GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
『ワールドニュースです。今、世界各国で起きているAIの不具合。世論は、今一度。私達との付き合い方を見直す段階に来ています』
スマホで流されるニュースを見ながら、アラタは電車に揺られていた。
昨晩は突発的なオフ会が開かれ、楽しい時間を過ごした。まさか、カオスと会えるとは思っても居なかった。
正に話題になっているAI関係の話で彼がグチグチしていたことを思い出すが、悪いことばかりではないハズだ。
「(文の奴。大丈夫かな?)」
カドマツとは軽々に連絡が取れる相手ではない。相手はGBBBBでも重要なポジションにいるスタッフなのだ。一プレイヤーとしてあまり大々的に接し過ぎるのも体裁的によろしくは無い。
バトルトーナメント決勝戦も近付いて来ているので、色々と考えを巡らせすぎれば身が入らなくなる。一先ず、昨晩に決めたことを理事長に伝えようと思いながら、アラタは駅を降りてガンブレ学園の門を潜った。すると、声を掛けられた。
「やぁ、新田君。おはよう」
「お、おはようございます。理事長」
周囲の生徒も戸惑う中、アラタは緊張気味に挨拶を交わした。自分の登校時間まで把握していることに内心驚いていたが、むしろ良い機会だと思った。
「理事室まで来てもらえるかな?」
反対できる訳がない。1人で行くのは心細かったが、周囲に頼れそうな人物は誰も居ない。黙って、付いて行った。
きっと、先日の話についてだろう。だが、自分の心は決まっている。ハッキリと伝えるんだと思っていると、先に理事長が口を開いた。
「新田君。君は良い生徒です。我が校の生徒はですね、ちょっと個性的というか。我が強い子も多い中、君は真面目で常識的。勉学も疎かにせず、かと言って対極側の人間に対しても扱いが粗雑ではない、協調性に富んでいます」
「あ、ありがとうございます」
丹生やユイとは少し前まで仲違いをしていた位なのだが、これだけ上げて来るというのは、落とす為の下準備と言った所だろうか。つい、身構えてしまった。
「ただ、良いことばかりではありません。実は先日ですね、元・ガンブレ学園の生徒から苦情がありまして。サイド0に所属しているモリタ君についてです」
「は?」
何故、ここで彼の名前が出て来るのだろう? 陳情されるとすれば、もっと前に来ているハズで。なら、このタイミングで来たということは……。
「この女子生徒はですね。過去、彼に恐喝紛いなことをされガンプラバトルを挑まれたと。その事が恐ろしくなり、退学したということです」
「ちょ、ちょっと待って下さい。なんで今に?」
「落ち着いて来たということでしょう。残念なことに目撃証言や中には録音しているという生徒もいました。彼女が、その気になれば我々も経営陣として対応せざるを得なくなります。……ただ、もしも我々に協力して頂いた有名なプレイヤーが所属していた『サイド0』のメンバーを守る為、となれば。私達も尽力させて貰いましょう」
身から出た錆。と言うしかないが、飴だけではなく鞭も用意していたということらしい。この後に及んで切って来たということは、向こうも切羽詰まっているということだろうか。
「ショウゴ先輩は知っているんですか?」
「君を呼び出した前日に通告していました。聞いていませんでしたか?」
そんな気配は微塵も感じさせなかった。あの時もバカみたいに、ふみなの頭部を作っていたし、自分のことを励ましてくれていた。自分がそんな状況に置かれていることも言わずして。
「(普段、バカやっているくせに)」
「新田君。色よい返事を期待していますよ。一緒にGBBBBを真っ当に、沢山の人と一緒に盛り上げていきましょう」
恐らく自分達の交友関係とアラタの性質を知っているが故に、この様なことを言って来たのだろう。出掛けていた言葉が引っ掛かったが、呑み込んで教室へと戻って行った。
~~
昼休みのことである。アラタは一目散に部室へと訪れた。相も変わらずショウゴはふみなの頭部を作成している。こちらに気付いた。
「お、アラタか? 丁度、納得行く物が出来たんだ。ちょっと試しに」
「俺に残していくってことですか?」
一瞬。ショウゴが目を見開いたが、事情を察して大きく溜息を吐いた。だらしなく穿いていたズボンから封筒を取り出していた。
「あのおっさんになんか言われたか? 気にすんなって。元をただせば、自業自得なんだからよ」
「手に持っている封筒の中身は何ですか?」
「フドウ先生に渡すモンだ。まぁ、ぶっちゃけ言うと退部届だけれどよ」
思わずアラタは腕を掴んでいた。普段、テンションの低い彼が珍しく興奮していた。
「なんで、普段バカな癖にこういう時に格好つけようとしているんすか?」
「んー……。なんつーかさ、やっぱり過去にやったことって無かったことには出来ねぇんだよ。ちゃんとケジメ付けねぇとよ」
学園を改革したからと言って、過去に起きた出来事を無かったことに出来る訳ではない。死人が出る筈もないが、そう言った抑圧的で無法的な治安で心を病んでしまった生徒がいないハズがない。
アラタにとってはバカでお調子者な先輩だが、過去のショウゴは明確な加害者だった。どうして、今になって? という疑問は尽きない。
「だったら」
「お前が守ってくれるってか? 冗談じゃねぇ。俺には謝罪する機会すらくれねぇってのか?」
曖昧に済ませていた問題と向き合う時が来ただけなのだと。彼は庇って貰うつもりも無さそうだった。グッと握った拳を突き出して来たかと思えば、手を開いた。中には、あばたーふみなに劣らない造詣をしたふみなの頭部があった。
「いやいや、これがお別れの品って」
「良いんだよ。お前がコレ付けて、俺が退部したらおっさんも魂消るぜ? 新田。ありがとうな、また会おうぜ」
ピシャリと部室の扉を閉めた。追いかけたかった。だが、それは彼の覚悟を無駄にすることだ。アラタはショウゴから貰った頭部を使って件のガンプラの作成に取り掛かった。いよいよ、彼の覚悟は揺るぎの無い物になっていた。
そして、放課後。彼は再び理事室に訪れていた。扉の前にはフドウが待機していた。
「先生。どうして?」
「ショウゴ君に言われてね」
彼の手には、ショウゴが持っていた封筒が握られていた。バカではあったが、アラタにとっては間違いなく先輩であった。ノックをして扉を開けた。
「失礼します」
「賛成してくれる気になりましたか?」
心なしか、理事長の声が焦っている様に聞こえた。恐らく、モリタの脅しが効かなかったことを理解して、一縷の望みに掛けているのだろう。アラタはガンプラ用のプロテクタースーツから、例の作品を取り出していた。
「俺はコイツで出場します」
「……どうしてですか? そんな物で出場しては全世界に恥を晒すんですよ? 良い大人が、美少女フィギュアで遊んでいると。GBBBBに被る風評被害を想像できませんか?」
忌々し気だった。やはり、彼は経営者であっても教育者ではないらしい。フドウの方を見て来たが、彼はすまし顔で応えていた。
「生徒の自主性、創作性を尊重するのがガンブレ学園です」
「創作性だと? こんな物が? そんな物は大衆に認められてこそだ! 分かった、あの男だな? GBBBBで幅を利かせているだけの、カオスとか言う男に囃し立てられたからだな? 奴らなど、一握りの変人に過ぎん。あんな奴らに感化される必要なんて無い! 目を覚ませ! 真面目で常識的な君に戻るんだ!」
余程、せっつかされているのだろう。彼は必死だったが、アラタは肩を掴まれて詰め寄られたが、毅然として答えた。
「理事長にとっては『あんな奴ら』かもしれませんが、俺にとっては同じ時間を過ごした、大切な『友人』達です。ご期待に沿えず申し訳ありません」
ペコリと頭を下げて、アラタと一緒にフドウが理事室から退出した。後には呆然とした理事長だけが残されていた。