GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
「オラァ!!」
マーキュリーレヴAのショットガンの雨を潜り抜けて、アラタの機体の拳法が炸裂した。吹っ飛んだ機体が垂れ流しにしていた散弾が僚機を巻き込んで、大爆発を遂げて消えた。
『撃破されたプレイヤーは強制ログアウトされるらしい。気を付けて、先に進んでくれ。どうも先程までのエリアと雰囲気が違う』
周囲にはガンプラのボックスやランナーが堆く積まれており、標準的ガンプラビルダーの汚部屋が再現されていた。
「なんで、買うだけ買って組み立てない奴が多いのかしら」
「カルパッチョ。ガンプラって言うのは捕まえておかないと、直ぐに逃げちまうモンなのさ。組み立てるかどうかは買ってから考えれば良い。それに見ろよ、この立ち並ぶパッケ―ジ。ボックスアート展覧会だ」
マシマが擁護する様な姿勢を見せていることから、何となく彼の部屋の様子も想像できた。これに関して思うことがあったのか、シーナが口を出した。
「マシマさんってガンプラを組み立てる暇もない位に忙しいのですか?」
彼女本人としては思ったことを言っただけなのだが、聞く人が聞けば別の意味に聞こえるだろうし、カルパッチョが過敏に反応した。
「シーナちゃん? 確かに普段のマシマはノリが中学生でウザく感じる所もあるかもしれないし、ログイン率も高いけれど。あまりセンシティブな話題に触れちゃいけないの」
「あ、すいません。私、無思慮で……」
「ちゃんと働いているっつーの!! 物臭なだけだよ!!」
これにはマシマも抗議した。ガンプラの組み立てには時間も場所も必要になって来るから、どうしても積みがちになるのが社会人であった。
「でも、カルパッチョにそういう発想が出て来るのは自分が……」
「先輩もセンシティブな話題に触れるのは止めような」
コウラが余計なことを言おうとしていたので、アラタがインターセプトに入っていた。そして、これらの会話を聞いていたカドマツが笑っていた。
『とてもじゃないけれど、世界の危機に立ち向かっている会話とは思えないな』
「神妙な空気の中でやっていたら、息も詰まるでしょ。今回も私が付いているんだし、アルビオンにでも乗った気分で居なさいな!」
ミサが皆を鼓舞していた。だだっ広い空間に出た時、先程と似たような強OP爆盛機体の残骸が転がっていた。ポップした機体を見て、アラタ達は顔を青褪めさせていた。
恐らく、このGBBBBで最も見る機会が多く、最も戦績を上げている機体。同時にプレイヤー達のリビドーの犠牲者でもある……『すーぱーふみな』を始めとした、美プラ群だった。
「うぅ!」
これに大きく動揺したのは、セリトだった。美プラ使いとして彼女達をなぎ倒すのには抵抗があるのだろう。とは言え、この光景はある種当然の物だった。
『このステージの敵機が強プレイヤー達のデータを反映させているなら、すーぱーふみなや美プラ群が跋扈する方が当然なんだよな』
可愛らしくカスタムされた者もあれば、いつも通りの飛頭蛮やケンタウロス。ズラリと対魔忍が並んだのは壮観とすら言えた。
「ここ、五車学園?」
どうして、カルパッチョは対魔忍の舞台と思われる場所を知っているのかという疑問を抱く者もいたが、直ぐに気にならなくなった。
どうやらマザーAIはビルドの手間と負荷を考えた結果、大量の飛頭蛮ふみなが出現しては暴れていた。まさに世界の危機を彷彿とさせる様な、デビルマンめいた光景だった。
【死ねぇえええええええええええええええ!!】
NPCに意思なんてある訳もないし、セリフが設定されている訳も無いが、GBBBBと言うゲームで尊厳を凌辱され尽くした彼女達の怨念が吠えている気がした。
「こういうのってさ。大体、敵側が精神的ダメージを与える為にデザインしてくる場合はあるけれどさ、ここにあるのってユーザーが組み立てた奴だから、何も言えないって凄くない?」
こんなのを見ても動じなくなった辺り、リンはスッカリとGBBBBに調教されていた。ただ、当り判定が小さい機体の癖に攻撃力は高い為、慎重な立ち回りを求められるのには変わりない。先に転がっていた残骸は対処する時間も無かったのだろう。
「シュゥウウウウウウウウウト!!」
アラタのふみなが飛頭蛮ふみなを蹴り飛ばして、他の機体にぶつけて攻撃していた。一見すると、美プラの頭部を蹴り飛ばすリョナめいた攻撃ではあるが、キチンと『ア・バオア・クー』戦でザクⅡもやっていた由緒正しい攻撃ではある。
「よっしゃ、アラタに続くぞ!!」
「美プラの頭部を武器にするって、リョナゲーかR-18Gみたいね! 頭にウジでもYてんのか!!」
比較的ノリが良いマシマとカルパッチョも真似を始めた辺りで、大分えげつない光景になり始めた。あまりにマッポー的な光景を見て、慣れたつもりでいたリンもやっぱり戦慄していた。
「チームメンバーを救う為の光景か? これが……」
「へ、ヘイトアクション……」
美プラの頭部を飛ばし合う末期的な光景を前にセリトは気絶しそうになっていた。とは言え、相手を破壊しつつ別機にもダメージを与えるのは合理的と考えたのか、コウラが大型メイスを構えていた。
「私ねぇ。アラタも使っているから我慢していたけれどねぇ。こういうネタ機体共をぶっ飛ばしたくて仕方なかったのよ!!」
「コウラさん! はい!」
ふみなの頭部を捕まえたトスバッティングの要領でコウラに投げては次々ホームランめいた光景を繰り出していく。
『これ、スポンサーに見せたらガチで怒られる光景だな』
メイジンも言っていた。ガンプラは自由だが人として守るべきことはあると。これに関しては思うこともあるのか、タオも悩んでいた。
「何やろう。文の愛機と同機体の存在をここまで好き勝手にぶちのめしているのはええんやろかって」
「きっと、これが文ちゃんの守りたいGBBBBなんだよ」
ミサがしみじみと言っていたが、アラタを説得しようとしていた経営陣やら何やらの苦労がよぉく分かる一幕であった。
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「クソッ!! このままでは、業務が!!」
某社。会社中のコンピューターが例のアドウェアに冒され、業務が滞る中。社員達は戸惑いつつ、コンビニに朝飯を買いに行くなどして諦めている中、1人の社員が立ち上がった。
「わ、私に任せて下さい」
「君は?」
迫害する程、無能でも無ければ付き合いが悪い訳でもない社員だった。彼は会社のPCを管理しているPCの前に座った。例のアドウェアに妨害され、操作することも出来ない。
「ひょっとして、ゲームが上手いとかか? 私も業務中に結構遊んだりしていたこともあったから言える。このゲームの難易度は体験型に相応しい物じゃない。君でもクリアは不可能だろう」
「た、確かにゲームが上手い程度では不可能です。ですが、私はGBBBBのユーザーです」
アドウェアも進化しているのか『既にプレイ済みの人は自慢してみよう!』という、既にプレイしている人向けのログイン入り口もあった。IDとパスワードをぶっこ抜く気満々のヤベー欄だが、男は勇敢にもログインして見せた。
「え?」
この上司と思しき男性はガンダムを多少知っている位だったので、てっきりカッコいい機体が出て来るかと思っていた。だが、ロビーに現れたのは対魔忍メイだった。しかも、前面を開けているヤバイ仕様だった。
ただ、プレイヤーとしての腕と機体のレベルは確かだった。上司がクリアできなかったミッションを次々と走破して見せて、瞬く間に会社全体の業務を縛っていたアドウェアを解除して見せた。
「で、出来ました。皆には秘密で……」
「君って奴は……」
芸は身を助くという言葉がある。人は見た目によらない物で、思いもしない特技を持っていることもある。彼の活躍を見て上司は思ったことを告げた。
「きっしょ」
「そんな!?」
感謝はあるが、アレを使ってプレイしていることに対する感想が優先されてしまったのか、会社の困難を振り払った英雄に対して、上司は惜しみない罵倒を送っていた。