GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
異変が起きていたのはタオ達が在籍する中学校だけでは無かった。電車内の電子公告、案内板、個人のスマホやPC。ありとあらゆる場所でGBBBBの体験型広告がポップする現象が発生していた。
あらゆるモニタにガンダムとGBBBBのロビーが映し出され、業務や作業が強制中断させられる。というのは、情報化社会においてはテロと遜色ない行為であった。中には、プレイしてクリアしようとする者もいたが……。
「クソッたれ!!」
広告が出始めた頃と比べて、明らかに難易度が上がっていた。まるでプレイヤー達が取るであろう行動に対して、CPUも対応して来るのだから初心者にクリアできる訳がなかった。
徐々に混乱が広がりゆく様子を見ながら、嗤っている者がいた。この状況を仕組んだ『ラシード』だ。
「ナジールはガンプラバトル等と言う下らん物に敗れた。なら、俺達はお前達が大好きなガンプラバトルで応じてやろうじゃないか。皆で一緒に楽しくプレイすることは『正しい』ことなんだからな」
彼らの前身が殉じようとしていた野望がガンプラバトルで阻まれたというのなら、今度は自分達がガンプラバトルを使う番だ。
最も、対戦の楽しさや駆け引きの熱さ。作品を通した相互理解の為などではなく、自分達が持っている悪意と敵意を擦り付けた上で使うという、最悪の形ではあったが。
「ラシード様、もう少しですね。マザーAIが納められている『サーバー』の場所さえ分かりさえすれば……!」
「あぁ。この社会の頭脳を奪い取り、そして。天に聳える忌々しいエレベーターを潰す。俺達の時代を取り戻す」
社会に混乱が広がり始める中、騒動に乗じて彼らは本懐を遂げるべく行動を始めていた。
~~
「サイバーテロね」
ガンブレ学園。この学園の生徒は体験型広告で強制的にプレイさせられる難易度程度なら難なくクリアできるにしても、他所との兼ね合いもあって今日は臨時休校になっていた。
サイド0にはコウラを始めとして、丹生やユイ。そして、アラタなどの部員が集まっていた。ショウゴの姿はない。
「サイバーテロにしても酷いよ。ガンダムへの風評被害が……」
ユイが悲しみと怒りを滲ませていた。本来なら皆で楽しくプレイするハズのゲームが、こんなアドウェア的な使われ方をしたら印象の悪化は避けられない。
「しかも、不思議なことに一部のまとめサイトとかSNSだけが妙に発信できているね」
易々と広告を突破した丹生がSNSを開いた所、今回の事態を面白可笑しく拡散して、悪印象とガンダムと言う界隈への憎悪を先導する様な書き込みが多々見られた。
「『アイツらゲーセンでチンパンジーみたいに叫んでいてうるさいし、怖いよな』。『この間、ガンダムのゲームをしていたら暴言飛ばされたし、ガンダムオタクの人らって性格終わっているの多いよな』。……あの、コレ。一部事実が」
「酷い誹謗中傷だよ!! 根拠のないデマゴーグを!!」
アラタの言葉はユイの悲痛な叫びに掻き消されていた。一方、コウラはブチギレていた。
「偏見で人を誹謗中傷するのはいけない事なのに! そんな奴らは●んでしまえ!!」
もしかしたら、デマゴーグとか工作とかじゃなくて。普段から、自分達に対して抱かれている感想がちょっぴり表に出ただけなのかもしれない。アラタが訝しんだ所で、丹生に肩を叩かれた。
「アラタ君。一部の人達だけを見て、界隈を面白可笑しく揶揄するのは下衆がやることなんだ。君が知っている、ガンブレ学園の生徒にそんなヤバい奴らはいたかい?」
「目の前にいますね」
「でも、困った。この騒ぎって収集が付くのかな?」
アラタの指摘を無視して、丹生は今後の心配を述べた。一体、何処の団体が攻撃を仕掛けて来ているのか、どれだけの爪痕が残るのか。部員達にも動揺が広がるなら、リュウセイが入って来た。
「アラタ君、コウラ君。ここに居たか。君達に話がある」
自分だけではなく、コウラも呼ばれたことから鑑みて、フドウが話したいことの内容は察しがついた。2人は部室から連れ出された後、人気の少ない場所にて、用件を告げられた。
「まず、バトルトーナメント決勝戦の開催は延期になった」
「予想は出来たけれどね。でも、どうして運営からの告知が無いの?」
「GBBBBの運営は、今起きている事態の対処に追われている。だから、君達個人宛に通達する方法が、学校を介して。というしかなかった」
「チャットアプリは……うん。駄目ですね、しっかり感染済みです」
アプリを開くと件の体験型広告が出て来た。クリア自体は出来なくも無いのだが、やるのが面倒臭い。
「タオ君達も流石に分かるでしょう。フドウ先生、一体何が起きているのか分かりますか?」
「いや、上の方はてんやわんやで俺も対処に追われている。学校の方は通常通り、再開して行くつもりだ。電子端末に頼らない授業法に切り替えればいいだけだからな」
「明日も休みって訳には行かないか……」
アラタはションボリしつつ、コウラと一緒に部室に戻った。すると、部員達はガンプラビルドに邁進……するということも無く、ショウゴの忘れ形見であるPS2でガンダムゲーをプレイしていた。
「うおおおお。すげぇ! 終わらない明日へスゲェ!!」
「でも、アクション性のテンポがなぁ。ソードカラミティも使えるのはデカいんだけれど……」
「ガンプラを!!! 組み立てろ!!!」
息巻いてブチギレるコウラを見かねたのか。アラタがポンと肩を叩いた。
「先輩。今日はガンプラ作ってもシミュレーターで遊べないですし、何なら気分転換に出掛けません? 彩渡商店街辺りに」
「そうね! そうしましょう!」
あまりの変わり身の早さに部員達が何か言いたそうにしていたが、絡まれると面倒なので、直ぐに意識をゲーム画面の方へと移した。
「掌クルー……」
ボソッと丹生が呟いたが、コウラに腕を引かれてアラタ達は部室から出て行った。残されたのは、ガンプラを組み立てもしないでガンダムゲーに興じるバカ共と、ユイから満面の笑みを向けられる丹生だけだった。
~~
平日の昼間と言うこともあって、人は疎らだった。……というよりかは、店の多くが閉まっていた。理由は直ぐに予想できた。
「例のアレのせいかしら?」
「多分」
AI産のシステムが何処で運用されているか分かった物じゃない。特に金銭に関わる物に関しては、誤作動が起きるかもしれない状態で使える訳がない。とてもではないが、遊んでいられる状況ではない。……と思っていたのだが。
「ねぇ、新田。なんで、あのゲーセンだけあんな人だかりが出来ているの?」
「あのゲーセン。セキュリティが滅茶苦茶しっかりしているんですよ」
コウラが指差した先には『イラトゲームセンター』があった。平日の昼間だと言うのに、何故か大勢の人間が屯していた。恐る恐る中に入ってみると、ゲーム難民と化した連中がレトロ、最新問わずにガンダムゲーに興じている。
「ウッキー!!!」
残念ながら、そこにはSNSで揶揄される様な模範的ガンダムゲー住民が居た。コウラ達は微笑みだけを残して、さっさと店から出て行った。
「しっかりしているのは筐体のセキュリティだけだった様ね」
「あそこはガンダム動物園でガンダム収容所なので」
ひょっとしたら、このままそっとGBBBBは規制されるべきではないのかと思い始めた頃、アラタは閃いた。
「そうだ。先輩にお勧めしたいガンプラショップがあるんですよ。個人店ですし。ひょっとしたら、開いているかもしれませんし。一緒に行きません?」
「へぇ、案内して貰える?」
アラタに先導されて向かった先。シャッターが下りている店が多い中、こじんまりと開いている店が一軒。扉を開けると、カランとベルが鳴った。
「いらっしゃいませ~。って、アラタ君じゃん」
「アレ? 今日はミサさんが店番を?」
アラタ達を迎えてくれたのは、ユウイチではなくミサだった。彼女はアラタの傍にいる女性を見て、直ぐに察していた。
「始めまして。多分、君がコウラちゃんかな?」
「……どうも、始めまして」
カオスやリンと違って緊張している様子が伝わって来た。幾らネット上で会話を重ねていても、リアルで会うとなったらこうなる方が自然ではあった。
「丁度、良かった。まぁ、知っているだろうけれど。バトルトーナメント決勝戦は延期だってさ。学校で通達があった」
「だろうねぇ。ウチの所も、サイバーテロが行われている中で作業を進める訳には行かないって、バタバタしているよ。私は作業に関われないから、こうして早めに返されたんだけれどね」
「……なんか。GBBBBの時よりも2人共。親しくない?」
「何度か、オフ会していますからね。流石にリンは……帰って来てないか」
「うん。こういう時にアナログって強いよね。サイバーテロが起きても問題ないし」
アラタ達の様な特殊な学園でも無ければ、ディスプレイに表示された物を……みたいな近未来的な授業は早々行われたりはしない。精々、情報の授業がある位だ。
「ネットに繋げなくなる訳じゃないんだけれど、色々な所に妨害が立っているというか。本当に何が起きているんでしょうね? ミサさんはどう思います?」
「……なーんか、嫌な感じなんだよね。こう、凄い嫌がらせを受けているというか」
ミサが渋い表情をしていると、カランと音が鳴った。入って来た人物はミサやアラタの姿を確認すると、口を開いた。
「ミサ、アラタ君。丁度、良かった。俺について来て欲しい」
入店して来た人物は、GBBBBにおけるトッププレイヤーでありビルドファイターとしても超一流のプレイヤーでもあり。元・彩渡商店街のチームメンバーでもある『ナギツジ・タクマ』だった。