GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】   作:ゼフィガルド

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84戦目:ダイブ

「やぁ、リン君。ちょっと良いかな?」

 

 放課後。校門の前で待機していた車の運転席から顔を覗かせたタクマが言った。見れば、車中には姉であるミサもいるし、アラタもいる。残り1人は見たこともない女性だったが、アラタと同じ様な制服を着ていることから察しがついた。

 

「え? お姉ちゃんも皆もどうしたの?」

「ついて来て欲しいんだってさ」

 

 それなら家に帰ってからでも遅くは無いだろうと思っていたが、折角なので同情することにした。車を走らせている最中、アラタが質問した。

 

「タクマさん。どうして、俺達を連れ出したんですか?」

「今、世界中で起きているサイバーテロを解決する為に君達の力が必要なんだ」

「ちょっと待って下さい。私達はSEでもプログラマでも何でもないんですよ?」

 

 コウラの言う通り、アラタ達は多少の心得はあると言えど学生だ。本職のプロに及ぶ訳がない。だが、タクマは首を振った。

 

「今回の事件はGBBBBの運営にも使われているマザーAI『アウラ』の暴走に端を発している。原因を究明していった所、情報収集に使われている端末AIがハックされていることが分かった」

「文。ですか?」

 

 アラタの言葉に頷いた。でなければ、自分達が出て来る理由が無かったからだ。これに対して抗議をしたのはリンだった。

 

「でも、文の様子がおかしいからって。カドマツさんが直してくれていたんじゃ?」

「彼はAIに関する一人者だが、万能と言う訳ではない。見逃してしまうことだってあるさ」

 

 これにはミサも悪態を吐く気にはなれなかった。もしも、彼女が10代の頃であったら文句も飛ばしていただろうが、社会人になった今では忙しさで手が回らない、あるいはパフォーマンスが発揮できないことも知っているからだ。

 

「それで、俺達は文に対して何をすればいいんですか?」

「彼女を救い出して欲しい。ハックされている彼女を救出しようにも、我々の干渉を受け付けてくれないんだ。だが、一部のIDだけ許可されているのが分かった。……きっと、彼女の唯一の抵抗だろう」

 

 息を呑んだ。たかが、ゲームが世界を左右するなんて。まるで、スクリーンの中の話だ。コウラの顔が引きつっていた。

 

「待って下さい。私達、ただの学生ですよ? 正気ですか?」

「正気だ。何も私はドラマティックや感傷から君達に声を掛けた訳じゃない。現実問題として、君達しか事態の解決に参加する権利が無いから呼んだんだ」

 

 事態の解決に学生を使うだなんてマトモな判断ではない。だが、発生している事態がまずマトモでは無いのだ。リンが恐る恐る尋ねた。

 

「あの、私達が選ばれたって言うけれど。何をすればいいの?」

「コレじゃね?」

 

 スッと。アラタはスクールバックに入っていたプロテクタースーツを取り出した。中には、例のふみなが納められていた。タクマは静かに頷いた。

 

「もしも、また世界の命運をかけたガンプラバトルが必要になるならさー。私、人生で3度目の遭遇になる訳なんだけれど。どういう確率?」

 

 ミサが軽口を叩いていると、タクマが運転している車が地下駐車場に入って行った。一番奥のスペースに駐車すると、床が開いてアラタ達を載せた車が何処かへと搬入されて行く。

 

「マザーAIの本体がある場所は秘匿されている。今回みたいな事態を避ける為にも」

 

 世界中に撒かれているシステムを作り上げたAI達の生みの親。物理的に掌握されることを避けるために、サーバーの場所を知っているのは僅かな人間しかいない。そして、運び出された先には先客がいた。

 スタッフ達に紛れて、明らかに場違いな人間が数人。リンと同じ位の背格好をした中学生と思しき男子達も居れば、清楚な黒髪の女性、身綺麗で端正な顔立ちをした青年。誰が誰かは直ぐに分かった。

 

「あら、そちらにおられるのは」

 

 VCで聞き慣れた声だった。アバターとは姿が違うにしても、立ち振る舞いが強烈に彼女であることを主張していた。アラタも手を振っていた。

 

「どうも、リアルでは始めまして。シーナさん。アラタです」

「始めまして。シーナです。と、なると。そちらのお三方はリンちゃん、コウラさん、ミサさんですね?」

「うん。初めまして、シーナちゃん。タオ君達とも顔合わせをするのは初めてかな?」

 

 緊張しているリンとコウラに代わって、ミサが応対していた。そんな様子を見て寄って来た青年が誰なのかは、もはや言うまでもない。

 

「そして、俺は全員と始めましてだ。なるほど、1人除いて、イメージと相違ないって感じだな!」

「凄いっすね。マシマさん、そのテンション。素だったんですか?」

「いや、状況が状況だからネットのノリに合わせているだけだよ。そんな普段からハイテンションじゃ生きられねぇ」

 

 軽薄っぽく見えても、彼も緊張などはしっかりと感じるタイプだった。さて、残るは一人なのだが該当人物と思しき存在は見当たらない。……いや、先程。マシマが気になることを言っていた。

 

「ねぇ、マシマ……さん。1人除いてって、誰のこと?」

「リンちゃん、さん付けはいらねぇよ。ほら、あそこでヒッソリしている子がいるだろ?」

 

 彼が指差した先には、ジャージを着ている女性が居た。恐らく、ミサと同い歳位なのだが視線をキョロキョロさせていて落ち着きがなかった。

 ビアンカのメンバーはほぼ全員が同定出来ているのだから、消去法で考えれば、あの芋い女性が誰なのかは直ぐに分かった。意を決して、アラタが声を掛けた。

 

「カルパッチョ?」

「……アラタ?」

 

 少なくとも、彼女はネカマでは無かったらしい。ただ、他のメンバーと違ってあまりにもギャップが大きい。傲岸不遜を地で行きながらも、意外と合理的な面もあった彼女は強かな物かと思っていたら、実際は……ちょっと社会で上手くやれてなさそうなタイプの人間だった。

 

「ギャップ凄くない?」

「そう言うのはね。アンタらが健全だからよ。リアルで上手いこと言っていない奴ほど、ネット上ではキチゲっているのよ」

 

 ジャージには『軽羽 美智代』と書かれたネーム刺繡が入っていた。もしも、カオスが見たらなんて言うんだろうかと凄く気になった。

 

「よし、全員集まったな」

 

 ビアンカのメンバーが揃ったのを見て、スタッフ達の中にいたカドマツが前に出た。ミサが声を上げた。

 

「カドマツ! 今回の事態って、ひょっとしてロボ太みたいな話!?」

「いや、違うな。どちらかというと、今回の出来事は軌道エレベーターのAIがハックされたあの時に近い」

「なんで、一般人が例題みたいな物を挙げられるんですかね……」

 

 最初のオフ会をした時に話は聞いていたが、やはりこう言った事態でも平然と対応できる辺り、アラタはミサの胆力に舌を巻いていた。

 カドマツに案内された先には巨大なモニタに映し出されていたのは、巨大な桃色の繭が脈を打っている様な、奇妙な物だった。

 

「例のアドウェアが全世界にばら撒かれて僅かな時間でこうなった。文に仕込まれていた物を見抜けなかったのは、俺のやらかしという外ない。唯一干渉が許されたのは、同クランに所属していたメンバーだけだ。お前達に情報を収集して貰うしかない」

「その方法って言うのは勿論。コイツですよね?」

 

 アラタが新規の機体をお披露目した所、カドマツが頷いていた。

 

「ガンプラバトルを通して文の状態を確かめて来て欲しい。ただ、道中に巨大な反応が幾つか見受けられる。恐らく、NPCに偽装した何かが居ると見ても間違いない」

「文ちゃんにふざけたことしやがった奴らが居るかもしれねぇってことですか」

 

セリトがイキり立っていた。加入したのは遅かったが、文の対然とした態度やバトルトーナメントの準決勝と言い、彼女には思い入れがあるのだろう。同じ美プラ使いとしても。ただ、疑問に思う者もいた。

 

「カドマツさん、質問だ。相手はガンプラバトルに付き合ってくれるのか? プログラムの操作で俺達を弾いたり、あるいはチートを使って絶対に勝てない状況を作って来たりするんじゃないか?」

「いや。それは大丈夫だ。俺達が今から行くのは文の内部領域だ。無茶をし過ぎれば、マザーAIへと繋がる彼女自身を潰しかねない。だから、連中も俺達を妨害したければ、同じ土俵で勝負するしかないのさ」

 

 サイバーテロを起こした集団としても文が潰されるのは都合が悪いのだ。ということが確認できたマシマは次の質問をした。

 

「全員で入れるのか? それとも、GBBBB形式で3機までか?」

「全員で入れる。だから、誰かが待機する必要もない。存分に力を振るってくれ」

 

 専用の筐体にはデータを読み込ませる為の出力口が付いている。アラタを皮切りに、全員が自機を読み込ませている中、タクマは席を外していた。

 

「タクマ? 何処に行くの?」

「私は私がやるべきことをやる。だから、ミサ。そっちは頼んだ」

「……了解」

 

 お互いを送り出した。今は、やるべきことをやるだけだ。最後にミサがミッションに向かうと、彼らの前には物量で押し潰さんとする位に大量のNPC機体が現れていた。アラタが高らかに言った。

 

「それじゃあ、いつものGBBBBを始めようか!」

 

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