GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
「お、帰って来たか? 理事長から呼び出されるって何やったんだ?」
部室に戻って来ると、ショウゴが筐体を用いてすーぱーふみなの頭部を作成していた。納得が行かないのか、なみっふとでも称する様な邪神造詣が散乱していた。しかも、丁寧に並べられているので晒し首みたいになっていた。
「理事長がGBBBBのバトルトーナメント決勝戦に期待しているって」
「おぉ! そう言うことか。じゃあ、俺も最高のふみなヘッドを作ってやるからな!」
その必要は……と言いかけて、口を噤んだ。筐体で必死にふみなヘッドを作ろうとしているショウゴの横顔があまりに真剣で直向きだったからだ。
「ちょっと。先に、この散乱したゴミを片付けてからにしなさいよ」
そんな彼に冷や水をぶっかけるのが実にコウラらしかった。すると、ショウゴはいつもみたいにメンチを切る訳ではなく、穏やかな顔をして語った。
「ダメだ。俺が生み出した以上、雑に捨てることは許されない。ちゃんと、この胸に失敗を刻み込んでから廃棄するんだよ」
「なんで、そんな所だけ真摯なの?」
普段はチンピラのノンデリだとしても、変な所に拘りや一家言があるらしい。クラン内にいる後輩と引き合わせたら、面白い会話をするだろうなと考えると、思わず笑ってしまった。
「俺、先輩のそういう真面目な所好きっすよ」
「だろ?」
この上なくウザいドヤ顔が繰り出されたので、コウラの神経は逆撫でされまくっていた。2人がギャースカしている中、丹生は新田の方へと歩み寄って来て、耳元で呟いた。
「『お願い』された?」
「……経験あるんすか?」
小さく頷いた。かつて、ガンブレ学園に革命を起こした程の人物なのだ。理事長から接触を図られることもあったのだろう。なんなら、彼もGBBBBに参加していたことを考えるに、同じ様なことを言われていたのかもしれない。
「あの理事長、割と碌でもないからね。でも、約束は守るよ」
「ちなみに先輩は何を?」
「シイナ政権を許した不満を和らげる為に学校に居続けてくれって。学費は免除されているけれどね」
新田も話でしか聞いたことが無いが、以前のガンブレ学園は力が全てとか言う世紀末めいた様相だったらしい。こういう時に糾弾されるべきなのはイキりちらかしていた生徒……だけではなく、こんな横暴を許した大人にもあるのだが。
「ちなみに当時の教師とか理事長は何を?」
「教師の何割かは抗議していたけれど、生徒間の競争を奨励するってことで看過されていたとか」
「学校として、どうなんですかね……」
ここはやはり教育機関と言うよりも、研究機関という側面の方が強いのかもしれない。過去のことは兎も角、この学園の体質は依然として変わっていないらしい。
「で。新田はどうするの? 先に言うけれど、学費免除はデカいよ。両親に対する負い目も無くなるし、今後の人生で奨学金とかを気にしなくてもいいからね。定期的に大会に出たりして、成績を残す必要はあるけれど」
感情で蹴り飛ばす前に、丹生はメリットの方を説明してくれた。そんなことは分かっている。部室に展示されている自分のガンプラを見た。
癖が無く、まとまっていて誰にでも受ける機体と評価された。言い換えれば、自分でない誰かでも組み立てていたであろう物。でも、嫌いではない。
「新田?」
先程から、彼が暗い雰囲気になっていることを気にしてか、コウラが寄って来ていた。彼の背後から、件のガンプラを見ていた。
「どうしたんですか?」
「このガンプラを気にするなんて珍しいと思って。貴方、自分の作品を見直そうとすること、殆ど無かったじゃない」
嫌いではないが、この作品を見る度に自分が酷く束縛されている様に思えるので、彼は意図的に見ないようにしていた。……こと位は、コウラにも分かっていたらしい。
「先輩は、この機体をどう思います?」
「そうね。癖が無くて、上手くまとまっていて、悪くない。でも、なんだか窮屈に見えるのよね。――で、何があったの?」
「お、なんだ?」
流石にバレるらしい。彼女が反応したので、必然的にショウゴも飛びついて来た。結果として、新田は2人に事情を説明したのだが。
「従う必要なんてねぇ! お前のGBBBB魂を見せてやれ!」
もう、清々しい位にショウゴはストレートな提案をして来た。一方、これに対して抗議をしたのはコウラである。
「新田はアンタみたいにバカじゃないんだから。それに、八百長をしろと言われた訳ではないんでしょう?」
「そうだけれど、これは今後のGBBBBに対する在り方を問うことでもあるんだ」
ユーザーの創造性を保つ為。と言えば聞こえはいいが、実際はリビドーの掃き溜めを守れと言っているんだから、企業側として片付けたくなる気持ちは分からなくもない。
「大切なのは新田がどっちを優先したいかじゃない? 自分の将来か、GBBBBか。どちらを取るにせよ、どうして? まで、考えられたらいいかもね」
感情か合理性で判断させようとする2人をけん制する様にして、丹生が言った。当の本人は決められそうな様子では無かった。
~~
その晩のことである。理事長からの話もあって、プラモ製作にも集中出来なかったので、GBBBBをぶらぶらと闊歩することにした。
相変わらず著作権を無視したり、公序良俗に反する機体が跋扈していたりと。とてもではないがガンダムゲーとは思えない光景であったが、この民度は間違いなくガンダムゲーであった。すると、ウィスパーチャットが飛んで来た。
「少し、時間の方は良いだろうか?」
相手はカオスだった。返事をすると、間もなく招待が届いたので応じた。すると、フリーダムフリートの個人部屋へと来た。
「すまないね、急に呼び出して」
「いいですよ。なんですか?」
「先日のことについてだ。すまないことをした。人に遊び方を強要するなど、一プレイヤーとして恥ずべき行為だった。申し訳ない」
ブラックロータスが頭を下げるエモーションをした。先日はノリノリだったが、時間を置いて我に返ったのだろうか。思慮分別がある大人の様に見えて、割とその場のノリで行動することが多いという印象を受けた。人のことは言えないが。
「そんな。謝らなくてもいいですよ。ノリで引き受けたのは自分ですしね」
「本当かい? そう言って貰えると助かるよ」
声に含まれていた緊張感が解ける様な感じがした。実際、カオスもノリで言っていたが、応じたのは他ならぬ自分だ。
もしも、これが特に何も無ければ普通に美プラで出場していた所だが、思ったよりも事情は込み入っていた。
「まさか、気にしていたんですか?」
「うむ。……私は、今のGBBBBが大好きだ。だが、自分達の理想を守る為に誰かに犠牲を強いる様な事があってはならないと思っている」
コウラやリンの様な真っ当な感性の持ち主の居場所が犠牲になっていることは棚に上げておくとして、カオスは話を続ける。
「君はガンダムが、GBBBBが好きかい?」
これまでのことを思い出した。GBBBBをプレイし始めてから、色々な人やビルドに出会って毎日が驚きと発見に満ちていた。だから、答えは決まっている。
「勿論です。タオやリン、色々な人達に出会えて、同じ時間と話題を共有出来て、凄く楽しいですよ」
「そうか。……あぁ! 悔しいなぁ! 私が今もスタッフ側にいれば『どうだ? 凄いだろう!』って、ドヤ顔出来たのになぁ!」
フリーダムフリートなんて大規模クランのリーダーをしていて、運営にも関わりがあるのだから、実質スタッフみたいな物だ。
「でも、スタッフだったら。今みたいな楽しみ方は出来ないですよね?」
「それは確かにそうだ」
運営側が公序良俗に反する行為を奨励したり、褒め称える訳には行かない。彼はスタッフでないからこそ、全力でGBBBBを謳歌出来ているのだ。
「カオスさんやフリーダムフリートの皆さんに会えたことも良かったと思っていますよ。カルパッチョさんとか見ていて退屈しないですし」
「アレを取り扱えるなんて、君も大した奴だね」
こうして、彼とゆっくり話すことも無かったのでアラタはじっくりと話すことにした。この日は珍しく、ミッションにもマイルームにもいかずにチャットだけで時間が過ぎて行った。