GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
「本日はGBBBBのアイドルレコと。特別ゲストを呼んでいます! ガンプラファイターのレジェンド……ミスターガンプラです!」
「モニター前の皆さん! ごきげんよう! ミスターガンプラです!」
レコの隣に現れたのは真っ赤なフリルシャツにハート形のサングラス。加えてアフロと言う、陽気さを体現したような男『ミスターガンプラ』だった。
「今日の話題は……なんと! マイスターがクラン戦だけではなく、個人戦でも99連勝を達成! もはや、彼の強さを止められる者はいないのか!」
「流石の強さだ! 彼には昔から一目置いているけれど、あの頃より更に強くなっているよね!」
「ミスターガンプラはマイスターと知り合いなんですか?」
「あぁ! 彼にはガンプラバトルを通じて色々と沢山のことを学んだよ。素晴らしいファイターなんだ」
モニターではミスターガンプラが延々とマイスターの良い所を語るという、かなり個人的な事情を話している様に見えたが、レコの会話誘導のお陰で結構見れる物になっていた。
「やっぱりマイスターって凄いよね~! 皆もそう思わない!?」
「俺も是非とも手合わせ願いたいぜぃ!」
「僕は遠慮しておこうかな……。勝てそうにないし」
リンとアラタが無邪気に喜んでいる中、タオはちょっと引き気味だった。そんな彼を見かねたのか、コウラが口出しして来た。
「戦う前から負ける気でいてどうするのよ」
「と言っても、今の所。僕ら、対人戦全敗していますからね……」
タオが対人戦に消極的な理由がここにある。1戦目は初心者狩りみたいな連中に遭遇し、2戦目はガチクランとミスマッチングを起こしてしまった。なおも折れないアラタの方が不思議だった。
「私達の学園の筐体は対人戦がメインだからね。アラタは勝つことにも負けることにも慣れているのよ」
「ゲームシステムも大分違うんだけれどよ」
ガンプラシミュレーターにバージョンの違いはあれど、種類まで違うタイプが存在しているのは初めて知った。ただ、納得することはあった。
「やられ千葉ァ!! って言う動作がメッチャ慣れている感じやったしね」
幾らロールプレイしていても忘れたり、素が出たりすることはあるが、アラタは結構しっかり『やられ千葉ァ!』を言っている。見方を変えれば、バトル中にも余裕があるという訳だが。
「プライバシー保護の為に述べませんが、GBBBBで使われているゲームタイプ以外のガンプラシミュレーターは特定の場所にしか設置されていません」
「文は私達の出身を察したみたいだけれど、言わないでね」
と言うことは、自分も調べれば分かるのだろうか。先日、コウラの過去の一旦にほんのり触れたことを思い出していると、やぁ! という声が聞こえて来た。
「タオ君から聞いたよ! クランを作った……んだね?」
「なによ。私の顔を見て固まってからに」
やって来たミスターは、コウラのアバターを見て固まっていた。何かしらの因縁を感じる所であったが、そんなことを気にせずリンが言った。
「さっき、モニターで本物のミスターガンプラを見たからパチモン感が凄いよね」
「失礼な! これでも、結構喋り方とかはエミュしてあるんだぞ!」
地道な努力があった。ただ、話題が逸れたことは本人的にも良かったのか、並んだ面々を見て頷いていた。
「5人か。良い具合に集まっているね。機体のパーツレベルも順調に育っているし、成長が見て取れる。と言いたいけれど、アラタ君のバックパックだけ異様にレベルが高いね?」
他のパーツレベルと比べて、アラタの機体に装着されたガンダムタンクのバックパックだけ二回りほどレベルが高かった。
「おうよ。なんたって、あのカオスさんから捥ぎ取ったパーツだからな。背中に付けてみたら、案外据わりも良いんだ」
「でも、デスティニーのバックパックは印象強いんよな。ガンダムタンクじゃなくて、ザウートの類に見えるわ」
デスティニーのバックパックを装着しているプレイヤーは多い。
武装の多さや見た目も良く、普通のガンプラからネタガンプラまで幅広く使われている。だが、存在感の大きさから機体の印象は持って行かれやすい。
「翼系のバックパックは人気だけれど、ビルドで使いこなすのは難しいのよね。ロビーを見るだけでも翼系のビルダーは多いし」
特に人気なのがデスサイズヘルの翼だ。蝙蝠の様な有機的な翼の造詣が、ビルダー達の心をくすぐり、マジンガーやマジンカイザー、真ゲッターなどに装着させている者達が目に付いた。また、作品繋がりかデビルマンもいる。
「そろそろ、ダイナミックプロからなんか言われそうやな……」
「まぁ、スパロボじゃ同級生みたいな物だし大丈夫だろ」
極当たり前の様にクロスオーバーさせているが、何も大丈夫ではない。
ふみなホースに装着させてギラティナっぽい物を作っている者もいれば、本当に珍しいが、正当に可愛いデビルふみなを作っている者もいた。
「信じられない。ふみなちゃんはネタとして使い倒されている物だとばかり」
「いや、普通に可愛い系のふみなちゃんを作っている人もいるからね?」
リンが心底信じられないと言った様子で見ていたので、ミスターが補足を入れた。GBBBBは決してふみなの尊厳破壊を楽しんでいる輩だけではないのだと。圧倒的に多くはあるが。
「バックパックは見た目だけじゃなくて、性能にも大きく貢献してくれるでしょ。カオスの物ならアビリティもかなり整っているだろうし、ミッションで試してみない? 折角、6人いるんだし」
「3:3で分けられるな。どういう風に分ける?」
「なら、私が提案しよう。アラタ君とコウラ君はリアルで知り合いのようだし、ここは一旦タオ君達と交流してみよう。リン君の動きについては、気になる所が多かったから……」
・アラタ、リン、ミスター
・タオ、文、コウラ
「と言った風に分けるのですね。戦力的な分散としても丁度良いと思われます。コウラはプレイヤーとしてもハイレベルですし」
文は問題無さそうだったが、タオは色々と思う所があった。ソロモンの魔女と一緒。果たして、自分にあのノリが受け止め切れるのか。いや、でも流石にネット上では控えているだろう。
「良いじゃねぇか! じゃあ、ミッション行こうぜ!」
アラタも賛同したので、3:3に分かれてミッションに行く形になった。
出会ったばかりのコウラと自分が仲が良い訳もなく、向こうから切り出したりもして来ないので必然的に自分が話す形になるのだが。
「あの~。リアルではアラタってどんな感じなんでしょうか?」
「真面目よ。すっごい真面目。クラスでは大人しくて目立たないそうだけど」
THE・テンプレートと言わんばかりの評価だった。ネットの方で弾けているのはリアルの反動かもしれない。
「そうなんや。普段もガンプラ作っているそうやけど、どんな感じなんですか?」
「実の所、あまり彼の個性は無いの。ウチの学園、ガンプラに関する情報科と工業科的な側面を持つ場所だから、評価されることが前提で組むのよね。貴方、教師の前にふみなホースとか出せる?」
無理だ。そこまでガンプラに力を入れている学園があるとしたら、組み立てるのはやはり評価される方、評価される方へと傾いて行くだろう。
GBBBBに跋扈する俺ガンプラは魑魅魍魎と言った具合で、SNSなどではインプレッションも稼いだりしているが、公的な評価は得にくい。
「無理ですね」
「でしょ? だから、評価される物だとか。受けが良い物だとか、そう言った物ばかりが生まれるの」
「受けが良いというのは公的なメディアなどで露出することを前提とした物。と言うことですか?」
「そうよ。だから、カッコいい系の物か可愛らしくした物位しか出て来ない。彼には窮屈だったんでしょうね」
趣味を仕事にするのは止めておけ。という言葉を思い出した。結果を出さなければならないとなったら、自分の思想を大幅に抑えなければならない所は出て来るだろう。
「そういった点じゃGBBBBは無法地帯ですからね」
一方、こちらはただの娯楽である。公的な機関や立場からの評価なんて気にしないということで、モラルさえぶっ飛んだ連中の俺ガンプラが跋扈しては首をはねられ、晒し首一覧に並んでいる。
「私達からすればガンプラでしかない奇妙な造形物でしかないんだけれどね。でも、アラタは気に入っているみたい」
コウラが操作する機体は非常に的確に動いており、現れる敵を次々と撃破していた。筐体のバージョンや種類が違っても培われたセンスは何処にでも適応できる物であるらしい。
「僕もそう言った自由な所が好きなんです。どんな物があってもええ、なんて素敵な考えですやん?」
「私もそう思います。このGBBBBには立体物では出来ないような造詣を組み立てているプレイヤーも多い。だからこそ、色々な創作パターンが生まれるのだと思います。特定の造詣ばかりが重用されれば、多様性が失われます」
何かと謎の多い文ではあるが、彼女も同じ様に自由な作風を好んでいるらしい。WAVE2へと移るが、やはりコウラの動きは冴えている。
「ここでの考えが、リアルの創作意欲を刺激してくれると良いんだけれどね」
「きっと、ええ方向に左右してくれますって。水清ければ魚棲まず言いますやん?」
「だからって、下水道で育てて良い訳じゃないのよ?」
とりあえず、コウラがGBBBBと非常に折り合いが悪いと言うことだけは良く分かった。ゲームだけではなく、学生として真剣に商業に目を向けて取り組んでいる以上、相容れないスタンスはあるのだろう。
WAVE3になり、PGユニコーンガンダムが現れたが、コウラにとっては苦戦する程の相手ではないハズだ。
「じゃあ、これを片付けてさっさと戻りましょうか」
多数POPする敵機を撃退することはタオ達にも出来るが、未だにPG
やボス系の相手は苦手としている。
先にドンドン進むのでコウラの機体が装備している武器をちゃんと見ることが出来ていなかったが、彼女の機体の両腕には超大型メイスが握られていた。
となれば、繰り広げられるのは白熱した戦いでは無く、一方的な蹂躙である。攻撃派生からの連続突きが繰り出され、PGユニコーンは2分にも満たない時間で撃墜されていた。報酬を受け取り、ロビーに戻ったタオは色々と思ったことはあったが。
「コウラ、質問します。貴方はフリーダムフリートに在籍されていたというのなら、超大型メイスなどの高DPS武器が修正されることは知っているのですよね。だというのに、習熟の為に他の武器は使わないのですか?」
「もうすぐ修正されるだろうからよ。強い武器は強い内に使った方が周回にも便利でしょう?」
合理主義。も行き過ぎれば、ゲームとしての楽しみはどんどん削ぎ落とされて行くだろう。アラタが身を置いている環境は、自分が思うよりもずっと窮屈かもしれない。と、タオは考えていた。