GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
「それで。バイラスからはどんな話が聞けた?」
面会を終えたタクマ達は来た道を戻ってエレベーターに乗り、社長室に招かれて自重聴取を受けていた。相手は、世界的に有名な巨大企業の社長であり、彼らのスポンサーもしている青年『ウィル』だった。
「細かな仕様に関しては多分話しても理解し辛いだろうから、奴らがAIへ攻撃を行うことに対する際に作っていたコンセプトについて話しておこうと思う」
「コンセプトか。大規模破壊とか?」
「戦略(ストラテジー)的な話じゃない。もっと、概念的な話だな。バイラスから聞いた限りだと、連中はこんなことを言っていたらしい」
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『地球の資源を消費しない太陽光エネルギー、人的資源を補うAI。世界は眩しく正しい方向に進んでいる。きっと、我々のような旧世代の暗がりの人間は生きていけない。ならば、貴様らは正しさで滅びるが良い』
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「反社会的勢力の分際で正しさを謳うか。如何にも自分に酔っていますって感じがするよね」
ウィルは鼻で笑っていたが、タクマ達は一笑に付す気にはなれなかった。ナジールと言う前例を知っているからだ。
「だが、正しさで滅びる。というのはどういうことだ? 連中の言う倫理観とか、もしくはタイムズユニバースが条例とか法律に引っ掛かるという話か?」
彼らの掲げる抽象的な目論見をタクマなりに解釈してみたが、ウィルがそんなヘマを犯すとは思えなかった。
「僕は清廉潔白だ。ちゃんと、ルールを順守している。自分達が本当に正しいことをしている自覚があるなら、コソコソやらずに表立ってやればいい。それが出来ないのは、自分達が正しくないって証明している様な物さ」
「実際の所、経済力の関係で覆せない物もあるだろうがな。そして、連中は俺達を恨んでいるとすれば……」
今の自分達には抱えている物が大量にある。社会的地位の他にも、一大プロジェクトとして多数の企業に協力して貰っている『GBBBB』。もしも、一大事があればタイムズユニバースにも少なくないダメージが入ることだろう。
「AI、正しさ。この二つがどう繋がるんだ? AIと言う存在の正しさを世間に問う様な暴走でも起こしてみるとか?」
「ありがちな手法だね。だけど、こっちは抱えている人材も資金力もけた違いなんだ。連中が準備しているって言うんなら、正面から迎え撃つまでだよ」
ウィルは自信満々だったが、タクマの不安は晴れなかった。というか、社長の自信満々ぶりが何かの前振りにしか見えなかった。
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「リーダー? なんで負けてんの? バトルトーナメント4回戦まで勝ち抜いて来た実力忘れちゃった? 何処かのポケモントレーナーと相棒の黄色い鼠みたいにレベルリセットしちゃった???」
ロビーに戻って来たアラタはカルパッチョから滅茶苦茶詰められていた。
最近は強敵相手にも勝ちまくって来ていたので、ここで負けることを想像していなかったのだろう。幾ら配信でも負けることを悔しがるくらいには、彼女にもビルドファイターとしての矜持はあった。
「課題が見えたってことで一つだな。弱点が分かったってことは、これから強くなれるってことだぜぃ!」
「は????」
「カルパッチョ。悔しいって感情をな、前向きにしていかなきゃいけないんだ。スタースクリームだって失敗してもすぐに立ち直っていただろ?」
「なんで、私が諭されるのにスタースクリームが使われんのよ!!」
負けてもネタになるんだから、とことん美味しいコンビであった。そんなコンビを一目見ようとしたのか、周囲には人集りが出来ていた。
彼らの目的は、この動画配信者達にもあったが、見慣れないパーツをふんだんに使用しているリンの『カーネーション』にも注がれていた。
「すみません。そんなパーツ、見たことがありません。何処のクエストでドロップするんですか? それとも何かの派生合成で?」
「えぇっと……」
問われたリンも知らない。何故なら、この機体は姉から貰った物で、そもそもGBBBBで使えるとすら思っていなかったからだ。
「はいはい! この子は秘密兵器なんだからね。機体の研究はバトルトーナメントが終わってからだよ!」
集まって来たプレイヤー達に対して、ミサが牽制するようにして述べた。畳み掛ける様にして、カルパッチョも割り込んだ。
「ビアンカのとっておきなのでぇ。残念ながら、彼女の機体にするお問い合わせは受け付けておりませ~ん! でも、動画を視聴していたら不意に出て来るかも? バトルトーナメント決勝戦も含めて、また見てね~! さよナランチャ!」
カルパッチョもキリが良いと判断したのか、宣伝と注意喚起を含めた言葉を告げて、配信を切った後。全員でクランルームへと避難した。
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「で、実際。リンちゃんの機体は何なの? プロフカードを見る限り、『カーネーション』って固有名が付いているじゃない。GBBBBじゃ基本的に登録されたガンプラしか使えないハズだけれど?」
店舗などで機体を読み込んで貰い、データを入手すればGBBBBでも使える様になるが、モデリングなどの関係もあり対応していない機体もある。
また、再現機などもあくまで登録されているガンプラで行われているだけであって、本当にガンダム以外の作品から持って来ると弾かれる。
「良いじゃねぇか。リンが新たな力を手に入れたんだぜ? 喜ぼうじゃねぇか!」
「アラタ。もしも、これがチート扱いになったりとかしたら、私達のクランの名誉に関わって来るの。だから、出自はハッキリしておいて欲しい」
普段はバカやっているが、GBBBBのプレイヤーとしてカルパッチョは真摯だった。実際、彼女の言う通りプレイヤー達の知らない機体と言うのはチート扱いされる可能性が無きにしも非ずだ。しかも、どの作品でも見たことが無い。
アラタはある程度の事情は察していた。リンが使っているということは、高確率でミサが関わっている物だろう。となれば、彼女からマイスター・ジンまでは自然と繋がる。以前に聞いた『フルスクラッチの機体』とは、この事だったのだろう。どう説明した物かと考えていると。
「出自なら問題ないよ。だって、このGBBBBで皆が知っているプレイヤーがフルスクラッチした機体だもん」
ミサがあっさりと白状した。実際、そうでもなければGBBBBに存在しているハズの無い機体なのだから。それが何を意味するのか、カルパッチョも直ぐに把握した。
「は!? ちょっと、詳しく! アンタとはどういう関係なの!?」
「それはプライベートだから話さない。でも、この機体は使用しても問題ない。ちゃんと、確認も取ってあるから安心して」
「使用して良いかどうかよりも、もっと大きい話が出て来たんだけれど!」
カルパッチョがギャーギャー騒ぎ立てていた。配信では到底話せない内容であるだけに、あの時点で切り上げたのは正解だったかもしれない。ふと、気になったことがあった。
「(そう言えば、文へのインタビューはしていないけれど、何処にいたんだ?)」
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「……削除不可能」
文は自らのアバターの手の甲に刻まれた『V』と言う字とプログラムコードを削除しようとしていたが、彼女の操作を全く受け付けなかった。
これは明確な攻撃であるが、自身の動作が重くなったり情報が抜かれたりしている様子はない。何が起きているか、把握できないことがもどかしかった。晴れない違和感から気を逸らすべく、ロビーの会話の方に意識を割いた。
「犬インタビューの動画見た? ワンちゃん可愛かったよねー」
「そう思って、ワンちゃんを再現するべく風雲再起の胴体を脚部に埋め込んで、いつも通りふみなに犬耳を付けてみたんだけれどねー」
「お前の発想は全く可愛くないねー」
GBBBBでは通常営業だ。文も普段は気にするほどのことではないのだが、自分の思考にノイズの様な物が発生していることに気付いた。
「(どうして、この人達は『すーぱーふみな』をこんな風にするんだろう。格好良くする訳でもないし、可愛くする訳でもない。あの造詣は風雲再起のことも彼女のこともバカにして嘲笑っている)」
作品に対する敬意が足りない。いや、アレも彼らなりの作品に対する接し方だから認めるべきだ。自分の中に二つの考えが浮かび上がっていた。
ガンダムと言うIPが作り上げて来た価値を毀損する様な真似は止めるべきだという考え方は、きっと正しい。だが、GBBBBと言うゲーム上、公序良俗に反しない造詣であれば表現の自由として認めるべきだという考え方も正しい。
「……あれ?」
今まで、多数の考え方があっても傍観することが出来ていたが、今の自分は非常に制動が利き辛くなっている。気づけば、システム画面の通報メニューから『作品のイメージを損なう』の項を選択しかけていた。
「様子がおかしい」
直ぐに彼女はログアウトをした。確実に、何か異変が起きている。原因を突き止めるべく、彼女はある場所へと向かった。