輩も嫌だったんですよね?」

「うん。僕、このガンブレ学園の奴らが嫌いだよ。過去の悪行を素知らぬ振りしているショウゴも、勝手に目の敵にしてきている新田君も。僕のことを勝手に持ち上げている連中も。中退は就職に響くからやらないけれどさ」

 

 なんてことはない。彼はコウラへの扱いだけがぞんざいだった訳ではない。そもそも、ガンブレ学園の扱い自体がぞんざいだったのだ。

 

「ユイ先輩だけは別と?」

「うん。だって、僕がこの話を最初にしたのはユイ姉ェに対してだし。話す気にさせてくれたのも、彼女だけだよ。リョウコ先輩も察してくれてはいたけれど」

 

 それだけで、彼女の機体を再現する位に心を許しているのだから、この学園において、彼は英雄として扱われ続けて来たのだろう。

 

「でも、ガンプラバトルは好きなんですよね」

「うん。大好き。一騎打ちだとか、正面からの打ち合いとか熱いバトルは嫌で、一方的に殴るのが好きなんだ」

「本当にクソ野郎っすね」

 

 カミーユも説教を辞さないレベルのスタンスだった。ただ、彼の姿は決して他人事ではない。型にハマることを嫌って既存の枠組みから抜け出そうとした自分と、無理矢理自分を押し込めていた丹生とはきっと正反対なのだ。

 

「でも、こうして話せてスッキリしている。出来れば、昨日のバトルも一方的にボコボコにしたかったけれど」

「武器の性能に甘んじている内じゃ無理っすね。出直して、どうぞ」

「じゃあ、次はもっと嫌がらせの為の装備にして来るね」

 

 本当にコイツは……と思ったが、目の前にいるのは皮肉屋で毒っ気の強いだけの男子生徒で、英雄なんかとは程遠い存在だった。

 

「コウラ先輩はアンタの何処に惚れたんだか」

「キミこそ、彼女の何処に惚れたの?」

「は? そういう感情は持ってねーし。ガンプラ組み立てている時の横顔にドキッとしただけだし」

 

 すると、丹生は立ち上がり部室のドアを開けた。扉の前にはユイとコウラが立っていた。全員が固まっていた。

 

「じゃあ、ユイ姉ェ。一限目の講義に行こうか」

「うん! 新田君も1時間目の授業に遅れちゃ駄目だよ」

「おい! おい!!!!」

 

 ちょっと気を許したらとんでもないことをして来やがった。2人が足早に去って行く中、コウラだけが残っていた。

 

「……昼休み。部室に来て」

「……はい」

 

 朝からイベントが盛り沢山過ぎた。新田は重たい体を引きずって、教室へと向かった。

 

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