GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
「役立たず共が!!!!」
IPを幾らも偽装して、マザーAIへとアクセスしようとしたがカウンターハックを食らい、ラシード達は一転窮地に追いやられていた。幾ら何でも司法の動きが早すぎる。同志達はほぼ全員が捕縛されていた。
「(終わるのか?)」
世界が混乱した隙を突き、最先端の技術に浮かれている連中に鉄槌を下すハズが、アレだけ憎んでいたガンプラバトルの引き立て役にされていた。
再び潜伏して、反旗を翻す時を待つか? いや、現代の日進月歩とも言える技術力を考えれば、二度と自分が関われない領域まで進歩することは目に見えていた。今しかチャンスは無い。
「(手に入れることが不可能だと言うなら。せめて、道連れにしてやる……!)」
本懐を遂げることすら敵わないと悟ったラシードは破滅的な妥協を選んでいた。既に彼の中から正当性は失われ、自らの尊厳を傷つけられたという憎悪で動いていた。
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デビルガンダムの内部に広がっていたのは、GBBBBのロビーを再現した物だった。ただし、他のユーザーはいない。素組のすーぱーふみなが一機。
「ようこそ、アラタ、リン。歓迎します」
「文。何をするつもりなんだ?」
彼女がGBBBBの外へと出ようとしていたことは知っていたが、具体的な方法は分からない。
「……現在、世界中にはマザーAI『アウラ』によって作られたAIが多数存在している。更に、AIが作ったシステムは世界中へと拡散したネズミ算的に増えている。業務ソフト、インフラの管理。ゲームやアプリなんかにも」
「それがどうしたって言うんだ?」
「その全てに私を移す。システムの動作には異常は起きない様に調整して……そうしたら、私は何処でもアラタ達に会えるから」
アラタもリンも絶句していた。スケールが違い過ぎる。GBBBBから出る為に、そこまでやるというのか。リンが慌てて、声を上げた。
「ちょ、ちょっと待って。そんなことしたら、文はどうなるの!?」
「コピーする為のマスターデータが必要だから、一度アウラに還る必要はある。でも、GBBBB以外でも会えるから問題はない」
「待て。マザーAIに還った後に、他のシステムで再び会う『文』は、本当にお前って言えるのか?」
文の目論見が上手く行くとは思えなかった。システムやデータはコピーなどで同一の物を作ることが出来るにしても、全てが合致するとは、同じ存在になれるとは思えなかった。
「私の経験、記憶を全て引き継ぐのだから同じ個体になるハズ。GBBBBで他人のレシピやクリエイトデータを使ったら同じ機体は作れる」
「それは再現であって、同じ物じゃないんだ。ここら辺の問題はガンダムのデータベースにアクセスできるお前なら分かるだろう?」
例えば、ガンダムSEEDにおけるライバル役『ラウ・ル・クルーゼ』は、とある人物と同じ遺伝子を持って生まれた為に、出自を憎み、世界を呪う存在となった。
また、ガンダム00では人類の覚醒を促すイノベイドが存在しており、こちらはよりデータ的な存在で文とも近しいかもしれない。外伝作品では同じ塩基配列の個体による戦いや葛藤があったりと、やはり同じ素材でも同じ存在にはならないということが描かれていた。
「直近では、水星の魔女とかもそうだよね。スレッタちゃんもそうだったし」
「宇宙世紀ではプルクローンが有名だしな」
あまりガンダム作品を履修していないリンでも心当たりがあるのだから、ガンダムと言う作品においてはしばしば問われるテーマなのだろう。近未来と言う設定において、クローンと言う技術と是非は避けて通れない。
「つまり『アウラ』を使って拡散した私は、私ではないと言いたいんですか?」
「そうだ。俺達と一緒にGBBBBを過ごして来た文は、お前だけなんだ。だから、早まった真似は止めよう。な?」
「このままさ。さっきの悪い人達を突き出して、文はソイツらのせいでおかしなことをしていた。ってことにして、終わろう?」
アラタとリンも穏便に話を付ける方向に持って行こうとしていた。文がやろうとしていることは何となくだが把握できたにしても、上手く行く気がしないし、システムに混ざり込む弊害もありそうだった。だが、何よりもマスターである彼女がマザーAIに還るというのが、認めがたかった。
「……それで、終わって。どうなるの?」
「おぅ! そうしたらよ。バトルトーナメント決勝戦でマイスター達と戦って、んで」
「その後は?」
きっと、マザーAIから提案されるイベントに乗って、時折実装される新規のパーツで遊んでと言うループを繰り返すのだろう。ネトゲの標準的な流れだ。
だからこそ、アラタも予想出来てしまった。いずれ、この中で飽きたり距離が出来たりするだろうということも。
「アラタ。人は飽きる様に出来ている。悪いことじゃない。だって、ずっと皆が飽きないで同じゲームをずっとし続けられるなら、新しいゲームなんて作る必要が無いから」
飽きるということは悪いことではない。同じ味に飽きたから新しい料理を作り、似たような衣服ばかりを見るのに飽きるから、新しいデザインが起こされる。
「ガンダムだって、いつまでも宇宙世紀物ばかりでは飽きられるから、全く別世界のガンダム作品が作られている」
「無理矢理宇宙世紀作品が継ぎ足されたりもしているけれどよ」
文に居なくなって欲しくは無いが、いずれ自分達は去ってしまうかもしれない。
それは明日とか1か月後みたいな話ではないが、数年後には待ち受けている未来なのだ。彼女は、そう言った未来を見据えた上で事を起こしていた。
「文は、ずっと私達と一緒にいたいの?」
「うん。皆が好きだから」
リンの問いかけに、彼女は真っすぐに答えていた。自分達にも譲れない物があるし、彼女にも譲れない物がある。話し合いで解決するのは難しそうだった。
そう言うことならば、今は置いといて。自分達が離れそうになった時に改めて相談をすればいいんじゃないかと言うアイデアがリンの中で浮かび上がった時、アラタが何かを察した。
「んで、そんなことをできるチャンスは。変な工作のお陰で、文がマザーAIにアクセスできる権利を得た今しかないから、焦っているってことか?」
「……今回の事件を顧みて『アウラ』は端末AIの監視を強化するだろうから」
千載一遇のチャンスと言うことか。ならば、文が強行する理由も分かる。ただ、アラタはヤレヤレと首を振っていた。
「つまり、文。お前はGBBBBが面白くなくて、いつか飽きられるのが嫌だから無茶しようってんだな?」
「あ、アラタ?」
リンが少し引いていた。ここまで話して来て、文の決意は伝わった。それに対して、アラタは怒っている様だった。
「……面白くてもいつかは飽きる」
「だったらよ、俺を飽きさせない様にしてみせろよ。例えば、俺が打ち倒したいと思えるほどの相手になってみるとかよ!!」
アラタの機体が臨戦態勢に移った。まさか、この流れで強引にバトル展開に持って行くとは、リンも思っていなかった様で戸惑っていた。
「なるほど。飽きられない様に工夫をしろと。失敬、運営側にありながら営業努力が足りなかった様です。では、私も迎え撃つから。アラタ達との交流の中で作り上げた機体で」
文の機体が姿を変えていく。リンが息を呑んだ。一体、どんな機体で来るというのか。PG機体か、あるいはランキング上位の機体で来るのか。
そして、彼女の機体が現れた。頭部の中に胴体を埋め込み、ボールの脚部を使うことで当たり判定を縮小させている。されど武器のリーチまで短くならない様にアームパーツだけは肥大化させていた。―――ふみなイシツブテだ。
「…………え?」
リンが絶句していた。こんな運命的なバトルが行われそうなシチュエーションで引っ張り出して来る機体がコレ?
「私が皆との出会いの中で作った、唯一のオリジナルだから」
「へっ。良いだろう。リン! やってやるぜ!」
彼女がイシツブテふみなを作る際、色々と試行錯誤したであろう機体が周囲に出現していた。
ふみなの頭部に脚部を生やしたウォドムみたいな機体。SDガンダムの脚部を用いた頭身のアンバランスさが不気味さを醸し出している機体。勝つ為と言う、試行錯誤が見える機体達だったが。
「いーーーーやーーー!!!!」
もしかしなくとも。自分達との交流は大切にはされるけれど、結構有害な物だったんじゃないかと思い始めていた。