GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
「お2人は知り合いですか?」
「そうよ。同じ部活に所属しているの。流石に学校名までは言わないけれどね」
文からの質問にコウラは淡々と答えていた。流石に、こういった場で学園名を上げることは特定にも繋がる為、ある程度のリテラシー能力があるらしい。
「(コウラ? どっかで聞いたことある名前やな)」
タオの記憶の隅に引っ掛かっていた。アラタのことを本名呼びしていたっぽいし、反射的に出て来た名前だから彼女の本名も『コウラ』である可能性が高い。
だとしたら、そこそこ珍しい名前だ。別ウィンドウで検索画面を開いていると、今度はリンが尋ねた。
「コーラさんは、アラタに何の用?」
「コーラじゃなくて、コウラよ。彼をフリーダムフリートに誘いに来たのよ。ぬるま湯に慣れて欲しくないからね」
「それが嫌だからGBBBBに来たってのによぉ」
リアルでの力関係も見える気がした。念の為に確認してみたが、コウラのガンプラはパーツLv.MAXに加え、拡張アビリティカートリッジも厳選している様だった。彼女のガチっぷりは伝わって来たが……。
「ゲームのスタンスは人それぞれちゃいます? 僕らはアラタとゆる~くやるのを楽しんでいるんで」
これにはタオにも危機感あっての発言だった。というのも、現在この集団はアラタが皆を先導していることが多い。彼の行動力とコミュ力は頼りにされているのだ。だから、引き抜かれては困る。
「そうだぜぃ。俺はこの自由な環境が気に入っているんだ。だから、放っておいてくれよ」
流石に本人の意思を蔑ろにしての勧誘は出来まい。これで、この話も落ち着くかと皆が思っていた。
「本当に良いの? 言っておくけれど、貴方が『覚醒』を使えることは、掲示板とかで広く知れ渡っているのよ。私達以外にも勧誘は来ると思うけれど、対処できる? 断り方をミスったら粘着されるけれど」
GBBBBでは『覚醒』を使えるプレイヤーは限られている。
主力として起用したがるクラン戦は数多く存在するだろうし、そうなればアラタの存在は引っ張りダコになる。中には、断られたことを逆恨みする輩が出て来るかもしれない。
「お、脅しですやん!」
「脅しなんかじゃない。私はニ……アラタのことを助けに来たのよ。大丈夫よ、部活でもいつも助けてあげているでしょ」
「いや、アレ先輩が皆からビビられているから俺しか構ってくれる人がいないだけじゃぁ……」
「あ”?」
「やられ千葉ァ!!」
何となく、彼が今までガンダムのことを知らないという体を装っていた理由を理解できた。現実でも絡まれまくっているんだろうなと。
だが、GBBBBでも絡まれるとなったら何とかしたい。しかし、この事態を打開するようなアイデアが急に思い浮かぶ訳もない。と思っていると、リンが言った。
「そうだ! 私達でクランを作れば良いんだよ! そうしたら、フリーダムフリートが勧誘して囲い込む必要もないし、周りから誘われることも無くなるし!」
「なるほど! ええアイデアや!」
確かに。既にクランに所属している人間ならば引き抜きも行い難いし、フリーダムフリートに保護されることもない。何より、このメンバーで一つの団体を作れることは嬉しい。
「あら。クランを作るつもりだったの?」
「そうよ! 私、タオ、文。そして、アラタの4人で作るクランよ!」
リンが意気揚々と語る中でアラタだけがご丁寧にエモーションで『ビックリ』を表現していた。彼女のアイデアに感心している訳ではなかったことを、コウラの発言で理解せざるを得なかった。
「じゃあ、私。フリーダムフリートを抜けて貴方達のクランに入るわ」
「……え?」
「あそこは人の流入が活発だから抜ける人も珍しくないしね。アラタも入るんでしょ? だったら、私も入るわ。……まさか、受け入れ拒否するつもり?」
どうやら、最初からこの流れに持って行くつもりだったらしい。とんだ誘い水だった。彼女の受け入れを拒否するのは簡単だが、そうした場合。リアルの方で禍根が残る。受け入れる以外の選択肢が存在しない。
「そ、そんなつもりはねぇぜ。なぁ、タオ?」
「も、勿論やで!」
「ありがとう。じゃあ、よろしくね。ちなみにクラン名は?」
咄嗟に出したアイデアだったのでクラン名は考えていなかった。タオとリンが悩む中、今まで黙っていた文が言った。
「では『ギャザリング』は如何でしょうか? 『収集』という意味を持つ英単語です。GBBBBのゲーム性にも合致しているとは思いますが」
「有名なカードゲームを思い浮かべる人が多そうね。結構被りそうだし、特に候補が無ければ『マサクゥルズ』なんてどうかしら」
「先輩。クラン名が『皆殺し』はヤバいと思うぜ」
咄嗟に反応した所を見るに、リアルでも似た様なことを言っているのだろうかとタオとリンは戦慄した。しかし、この調子なら案外好き勝手に言っても良さそうだ。
「せやったら、GB-ARMSとかどうやろ? 勿論、G-ARMSの捩りやけど」
「『アヤト・ファイターズ』とかどうかな? 昔、すっごい強いガンプラバトルチームがあったらしいよ!」
やいのやいの色々と出て来るが、話題の中心となっているアラタもクラン名を思いついたらしい。
「うーん。『ビアンカ』ってのはどうだ?」
「イタリア語で白って意味やね。あ! このGBBBBで真っ白な状態から始めて行くって意味やったりするん?」
「いや、俺の家の近くにある飯屋の名前。ランチも美味くて気に入っているからよ。でも、タオの解釈も良いな」
なんと、テキトーな決め方だろうか。だが、癖は無いし広く受け入れられる名前ではある。タオが言った意味の方も気に入っているのか、これしかないと言わんばかりに頷いていた。
「では、クラン名は『ビアンカ』で決まりですね。申請諸々の手続きはしました。これより、私達はクラン『ビアンカ』の所属メンバーになります」
「ありがとよ!」
「じゃあ、アラタ。こっちでもよろしくね」
そして、逃れらない縁に雁字搦めにされるアラタを見て、タオとリンはお気の毒……という顔をしていた。
~~
「(あった。これか)」
色々とあって、いったん解散した後。自分のアバターの状態に『放置中』とだけ書き込んで、タオは『コウラ』という名前を調べていた。
すると、数年前の記事が出て来た。中学生の中では突出した強さを誇っており、ジュニアハイスクール部門では『ソロモンの魔女』とか言われていたらしい。
「あいたたたた」
本人がいないことを良いことに、タオは好き勝手に言っていた。
ただ、所詮は中学生でしかなく。大人達も参加する大規模の大会では、とある商店街のチームに負けたらしい。それ以降の足取りは見えない。
「やぁ、タオくーん。って、放置中かぁ」
「ぎゃあ!!!」
まさか、本人が帰って来たのだろうかと思ったら、いつぞやのミスターだった。こちらがビックリしたことに向こうもびっくりしていた。
「び、ビックリしたぁ。まさか、居たとは。何か作業でもしていたのかい?」
「いや、実は」
タオは先程あったことをミスターにも話した。アラタがリアルの知り合いと遭遇したこと、今後待ち受ける勧誘を断る為にクランを作ったこと。そして、自分やリン、文と一緒に件の人物が入って来たこと。
「それはまた怒涛な。でも、クランを作ったのか。仲間同士の交流が深まるし、良いことだぞ!」
「せや。ミスターさんもクランに入りません? 色々、良くして貰っていますし。居てくれたら、色々と助かるやろし」
「ハッハッハ。気持ちは嬉しいが、遠慮しておくよ。私は色々な所を見て回りたいのでね」
勧誘は駄目だった。やはり、彼は色々と世話焼きをしているのだから、1つの場所に囚われたくないのかもしれない。
「そうですか。でも、ウチにも遊びに来て下さい。待っていますよ!」
「嬉しいことを言ってくれるね。また、会いに来るよ。それじゃあ、取り込み中だったみたいだし、失礼するよ」
そして、ミスターとは別れた。コウラの話を調べている所に出た商店街チームの存在も気になったので、調べてみた所。『彩渡商店街』と出て来た。
オンゲーであるGBBBBから入った者には馴染みは薄いかもしれないが、前のバージョンの筐体からガンプラバトルが好きだった者達には、非常に馴染みの深い名前だ。ガンプラファイターの聖地として浸透している。この栄光を築いたチームは解散してしまったらしいが、そんな者達に当たってはフリーダムフリートに所属できる程の力量がある、コウラが負けてしまったのも納得できる。
「彩渡商店街のチームかぁ。どんな人らやったんやろ。案外、GBBBBにもおったりして」
そんな益体の無いことを独り言いながら、ミスターとも会えたし特に誰もログインして来る様子もなかったので、タオはGBBBBの接続をオフにした。