GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】   作:ゼフィガルド

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85戦目:集結

「まだか? まだ、マザーAIのサーバーがある場所は分からないのか?」

 

 ラシードはイラついていた。世界を混乱させて、セキュリティの間隙を縫って本陣を攻め入るつもりだったと言うのに、肝心の場所が分からないのだから。

 

「どうやら普通のルートで行ける場所には無いようですね。例の端末AIを用いたハック&ロックも完全では無かった様ですし……」

 

 そして、文を用いたハックもまた完全では無かった。ウィルスのキャリアーにしてマザーAIを暴走させたまでは良かった。だが、掌握できた訳では無かった。

 本当に掌握できていれば所在地から権限まで全てを奪えていたと言うのに。唯一残されたアクセスの方法はと言えば。

 

「だからと言って、掌握する為の手段が連中のやっている玩具遊びだと?」

 

 メンバーの一人が吠えた。彼らの操作は受け付けず、唯一干渉できる可能性があるとすれば、GBBBBのルールに則った物だけだった。だが、ラシードの傍に控える副官の男は焦らずに言った。

 

「慌てないで下さい。私達が操作をしなくとも、GBBBBで収集したデータにあるトッププレイヤーの再現データを用いればいいだけです」

「温いぞ。所詮再現データなど、いずれは適応される物」

 

 ラシードが懐から取り出したのはガンプラだった。それもパチ組の物ではなく、塗装から何まで丁寧に仕上げた物だった。

 

「ラシード様。それは一体?」

「もしものことを考えて作っておいた代物だ。正しさを謳っているなら、連中のルールにも則るだけだ」

 

 1機の有人機を除いて、次々と彼らもログインして行く。目指すべき場所はアラタ達と同じでありながら、目的はまるで正反対だった。

 

~~

 

「普通のミッションみたいだね。いつもより出現する機体数は多いけれど」

 

 侵入者を排除する様にして現れたNPC達は、普段GBBBBのミッションで見かけるような物だった。違いがあるとすれば、一回に出現する機体数がとんでもなく多いことだったが。

 

『普段は動作の安定性も考えてポップする機体の数には上限が決められているんだが、そう言うのを取っ払っているようだ』

 

 リンの疑問に答えたのは、カドマツだった。今は問題なくスイスイ動いているが、もしも家庭用の端末でこんな数が出られたら、もうカックカックになってクライアントは動作を停止させることだろう。

 

「う~~ん。でも、大量のパーツを回収できるし。ちょっとこのモードがあったらやってみたいかも」

『サバイバルじゃダメか?』

「あっちは1回のプレイ時間が長すぎるし、付属するアビリティが特定の傾向に固まっているから。ラスベガスステージで延々と粉砕する作業だし」

「コウラちゃん。そう言うのはな、友人とVCを駄弁りながらやるのが楽しいんだよ」

 

 効率厨のコウラとは違い、酸いも甘いも嚙み分けて来たマシマの言葉には実感が伴っていた。次々とNPCを撃破して行くとアラート音が鳴った。エリアボスの出現サインであり、機体が出現した。

 一応、ガンプラで組み立てられてはいるが、スーパーロボットの金字塔である黒鉄の城とトマホークを持っているあらゆるものをゲットしそうな機体。そして、ニューガンダムとスーパーでロボットな対戦でお馴染みの3機だった。

 

「消される! 消される!!」

 

 タオが叫んだ。アレはあくまでユーザーがお遊びでやっているからギリギリ言い訳が聞いているだけで、公式がやったら怒られるタイプの奴である。

 

『落ち着け、タオ君。これはあくまで文が、マザーAIにスタックされたデータを基に作り出した物だ。公式とは一切関係が無い』

「なるほど、あっちにいるのはトロンのクランの奴らってぇ、ことだな。機体名がヒュッケ」

『アラタ君。文を助ける為にも、突き進むんだ!』

 

 大量のスーパーロボットだけじゃなくて、途中からスティールヘイズとかロボット作品なら何でも参戦して来たので、本当にこのゲームがGBBBBなのか怪しく思えて来る位だった。

 

「ユーザーが積み上げて来た見立ての総結集とでも言うのでしょうか? でも、どうしてこんな再現機体系ばっかりが?」

 

 シーナのタンク・ガンダムとザブングルが殴り合っている光景は、ガンダムと言うかブルーゲイルな趣が漂っていた。

 

『これは統計的な問題でな。再現機体やネタ機体に走る者はプレイヤーランクが高い傾向にある。彼らの戦績から、マザーAIの中には高レベルなアセンブルとして取り込まれているんだろうな』

 

 ただし、プレイヤーの腕まで再現されている訳ではないのか。割とあっさりと撃破されていた。ガンダムが別タイトルの機体を撃破しまくる行為は中々に危険なモンだった。

 

「この光景を動画サイトとかに流したら炎上間違いないしね。でも、煽るだけ煽ったらインプレッション凄い稼げそう」

「止めような」

 

 身バレしている為、いつもよりテンションが低めなカルパッチョのアナーキーな思考に、アラタが待ったを掛けつつ、周囲の敵が湧かなくなったころに別のエリアに転送された。

 到着した先には、素組でも無ければ再現機体でもない機体がいた。オリジナルの機体であるが、非常に没個性的な見た目をしていた。心当たりがあるのか、セリトが言った。

 

「アレ、超効率重視の機体です。マイクロミサイルランチャーかレヴAショットガンの全身装備」

「機体も造詣云々よりかは当り判定を如何に小さくできるかって調整がされている。ある意味、求道者的とも言えるかもだけれど」

 

 効率を突き詰めた機体であるが、コウラも褒める気にはなれなかった。アレはもはやガンプラではなく強OPを載せるだけの物だ。一度捕まったら、一瞬で撃破されるのは覚悟した方が良い。

 いざ、この破壊機達と相対した時。全員が違和感に気付いた。今までのNPC達と違って、明らかに動きが良かった。

 

「うわ!? なんやこの機体!?」

 

 タオが呆気に取られて動きが鈍った瞬間、彼のザタリオンに散弾が浴びせられそうになったが、アラタの機体がインターセプトに入っていた。

 

「多分、コレ。特定選手のAIが入っている奴だぜぃ。学園の方で何度か似たような奴と対峙した覚えがある」

 

 NPCの挙動にしては緩慢でないし、アセンブルに遊び心が少なすぎる。完全に効率厨の機体だ。

 

『アラタの言う通り、その機体にはプレイヤーのAIが使われている。しかも、相手からはプレイヤーの反応も出ている』

「私達以外のプレイヤーって言うことは、そう言うことだよね?」

 

 ミサの声色にはやる気が籠っていた。こんな事態を巻き起こした一味は自分で戦うことすらせず、AI任せだという。そんな嘗めたスタンスの連中に手加減するつもりは一切ない様だった。

 

「お姉ちゃん。私も一緒にやって良い?」

「良いよ。じゃあ、皆でぶちのめそうか!」

 

 効率、強武器。それらを付けたくらいで覇者になれるなら、マイスターなんて存在はいないし、GBBBBにこれだけの人間が集まる訳がない。このゲームが誇る奇人達の襲撃を受けて、強装備達は蹴散らされていた。

 

~~

 

「ぬぅうううううう!!!」

 

 アラタ達が戦っている間。タクマ以外にもアータルやライムなどのクランメンバー達は、各所で発生している広告型のアドウェア駆逐の為に奔走していた。

 マザーAIの更新データを拡散させる為の中継局へとログインして、そこに潜むアドウェアをガンプラ型という形で出力して駆除する。……という方法は、以前にカドマツが用いていた方法でもあるのだが。

 

「しっかし、連中。マイスター達がガンプラで世界の危機を救った意趣返しに、今度はガンプラで世界の危機を煽ろうって言うのか」

 

 チームメイトで筋肉質な男性、ライムが忌々し気に言った。これだけの規模でガンダムがアドウェア的に使われれば、悪評は避けられないだろう。

 

『経営部も大慌てだ。私でさえマザーAIにアクセスできないのが歯がゆい』

 

 文と同じくAIである『アータル』も様々な方面で手を尽くしたが、現状で出来る最良のことと言えば、マザーAIから送られてくる更新データに含まれるアドウェアを駆逐して回ることだったが、いかんせん手が足りなさすぎる。

 個人のPCやスマホを後回しに、病院などの人命やライフラインに関わる物を優先的に回っている。今の所、このアドウェアが原因で死傷者が出たという話は来ていないが、時間の問題かもしれない。

 

「なぁ、マイスター。元・チームメイト達以外に協力者はいないのか?」

「既に声は掛けている。そろそろ、来てくれるハズだが」

 

 アドウェアに出現するバトルシチュエーションも回数を重ねるごとに難易度が初心者向けの体験コースではなく、GBBBBにおける最高難易度(NewType)レベルまで上がっていた。それでも次々と潰していくタクマ達がどれだけ常軌を逸したプレイヤーであるかも伺えた。そんな彼らにスタッフが慌てた様子で駆け込んで来た。

 

「すいません! タクマさん! 例の助っ人達が来てくれました!」

「そうか!」

 

 一旦休憩がてらに席を離れて向かった先には、老若男女。様々な人種がいた。彼らを代表する様にスーツ姿の男性が言った。

 

「マイスター・ジン! 君の招集に応えて、フリーダム・フリートの幹部メンバーがやって来たぞ!!」

「カオスか! 有難い。で、メンバーは……」

 

 彼の傍に控えているメンバーを見た。タンクトップ姿の坊主頭にガチガチの筋肉質で刺青が入っており、頬にえぐい傷痕がある巨漢。小綺麗にしてある爽やか系の男性に、小学生位の品の良さそうな女子。暫く、タクマの思考が停止した。

 

「本当にフリーダム・フリートのメンバーだよな?」

「勿論だとも。ボーボボ君はいないがね。私も驚いたが、ちゃんと本人だと確認している。もう、カルパッチョがどんな奴でも驚かんぞ」

 

 折角、来てくれたのに挨拶をしないのは悪い。フリーダム・フリートのメンバーと一括りにして挨拶をすれば問題も無いが、流石にそれは失礼だろう。気後れ足したので、まず爽やかな青年に当たりを付けた。

 

「クロカンテ君。来てくれて、ありがとう」

「へぇ、アンタがマイスターか。協力するよ。GBBBBの危機だってんだからね」

 

 妙に声が高く、喋り方が女性的なのが気になった。いや、もしかしてまさかと思った。彼はクロカンテではなく。

 

「もしかして、ドーラ?」

「そうだよ? ネカマがそんなに珍しいかい?」

 

 全然珍しくは無いが、やはりギャップでビックリした。このパターンで行けば、横にいる小学生位の女子がもしかして。

 

「グスタフ……ちゃん?」

「グスタフで良い。お母様が可愛いアバターを使ったら変なのが来るから止めなさいって」

 

 分からなくもない。身を守る為に女子が男装をしていたという話は幾らでもあるのだから。では、残るこの強面な男性がクロカンテになるのだが。

 

「なんスか?」

 

 筋肉質な男性ならライムで見慣れているが、この推定クロカンテは強面だった。ヤクザの事務所にいても違和感がないレベル、カタギとは思えない雰囲気を放っていた。

 

「いや、マイスター君。驚くでしょ。私も最初、彼とオフ会をした時『もしかして、ヤクザのシノギに引っ掛かった?』って思ったけれど、気が良くて、礼儀正しい奴でね。仲良くしてやってくれ」

「一緒に世界の危機を救いましょうや。んで、落とし前付けてやりましょう」

 

 東京湾に浮かべる感じで? とかはネタでも言えそうになかった。彼ら以外にも、上位クランのメンバーや有力者等。マイスターが信用にたり得ると判断した、メンバーに謝辞を述べた後、本題に入った。

 

「一緒に、このアドウェアの拡散防止に協力して欲しい。やり方は特別なプログラミンの知識などは要らない。私達の技術主任の手により、ウィルスをガンプラと言う形にして駆除できるようにしたからだ」

「一度、拡散を停めても既に拡散された物についてはどうしようもないんじゃないんですか?」

 

 協力者の中には丹生の姿もあった。彼の言う通り、拡散するのを停めても既に広がってしまった物に関してはどうしようもないのではないか。

 

「いや。ここで、一旦アップデートファイル内に潜むアドウェアを駆逐して正常化させた物を、再度配信して元の状態に戻す」

「だったら、もっと大々的に出来ないんですか?」

「すまない。基本的に、この場所は企業秘密と言ってもいい程の場所なんだ。関わる人間は少なくしたい」

 

 この場所を掌握されたら、同じ様な事件が起こされる可能性があるのだ。だから、大量に募集するという訳には行かなかった。

 

「皆には、このGBBBBを守る為に共に戦って欲しい!」

「いいとも! この少数精鋭。まるで、鋼鉄の七人を思い出すじゃあないか!」

 

 カオスだけではなく他のプレイヤー達もテンションがぶち上がっていた。そして、アラタ達とは別口の戦いの火ぶたも切って落とされた。

 

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