GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】   作:ゼフィガルド

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79戦目:飲もう!!

「はぁ……」

 

 彩渡商店街の最寄り駅に降りたミサは大きく溜息を吐いて、帰路に着いていた。彼女の疲労困憊ぶりから、本日の業務がどれだけ多忙だったかという様子が見て取れる。

 夕暮れと言うこともあり、商店街から去って行く人達と入れ替わりる様にして実家へと向かう間に、彼女は調子を整えていく。妹に疲れた顔を見せられないという意地があった。

 

「ただいまー」

「お帰り~」

 

 店内に入るとユウイチとリン以外の気配があった。見れば、作業用スペースでリンと誰かが居る。と言っても、彼女が仲良くする相手なんて限られているし、近付いてみれば、予想通りの相手が居た。

 

「アレ? アラタ君。来ていたんだ」

「あ、どうもお邪魔しています」

「お姉ちゃん、お帰り~」

 

 見れば、インフィニットジャスティスガンダム弐式を組み立てていた所らしく、中々良い感じに仕上がっていた。

 

「二式の方を組んでいたんだ。てっきり、すーぱーふみなの例の改造案をやっているのかと思っていた」

「ん~~~。ちょっと、色々と事情がありまして。リンには話したんだけれど」

「結構、アラタって学校の方でも注目されているらしいから」

 

 考えてみれば、ガンプラに関わるIT分野の学校に通っていて、その筋の先頭を走る相手と交流があり、大規模サービスで注目されているプレイヤーなのだ。関係者から声が掛かるのは自然なことだった。

 

「話しても大丈夫なことなら聞いてみたいんだけれど」

「内密にしてくれるなら。フドウ先生にも聞いて貰ったし」

 

アラタは理事長から言われた話をした。リンやコウラの様な学生とは違い、社会人である彼女なら、また違った意見が。

 

「好きじゃないね。遊びって言うのは、そう言った利益とかが関わらないから全力で楽しめるのに!!」

「でも、お姉ちゃん。商店街の復興にガンプラバトル使って無かった?」

「リン。アレはね、私達が全力で楽しんだ跡について来た結果なんだよ」

 

 ふふんとドヤ顔をしていたが、カウンターにいるユウイチは苦笑いをしていた。もしも、この場にタクマが居たらどういう反応をしていたかは気になった。

 

「そうだよな。やっぱり、俺が好きなのは魑魅魍魎と魔改造ふみなと版権跳躍が蔓延る、あのGBBBBだしな」

「良いこと言っている風に聞こえるけれど、運営の人が聞いたら悲しむと思うよ?」

「カドマツは割と笑って見ているよ。この間、ネオアームストロング……」

 

 作業用スペースでワイワイ騒いでいると、カランと音が鳴った。見れば、スーツ姿の生真面目そうな男だった。ただ、特徴があるとすれば。

 

「すいません。ゼウスシルエットを予約していた者なんですが」

 

 滅茶苦茶声が良かった。火消しの風を吹かしていそうだし、月で御大将をしてそうだし、不可能を可能にしてくれそうな感じだった。

 

「(ちょっと。まさか、あの人って声優の……)」

「(いや、写真とは大分違うし、声が似ているだけの人だと思うんだけれど)」

 

 ひそひそとリンとミサは囁き合っていた。すると、スーツ姿の男性は作業用スペースにいるアラタ達、より正確に言えば彼が組み立てていたインフィニットジャスティスガンダム二式に興味を持ったらしく、近付いて来た。

 

「二式。良いよね」

「良い……」

 

 これはGBBBBでも、しばしば行われる類の会話であり、リンとミサにはよく理解できない物だった。ここら辺はよく言われる『理解』と『共感』の差だろう。

 男同士は『理解』で話が進むことが多いので、共感の過程を省かれるとよく分からないのだ。スーツ姿の男性はゼウスシルエットを手に入れてご機嫌なのか、饒舌だった。

 

「種自由の前日譚の製作も決まったし、嬉しいことが続くよね」

「ですよね。この調子で新しい立体化とか。GBBBBとかにも来てくれたり……って、お兄さんはGBBBBとかやっています?」

「勿論だとも! 私はガンダムが大好きでね。GBBBBも結構長いことやっているんだ。自慢じゃないが、ちょっとした有名プレイヤーなんだよ。ひょっとしたら、君も知っているかも」

 

 3人の考えはほぼ合致していた。いや、こんな喋り方とテンションとCVしている有名プレイヤーなんてアイツ位しかいないだろうと。と言っても、リンとミサはちょっと引いているので、代りにアラタが言った。

 

「……カオスさん?」

「大正解! いやぁ、こんな所で素敵なガンプラを作っているユーザーと出会えるなんて、今日はツイているよ。良ければフレンドにならないかい?」

「あの。必要ないです」

 

 すると、アラタはガンプラ用のプロテクタースーツを取り出した。中には、GBBBBでの愛機であるガンダム・タンクが納められていた。これには相手も驚いていた。

 

「……アラタ君?」

「ども」

 

 ペコリと頭を下げていた。いよいよ、ミサとリンは顔を見合わせていた。コレ、マジですか? と言わんばかりに。

 

~~

 

 場所を移して『小料理屋みやこ』。カオスとアラタに加えて、ミサとリンも付いて来たので4人での突発オフ会になっていた。

 

「え? 以前から来ていたの?」

「そうだよ。あの模型屋は静謐で、ヒッソリと買物をするときには実に心地いいんだ。勿論、表通りの喧騒に溢れたショップも好きだがね」

 

 ミサは驚いていた。まさか、自分達の店にこんな大物がリピーターとして通っていたなんて。だが、GBBBB内での外連味溢れた姿とは到底重ならない。

 

「カオスさんって、割とパンクな仕事をしているかと思っていたけれど、結構ピッシリとスーツを着こなしていてびっくりした」

「メリハリだよ。普段はカチッと過ごすことで、それ以外の場所でのハジケっぷりが増すんだ。フラガ大佐だって、パイロットをしている時以外は気さくなお兄さんだろう?」

「お兄さんと言うか、おっさんと言うか」

 

 種自由ではフラガ大佐も31歳だ。10代の学生からすれば、30歳を過ぎた男はおっさんだった。

 

「そっかぁ、私もおっさんかぁ。ま、いつだって少年ハートは引っ提げているからバランスは取れているがね」

「これはGBBBBのトッププレイヤー」

 

 アラタがカオスにお酌していた。ノリは良くとも、未成年に酒を勧める様な真似をしない辺り、やはり真面目な人間なのだろう。

 

「にしても、こんなにオフ会率が高いなんて。カオスさん、ネトゲってリアルの相手に会うことって多いの?」

「あまりだな。私もフリーダムフリートのメンバーで顔合わせをしたことは殆ど無いよ。クロカンテ君くらいかな?」

「へぇ。会ったことあるんですか。どんな人でした?」

「いや、正直びっくりした。アレは一度会ってみて欲しい。ただ、ギャップは私以上だよ。マジで凄いから」

 

 どんな人なんだろうと、気になった。ゲーム内では礼儀正しい人と言うイメージがあるのだが、ギャップが凄い。となると、滅茶苦茶ファンキーな人だったりするんだろうか。

 

「一度はビアンカとフリーダムフリート合同でオフ会とか」

「だが断る。アレとリアルで会ったら、気まずい」

 

 こういう時に喧嘩になる。とかではなく、気まずくなる。に、なる辺り。割と小心ハートな持ち主でもあるのかもしれない。

 

「でも、ビアンカの皆とオフ会とか。クランでのオフ会は楽しそうだね。カルパッチョちゃんのリアルとか気になる!」

「多分、アイツはネカマだよ」

 

 ミサもノリノリだった。カオスが軽口を叩き、皆が笑う。GBBBBと言うゲームを介して、縁が紡がれていた。

 

「うん。やっぱり、俺。GBBBBの為に頑張る。頑張りたいね」

「嬉しいこと言ってくれるじゃなーい! でも、私はアラタ君にも楽しんで欲しいけれどね!」

 

 カオスは事情を知らないのでケラケラと笑っているが、リンとミサは柔らかく微笑んでいた。彼が最終戦をどんな機体で行くかが、決まった瞬間でもあった。

 暫く、GBBBBの談議で盛り上がり、何回『カルパッチョ』という名詞が使われたか分からない位に彼女の名が上げられている中、ふとミサが話題を転じた。

 

「そう言えば、カオスは今何の仕事を?」

「詰まらない解答になるけれどIT会社だね。最近は色々な所で問題が起きていて、今日も休日出勤だったんだよね」

「この間、ニュースでやっていた電車の遅延とかゲーセンの不具合とか?」

 

 最近、そう言った機械制御に関する設備の不具合が多数起こっているのは、アラタ達もニュースで見た覚えがあった。

 

「そうなんだよ。どうやら、各所で取り扱われているAIが不具合を起こしているらしくてね。具体的に言うと『正し過ぎる』挙動を取ろうとするらしい」

「あー! それ、分かる。私も今日、電車に乗ろうとしたらさ。いつもはもう少し開いてくれているのに、直ぐに閉まっちゃったんだよね。酷くない?」

「駆け込み乗車はおやめくださーい」

 

 そんなギリギリで乗るのは良くないという警句も含めて、アラタが模範的な注意をしていた。

 

「他にもゲームセンターが条例の時間と客数を検知して、勝手にシステムを閉じたりとかね。全く、融通が利かない」

「でも、以前まではそんなこと無かったのに?」

「うむ。AIの方に何かしらの不具合が生じているとは思うんだが。人間が楽をする為にAI任せにしたのに、修正の為に人間が奔走するなんて本末転倒じゃないか」

 

 今まで楽しそうにしていたカオスが、ちょっぴり不機嫌になっていた。しかし、デザートに運ばれて来たバニラアイスを食べて直ぐに機嫌を直していた。

 

「理由の究明とかは?」

「私もAIの作成者に問い合わせようとしたんだがね。結局、分からず仕舞いだったよ。すいませーん、このあんみつもお願いしまーす」

「甘い物ばっかりっすね……」

 

 カオスの名にふさわしく、テーブルの上をから揚げとスイーツで埋め尽くす混沌とした光景を作り上げていた。突発的に始まったオフ会は実に愉快に楽しく過ぎて行き、1人の少年の背中を強く押してくれた。

 

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