GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
カルパッチョ達の突撃取材と前後して、リアルの話になる。
バトルトーナメント4回戦を終えて、マイスター達との決勝戦が控えている中、リンは悩んでいた。
「(ガンダムフレールじゃ、アラタ達の戦いに追いつけない)」
パーツレベルをかなり上げたが、元よりビルダーとして初心者である彼女が組み立てた『ガンダムフレール』の完成度は、周りの者達と比べると見劣りするのは否めない。かと言って、今からバラす程の腕前は無い。
「(何なら一から組み立てた方が早いだろうけれど)」
それがフレールよりも出来の良い物になる保証はない。自分をGBBBBに連れて来てくれた、この機体には感謝しているがいつまでも傍観者と言う立場に甘んじていたくはなかった。どうするべきかと考えていると、扉がノックされた。
「リン? 入るよー?」
「あ、お姉ちゃん」
会社から帰って来たばかりか、スーツ姿のミサの手にはガンプラ専用のプロテクターケースが握られていた。PCの傍に置かれているガンダムフレールを見て、彼女は直ぐに妹の悩みに気付いたらしい。
「今のままじゃアラタ君について行くのは難しい。ガンプラを新調しよう、とか思っていた?」
「まさに、その通りなんだけれど。今から組み立てようとしても何をすればいいのか、どうなるのかも分からなくて」
「なら、ちょうど良かった。リンに使って欲しい機体があるんだ」
ミサがガンプラケースから取り出したのは、先日のバトルトーナメント4回戦の出場選手を思い出させる美プラだった。モビルドールメイの頭部パーツをカスタムした物に、ザフトの赤服をモチーフにしたボディ、カーネーションの折り重なった花弁のような大型スラスターが特徴的なバックパック。
「コレ。お姉ちゃんが作ったの?」
「ううん。タクマが私にって。機体名は『カーネーション』だって。多分、花言葉関係でやったんだろうけれど『無垢な愛』って意味はあるにしても、色によって意味が変わるまでは想定しなかったッぽい。多分」
この『カーネーション』のカラーリングはルナマリア的な見た目をしていることもあって、全体的なカラーリングは『赤』~『ピンク』位だったので、赤いカーネーションの花言葉を調べてみると。
「『母への愛』。……え?」
「多分、アイツ。そこまで考えてないと思うよ」
恐らく、カーネーションからインスピレーションを受けて組み立て始めたのだろう。カラーリングに関しては機体の造詣に沿う様にはしたのだろうが、花言葉が色で変わる。と言うことまでは、考えが及ばなかったのだろう。
ただ、GBBBBの頂点にいる世界的プロプレイヤーがビルドした機体なのだから、完成度は見惚れる程に高かった。ミサの手にはカーネーションを読み込んだであろうデータが保存された、記憶媒体が握られている。リンは迷うことは無かった。
「お姉ちゃん! もしも、譲ってくれるなら、私に!」
「うん。リンの練度的にも必要になると思っていたんだ。アムロだって最終的にはマグネットコーティングが必要になったしね」
ミサから受け取ったデータを読み込ませて、GBBBBへと登録する為にクライアントを立ち上げた。あのマイスターが組み上げた機体が使えたら、きっとアラタ達と一緒に戦えるはず! と、彼女は興奮していた。ただ、1つ失念していたことがあった。彼女達がプレイしているゲームはGBBBBである。
~~
「なんとか抜け出せた……」
「何処でもお祭りが始まる辺りが、GBBBBらしいぜぃ」
カルパッチョの配信もあって急遽、美プラコンテスト的な物が開かれたが、他の配信者が引き継いでくれたので、彼女達はあの場から脱していた。
次なる獲物を求めて、ロビー近くに行くと。今度はシーナとコウラと言う珍しい組み合わせが、ミッションカウンター前に居た。2人共普段の愛機は使わずに、奇妙な機体を使っている。丁度、シーナがこちらに気付いたらしい。
「あら、カルパッチョさん。アラタさん。ごきげんよう」
お淑やかに挨拶をしているが、彼女が使っている機体は珍妙な物だった。
下半身がRX-78-2の物で、上半身はガンタンクで構成されている。コウラも同じ様な機体アセンブルをしていた。
「はーい、どうも! 特に格好つけずにスラリと自然に出て来る辺りに育ちの良さを感じますね~。リーダーのガンダム・タンクのあまり物で作ったみたいな機体とのギャップが凄いですね」
「はい。こちらはケンタウロスのあまり物と言う前衛的なイラストを見て思いついたのです。頭が馬で下半身が人間の物と言う、可愛くないウマ娘みたいなのがツボに入ったので。日々、こういうのを作っているんですけれど意外としっくり来るんですよね」
例えるなら。セリトのインタビューは道路を爆走している物だとすれば、シーナのインタビューはガードレールの上を突っ走っている様な感じだった。
「もしかして、良い所のお嬢様にありがちな厳格な家での生活の反動とかで?」
「はい。ですが、多少の抑圧はインスピレーションになるので、悪くないと思います。しかも、今日はコウラさんも付き合ってくれるんですよ。珍しいですよね」
『人に劇薬を飲ませるな』『カルーアミルクを牛乳瓶で飲ませる女』。等、彼女のスムーズな話の運び方のせいで、視聴者はトンチキをドバドバ飲まされていた。一方、コウラはと言えばグルグルとその場で回っていた。
「ちょっと、何映してんのよ!?」
「うぉー。これこれ、こういうハプニングが欲しかったのよね。クソ真面目なコウラちゃんがキチゲる瞬間を、私はフリーダムフリート時代からずっと待っていたの」
「ふざけんな! って、機体のアセンブル変えられないし!」
「出撃準備をしましたからね。変更は不可能ですよ。ちなみにレアドロ率上昇アイテムを既に使っているので、キャンセルは止めて下さいね」
あまりにスマートに囲い込むので、何処かで打ち合わせでもしていたんじゃないかと思ったが、GBBBBを謳歌している女が面白そうなことに首を突っ込まない訳が無かった。
「ねぇ、コウラちゃん。なんで、今更ネタ機体に?」
「わ、私もちょっとは考え方に幅を持たせようと思っただけよ。リーダーだって、ネタ機体を使っているしね」
「先輩も新たな領分に理解を示してくれて嬉しいぜ!」
アラタはいつもと変わらない様子をしていたが、コウラの方に妙な間があるのを察したカルパッチョが肩を組むエモーションを繰り出していた。
「そうよね。最近、アラタ君は人気者だからね。少しでも距離を詰めておかないと『先輩居たんすか?』になりかねないからね」
「は?????????」
人の神経を逆撫ですることに関しては、このGBBBBで彼女の横に出る者はいない。カオスに追い出されたのも必然だったのだろう。
ここで彼女の剣幕にビビッてやめれば小心者で済んだのだが、カルパッチョはスタースクリームに例えられるように、小物界の大物である。地雷を踏み抜いて行くスタイルを敢行した。
「初心なヒロイン、レディー・ガガ枠、美少女配信者、ミステリアスガール。そして、大人のお姉さん。年上枠まで埋まっている中、ヒステリー枠が割って入るのは難しいと思うのよね」
「ちょっと、VCをそのままにしておいてね」
何事かと思っていると、コウラのVCから曲が聞こえて来た。とても陽気になりそうな、主に千葉県のアミューズメントパークで使われてそうな……。
「ばっ、止めろ!!」
下手をしたらカルパッチョの首が飛びかねない著作権アタックだった。慌てて、距離を取ったのでギリ大丈夫だったが、下手したら強制的に動画配信が終了していたかもしれない。
「ふん。いらないことを言うからよ」
「なるほど。配信されたくない時は、そうすればいいのですね」
「多分、次やったら先輩のVCが停止すると思うんだぜぃ……」
死なば諸共は幾ら何でも潔過ぎはしないだろうか。このまま嫌味を捏ねていても、ビアンカのPR動画にはなり辛い。カルパッチョは渋々インタビューへと切り替えていた。
「では、シーナちゃん。もしも、ビアンカに来たいと思っている人がいたとして、書ける言葉があるならどうぞ!」
「正統派、美プラ派、ネタ派。ビアンカは全てのプレイヤーを受け止める懐の広さは持っています。でも、ここが首塚にならない様にだけ気を付けて下さいね」
「ガンダムで首塚って言葉が出て来ると思わなかったぜぃ」
出て来るとしたら、ギロチンが使われていたVガンダム位だろうか。それでも、中々に出て来るワードでもないだろうが。
「常識と非常識が混合しているのが、ちょっとしたサスペンス味があるのよね。では、コウラちゃんからも何か言うことは?」
「正統、美プラ、ネタ。どれをとってもいいけれど、そのスタンスに甘んじて精進を忘れる怠け者になってはいけないわ。偶に見るけれど、自分のわがままを人に押し付けるならしっかりと義務を」
「はい、ありがとうございましたー」
「途中なんだけれど」
『効率厨』『支持厨』等、コウラの発言が甚く気に入らなかったのか配信のコメント欄は若干荒れていた。さっさと切り上げたカルパッチョは懸命だったと言えるだろう。インタビューが終わったのを見計らって、シーナが手を振っていた。
「では、私達はタンク・ガンダムで行ってきます。コウラさんが気に入ってくれたら、真ん中だけがガンダムのガン・ダンクが出来るかもしれませんね」
「頑なにガンキャノンを使わない意思を感じる」
1号機の代りにガンキャノンが全損した世界のガンダムを見て来たのかもしれない。そんな彼女達はビルドした機体の性能を試す為にミッションへと向かった。
~~
「お姉ちゃん、この機体凄いよ!」
GBBBBにログインしたリンはミサと共に軽く試運転をしていたが、機体性能の高さに感動していた。ただ、傍から見ているミサはちょっと悩んでいた。
「結構ピーキーな機体だけれどね。フレールよりも装甲が薄いから、吶喊的な戦い方をしていると、割と直ぐに落ちるかも」
「そうだね、気を付けないと」
機動性で翻弄して戦うブレイジングガンダムの使い手であるミサ用に調整していたこともあって、あのような性能になっていたのだろう。リンのファイトスタイルもミサとは似通っているが、彼女と比べると周囲を把握する能力は、まだ少し足りない様に思えた。
2人が感想を述べあっていると、カルパッチョとアラタがやって来た。通称、動画配信コンビと言われていることもあって、リンとミサはギョッとしていた。
「おぉーっと!? リンちゃん、その機体は一体!? 見たこと無いね」
「いや、その。新機体をちょっと……」
『え? この機体何?』『モビルドールメイの改造?』『ルナマリアみたい』等、視聴者から一斉に関心を寄せられていた。カルパッチョが機体の造詣を確かめる様に、彼女の周りをグルグルしたことで識者が答えを出していた。
「『これフルスクラッチだぞ』。だって、コイツはやっちゃったね。決勝戦に向けての秘密兵器をお披露目しちゃうとは!」
「えぇ!?」
『実装はよ』『あのスカートみたいなパーツは……』。等、リンがすっかり忘れていた事態が起きていた。ここはGBBBBなのだ。
「ちょっと、ちょっと。撮影するならちゃんと許可取ってよ」
「ミサさんと訓練していたのかな?」
『ブレイジングガンダム?』『アレって、彩渡商店街の……』。等、視聴者もやはりガンプラ好きが集まっているのか、直ぐにミサのアバターと機体に気付いていた。まさか、打ち明けた弊害が速攻で訪れるとは。
視聴者の数が膨れ上がっているのを見るに、恐らくカルパッチョはこれらを意図的にやっているのだろう。このままではロビーに人が殺到するかもしれない。ならば、やることは1つ。
「よっし。じゃあ、リンの秘密兵器の実力。俺達がバトルで取材するぜぃ!」
「えぇえ!? アラタぁ!?」
「キャー! 流石リーダー! ノリが良いー!!」
「キミってこの子と組むと、凄くバカになるよね」
『せやで』『そうだよ』『はい』。等、誰もミサの罵倒を否定することは無かった。かくして、インタビュー企画は唐突にバトル路線へと移行することになった。試運転しかしていないリンは戸惑う外なかったが、ミサは笑顔で言った。
「あの二人なら訓練相手としても良い。アラタ君にしっかりと実力を見せられるでしょ?」
イラトゲームセンターの時は、アラタは自分の機体ではなくカルラを使っていたが、GBBBBでのバトルとなれば話は別だ。何より、自分が決勝戦に参加する為にも、しっかりと実力の彼我は把握したい。
「分かったよ、お姉ちゃん!」
加えて、サポート役にはこの上なく心強い姉がいる。ロビーは、リンの機体を一目見ようと他のプレイヤーも集まって来たので、速やかにバトルフィールドに移動することにした。