GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
「アラタ君の方が大変なことになっているねぇ!!!」
カオス達の機体は最奥部手前で待機しているにしても、アラタ達が現在どんな状況に陥っているかはモニタリング出来ている。相手も大型であることを考えれば数の有利で磨り潰すのが一番ではあるが。
「ダメね。キッチリ入場制限を掛けられているわ」
ドーラが乱入しようとしたが、弾かれた。文がしたいことを考えれば当然のことではあるが、カルパッチョが悲鳴を上げていた。
「うぉおおおお! 数でボコる選択が!!」
「ゲーム的な雰囲気じゃなくて! 文ちゃんが俺達と会話したいって気持ち位は汲み取れ!!」
マシマも必死に攻撃を捌きながら、カルパッチョにマジレスしていた。と、なると。ビアンカのメンバー以外に出来ることは無い訳だが。
「どうする? さっきの部屋に戻ってアドウェア削除手伝う?」
「い~や。ちょっと、一旦手を置こう。実は皆に手伝って欲しいことがあってね。多分、必要になると思うんだ。カドマツさぁん! ちょっと良いかな?」
「どうした?」
グスタフが先程の部屋に戻ろうとした所で、カオスが皆に聞こえる様に制動を掛けた。そして、カドマツも声を掛けられたので何事かと耳を傾ければ、皆が目を白黒させていた。最初に声を上げたのは丹生だった。
「それって、やって大丈夫なんですか?」
「でも、ちょうど都合よく持ってきている大型兵器のガンプラってコレしか無いんだよね。ぶっちゃけ言うと、オフ会狙いで見せびらかす様に持って来たんだけれど」
「試験終わりに遊びに行く約束している学生みたいですのぅ」
ええ年こいたおっさんの少年ハートにクロカンテが一定の理解を示す中、カドマツが無精ひげを摩りながら考えていた。
「ぶっちゃけ言うと。仮に、お前が言う物を採用したとしてだ。他のパーツと比べて特別な威力がある訳でも何でもないぞ?」
「カドマツさん。さっき、言いましたよね。私達が出来る一番効率的な反撃。それは、楽しむことだと。ドラマティックにシチュエーションを彩ることが『楽しむ』と言わなければ、何というんですか?」
そう。彼の少年ハートは、この逆境の中で熱く燃え滾っていた。
最前線に赴いている者達の為に出来ることはないか。この混沌とした状況を解決する為、自らの好奇心を満たす為。そして、何より。
「何より。私は、友人達の力になりたい」
直向きで真っすぐな言葉だった。社会を渡って行く上ではあまりに不器用で融通の利かない性質だとしても、GBBBBが手放してしまった物が確かにあった。
「カオス。訂正があります。彼らを応援したいのは、貴方だけではありません」
「俺達も。だよ」
グスタフに続きフドウも便乗した。この場にいる者達の意見は一致していた。カドマツからも躊躇いは消えた。
「そこにスキャナーがある。内部データにはカルラのCADもあるんだ。当然、ソイツも入っている。武装データも既にアウラが吐き出してくれた物がある」
「よっし! じゃあ、早速読み込ませようか!」
カオスは少し大きめのガンプラ用のプロテクタースーツを取り出し、収められていた物をスキャナーに通した。
~~
「どっせぇえええええええい!!」
周囲に大量に出現したガンダムヘッドを一掃する様にして、タオの『フューラーザタリオン』のバックパックに取り付けられたマイクロミサイルランチャーが火を噴き、同時にオーバーハングキャノンが周囲を薙ぎ払っていた。
破壊されたガンダムヘッドの断面からは、もはや予定調和と言わんばかりにデスアーミーの軍団が出現していた。
「こんな状態になっても、原作に雰囲気を寄せてくれる辺り。文ちゃんの真面目さが見て取れますね!」
シーナのタンク・ガンダムは正に、こういった場に相応しい機体だった。上半身に火力を集中させていることもあって、タオのザタリオンばりの火力で敵を一掃していた。
しかし、貧弱な下半身は移動性能に乏しい為、周囲のガンダムヘッドから一斉砲火を浴びたらどうしようも無くなるのだが、ザタリオンとタンク・ガンダムを守る様にしてファンネルバリアが展開された。
「そうだな。少なくとも、さっきみたいなユーザーのデータを反映させただけじゃないって感じがして、俺は好きだけれどよ!」
マシマの新機体『ヌーベルクレインクイン』もファンネルバリア内から応戦していた。射撃機が大火力による掃討を行っている中、白兵戦主体のメンバーはデビルガンダムへと接近していた。
しかし、彼らを阻むようにして機体が2機出現した。デスアーミーではないガンダムタイプの機体。主に00系統のパーツで構築された機体は、タクマにとって最もなじみ深い機体だった。
「コマンドクアンタとスーパーストームか。内部データには豊富に蓄積されているからな! ならば、この機体のデータはあまり取れてはいまい!」
PG戦に強いという理由でコマンドクアンタを使っていたが、一瞬で機体が変更されて、騎士エクシアへと変わっていた。同時にミサのアザレアブレイジングも構えていた。
「皆! コイツらの相手は私とマイスターでやるから、先に行って!」
「うん! お姉ちゃん! お願い!」
コマンドクアンタとスーパーストーム。それぞれをタクマとミサが抑えに入った。
幾らAIと言えど、GBBBBにおいては最強に最も近しい男のデータが使われているのだ。並のプレイヤーでは歯が立たないだろう。
「ミサ。こんな時に言うのは何だが、今度は私達が送り出す番になるとはな。時の流れを感じるとは思わないか?」
「そうだね。最近まで無駄に年を食ったと思っていたけれどさ、あの子達に関わり始めてから、止まっていた時間が動き出したみたいな。そんな感じはするよ。あ、明日の仕事は休みにしておいてね」
「了解!!」
見送られる側から、見送る側へと立場が変わった2人が迎え撃つ。バトンは確かに渡された。
~~
「このボス機体。デカすぎますって!!?」
セリトが悲鳴を上げた。こういったボス戦において、PG機体と言えどもプレイヤーの機体の数倍が精々だったのに、文が使うデビルガンダムはその数十倍はありそうな大きさだった。
もはや、デビルガンダムと言うステージになっているほどの大きさで、機体の上にも関わらず大量のデスアーミーが出現しては立ちはだかっていた。
「アラタ! こんな所で時間を掛けている場合じゃない。一気に突破するわよ!」
こういった事態も想定していたのか、コウラの射撃武器はアトミックバズーカへと切り替わっていた。丹生と一緒に戦って来たこともあってか、彼女もこの武器の扱いには慣れているらしく、核の爆風がデスアーミーを吹っ飛ばしていた。
「キャー! コウラちゃんすごーい!」
「アンタも働きなさいよ!!」
先端を突っ走るコウラの火力程ではないが、カルパッチョもミサイルやら何やらで援護してはデスアーミー達をなぎ倒していた。
このハック&スラッシュを繰り返してデビルガンダムのコアに当たる部分に近付こうとした時。その場にいたデスアーミー達が集合、合体を繰り返して巨大な機影を作り出していた。想像は容易い。
「まぁ、デビルガンダム戦なら当然出て来るでしょうけれどね!」
カルパッチョや数人が予想した通り、巨大なMAと見紛わんばかりの脚部には砲門が取り付けられている。背中には大翼とかぎ爪。尻尾の様に生えたパーツの先端には球体状のガンダム『ウォルターガンダム』が牙を覗かせている。そして、これらを統率する様にして頂点にはマスターガンダムが据えられていた。
「グランドマスターガンダム。当然、いるに決まっているか」
アラタが呟いた。このボス機体にCPUの能力が割かれているとはいえ、ポツポツデスアーミーがポップしている。マトモに相手をしていては時間が取られることは間違いない。
「アラタ! こういう時こそ、全員の火力でボコりましょう! 『ここは私達に任せて先に行け!』なんて言わないからね! この先も全員で行ってボコれる環境作るからね!」
「この場に及んでも、崩れないスタンス。ほれぼれしちまうぜぃ」
お約束を悉く否定するカルパッチョにアラタは感心すらしていた。どうあっても自分達が優位になる条件を崩したくないらしい。コウラも同じ様なことを考えていたのか、頷いていた。
グランドマスターガンダムが吠えると同時に、大翼にびっしりと生えた羽が弾丸の様に射出された。脚部の砲門も火を噴き、尻尾の様に生えたウォルターガンダムが全員へと襲い掛かる。
「ウォッシャァイ!」
カルパッチョが動く。普段はカスみたいなムーヴも多い彼女だが、フリーダムフリートにおいて幹部を務めていた程の実力は決して伊達ではない。
ウォルターガンダムの攻撃を避け、長く伸びる胴体との接合部分に取り付くと同時に、手にしていた『MX-RQB516 ビームランス』を突き刺した。そして、脚部のOPスキルである『グリフォンビームブレイド』を用いて、接合部分を溶断していた。切り離されたウォルターガンダムは最後の抵抗と言わんばかりに、彼女のガンダムドローレスに襲い掛かったが、彼女は相手を正眼に見据えていた。
「うぉおおおおお! フロムゲーで鍛えられた私のPSなめんじゃねェ!!」
彼女はアビスガンダムの両腕を閉じて先端にビームランスを突き出したMA形態へと変形すると、ウォルターガンダムへと向かって突撃した。相手の顔面部分を貫き、長く伸びた胴体を貫いて反対側へと飛び出た。間もなくして、彼女の背後で爆発が起きた。
「どんなもんよ!」
「すっげぇ! ただのヤバい奴じゃなかった!!」
セリトから賞賛とも罵倒とも付かない言葉が送られる中、デビルガンダムのコア部分に動きが見えた。侵入者を拒むようにしてピッチリと閉じられていた胴体部分に僅かな歪が生じて、機体が入れる位のスペースが出来ていた。
「先輩! セリト! カルパッチョ! 頼んだ!!」
「うん! 行ってらっしゃい!」
「絶対に! 文と一緒に帰って来て下さい!」
コウラから力強く見送られ、セリトの願いを受け取り。アラタはリンの方を見て頷いた。彼女の『リン・カーネーション』も同じ様に頷いていた。
だが、グランドマスターガンダムは彼らを見逃さまいと踏みつけようとした所で、セリトの『真TALE・レコ』が飛翔し、頭部のマスターガンダムに目掛けてスクリューウェップを打ち込んでいた。カメラ部分を攻撃されたことにより、一瞬視界をロストしたことで狙いが外れた。
「あぁ! 結局、この場は私達に任せて先に行け! をする羽目になったじゃない! もう!!!」
「まっ、こういう場において。私達みたいな効率厨の考えは採用されないんでしょうよ」
「ですね。いや、そうならない様に作られているんでしょうが」
この場に残った3人はいわゆる『効率厨』と呼ばれる、ゲームをハック&スラッシュすることを主としている者達で、見方によればゲームに対して無粋とも言える者達だが、今ばかりはこの世界にのめり込んでいる。真剣に向き合わねばならないからだ。
「盛り上がる絵面だけで配信出来ないし、あぁ。もう! 今日のオフ会でメッチャ高いの頼んでやるからね!!」
「そうね。とりあえず、アラタの隣を取れるように算段でも立てておこうかしら」
「とりあえず、母さんに帰るの遅くなることだけ言っておかないと……」
そして、そうなる様に自分達を変えたGBBBBと言うゲームと出会い。とある少年に思いを馳せながら、グランドマスターガンダムを迎え撃っていた。