GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
翌日のことである。タクマはスポンサーに呼び出されていた、集まった面々の中にはウィルの姿もある。
「困るね、マイスター君。GBBBBはこれから多くの人に向けて発信していくサービスになるんだ。一部の悪質プレイヤー達によって占拠される様な状況は避けて欲しいんだがね?」
「問題ありません。習熟度の低いネタの様なアセンで来たとしたら。私達が直々に打ちのめします。そうすれば、悪質プレイヤー達に対する見せしめにもなるでしょうし、プレイヤー本人の名誉は著しく傷つくことでしょう」
交渉はした。それでもなお要求を受け入れない場合は、GBBBB最強のプレイヤーによって惨たらしく蹴散らされる。スポンサーに息巻いている連中を黙らすには十分なデモンストレーションになることだろう。
「本来は一般に向けてのPRに使うつもりだったが、挑戦者が態度を改めないなら、そのように使っても問題はない。……まぁ、あり得ないだろうがね」
「どういうことですか? まさか、対戦者に規制を掛けるつもりですか?」
対戦相手の態度が改めない場合はアカウントをロックしたりするつもりだろうか。それはそれで大問題になるが、彼らは首を横に振っていた。
「とんでもない! 私はね。彼が自分の意思で真っ当なアセンブルで挑んで貰うことに期待しているんだ。相手はガンブレ学園の学生さんに、前途多望の中学生だ。一時の気の迷いをね、覚ましてあげるのが大人の役目だよ」
含みのある言い方だった。タクマはビルドファイターとしては一流だが、腹芸やタヌキの化かし合いは苦手としている所だった。
先程から、薄い笑いを浮かべているウィルの方を睨んだ。何もしないのか? と。そんな彼の意思を汲み取ったのか。集まっていたスポンサーの1人が声を上げた。
「ウィル社長から何かご意見は?」
「いいや? 我々の説得で納得できるような挑戦者なら、従って貰うまでです。しっかりと、指導して差し上げましょう」
彼からの賛同を得られたことで、増々この場にいる者達は気を良くしていた。だが、タクマだけは全く違う意味で受け取っていた。
「(お前が、そう言うってことは。期待しているのか?)」
自身の栄光を権力などで磨り潰されたことのある彼としては、ここで行われている会話は業腹物だろう。許せるはずが無いのだ。だと言うのに、飄々と同意しているのは、何かしらの下準備をしているのだと受け取った。
「(アラタ君。リン君。……それと、SD使いの少年か。運命を感じるよ。頼む、負けないでくれ)」
勝負以前に、大人達の思惑に刈り取られることが無い様にタクマは彼らに期待する外無かった。
~~
ガンブレ学園『サイド0』。部室内では、アラタがすーぱーふみなを弄っていた。その様子を見ていた、ショウゴはガンプラをマジマジと眺めている。
「あばたーふみなは使わねぇの?」
「あっちだとGBBBBが読み込んでくれないんで。人の彼女にふみなのコスプレさせようとした、先輩としてどう改善するべきだと思っていますか?」
部室の隅にいた丹生が両手の中指を立てていた。4回戦で対戦してから、どうも態度がフランクになり過ぎている気がする。
「畜生。2人して、俺のことを嘗め腐りやがって。つーか、お前ら。ここが何処だか忘れたのか? ガンブレ学園だぞ」
「……あ。そうか! 筐体で作ればいいのか!」
当然3Dプリンタは学園内に設置されている。こう言った時だけは、自分がこの学園に通っていることに感謝していた。
「こう見えても俺は美プラの出力には自信があるんだ。可愛い後輩の為に、一肌脱いでやるか」
「出来たら、女子が居ない場所で話してくれない? 恥じらいとかないの?」
これらの会話を全て聞かされていたコウラの眉間には青筋が浮かんでいた。やはり、彼は女子からの人気が壊滅的に低いらしい。
「何だよ。お前は、部員が迷っている所も導けないのに先輩面の委員長面するのかよ。普段は中二病みたいな『アハハ!』とか声上げているのによ。どっちの方が恥ずかしいよ?」
「は?????????」
「すいません、コウラ先輩。でも、皆といるGBBBBの為にも、俺。頑張りたいんです!!」
「……全く。新田がそう言うなら仕方ないけれど」
「これは差別ではない。区別だ」
丹生が要らんナレーションを入れた所で睨まれていた。ともあれ、部室内に設置されている筐体で、すーぱーふみなの顔パーツを作ろうとした所で入り口の扉が開いて、フドウ先生が入って来た。
「新田君。理事長からお呼びが掛かっている。来て欲しいとのことだ」
「おい、新田。なんかやらかしたのか?」
「そんな。学校では品性方向でやっているのに」
実際、ガンブレ学園における彼は非常に大人しいだけに、呼び出される程のことをした覚えはなかった。訳も分からず、フドウと一緒に理事長室へと訪れていた。恰幅の良い、優しそうな男が座っていた。
「あぁ、君がアラタ君か。フドウ君も一緒に聞いてくれ」
用意されていた椅子に腰掛けた。一体、何の用だろうと思っていると、理事長室のモニタにGBBBBの様子が映し出され、バトルトーナメントの映像が再生されていた。
「我が校の生徒がですね。こうした華々しい活躍をしていることは喜ばしいことです。加えて、アラタ君は学校でも礼儀正しく、真面目。素行不良とは無縁な生徒です。勉学においても良い成績を残しています」
「あ、どうも。ありがとうございます」
「課外活動で優秀な成績を残した生徒には特待生、あるいは他大学や企業へ推薦も行っています。君ならば、メリットも分かると思いますが」
特待生になれば授業料の減額、あるいは免除などもあり得る。上手く行けば、奨学金なども使わずに卒業できる可能性もある。ということは、将来のことを考えればあまりに大きい。
「じゃあ、もしかして。俺に推薦の話を?」
「はい。GBBBBにおける君の活躍はですね、このガンブレ学園の出資者の方達も甚く関心を示しています。あのマイスターとの決勝戦は、特に関心を持たれています」
期待から一転、一瞬で肝が冷えた。まさか、たかがゲームの話だと言うのに、ここまで手を回して来るのか。新田の顔色が悪くなったのを察して、代りにフドウが声を上げた。彼もある程度の事情は知っている。
「理事長、新田君のプレイスタイルは彼に寄るべきかと」
「いやいや。私は強制したりしている訳じゃありません。ただね、もしも出資者の皆さんの期待に応えてくれる振る舞いをすれば、君には明るい未来が待っていると言うことです。君のガンプラ作品を幾つも見て来ましたが、まとまっていて癖が無くて。誰にでも受ける、素晴らしい物じゃないですか」
ニッコリと優しく笑いながら言っていた。強制されたり、脅されたりしている訳じゃない。ただ、賢い大人達に従えばゲーム内の報酬とは比べ物にならない物が手に入ると言うことだ――ひいては、皆を裏切ることに繋がるが。
たかが、ゲーム1つで貰える報酬としては莫大と言ってもいい。ガンブレ学園は専門性の高さからも、学費は決して安い物ではない。それが帳消しになるかもしれないのだ。
対して、GBBBBプレイヤー達の期待に応えた所で……何が残る? いずれは、風化するサービスの思い出と名声だけだ。
「少し、考えさせてください」
「はい。よく、ご友人や家族と話し合って下さい。貴方の活躍に期待していますよ」
最後まで笑みを崩さないまま、理事長は2人を見送った。部屋から出た、新田は何とも言えない表情をしていた。チラリとフドウの方を見た。
「先生。そこまでやること、なんですかね?」
「ガンプラバトルの市場経済は結構な物だ。加えてGBBBBはAIや色々な分野で業務提携しているから、更に大きな額が動いている。加えて、君は様々な話題とドラマを呼んで来たプレイヤーだ。上手に動いて欲しいんだろうね」
自分が思っている以上に、自分の存在は大きいらしい。だからと言って、こんな風に身動きが取れなくなるとは思っても居なかったが。
「先生はこう言うこと。ありませんでした?」
「……俺には無かったけれどね。似た様なシチュエーションに陥った奴なら見たことがある。病気の妹の為に戦った奴、家庭の事情から学校を離れたりして戦った奴。どうしても事情は付いて回るんだ」
趣味で済ませられる範囲ならそうでもないのだろう。だが、人には事情がある。ただの遊びに誰かの思惑が絡みつくこともある。
「それに比べたら、俺は美プラで挑むかどうか位ですけれどね」
「いや、俺は軽いとは思わないよ。アラタ君が今まで出会って来たGBBBBを選ぶか、これからを選ぶか。どちらを選んだとしても、俺は君の味方をするよ。言っては何だけれど、子供に選ばせるような選択じゃないからね」
幾ら、お澄ましをしていようが新田はまだ10代の少年だ。企業の思惑やら、色々な人達の願いを背負うには若すぎる。
「先生。ありがと」
これが物語や熱血アニメの主人公なら、企業の思惑を蹴っ飛ばして仲間達との日々を選ぶのだろう。だが、ここは現実だ。新田が揺れ動くだけの条件を示して来たのだから、彼も揺れ動かざるを得なかった。
GBBBBでは自分を上回って乗り越えて行った生徒だが、こうして悩んでいる姿は、自分が守るべき少年なのだと。フドウは強く思っていた。