GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
「(見ているだけじゃいられない!)」
腕パーツを受け継いで、イシツブテふみなと激しい攻防を繰り広げているふみな・轟から離れた場所にいたリン・カーネーションの脚部が戻って来た。
パーツアウトしたばかりの脚部なのでジョイントは緩く、両腕のパーツが無いので何もすることが出来ない。だがここで彼女は考えた。
「(いや、一組だけ。使っていないパーツがある!)」
イシツブテふみながふみな・轟のパーツを使い、ふみな・轟がリン・カーネーションのパーツを使っているのだ。ならば、一組だけ余りが出ているハズだ。
彼女の予想は見事に的中し、地面にはふみなの腕部パーツが転がっていた。……何故か、大きさは巨大なままだったが。
「なんで?」
彼女はG-cubeと言う筐体の仕様やルールは知らないが、通常サイズだったアラタの機体の腕部パーツが肥大化したのだ。
ならば、奪い取った物も使用機体の設定が適用されるのだとばかり思っていたので、パーツ自体が巨大になっているとは思わなかった。
「えーい! ままよ!!」
今更、機体バランス云々を気にする様な助教にはいない。転がっていたパーツの元まで行くと、自動的にリン・カーネーションに装着された。
てっきり、機体の設定に合わせてくれるかと思っていたが、そんな淡い期待を打ち砕くようにしっかりと巨腕が装備された。
「文ぁああああああ!!」
仲間の暴走を止める為か、あるいは自分の機体にこんな腕を装着させる運びを作った彼女に対する憤りか、リンは猛然と突っ込んで行った。バックパックから大量のドラグーンが射出されて、イシツブテふみなを包囲していた。
「くどい!!」
アラタの機体をビンタで吹っ飛ばした後、最初に見せたジャイロボールを今度は両腕で行った。さながら、ダブルラリアットと言った所だろう。
より、肉体的でありながら腕部に搭載された砲口が火を噴いて、ドラグーンが次々と落とされていた。簡単にやっている様に見えるが、GBBBBではアップデートが繰り返され、ファンネルやビット類の挙動はかなり高性能な物に調整されているのだが、文のエイムがこれらの動きを超えていた。
「まだぁ!!」
ダブルラリアットの回転が終わりそうになった頃、リン・カーネーションは装着されたばかりの巨腕を使っての拘束を試みた。これに対抗するべく、イシツブテふみなも相手の両掌を掴んだ。力比べである。
「意外。さっきまで、細かいことばっかり気にしていたのに」
「使える物なら何でも使う!!」
組み合いになった時に物を言うのは、機体の出力である。片やGBBBBの母体で作られたサラブレットとも言える機体。片やビルドファイターとしてトップクラスの男が作り上げた機体。然るべき舞台であれば、運命とでも形容できそうな組み合わせの二機が巨腕で組み合っている絵面は、最高にGBBBBだった。
「(射角が合わせられない……!)」
アラタから奪い取った腕部パーツはこういった組合になった時こそ、一方的に相手機体をハチの巣に出来るのだが、この短い交戦時間にリンは察していたのか。組み合った際に、イシツブテふみなの腕部に装着された砲口が上部へと向くように調整していた。
そんな二人に影が覆い被さった。彼女達の頭上を舞っていた、ふみな・轟のバックパックからは『ヴォワチュール・リュミエール』が噴出し、手にはアロンダイトが握られていた。
「ナイスだ! リン!」
「!?」
拘束から逃げようにも、リンにがっちりと腕を掴まれている。自切も間に合わないとなれば、文はガーディアン覚醒の出力を一層高めた。
頭上から降下して来た、ふみな・轟がイシツブテふみなアロンダイトを叩き付けるが、両断するには至らない。だが、諦めない。バックパックに搭載されている『M2000GX 高エネルギー長射程ビーム砲』を後方へと向けて放つ。
空撃ちにはなるが『ヴォワチュール・リュミエール』の水力に、砲撃の反動が加わり、ガーディアン覚醒の防御力を突き破ろうとしている。避けることも出来ない。
「絶対に! 離さないからね!!」
リンが言うのはこの状況に関してか。あるいは、文がマザーAIへと還ろうとするのを防ぐ為か。きっと、二つの意味なのだろう。
「いっけぇ!!」
数瞬の間。アロンダイトの刃が床に着いていた。目の前には、両断されたふみなの頭部……と中に埋め込まれていた胴体と脚部。
「私の負け、か」
敗れたと言うのに、文の声は何処か付き物が落ちた様だった。間もなくして、彼女の機体は爆散した。現実でのアラタ達が静まり返る中、歓声が巻き起こるということは無かった。
~~
「な、なんや!?」
タオが悲鳴を上げた。一瞬、デスアーミー軍団達が停止したのだが、直ぐに再起動していた。ガンダムヘッドだけではなく、コアとして鎮座していたデビルガンダムも攻撃に参加して来たのだ。
「なんで?! アラタ君達が文ちゃんを止めたんじゃないの!?」
「いや、あれを見ろ」
ミサも困惑する中、マイスターが指差した先。コア部分のデビルガンダムの頭部からは機体が生えていた。
何処に隠れていたのか、あるいは死んだふりでもしていたのか。この最終決戦が始まる前、前座として払われた男の機体だった。
『礼を言おう。君達のお陰で、私の邪魔をしてくれたAIを排除することが出来た。有難く、このマザーAI『アウラ』を使わせて貰うよ』
「まだ、逮捕されていなかったの!?」
カルパッチョが叫んだ。先程通報されていたハズだが、思ったよりも相手はしぶといらしい。
『こんなくだらないゲームに付き合うつもりはないが、あのAIは余計なことをしてくれた。君達を排除して、ジックリと把握させて貰うことにするよ』
文と違ってエンタメ性など何もなく、雑に敵をポップさせまくって数で攻め潰そうとして来る。だが、この行動に対して疑問を持つ者がいた。彼らの疑問に答える様にして、カドマツが声を上げた。
『意外だな。ラシード、お前がこんなことに付き合ってくれるなんて。あるいは、付き合わざるを得ない理由があるのか』
『カドマツ? カドマツか!!!』
今まで余裕ぶっていた男の声が怒りに染まる。ラシードと言う名前が上げられたことに、ミサが何かしらを察した。
「もしかして、ナジールの知り合いか何か?」
『そんな所だ。もう、こんなことは止めた方が良い。やれば、やる程。自分達の首を絞めるだけだぞ』
『既に俺達は絞首台の上に乗っている身だ! 貴様が! 貴様らが! 俺達を破滅へと追い込んだのだろうが!!』
ここに居る者達の殆どは事情が分からなかったが、ある程度の話を聞いていたアラタなどは何となく事情を察していた。
『世界の流れ。なんて言葉で片付けたくはないが、この潮流は止められる物じゃない。これ以上、世界から恨みを買えば本当に破滅するぞ』
『何とでも言え! 俺達の未来には既に破滅しか待っていない! 俺達が滅びることが『正しい』と思っている世界なんぞ! 滅びてしまえ!!』
相手に引く気はなかった。短時間で大量にポップさせた結果、もはやガンプラの体すらなしていない骨格だけの存在も出て来ていたが、彼らはビアンカのメンバーを排除しようと殺到していた。
幾ら、マイスター達が強かろうが数の暴力で攻められてはどうしようもない。身体極まったかと思った瞬間、中空に文のホログラムが浮かんだ。
『設定解除。『クランメンバー限定』から、誰でも参加可能にしました』
本当に告知の様な淡々とした文だった。だが、事態を打開するにはあまりに十分すぎるシステム音声だった。エリア入り口に大量のMSが出現していた。その中でも、1機。一際巨大な物が居た。
「どけや!!」
真っ赤にカラーリングされたネオ・ジオングにはクロカンテの『フレイムガンダムスペリオル』が搭乗していた。肩部と腹部の砲門が開き、メガ粒子砲の掃射が行われた。
ヘヴンズソードやグランドガンダムなどのボス機体は避けたが、デスアーミーやガンダムヘッドの様な有象無象は蹴散らされていた。開幕の一撃を皮切りに、次々とGBBBBの名だたるプレイヤー達が乱入して来た。
「マシマさぁあああああああああああん!! 皆を守りながらの立ち回り! 格好良かったです! 僕も一緒に戦います!!」
クロカンテによって切り開かれた道の先頭を行くのは、ニシワキエンジニアリングのメンバーだった。そして、彼らの脇を擦り抜けて飛来した核弾頭が着弾して、デスアーミー達が吹き飛んだ。
「んで、僕達は誰を倒せばいいんですか?」
「あれじゃないかな?」
丹生の疑問にフドウが答えた。彼の『ガンダムヘリオス』が、ラシードの機体と合体したデビルガンダム・コアを指差していた。
次々とデスアーミーやガンダムヘッド。ヘヴンズソードなどのボス機体もポップし、未だにグランドマスターガンダムも猛威を振るう中、ネオ・ジオングが突っ込んで行った。もはや、怪獣バトルめいた有様になっていた。
「ドーラ!」
「おっけぇ、グスタフ! セリト! 貴方も手伝って!」
「お、おぅ!?」
主戦場まで駆け付けた、グスタフの『ドーラ・MAX』をセリトの『真TALE・レコ』とドーラの『ドーラ・オリジン』が同時にホームランしていた。砲弾と化した彼女の機体が、次々とデスアーミーを打ち倒していくのはボーリングを彷彿とさせた。
「本当に艦隊(フリート)めいた暴れっぷりだね。……アレ、カオスは?」
ミサが彼らの助力に感謝する中、散々に盛り上がっていた彼がいないことに気付いた。すると、リアルの方で彼は『シーッ』と言わんばかりに鼻に人差し指を押し当てながら、ゲーム内ではコッソリとデビルガンダム・コア内部へと侵入していた。見慣れない巨大な装備を付けながら。