GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】   作:ゼフィガルド

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7戦目:GBBBBをしよう!

「こんな伏魔殿に、自ら入って行く羊が……?」

 

 先日の話をリンにした所、覚醒云々の下りは吹っ飛び、ふみなアバターを使う彼女に大いに反応していた。ロビーでは風雲再起の組み合わせにプチブームが起きているのか、ペガサスふみなやユニコーンふみな(ガンダムじゃない)達によるGBBBBダービーが勝手に開催されていた。

 こんな玩具にされ、尊厳を破壊されている状況を目の当たりにしながら、態々彼女を使うのはサディストビルダーか真に『ホシノ・フミナ』が好きな純粋なユーザーだろう。

 

「一応、気分悪くならへん? って聞いたけれど、本人は周りが使っているから使っている言うてたけど」

「意外と拘りが無いのね。でも、確かにフミナちゃん好きが、こんな尊厳破壊の館に来る訳もないか」

 

 GBBBBのロビーではキャッキャ騒がれているが、外部の掲示板やSNSでは、ふみなを魔改造することに対する怒りの声も少なからずある。というか、常人の感性だと普通はそうなる。

 

「何の話をしているのですか?」

「噂をすればやな。文(ふみ)の話をしとったんよ」

「うわ。本当にアバターの再現度凄っ! これで何となく使っている。ってのが信じられないよね。実はビルドファイターズトライのファンだったりする?」

 

 リンが文のパイロットアバターをまじまじと見ていた。ガンプラのビルドに注目されがちなGBBBBではあるが、パイロットアバターの作成も奥が深い。

 髪型や顔の造詣等も結構細かく弄れるので可愛い系の美少女を作ることも出来れば、歴戦のいぶし銀の様なパイロットだって作れる。……前者の方が圧倒的に人気ではあるが。

 

「いえ。ガンダム作品は見たことがありません。データベースにある情報とユーザー間で話題になっている情報位しか」

「中々、GBBBBでもロックなスタイルだね」

 

 ガンダム好きに面倒臭いのが多いのは周知の事実である。作品を履修していないのに、にわか知識でキャラを使ったり言動を吐こうとしたりすればたちまち囲まれて棒で叩かれてしまう世界だ。

 

「でも、世には会話の途中で急に『そのセリフ、そっくりそのままヤタノカガミでお返しするわ!』って言っていた人もいたらしいぜ」

「うぉ、アラタ。急に会話に入って来られたらビックリするやん」

 

 当たり前だが、ロビーで話をしていたら急にログインして来たプレイヤーが目の前に現れることもある。

 タオの様な優男風なのもあれば、リンの様な可憐な美少女アバター、あるいはミスターの様に有名人を模したアバターを使っている者もいる中、態々スキンヘッドの黒人キャラを使うのは、少数派に類するだろう。

 

「まさか! そんなTPOも弁えず急に語録言う奴がいたら変人じゃん」

「…………違いねぇ!」

「今の間。何?」

 

 まさか、リアルに居たんだろうか。そう言えば、アラタのリアル関係はどうにも変な人が多そうだし、実際に居そうな気がする。

 だが、割とセンシティブな話題でもある為、聞きづらい。何より、話の流れ的に自分の周りについても話す必要が出て来るので、タオは敢えて触れずにいたが。

 

「アラタ。貴方の周りにはそんな人がいるんですか?」

 

 文が遠慮なく聞いて来た。タオが反応しなかったのと同様に、リンも直ぐに反応することは無かった。普段は興味津々な彼女が聞こうとしないのは、立ち入るべき話題でないと気遣いしているのか、あるいは彼女自身にも触れられたくない話題であるのか。

 

「ちょっとパーティ組もうぜ」

「分かりました」

 

 アラタからパーティの誘いが来たので、皆が承認した。今から一緒にミッションに行って話をする為。ではない、パーティ内チャットの機能を使う為だと言うことは直ぐに分かった。

 

「実はよ。俺の周りはちょっと特殊でな。高校と大学が一貫になっていて、部活では高校生も大学生も入り混じっているんだけどよ。そこにいた先輩がガチで言っていたらしいんだよ」

「え? 内輪でのネタとかじゃなくて? てか、何の部活にいるの?」

 

 アラタの入力中の文字がピタリと止まった。どうやら、リンからの質問で何かの失言に気付いたらしい。暫く沈黙していたが、やがて意を決した様に文章が打たれた。

 

「実はお前らに嘘を吐いていたんだ。俺、本当はガンダムちょっと知っているんだ。驚いたか?」

「いや、全然? ガンダム知らん奴が、いきなり『俺は元グリーンベレーガンダムだぜ』なんていう訳無いやん」

 

 タオは薄っすらと気付いていたらしい。そもそも、ガンダムタンクと言うビルドも狙い過ぎだし、グリーンベレーガンダムはSDガンダムの中でも結構マイナーな機体ではある。

 

「マジかよ。やっぱり、タオはグレィトディテクティブボゥイだぜぃ」

「なんで、嘘付いていたの?」

 

 リンから直球の質問が飛んで来た。態々知っているのに知らないふりをする理由が分からない。そもそも、何故身内に知られたくないのか。

 

「俺は自由なガンプラがしたかったんだ」

「フリーダム使いたいの?」

「いや、そう言う訳じゃねぇんだ。俺はカッコいい以上に、面白いガンプラが溢れる環境に行きたかったんだ」

 

 すると、彼は何処かのアドレスを引っ張って来た。クリックしてみると、ガンプラの紹介サイトであったらしく、いずれもハイレベルなガンプラが展示されていた。

 ビルダーの情熱を示すかの如く、機体がどういった経緯で生み出されたかという設定もビッシリと記されていた。

 

「おぉ。コレ、アラタの部活の人らのなん?」

「そうだ。でも、こう。なんか、気軽さから遠くない?」

 

 リンも言わんとしていることは理解したらしい。確かにいずれもハイレベルだが、評価する側も身構えてしまう様な、そう言った厳かさの様な物を感じた。

 

「前、アラタもそんな感じのこと言っていたよな。真面目なんは評価しにくいって」

「そうなんだよ。俺はもっとこう、気軽に。ガキの発想みたいな思い付きで遊べる場所が欲しかったんだ。そうして、ここを見つけたんだ!」

「確かに。マインドは子供の人が多そうだね」

 

 リンが笑顔でオールレンジドラグーンをぶっ放していた。一応、カッコいい系の俺ガンプラは確固として存在しているし、先日戦ったブラックロータスもカッコいい系ではある。

 

「だろだろ? 部活の方じゃ『アンタ、もっと真面目に作ればカッコいいの作れるでしょ……!』って感じで、絡まれるしよ。俺は遊びてぇんだ。ガンプラは仕事じゃねぇんだ」

「ふむ。ガンプラの作成にも個々人により受け取り方が違うのですね。これは興味深い」

 

 文が感心している様だった。さて、打ち明けるにしては微妙にしょっぱい秘密ではあったが、本人が悩んでいることには間違いないのだ。

 アラタは割とコミュニケーション上手でリアルでもうまく行っている物だと思っていただけに、彼も思い悩んでいるというのが、タオにとっては意外であり嬉しくもあった。

 

「だったら、GBBBBでは好きにやろうや。ボクらなら遠慮せんで良いんやで! 公序良俗に反しない限り」

「そうね! ガンプラは自由だもん! 公序良俗に反しない限り」

「めっちゃ、強調するじゃねぇか」

 

 散々被害に遭って来たリンとしても、守るべきところは守って欲しいらしい。

 チラリと見たロビーの巨大モニタには、今日も晒し首一覧に名前が公開されていた。彼らの信念は何処から来るのだろうか?

 

「ガンプラで公序良俗違反?? 赤十字のマークを付ける。とかですか?」

 

 文が疑問を浮かべていた。実際、文字列にしてみたら意味が分からない。彼女が出した答えは、実際に問題ではあるがそうじゃない。

 かと言って、見本を見せるのも難しい。再現しようものならBANされる可能性もあるのだ。その辺を歩いていたりは……。

 

「おーい! ふみな牛、複乳版作ったぞー!」

 

 特段、求めなくても晒し首候補がやって来るのがGBBBBである。デナン・ゾンの頭を付けてABCマントを装着した全身真っ黒なMSを始めとして、同じ穴のムジナが集まっては惜しみのない『グッドビルド!』を出していた。

 

「あーいうのだな。本当発想力はすげぇよ」

「特定のカラーリングがされたビルダーズパーツを身に着けているだけに見えるのですが。何か違反が?」

「いや、その。知らんなら、知らんでええと思うんよ」

 

 タオが説明することは無かった。知らないなら、知らないままでいて欲しいと願ったからだ。実際、ガンプラを組み合わせているだけだが? と言われたら、何一つとして違法行為は働いていないのだ。

 流石に運営は杓子定規な裁定を取るつもりはなく、しっかりと判断した上で処刑しているようだが。

 

「文。あんな物見ていたら、バカになるよ。こんな所にいるより、ミッションに行った方が有意義だよ!」

「ふむ。もう少し観察は続けたいですが、分かりました」

「1ミッションは3人までしか行けないから、誰か留守番するしかねぇな。タオ、お前は行くか? どうする?」

「いや、アラタが行ってや。なんやかんやで僕らの中では強いし、この間見せてくれた覚醒をリンにも見せて上げて欲しいしね」

「よし。分かったぜぃ!」

 

 すると、タオだけパーティから外れてロビーに残された。

 マイルームに籠ってカスタマイズをしようとしていると、先程からこちらをジィっと見ている赤と青のカラーリングが施されたガンプラがいた。話しかけて来た。

 

「ごめんなさい。少し、時間は良いかしら?」

「え? はぁ。なんでしょうか?」

 

 いや、まさか。と思った。先程、アラタが話してくれたばかりなので、件の知り合いかもと思ったが、リアルであんなガンプラを組み立てているとは思えないし、本人だと判別できる要素はない筈だが。

 

「さっきのガンダムタンクを使っている人はフレンド?」

「え? ……まぁ、フレンドですけれど。どないかしました?」

「実は、私。フリーダムフリートからの遣い兼連絡係で、体験入団するつもりならプロフィールカードを交換したかったんだけれど」

 

 心の中でホッとした。流石にそんな偶然がある訳がないか。

 先日の一件でフリーダムフリートのリーダーであるカオスからも興味を持たれていたし、むしろこっちの方が普通か。

 

「あ、なんや。そう言うことですか。多分、そんなにミッションのクリアに時間は掛からんと思いますし、待っときます?」

「そうね、待たせて貰おうかしら。……さっき、彼と何を話していたの?」

 

 ゾッとした。パーティチャットは表に出ない為、話している様子が伝わる筈はないのだが、集まっていたら何かしらの会話をしていること位は察することが出来るらしい。危険は去っていなかったのだ。

 だが、タオはGBBBBのトンチキに巻き込まれて変な度胸が付いていた。いつもなら黙るかお茶を濁すかをしていたが、自分もアラタの様な破天荒さを真似てみようと思ったのだ。本当になぜかは知らないが。

 

「いや~。大したこと話とりませんよ。なんか興味あるんです?」

「彼。ネタガンプラ組み立てているみたいだけど、真面目に組めば良い物を作りそうな気がするのよね。貴方のSDガンダムも素敵だし、隣にいたリンって子が組んでいたガンプラも可愛らしくてよかったのにね」

「(メッチャ、馬から射って来るやん)」

 

 本人の否定だけに終わっていれば、自由やと思いますとかで切り抜けられたが、自分やリンのビルドを褒められたとなったら、否定の論調で返すのは難しい。

 

「それに比べて、あっちで騒いでいる奴らは本当にね。ガンプラに対しても、キャラに対しても何の愛着も無いってのが丸わかり。ウケる事しか考えてない。迷惑系動画の配信者と何が違うんだか。面白くない奴がやる、面白いと思っていること感が凄いのよね」

「(ボロクソ言うやん……)」 

 

 タオとしてもネタ系としては否定よりの考えだが、楽しんでいる者達のことを貶すつもりはない。自分がやられて一番いやなことだったからだ。

 

「だから、もっと真っ当な環境でプレイして欲しいのよね。だから、フリーダムフリートを勧めているんだけれど」

「あの。そっちに、ボーボボとかクルルとかいませんでした?」

「カオスはそう言うのが好きみたいだけれどね。クラン内での反応はそれぞれよ。そろそろ帰ってくる頃かしら?」

 

 彼女が言ったとおりのタイミングで3人は帰還した。帰って来るや、ガンダムタンクの動きがピタリと止まった。赤と青の機体が全員をパーティに招待した後、チャットが打ち込まれた。

 

「ニッタ。こんな所で何しているの?」

「あ。コウラ先輩……」

 

 幾ら何でもフラグ回収早すぎるだろ。タオとリンが呆然とする中、1人理由が分かっていない文だけが首を傾げていた。

 

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