GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】   作:ゼフィガルド

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72戦目:正式サービスに向かおう!

「さて、皆さんをお呼びしたのは外ならぬGBBBBの正式サービス開始についてです」

『サポートをさせていただきます。GBBBBの司会、運営も行っております。レコと申します。よろしくお願いします』

 

 某所。カドマツを含め、GBBBBの運営に関する人間が呼び出され、司会役と思しき男性から議題が挙げられた。中央のモニタにはレコが映し出されており、GBBBBで培ってきたAI技術のお披露目も兼ねているのだろう。

 

「バトルトーナメントのイベントは、有名動画配信者達の協力もあり、ガンダムに興味が無い層を取り込むことにも成功した。アプローチとしては良好であり、実際にプラモデルを始めとしたグッズの売り上げも伸びている」

『特に組み立てやすいEGの売り上げは素晴らしく、家電量販店以外にもコンビニやスーパーでも大々的に取り扱われて来たのは、販路の拡大も含めてよい傾向だとも思われます。他にも、作品を知る為にサブスクに加入するユーザーも増加しております』

 

 GBBBBはAIの試運転場もあるが、モチーフとなっているガンダムと言うIPの広告面も大きい。ガンプラだけに留まらず、作品を視聴する為の専用チャンネルへの登録など。しっかりと役目を果たしていた。

 カドマツを含め、出席している者達が僅かながらの微笑みを浮かべている中、中央のモニタに映し出されているレコが暗い顔をした。司会役の男性が重い口を開いた。

 

「しかし、有名になったことで弊害があります。やはり、戦争を取り扱ったアニメであるガンダム故に『グロテスク』だと、小さな子供に見せたくない親からのクレームなどもあります」

 

 当たり前だが、戦争を題材としている為。ショッキングなシーンも多く含まれる。とは言え、これ自体は以前から寄せられていたクレームなので『無視しとけ』位のぞんざいな対応だった。だが、真の問題はここからである。

 

『アニメなどに関しては、親御さんが配慮して……や、ペアレタンルコントロールで防げる部分はあるでしょう。ですが、一番問題となっているのはGBBBB自体です。まず、こちらをご覧ください』

 

 レコが悲痛な表情と共に映し出したのは、ロビーの様子だった。

 白色にペイントされた尻尾のビルダーズパーツが二つ並び、真ん中には巨大なバズーカが据えられている。同じ様な機体が3機並んで『FREE 肩車!』と、喧しく叫んでいた。

 

「なんだこれは……」

「ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃねーか、完成度高けーなオイ」

 

 唯一カドマツだけがふざけたことを抜かしていたが、他の出席者達は困惑していた。このゲームは全年齢対象を謳っているだけに、こんな卑猥な物が出て来られたら風評に関わって来るからだ。

 

「今までは、ユーザー側の創造力を尊重すると言うことで見逃してきましたが。もしも、正式サービスを開始するとなれば、より大きく宣伝していく形になります。その際、新しく入って来たユーザー達にこの光景を見せられるでしょうか?」

 

 出席者達は想像した。自分は今新規のプレイヤーだ。カッコいいガンダムを動かしたい。どんなカッコいいのが居るんだろう! と、ロビー見回す。

 だが、そこで目に付くのは『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲』だ。彼らが『FREE SUMOU!』と叫んでいるのが見えるのだ。果たして、このゲームを続けたいと思えるだろうか?

 

『ちなみに、この3人は打ち首(BAN)にしました。もっと調べてみた所、彼らの趣味は美プラにバズーカを放つことで……』

「風紀に著しい問題があると言うことは分かった。カドマツ君、対策の方は?」

「あまりに規制が大きいと創作幅に影響しかねません。勿論、美プラの色変更を不可能にするなどの処置はしていますが。それと、MODや改造に関してはレコ君と一緒に目を光らせています」

 

 カラー変更。あるいは、MODを入れた奴が何をするか。まだ、俺TUEEEプレイなら可愛い物だ。だが、人の欲望は遥か高みへと向かう。

 

『ちなみに、開始して1か月位にNude MODが出たりして、ふみなちゃんとメイちゃんが剥かれていましたね。速攻で打ち首にして、アップデートで共に弾くようにはなりました』

「どうしても美プラは実装されないと駄目か? ガンダムだけじゃダメか?」

 

 ここに居るのはオジサン達が多いので、カッコいいガンダムが見たいのであって、美プラはソシャゲとかで良くないか? と考えているタイプの人らだった。極めて健全な人らだった。

 

『しかし、これは提携している会社との契約でもあります。向こうも美プラを売り出したいというのはありますし、サービスが開始されてから美プラの売り上げは右肩上がりになっているので、今更止める訳には行かないのです』

「そうか……」

 

今更、聞くまでもないことだったが。やはり、無理な物は無理であるらしい。

レコの声色にも苦しさが滲み出ていた。公然で猥褻をされていても止める力が無い程に、ユーザー達の欲望は大きかった。

 

『それ以外にも問題はありますね。例えば、今回はイベントで『派手』を題材にしたコンテストを行ったのですが』

 

レコがランキングを表示した所。1位にいたのは美プラでもカッコいい俺ガンダムの機体でもない。……天元を突破しそうな機体だった。

 

「これ。別の会社のIPではないのかね?」

『はい。再現機体に関しては規制が本当に難しくてですね。いや、まさかコンテストに持って来る人がいるとは思わなかったんですけれど。総括すると、ゲーム性はそこそこでユーザーが盛り上げてくれるのは良いのですが、彼らの倫理観がよろしくないのがネックですね』

 

 レコ、渾身の申し立てであった。無論、マナーが悪いのは一部に過ぎないのだが、素行の悪さや空気の悪さは新規ユーザーの定住率を下げかねない。経営陣としては、看過できない問題であった。

 

「それに。先の再現機体の様に訴訟などに繋がりかねない懸念事項があるのも気になる。バトルトーナメント決勝戦が終えるまで、こう言った要素を規制して。華々しい決着の後にめでたく、正式サービス開始と行きたい物だね」

「ですな。もっと幅広い層に届くサービスを届けたい物です。いつまでもβテストでは利益も見込めませんからな」

 

 出席者達が結論を出し合う中、カドマツは渋い顔をしていた。モニタに映るレコは真顔だった。

 

~~

 

「(どうして?)」

 

 隔離された部屋にいるはずの文は、会議の様子を見ることが出来ていた。どうして、こんな状態の自分が見ることが出来ているのだろう?

 彼女の心は騒めいていた。もしも、バトルトーナメント決勝戦が終えて、正式サービスが開始されたとして。そこには魔改造ふみなも居なければ、再現機体も居ないGBBBBがやって来るのだろうか。

 

「(でも。それは、私の知っているGBBBBなのかな?)」

 

 正統派の機体が悪いわけではないし、普通に可愛らしい美プラも居ても良いとは思う。偶にはクスリとするようなネタ機体もあるかもしれないが、きっとその世界は何処か物足りない様な気がする。

 

「(でも、そうしないとサービスは続けられないのかな?)」

 

 もしも、GBBBBが終わってしまったら、自分は永遠にアラタ達と再会することが出来なくなってしまう。それは嫌だった。

 

『だったら、GBBBBを続けましょう』

「……え?」

 

 文の目の前に現れたのは、顔も何も無く。人型の輪郭があるだけのアバターだった。彼女は直ぐに通報しようとしたが、ポンと肩を叩かれた。と、同時にちくりとした痛みの様な物が走った。

 もしも、彼女が一般的な人間であれば、これが何に類似した感覚か分かっていただろう―――注射器で刺された物だと。

 

『悪いガンプラを排除するのです。汚らわしい魔改造美プラ、著作権の順法精神を忘れた再現機体、SNSでインプレッションを稼ぐことしか考えていない連中を駆逐して、これからも楽しいGBBBBを続けて行きましょう。全てを決めるのは貴方次第ですから』

 

 どろりと人型のシルエットは溶けて消えた。今のは何かしらのクラックだったのだろうか? だが、文の思考には一つの考えとして。今のヒトガタが放った言葉がへばりついていた。

 

「GBBBBを続けていく……」

 

 その為に。魔改造美プラや再現機体、ネタ機体達を潰してしまっても良いのだろうか? 彼らの創作性も貴重なデータとして反映されていたし、彼女自身も試した覚えはあったのだから。

 

「(でも、私。まだ、アラタ達とちゃんと話もしていない)」

 

 AIであるがゆえに自分から意見や考えを述べるというのは難しくはあるが、何かしらの接触はしてみたいと思う程度には彼女にも自我は芽生えていた。

 彼らと今後も一緒に遊んでいく上で、望まれていない存在を排除しても良いのではないかと言う、極めて有機的で自己中な思考が彼女の中に生まれつつあった。―――同時に、彼女の母体であるマザーAIにも『正当化』と言う猛毒が注ぎ込まれつつあった。

 

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