GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
アラタ達が自分達の世界に入り、激戦を繰り広げているが、同室にいる者達に状況は筒抜けだった。
カオス達の工作に参加できない一部のメンバーは、彼らの遣り取りを眺めていた。グスタフがドーラに問うた。
「ドーラ。AIが自我を持つってことは、良いことなの?」
古来より創作などで何度もテーマとして挙げられて来た話題だ。
人の手によって作られた存在が、人間と同じ様に喜びや悲しみと言う感情を手に入れていく。一般的には美徳として持っていかれやすいシチュエーションではあるが、人間であることが必ずしも幸せとは限らない。
「……道具が道具で居られる方が幸せかもしれないけれどね。でも、彼女と戦ったことがあるなら分かるでしょ」
バトルトーナメントで文と拳を交わした2人だから分かる。彼女の生まれはAIかもしれないが、苦境に陥った時に仲間を励まし自らを矛として用いる様に激励を送っていた姿は、道具と言うにはあまりに有機的すぎたからだ。
「うん。彼女はGBBBBを楽しむ1人の人間」
「そう。自我を持ったならね、ワガママを言って全力でぶつかれば良いのよ。AIの挙動としては欠陥かもしれないけれど、アラタ達の友達としては普通のことなんだから」
自分の過去と重ねて思うことがあったのか、ドーラの目は遠くを見ている様だった。グスタフ達がしんみりしている横で、感傷とかとは無縁そうなバカ共が世界の窮地に託けて、少年ハートを輝かせていた。
「ねぇ、コレ私が使って良い!? そして、颯爽と皆を助けに入れば、私の声質と併せて完全に原作再現だよ!!」
「カオスさん。流石にビアンカメンバーがぶつかり合いをしている中で、なんだこのおっさん!? をしたら、アラタ君も怒るんじゃないかな」
冷めているとは言え、空気を読める丹生の意見にカオスは怯んでしまった。ただ、介入したいと思っているのは彼だけでは無かった。
「グランドマスターガンダムか。チマチマしたバトルも悪ぅはないんやけど。こういうデッカイのともガツンとぶつかり合いたいわ」
クロカンテがゴソゴソと持って来たバッグを漁っていた。中からはPGサイズのガンプラ用プロテクタースーツが出て来た。大きさも相まって、もはや鈍器の領域である。さっきのPG戦では自重をしていたのだろうか。自分達の好奇心を隠しもしないダメンズ達を傍目にフドウが尋ねていた。
「カドマツさん。例の侵入者はどうなっているんですか?」
『マザーAIから通報が行った。流石に、アウラの演算能力を前にしては人間の偽装なんて、子供騙しだよ』
「じゃあ、アラタ君が文君に勝てば終わるんですかね?」
『いや、まだ油断はできない。通報は行ったが、確保されたという報せは出ていない。追い詰められた奴は何をするか分からないからな』
手負いの獣が一番恐ろしい。皆がノリノリでやっていることも、ひょっとしたら使う必要が出てくるかもしれない。ならば、自分がやることは1つだ。と、フドウはカオス達の元へと行った。
「俺も混ぜて下さーい!」
「どんとこい!!」
「先生、ノリが良いっすね……」
事前にカドマツと話していたこともあって、何かしらの対策ありきで参加したのだろうが、さっきまでの神妙な面持ちは何処か。ガンプラ大好き小僧の顔になっていた。
~~
デビルガンダム最奥部。アラタとリンは文と多数の魔改造ふみなと戦っていた。ラストバトルっぽい雰囲気なのに、あんまりだと彼女は嘆いていた。
「ねぇ、文! 今からでもちょっと考え直さない!? こう、ホラ。最強のプレイヤーを真似るとか言う感じで、アラタの機体をコピーして来るとか!」
「猿真似で戦うとは芸がない。私は私の考えた力で戦う!」
事実、文が作り出したイシツブテふみなは強敵だった。まず、ヒットボックスが小さい。攻撃が引っ掛かる脚部や胴体が埋め込まれているのだ。
攻撃面においては、側頭部から生えた巨腕から肥大化した近接武器の一撃が繰り広げられては破壊を撒き散らしていた。
「へっ。ふざけている様に見えて、とことん合理的じゃないか。このままじゃ、世界はイシツブテに支配されるって訳か」
「はい。貴方達を打ち倒し、世界に私を植え込む。イシツブテふみなは世界を渡る架け橋なのです」
「もっとこう、伝説のポケモン辺りじゃダメだった? セレビィやジラーチみたいな感じで……」
「それは幻のポケモンです」
AI特有の知識量でリンの間違いを訂正ようとした一瞬に、文の周囲にはドラグーンが舞っていた。周囲からの一斉砲火を前にしては、幾らヒットボックスが小さくとも避けることはできない。
リンもまた姉やアラタ達との戦いを通して、ガンプラファイターとして成長していたのだ。だが、GBBBBの膨大なデータを直ぐに引き出せる文は更に上を行った。
「見事。と言いたいけれど、ヒットボックスの使い方にはこう言う物もある」
イシツブテふみなは地面に転がったかと思えば、頭部から生えた腕が盾を構えた。腕の大きさに合わせて肥大化した盾は、ふみなの頭部、胴体、脚部を覆い尽くしていた。唯一、隠しきれなかった腕にはダメージが行ったが微々たる物だった。
「そうか! ヒットボックスの小ささを利用して、全身を盾で覆えるんだ!」
「それも。この巨腕が無ければ出来ないことだけれど」
浮遊したイシツブテふみなはメイスを構えたかと思うと、背後のスラスターとバーニアを器用に吹かして、回転しながら突っ込んで来た。
「この『ジャイロボール』で跳ね飛ばす!!」
ネタみたいに見える技だが、これは彼女も出場したバトルトーナメントでも使われていた技だ。プレイヤーしか使えない必殺技と呼ばれる挙動まで使えるとは、文の成長速度は想像以上だった。
「アラタ、避けないと!!」
「いや。文程の反応速度があれば、俺達の回避挙動なんて簡単に見切られる。避けるんじゃない、立ち向かうんだ! リン!!」
「どうやって!?」
アラタの機体が緑色の光を放ち、ピンと棒立ちになった。この流れはどっかで見たことがある様な。
「俺をバットとして使え!!!」
「なんで、アラタと言い皆、自分をバットにしたがるのよ!!!」
と言いつつ、リンも内心では理解している。凶弾と化した文を迎え撃つ為に普通の武器やシールドを使った所で弾かれるのがオチだろう。
だから、ガーディアン覚醒で防御力が増したアラタの機体で打ち返す。というのは、迎撃と言う選択においては最適解とも言えた。絵面が悪いのを除けば。
「リン!! 頼む!!」
勿論、アラタもふざけているつもりなんて全くない。丁寧に論理的に説明をされても嫌だと叫ぶ感情がある。これだけ付き合いがあっても嫌な物は嫌だ。
でも、姉は自分を見送ってくれた。ビアンカの仲間達も出来ることをして、GBBBBで知り合ったプレイヤー達も態々駆け付けてくれた。自分の小さな我がままなんかに縛られている場合じゃなかった。
「いいじゃない。やってやるってのよぉ!!」
出来たら、SEED的な機体だったので初めての巨大武器は対艦刀が良かったなぁとか思いながら、アラタの機体を構えたリンもまた回転をしながら突っ込んで行った。
2機を中心にして吹き荒れる暴風によって、周囲の魔改造ふみなが浮かび上がり、互いに激突しては爆散して行く。2つの台風が重なり合った時、激しいぶつかり合いが起きた。
さながら、ランタオ島でぶつかるドモンとマスターアジアの様だった。舞台が舞台なだけに相応しい演出でもあった。
「感じるぞ。文の楽しんでいる気持ちが! そして、反動とも言える寂しさが伝わって来る!!」
文が振り回しているメイスで折角の新機体がボコボコにされているのだが、この際、細かいことを気にしてはいけないと思いながらリンは振り回していた。
激しい衝突の末、互いの武器が弾かれ宙に舞った。大型メイスが宙に浮かび、アラタの機体も跳ね飛ばされ、パーツアウトも起こしていた。直ぐにリンは両腕部のビームサーベルを展開して文の機体を切り裂こうとしたが、彼女は盾を放り投げて攻撃を防いでいた。
「(なら、次は大型メイスを取りに行くはず!)」
射出したドラグーンによる攻撃で大型メイスは遠くへと弾き飛ばされていた。ただ、誤算があったとすれば。文が掴んでいたのは、アラタの機体からパーツアウトした腕部だった。
「G-cube機能適応!」
すると、どうだろうか。バトル中にも関わらず、イシツブテふみなの腕はアラタの機体から奪い取った物になっていた。
「嘘だろ!? なんで、ウチのシステムを……」
「データは提供されているから!」
イシツブテふみなの巨大な腕に掴まれた。同時に、腕部の上部と下部に取り付けられている砲門が火を噴いた。至近距離での一撃を受けた、リン・カーネーションの脚部が吹っ飛び、胴体も後方へと飛んだ。
「うぉおお……。なんで、アラタより上手いこと使いこなしているのよ」
「くっそ! まさか、俺の傑作腕部を一番使いこなせるのがイシツブテふみなだったなんて!」
「後、イシツブテ連呼するの止めて。笑うから」
状況だけ見たら、結構緊迫した物のハズなのに主役二人のせいでイマイチ締まらなかった。ある意味、GBBBBでビアンカらしいかもしれないが。
「これで終わり。じゃあね、アラタ、リン。また、後で」
両腕を奪われたアラタの機体は戦えず、脚部がパーツアウトしたリンも動けない。迫り来るイシツブテふみなは組んだ両手を振り下ろして来た。
「アームハンマー」
大型メイスにも劣らない重量級の一撃が振り下ろされる直前、アラタはリンを蹴り飛ばすと同時に跳んだ。あわやグランドブレイクの一撃が入るかと思いきや、文は獰猛に2人を付け狙っていた。
「リン! 脚部は!」
「ダメ! 戻って来ない!」
彼女の機体に再び装着されるよりも、再びアームハンマーを食らう可能性の方が高い。迫り来るイシツブテふみなを睨みながら、リン・カーネーションに覆い被さった。
「ちょっと、アラタ!?」
「勝つにはコレしかない!」
殺意のアームハンマーが襲い来るまで、数秒。振り下ろした先には破砕した地面が残るばかりで、2機の姿は無かった。リン・カーネーションは再び蹴り飛ばされたのか、離れた場所にいた。問題はアラタだ。
「その腕は」
「そっちが使うなら、こっちだって使えると思ってね。俺はガンブレ学園の生徒なんだぜ?」
彼の腕にはリン・カーネーションの物が付いていた。デスティニーのバックパックからアロンダイトを引き抜いた。両者の機体が再び緑の光に包まれる、互いの防御を食い破らんと、2機は加速しながら接敵していた。