GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
マザーAI『アウラ』。普段は『GBBBB』の運営を行っているが、これらの試運転で得たデータを基に新たなるAIを作り上げては、様々な所で運用されている。
勿論、この運用方法には欠点があった。まず、利権が集中し過ぎること。マザーAIで作られた子機とも言えるAIが各所で運用されるとなればGBBBBの出資者が、AIを運用している会社の命綱を握ることになりかねないことだ。こちらは分かりやすい脅威だった。
そして、もう一つ。これは映画などのフィクションめいたことではあるが、AIを生み出すAIに異常が発生した時、社会に及ぼす影響が甚大になりかねないこと。経営は兎も角、技術者としてカドマツもこの点には抗議したが。
「その為に、君達を雇っているのだろう?」
と、上の方から言われたのであれば、従う外無かった。そして、現在の彼は端末AIとして稼働していた『文』の調整をしているのだが。
「(内部の数字が変動しまくっている。一体、何処から情報を収集している? 一旦、ロビーとの接続は切っているハズだが)」
AIという分野の一人者である彼にも想像が出来ない事態と言うのはある。記憶を反芻しているのか、あるいは新たな結論を見出そうとしているのか。
以前もやった様に内部に潜り込む、という方法も無くはなかったが、あまりにプライバシーに欠ける。そして、人手も足りていなかった。
「バトルトーナメント決勝戦に向けて人員取られているしさぁ! 私はアンタと2人っきりでアウラの調子も見ないといけないしさぁ!!」
同室では合法ロリのモチヅキが泣き言を喚いていた。近くに転がる、エナジードリンクの空き缶が勤務状況を物語っていた。
「恐らく『文』の変化に呼応する形でアウラにも変化が起きているんだろうが。何が起きている?」
アウラの挙動と言えば、バトルトーナメント決勝戦に向けての広報活動。という、極めて真っ当な物だったので違和感が見出しづらい所はあった。
GBBBB内のロビーだけではなく、SNSや動画サイトなどの広告も打ち出している所におかしな所は見当たらない。
「お~ぃ、見ろよカドマツぅ。PvPにチーターが現れたけれど、プレイヤーがボコボコにしているぞ~。イレギュラーだ、イレギュラー」
残弾数とブーストが無限になっている機体を、飛頭蛮ふみながボコボコにしている様子が映し出されていた。アウラが違反者動画として取り上げた物だろう。
何が楽しいのか、モチヅキはケタケタと笑っていたので、カドマツはそっとブランケットを被せて、椅子を3つ位用意して並べた。
「寝ろ」
バトルトーナメント決勝戦、二転三転する経営陣の方針、噂によればビアンカのメンバーの意向が深く関わっているんだとか。眠気に耐え切れなかった望月がスヤァとする中、カドマツは何か小さな変化でもないか確認していた。
アウラ産のAIにおける不祥事は最近、しばしば起こっていたし対応にも追われていたが、ようやく鳴りを潜めて来た。念の為、自分の意見だけに偏り過ぎない為にSNSなどの広告も目を通していく。以前まではベストバウトの動画を編集した物を流していたのだが…・・・・。
「(広告の種類が変わっているな)」
画面にはGBBBBのロビーと初期アバターであるRX-78-2が映し出されていた。タップをすると機体が動き、簡単なミッションに挑める。いわゆる体験型の広告だろう。
実際、GBBBBの魅力と言えば機体を動かせるということにあるのだから、アピールポイントとしては正しいのだろう。そこまでは良かった。
「(『この間、動画を見ていたらこのゲーム広告挟まってウザかった』。『スキップが出るまで長いんだよな』。『電車内の広告でも表示されていたし、何処でもガンダムだよ』。オイオイ……)」
無理矢理プレイを強要させればウザがられるに決まっている。そもそも、何度も目にせざるを得ない広告は却って不快感を与える場合すらあるのだ。
だが、マーケティング的には知名度が存在すらしない方が問題だ。そもそも、不快感を抱くユーザーなんて最初から顧客にすらなり得ないのだから。問題は、アウラと言うAIがその様な舵を切ったことだ。
「(ちょっと広告頻度を控えさせるようにデータを調整するか)」
カドマツは技術屋である為、マーケティング的なことには疎いが、ユーザーがウザがること位は分かる。あまり評判を落とさないようにする為にも、広告の頻度を落とす様に、あるいはスキップし易い様に調整していた。
~~
『ンァハァー!』
昼休み。タオとセリトは動画を見ながら昼食を取ろうとした所で、ウザい広告が挟まっていた。誰でも分かる数字の代償を敢えて間違えるプレイを見せることで、ユーザーに是正させようとしてDL数を稼ぐアレだ。
「不思議よな。普通の真っ当なCMって記憶に残らんのに、こういうウザいのってえげつない位に残るもんな」
「インプレッションを稼ぎたきゃ不快なことを言え。ってのは、もはや鉄板だしな。世も末だよな」
動画を見つつ昼食を取っていると、彼らの机の周りに複数の男子生徒が集まって来た。見れば、セリトとつるんでいた陽キャ集団だった。
「セリト! まさか、お前が俺達の意思を継いで、決勝戦にまで行ってくれるなんて。俺達は嬉しいよ!」
「うわぁ、晒し首集団や」
セリトが元居たクランは、彼以外が全員打ち首になって分解したという悲劇的、いや。自業自得の集団であったが、これでも愛着はあったらしい。
「お、アカウントでも取り直したのか?」
「おぅ! 何か、広告で流れて来たのを久々にやったら、やっぱりそこそこ面白くてな。何よりFPSゲーみたいに暴言が飛び交わずにぬるくプレイできるのが面白ェんだよ」
「絶対にFPSだけはプレイせんとくわ」
タオは心から誓った。それにしても、ウザいと思っていた広告にもキチンと人を惹き戻すだけの訴求力はあるらしい。
友人達の復帰と応援を受け取りつつ、昼休み後には情報の授業だった。現代は、中学生の内にPCの操作やリテラシーを教えられるということは珍しい事でも何でもない。
「今日の授業は……うん?」
教師がPCを操作しようとした時のことである。全員のPCにとある画面が映し出された。クラスメイト達の中には知っている者もいた。見慣れたロビーだった。
「これって、GBBBBの」
何故、学校のPCに? アプリがインストールされている訳でもないのに、何処から入って来たのか。どうやって潜り込んで来たのか。
もはや、アドウェアの様な挙動であり、教師もホストPCを操作して閉じようとしていたが、眉間の皺が深まるばかりだった。
「ダメだ。強制終了も出来ない」
タオやセリトも強制終了させようとしたが、画面内でガンダムが動き回るばかりだった。ふと、タオが思い出したのは昼休みの会話である。
「なぁ、もしかして。コレ、クリアしたら閉じるんちゃう?」
「は? こんな、アドウェアみたいなのを動かしてみるのか?」
体験型の広告は一定の操作をしてみれば、そのままアプリのDLなどに移って……という流れが定番である。それに倣って、このアプリも動かしてみれば終わるのではないか?
本来なら、教師も生徒に触らない様に制止を出すべきだったが、彼としてもこんな体験が無かったのだろう。そして、タオ達はGBBBBのユーザーである。ガンプラを動かすことには慣れ切っている。
「(なんか、この状況。アレを思い出すなぁ)」
まだ、ビアンカが大きくなったころ。アラタ達と行ったクエストで難易度が変更されていて、リタイアも出来なかったこと。バズライト・ふみなーとちいかわが助けに来てくれたこと……。全てGBBBBの話である。
流石と言うべきか、体験型広告程度の簡単なミッションだがタオもセリトも慣れたモノで実に簡単にハクスラしていた。そして、初期ミッションのボスであるPGガンダムを撃破した所で、全員のPCに起動していたGBBBBの画面が閉じた。
「お。閉じた。何だったんだ?」
教師は何が起きたか分からず、首を傾げていたが、多少授業の開始に遅れたくらいで済んだので、当初の予定通りの授業を進めていた。
一方、タオとセリトはクリアしたのは良い物の。妙な胸騒ぎを覚えていた。