GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】   作:ゼフィガルド

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73戦目:思いを伝えよう!

 運営とユーザーの擦れ違い。ネットゲームにおいては、避けられない問題でもあり、GBBBBにもその波は訪れていた。

 

「この間、言っていた人面犬ふみなを作ったら『次はBANするぞ』って警告が来たねー」

「当たり前だねー」

 

 心なしか、ロビーに跋扈する異常ビルドも少なくなっていた。少し前まで見られていた、ガンダムのパーツを使った版権越境だのR-17.9位の美プラだの、対魔忍だのが激減していたのだ。

 

「ひ、ひでぇ! 運営の野郎! 今は対魔忍も全年齢向けになっていることを知らねぇってのか!! 次はBANするだなんて、表現の自由の侵害だ!」

「ガンダムゲーで対魔忍再現されている方が心外なんだよなぁ……」

 

 いつものユーザー達の嗚咽と嘆きに支配されたロビーはちょっとした葬式会場めいていた。で、ビアンカのメンツはと言うと。

 

「いや~。今日のGBBBBは過ごしやすいね。普通のビルドや初心者のキメラビルドが沢山で安心してプレイできるよ!」

「そうね。本来の形に戻った所かしら」

 

 リンとコウラがウキウキしている傍ら、マシマとセリトが怒りのエモーションを繰り広げていた。

 

「ふざけんな! こんな退屈なロビーはGBBBBじゃねぇよ! ただのガンダムゲーだ!!」

「そうだ! そうだ! 俺なんて『当ゲームのマスコットキャラクターの名誉を毀損する行為はお控えください』ってメールが入っていたんだぞ!!」

「せやな」

 

 むしろ、なんで今まで許されていたのかと思わなくも無かった。タオは純然たるSD使いなので、特に被害も何も無いのだが。シーナはタンク・ガンダムで体育座りして落ち込んでいた。カルパッチョが彼女の肩を叩いていた。

 

「どうしたの、シーナ?」

「今まで作って来たトランスフォーマー系が版権に引っ掛かると言うことで、警告が来たんです。こんなことでは、もうカルパッチョ祭に行けません……」

「そっか! よかったね!!」

 

 泣きっ面にヴェスパーをぶち込んで行くスタイルだった。兎も角、何が起きているのかは大体把握できた。

 

「規制が厳しくなっているね。前のバージョンの筐体でも他作品の再現はあったけれど、アレはネット上とかじゃなくてあくまで実機での再現だからセーフだったのかな?」

 

 前バージョンにも再現機体の様な物はあったが、規制を食らうことは無かったハズだ。あくまでミサが知る範囲では……だが。

 

「正式サービス開始に向けての動きって所か? でもよぉ、なんて言うか。ロビーが息苦しいぜぃ」

 

 いつものように活気と狂気と瘴気溢れるGBBBBは何処にか。如何にも初々しく礼儀正しい、真っ当なガンダムゲーっぽい風景が広がっていた。

 

「それって何かダメなの?」

「ダメって言うかよ。これなら、別にGBBBBじゃなくてもリアルでビルドすればよくね?」

 

 リンからすればいつものロビーは騒がしい動物園めいているので、現在の様な静謐で清潔な方が好みであるらしい。だが、アラタを始めとした者達は抗議していた。

 

「ガンダムって言うのはですね。もっと、ファンの猿叫と奇声が飛び交う様な。そう言う熱量を感じるタイトルなんですよ」

「猿叫ってなに? いや、奇声と並列されているし字面からしても何となく意味は分かるけれどさ」

 

 シーナがしみじみと語っていたが、リンとしてはそんな環境の方が嫌だった。というか、猿叫なんて単語は初めて聞いた。

 

「クソ。だが、元・プロだった俺にはスポンサーの意向が透けて見えるようだぜ。今度のバトルトーナメントを華々しくやった後でだ。感動と熱量をそのままに、一般人に門戸を開けて、めでたく『正式サービス開始!』とか考えているんだろうけれど、このGBBBBを支えて来た連中を蔑ろにしたら廃れるだけだ」

 

 実際、マシマの推理は概ね当たっているのだろう。お偉いさん達の中で態々、ゲームをプレイしている人間と言う方が少ない。上と現場の意向が食い違うのは世の常だ。

 

「まぁまぁ。上の方針ですし、一ユーザーとしてはどうしようもないことよ。意見でも送っておきましょう?」

 

 コウラが普遍的な意見を述べているが、送った所でテンプレの返信で終わりそうな気がしていた。どうやら、彼女はあまり問題にも思っていないらしい。

 

「でも、こんな急な方針転換。ユーザー離れを引き起こしかねないですよ? マイスターさんとかも何か思っていないんでしょうか?」

 

 美プラ使いであるセリトとしては、この現状は運営側に向かって直接物申したいレベル物である。チラリとミサの方にエモーションを送ったが、彼女は首を横に振っていた。

 

「あんまり、運営側に接触を図るのは良くないと思うんだよ。あくまで、私達は一ユーザーだしね?」

 

 個人的な交流はあるが、ゲーム内で私人と公人を混同してしまっては双方に迷惑が掛かりかねない。だったら、どうしようもないのか……と考えていると、彼らに駆け寄って来る機体がいた。いつものブラックロータスだ。隣には、ドーラ・MAXとオリジンもいる。

 

「やぁ! ビアンカの諸君! これから、運営に抗議しに行かないか?」

「凄ぇぜ。カオスニキ。無法を体現してやがる」

 

 いや、彼のことだからキチンとした形式に則って抗議することは予想できたが、この行動力はアラタとしても舌を巻く外なかった。既にグスタフの方はセリトに話しが通じているのか、お互いにエモーションを繰り広げていた。

 

「セリトさんの方にも連絡が?」

「いや、今知ったばかりだけれど」

「言葉を重ねる必要はあるまい」

 

 一応、シーナが聞いてみたが、予想通り取り決めとか連絡も無かったらしい。フリーダム・フリートの幹部で抗議しに行くのは効果的ではあるだろうが、数名欠けていることが気になった。

 

「カオスさん。クロカンテさんと、ボーボボは?」

「ボーボボに関しては、ちょっと色々と事情があって。どうなるか、私達も分からない。クロカンテ君は、私達に万が一のことがあった時の為にも残って貰っている。彼の品行方正さなら、残ったメンバーを取りまとめてくれるだろう」

 

 コウラがギョッとしていた。最初は文句を付けに行く位だと思っていたが、自分に何かが起きる程の覚悟を持って抗議に行くのだ。

 元・クランメンバーとしてカオスがどれだけGBBBBに熱を入れていたか、プレイヤー達のビルドやバトルを愛していたかを知っていただけに、彼女は先程までの軽口を噤んでしまった。

 

「大丈夫よ、カオス。もしものことがあった時は私がフリーダム・フリートを取りまとめて上げるから、安心して散って来なさい」

 

 コウラは自らを省みていたが、彼女とは真っ向から対する様に一つも過去を振り返らないカルパッチョはブラックロータスの方を叩いていた。きっと、画面の前では満面の笑顔を浮かべていることだろう。

 なんなら、直接言葉にしていないが帰って来なくていいぞ! とまで、言ってのける辺り、確執は深かった。

 

「そうか、カルパッチョ君。元・幹部として一緒に抗議してくれるか。一緒に死出の旅路に付き合ってくれるとはな。すまんが、お前の命をくれ」

「嫌だよ」

 

 逆襲のカルパッチョだった。だが、実際にいい機会ではあった。

 ビアンカは新興のクラン故、自分達から運営に接するのは難しいにしても。βテスト中、長い間上位クランとして運営共付き合いがあったフリーダム・フリートからの抗議となれば、無碍にする訳にも行かない。

 

「こちとら、美プラ使いをウリにしてんだ。これだけの規制を許せば、将来的には美プラのカスタムすら規制される可能性がある。だから、今の内に抗議はしておかないとね」

「『私は声を上げなかった』ですね。私もお付き合いさせて頂きます。心の中のシュワちゃんが叫んでいますからね」

「ここ洋画の世界や無くて、ガンダムゲーなんやけど」

 

 何故かドーラとノリが近いのか、シーナも賛同していた。タオがコッソリとツッコミを入れていたが、彼の声に賛同してくれる人は誰も居なかった。

 

「よっし! ビアンカとフリーダム・フリートの共同抗議だぜ! 数が欲しいからな。ちょっと、ユーキにも連絡を入れて来る!」

 

 マシマがノリノリでチャットを送ると、直ぐに反応したのか。彼らが居るサーバーにニシワキエンジニアリングの面々も現れた。

 

「マシマさんが僕達を頼ってくれるだなんて!! 何でもします!!」

「ちょ、ちょろすぎる……」

 

 もしも、ユーキ達に尻尾が付いていればブンブンと振っていたことだろう。あまりのちょろさにミサも心配になっていた。

 人が集まって来れば、まるで誘蛾灯の様にして他のプレイヤーも集まって来る。当然だ、ここに居る者達は知名度が抜群に高い連中なのだから。

 

「俺達も行くんだねー」

「数の暴力だねー」

「俺なんて、画像を使わずに対魔忍の良さを滾々と説いてやるよ」

「品行方正とはまるで無縁の危険な思想を放ちながら、続々と集結」

 

 友が友を呼び滅茶苦茶集まって来た。中には配信の準備まで始めている奴もいたので、流石にリンも戸惑っていた。

 

「ねぇ、ちょっと待って……。マジでやるの……?」

「いや。もうガス抜きも兼ねてやらないと、多分収まらないんじゃないかな」

 

 ミサもこれだけ集まるのはまるで予想していなかったのか、かなり困惑していた。一方、アラタ達はと言えば抗議する気満々だった。

 

「よっし、これだけの仲間が居れば心強ェ! 皆、GBBBBを思う気持ちは1つ! いっちょ、運営にぶちまけてやろうぜぃ!」

「この人数凄いよぉ! 流石、GBBBBのプレイヤーさぁん!!」

 

 先頭に立つバカ2人が意気揚々と運営にメールを打っていた。メッセージの返信が来るまで、プレイヤー達が彼らを虜囲んで待機するという実に珍妙な光景が繰り広げられていた。

 

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