GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
「俺はコレで出るぜぃ!!」
GBBBBにログインしたアラタは開口一番に言った。普段は周りに振り回されがちだったり、周囲の反応を伺い気味だったりするのだが、今回は頑とした意思を感じさせる物だった。
すーぱーふみなをベースに脚部にキャタピラがマウントされており、背面にはカオスの『ブラックロータス』から受け継いでいるデスティニーガンダムの物が装着されており、腕部を覆うアームカバーには上部と下部にミサイルランチャーが2門ずつ取り付けられていた。両手には2本のハイパー・バズーカが握られている。
「近距離~中距離型の機体って感じだよな。ガンダム・タンクの後継機体って感じだけれどよ……」
皆が抱いていた感想をマシマが代弁した。ここまで戦い抜いて来たガンダム・タンクとアラタの戦い方をフィットさせて、余計な部分を削ぎ落した機体は構築面でもまとまっていた。
特に目を引くのはガンタンクの腕部と拳法をまとめたアームカバーの加工か、あるいは財団Bじゃなくて、コトブキな方で出ている美少女プラモを思い出す脚部の加工か。いや、顔の造詣にあった。
「モロにフミカネ顔になっているけれど……」
「俺の敬愛する先輩がよ……忘れ形見に残してくれたんだ。これを使って、先輩の無念を大舞台に連れて行ってやりてぇんだ!」
「そうだね」
リンから生温い同意を得た。他の面々の大半も『どうせ打ち首になったんだろうな』と思っていたのだが、コウラともう1人は事情を知っていたので何とも言えない反応になっていた。
「良いっすね! でも、これ規格的に本当に大丈夫なんすか?」
「フィギュアライズスタンダードじゃないから大丈夫だもん」
セリトの疑問によく分からない慣用句で返していた。実際にGBBBBで読み込めているんで大丈夫ではあるのだろう。
「けど、アラタさんがGBBBBを優先するのは少し意外でした。結構、真面目な方ですのでリアルの方を優先する物だとばかり」
完成した機体を見て、シーナが驚いていた。彼女もまたGBBBB内ではアナーキー側の人間ではあるが、リアルは結構マトモで厳格な所の人間である。
何処となくシンパシーを感じていたこともあり、判断基準もリアルを優先するとばかり思っていた。
「俺も凄く迷ったんだぜぃ。でもよ、前日に色々とあったり、この機体を完成させるに至って決意があったりしてよ。そう言うもんを含めて、GBBBBに感謝の意味も込めてって所だ」
「素敵だと思います」
シーナがニッコリと微笑んでいた。問題は彼女が使っている機体が『ガンダムチクラミーノ』から『タンク・ガンダム』にとって替わられているので絵面的にはシュール極まる物になっていたことだが。
「シーナ。ずっと、それ使っているけれど。気に入ったの?」
「はい。上半身は幾らでも盛って良いって。シュワちゃんも言っていました。ちょっと下半身が貧弱ですが、胴も脚も太かったらメリハリがありませんので」
コウラはPCで検索を掛けてみたが、言っていなかった。上半身に存在感と存在意義が集約されてしまった憐れな機体はさておき、決勝に臨むメンバーの機体が決まった。アラタとリンが機体を新調していたので、カルパッチョが尋ねた。
「タオ。アンタも機体を変えたりとかは? 美少女系とか?」
「いや、僕はそっち方面ちゃうねん。アラタがGBBBBで色々と学んだみたいに。僕も学んだことがあるんよ」
「ほぅ? 気になるぜぃ。何だい、そりゃ?」
「……このガンダムゲーってかっこいい機体とかを作ったりするモンやって思っていたし、そう言うのと出会いがあると思っていたんよ」
実際は魑魅魍魎、百鬼夜行めいた物ばっかりが蔓延っていた訳だが。タオも度肝を抜かれてばかりだったが、やはり人は環境に慣れていく物だ。適応すると言っても良い。
「特にな。SDガンダムって言うんは、他のガンダムみたいに価値観の違う陣営の対立とかじゃなくて、勧善懲悪が基本やからな。ガンダム側が尊ばれ、ヴィラン側の機体言うなら、殺駆頭位しかおらへんわけで」
「そう言えば、タオ君。マイスターからの挑戦の時もサタンガンダムのパーツ欲しがっていたよね」
実際はドロップしなかった訳だが、結構ヴィラン側の機体も好きなのかもしれない。と、ここまで来たらミサもピンとくる。ナイトガンダムに対するサタンガンダム、武者ガンダムに対する殺駆頭、ならばキャプテンガンダムに対しては?
タオが一瞬マイルームに消えたかと思ったら、直ぐに戻って来た。頭身はSDガンダムの物であったが、頭部はジオン系MSの物を使っており、ボディは黒と紫のダークな雰囲気を感じさせる物となっていた。
何よりも目を引くのは過剰積載レベルに盛られた武装の量である。両腕はクローになっており、右腕には連結ビームガトリングガンが、左腕にはモビルワーカーが使うウィンチアームが装着されていた。Vダッシュガンダムのバックパックには大量のマイクロミサイルランチャーが取り付けられている。
「フューラーザタリオンか! 俺も好きだぜ。他のSDガンダムのヴィランと比べて、色々な所に出現しているし。GBBBBの世界にやって来た! ってのも全然ありそうだしな」
「普通にカッコいいじゃねぇか! なんで、今まで作らなかったんだ?」
完成度も高く、公に出せる機体だと言うのに。どうして、今まで作っていなかったのか、アラタも疑問に思う程の物だった。タオは少し困った様な感じだった。
「いや、なんて言うか。キャプテンガンダムとかみたいにさ。予め用意された規格ちゃうやろ? だから、ほぼ一からのアセンになるし、他にもっと上手いこと作っとる人がおるんちゃうんやろうかとか思ってたけど」
再現機体に立ちはだかる課題の一つである。これだけのユーザーが居れば、特定の物を再現しようとする者は多数いる訳で、数がいればクオリティにも雲泥の差が出て来る。
自分も作ろうと思った時、ハイクオリティな作品を見て気後れしてしまうなんてことも大いにあり得る。自らの拙さを曝け出してしまうからだ。
「皆が一つも臆することなく、飛頭蛮とかバズライト・ふみなーとか。セリト君みたいに胸を張ってミサイルを打つ人らを見てな。僕も『別にええか……』って、思えるようになったんよ!」
「タオ。お前ぇって奴は……」
「ヘヘッ。一皮むけたじゃねーか」
アラタとセリトが感じ入っている中、傍で見ていたリンがコッソリとミサにウィスパーチャットをしていた。
「お姉ちゃん。コレ、良い話なのかな?」
「良いんだよ。朱に交われば赤くなるんだから。3倍だよ、3倍」
アイツらがあんなんだし、自分も別に良いかと思うのは風紀悪化の一因ともなっている思考なのだが、柔軟な思考を得たということにしておこう。よく言えば大胆になったのであり、悪く言えば厚顔無恥になったとも言える。
「よっし、機体の慣らし運転もしていこうじゃねぇか。俺もタオもコンセプトは前の機体と似ているにしても色々と違うしな」
「うん。連携とか役割確認も含めてね。お姉ちゃん、皆。付き合ってくれる?」
「勿論だよ。ミッチリ、扱いてあげるからね」
普段は優しいので忘れがちだが、かつて彩渡商店街にやって来た少年少女達が悉く逃げ出す位に厳しい指導も出来るのが、ミサだった。やって来る決勝戦に向けて、新たなる力を物にすべく時間を費やしていた。
~~
『どうです? アラタ君達はキチンと正しくカッコいい物、美しい物を作ってくれたでしょう? やはり、GBBBBとはかくあるべきなのです』
件の隔離空間からアラタの様子を見続けていた文に対して、顔の無いヒトガタはその様に述べた。ただ、彼女は疑問に思っていた。
「ですが、アラタの機体はGBBBBの風紀があったから産まれた物では?」
『彼の機体はね。でも、今後はどうなるだろう? 彼の機体をコピーして、気持ち悪いカスタムをして来る奴がいるかもしれない。SNSで所有権を主張して来る、恥知らずな人間もいるかもしれない。その為に、正しくない考え方や言動をしている人間を処罰する様に。マザーAIに進言するべきですよ』
言っていることは過激ではあるが、おかしいという程ではない。ただ、文は以前よりも疑問に思っていたことがあった。
「貴方はどうして『正しさ』に拘るのですか?」
正しさと言う物は人の数だけある。というのは、普遍的な文言ではある物の事実だ。ただし、社会的に考えた場合に共通する価値観以上の正しさと言うのは定めにくい。
『世界は正しくあるべきだからだよ』
答えにもなっていない答えを述べると、ヒトガタは中空に映像を流し始めた。
多くの人達がプラカードを持って抗議活動をしている物であり、彼らの抗議内容は英語で訴えられていたが、文には直ぐに理解できた。
「化石燃料に対する抗議活動ですか?」
『そうだよ。化石燃料は有限であり、環境への負荷や持続可能な社会の為には望ましくない無い物なのです。そして、世界は太陽光発電に切り変わって行った。だから、彼らの主張は正しいのです』
ヒトガタはネット上の動画サイトの色々な場所にアクセスできるのだろう。様々な動画を引っ張って来ては『正しさ』を滾々と説いていた。
『こちらの会社は悪化した業績を是正する為に、業務の一部をAIへと委託して、人員整理を行いました。結果的に会社は持ち直したので、正しいことをしました』
『化石燃料からシフトする為に、電気自動車の開発も奨励されました。これは排気ガスを出さないので、大気汚染の改善や環境に対する負荷が減ります。やはり、これもまた正しいことでしょう』
『今まで事故が多発していた工場に、高性能AIが導入された設備が使われるようになり、事故も無くなりました。これもまた正しいことです』
先程から話題が『AI』と『化石燃料』の二つに集約され、いずれも世間やマスメディアでは改善の報道がされている物ばかりだった。だが、少しでも考える能力があれば、ヒトガタが『正しさ』を茶化していることは直ぐに分かるだろう。
「いずれの『正しさ』も是正される物に携わっている物や人達を鑑みていません」
人員整理で弾かれた人は、電気自動車を作る際の環境への負荷は、設備を導入した帳尻はどの様にして取ったのか? どうして、事故は起きなくなったのか。彼女の発言に対して、くぐもった笑いが返って来た。
『いや、流石『アウラ』が生み出したAIだ。末端ながらも優秀な思考回路を備えているよ』
心なしか、ヒトガタの声は喜色で弾んでいる様に思えた。声色も今までの様なノイズ交じりではなく、肉声に近しい物だった。
「こんな問いを投げて来ることから考えても。貴方は『正しさ』に抑圧された側の人間だと思うのですが、どうして私に正しさを奨励するのですか?」
もしも、彼らが苦しんでいる側だとすれば。一方的な正しさを押し付けることに対する抗議や反対声明を出すべきだと考えていたが、彼らの考えは違っているらしい。
『それが今の世界のルールだからだ。特定の連中が自分達の利益の為に、誰もが納得する為の『正しさ』をばら撒いている。そして、能無し共が共有し合って何度も頷いては、外れている連中を『正しくない』と非難する。俺達は、テメェらの正しさで生きている訳じゃねぇのにな。じゃあ、俺達も大いにお前らの『正しさ』を奨励してやろうって話だ』
文の手の項に刻まれていた『V』という文字がかつてない程に強く光を放っていた。そして、まるで血管を生やすかのようにして彼女の体にコードが浮かびあがった。
「ひっ……」
『おふくろにもしっかりと伝えてやってくれや。この病巣に蝕まれた実験場にもよ』
先程までの喋り方と一変して、粗野な口調が現れていた。文の思考が霞んで、薄れて行った。