GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
「で。メンバーは誰にするよ?」
マシマの一言から、チーム『ビアンカ』での会議が始まった。お題は勿論、バトルトーナメント決勝戦に参加するメンバーについてだ。
「実力的な物で考えれば、アラタ、マシマ、ミサさんが鉄板なんでしょうけれど」
うーんと。コウラも唸っていた。ビアンカ内の実力順に行けばこうもなるだろうが、決勝と言う晴れ舞台なのだ。大勢からの注目を集める戦いになるだろうが、自分が敗因となることを恐れて立候補する者がいない。
「カルパッチョさん。こういう時、真っ先に手を上げるモンやと思ってたんやけど」
「いや、流石に私もちょっと……」
タオが言うことは皆も思っていたが、普段のテンションと行動力は何処にか。彼女にしては珍しく弱気だった。
「でも、分かる気もするよ。対戦ゲーの動画とかを見ていたら、戦犯への誹謗中傷は凄いからな」
自身もネトゲジプシーであったこともあり、セリトは界隈の民度についてもある程度の理解はあった。特に対戦ゲーは『名人様』と揶揄される様なユーザーも少なからずいる。
「失敗もあり気でゲームだとは思うのですがね」
試行錯誤こそゲームの花であると。『ガンダムチクラミーノ』から『タンク・ガンダム』に乗り換えたシーナが言った。あまりにも説得力のある言葉だった。
「そんなに気負わなくても良いと思うんだけれどなぁ。負けるってそんなに恥ずかしいこと?」
「お姉ちゃんみたいに、大舞台を経験したことのある人の方が少ないから!」
ミサがあっけらかんと言っていたが、ここに居る者達はリンの様にGBBBBからプレイし始めた人間も多い。技術云々の前に心構えの問題でもあった。
となると、やはりコウラが最初に言ったメンバーがベストになるのだが、アラタは悩んでいた。
「勝つ為のメンバーで行けばそうなるんだろうけれどよぉ」
「あ。先日の私の配信で宣言したことについてはリンちゃんも気にしなくていいからね。仕上げるのが間に合わなかったとかでも良いし」
リンが選抜されるということを仄めかしていたが、あくまでアレは配信でのネタで、本気で応える必要はない。という、逃げ道は用意してくれているらしい。中々に決まらないので、マシマがアラタの方を向きながら言った。
「アラタ、お前は誰と一緒に挑みたい? クランの為とか考えなくていい。お前の気分で決めろ。ガチガチに勝ちに行きたいって言うんなら、コウラの嬢ちゃんが言ったメンバーでも良いし、カルパッチョやシーナのお嬢と一緒に笑いに走っても良い。何か心に引っ掛かることがあるなら、俺が好きにやれって言っていたし。って、責任を擦り付けてくれよ」
こういう時に本人の負担を肩代わりしようとする所に、マシマと言う男の人間性がよく表れていた。一旦、アラタがVCを切った。直ぐに戻って来た。
「よし。じゃあ、決勝に出るメンバーを選ばせて貰うぜ。1人目は、リンだ!」
「私!? お姉ちゃんじゃなくて!?」
「おぅよ! 先日のバトルだって、ミサさんのお陰で勝てたと思っているかもしれねぇけれど。キチンとカルパッチョを相手に立ち回れているのは見ていた。2度も手合わせした俺が言うんだ。間違いねぇ」
実際に手合わせして実力を図っているのだから、これはある意味合理的であった。まさか、自分が指名されるとは思わず彼女も戸惑っていたが、ミサの機体が肩を叩くエモーションをした。
「だってさ。リンが頑張っていたのは私もちゃんと見ているからね。頑張……じゃないね。楽しんできなよ」
「う、うん! 分かった!」
よし! と、リンは気合を入れていた。残りの1人は誰になるか。
順当に実力で行けばマシマかミサ。画面映えと実力を考えるならカルパッチョかシーナ。効率や調査などの裏方の能力も鑑みれば、コウラとセリトも選択には上がる。アラタが最後の1人を指差した。
「最後の1人はお前だ」
指差された本人は戸惑っていたが、周囲は何も驚く様子はなかった。まるで、最初から決まっていたかのような納得ぶりだった。自分が指名されるとも思っていなかったのか、素っ頓狂な声を上げていた。
「えぇー!? 僕ぅ!? アラタ、何か間違えてへんか!?」
タオは狼狽していた。実力的にも裏方的にも画面映え的にも何もかも条件から外れているので、選ばれる訳がないと思っていたのだ。
「何言ってんだ。この日の為に特訓して来たんだろ? それに、俺のGBBBBはお前と一緒に始まったんだ。だったら、一緒にテッペンまで走ろうぜ?」
バトルトーナメンに入ってから自分が選抜されることも無くなって、少しばかり距離を感じていたことはあったが、彼は自分のことを意識していてくれたらしい。そのこと自体は非常に嬉しい。ただ、やはり荷が重いというのも事実だった。
「タオ。もしも、気が重いとか思ったりしたら言ってくれ。何時でも代わるからよ」
マシマも助け舟を出してくれたが、タオは画面前で頭を振っていた。そして、一呼吸を置いて言った。
「やったるで! この日の為に、僕も訓練して来たんやからな! 初期トリオの揃い踏みや!」
「コイツはとんだコマンド☆ボゥイだぜぃ」
アラタが嬉しそうにしている傍ら、数人から小さな溜息が漏れていた。自分が選ばれなかったことの落胆か、あるいは安堵か。
「メンバーが決まったんなら、動きも合わせて行かないとな。よっし、早速調整して行こう!」
「私達でバシバシ鍛えて上げるからね~」
「お、お手柔らかに……」
燃え上がるマシマとミサとは裏腹に、タオの笑いは引き釣っていた。一同が目標を定める中、アラタの心には引っ掛かる物があった。
「(文は何時帰って来るんだろうか?)」
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GBBBBの一角。隔離された文は、ロビーの様子を見ていた。自分が居なくてもサービスは回る。いつもみたいに、すーぱーふみなを使って変なビルドをしている者達もいれば、再現機体を動かして遊んでいる者達もいる。偶に普通の機体を使っている奴もいるが。
「(アラタ達は何をしているんだろう)」
彼らの様子を見る。どうやら、バトルトーナメント決勝戦のメンバーを決めているらしく、リンとタオが選ばれていた。すると、マシマとミサが主体になって、アラタ達に特訓を付けていた。
自分が居なくても上手くクランが回っていることは良いことのハズなのに。正しいことのハズなのに。そうは思えない自分が居た。
「(どうして、私はあの中にいないんだろう)」
自分はタオみたいに人の話に逐次反応できる訳でも無ければ、カルパッチョやセリト達みたいに面白いキャラ付けをしている訳でもない。
居ても居なくてもいい存在。情報収集用の端末AIとしては、観測対象に余計な影響を与えないことは良いことのハズで。
「(何時になったら、帰れるんだろう)」
もしも、自分が直るまでに時間が経って。バトルトーナメントも終わってクランが有名になって、面白い人、強い人、ガンプラをビルドするのが上手い人が沢山入って来たとしたら。自分みたいな存在は忘れ去られるかもしれない。
そうで無かったとしても。他に面白いゲームやカッコいいガンプラが販売されたら、GBBBBをプレイしなくなるかもしれない。彼らにとってみれば数あるコンテンツの一つでしか無くても、自分にはGBBBBしかないのだ。その時、彼女はふと気づいた。
「(どうして、私。こんなことを考えているんだろう?)」
自分は情報端末AIにしか過ぎないと言うのに。その役割を逸脱しかねない願望を抱いている。
「(私は、何がしたいの?)」
彼女が願えば願う程、手の甲に刻まれたVと言う字から放たれる光は強くなっていた。