GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】   作:ゼフィガルド

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最終戦:GBBBBは無法地帯

 彩渡商店街。表通りにはコラボカフェやチェーン店などが立ち並ぶ中、少し外れた場所にひっそりと佇んでいる、小料理屋『みやこ』。

 かつて、商店街が消滅の危機に差し掛かった時も逞しく営業を続けていた店で、知る人ぞ知る。と言った具合の隠れた名店だ。今日は貸し切りになっていた。

 

「皆さん。今日は貴方達のお陰で、事態の解決へと至りました。ささやかながら、この卓を持ちましてお礼とさせていただきます」

 

 タクマの挨拶に皆が小さな拍手を送った。そして、持っていたグラスを突き出し、異口同音に『乾杯!』という声が響き渡った。

 

「いやぁ、まさかこんなオフ会になるとは夢にも思わなかったよ。こういった世界の危機! みたいなシチュエーションは、私が演出する側に回るもんだとばかり思っていたんだけれどねぇ」

 

 カオスは上機嫌にから揚げとポテトを摘まんでいた。大仰かもしれないが、あんな大事件の後とは思えない程に楽しそうだった。

 

「あの時は、私も必死でしたからあまり周りに目を配る余裕はありませんでしたが……」

 

 シーナが集まった面々を見ていた。ある程度、予想通りの相手も居れば、あまりのギャップに驚く相手もいた。クロカンテもその一人だ。

 

「いやぁ、俺は口悪いモンでね。ネット上では礼儀正しいキャラとして振舞うことで、矯正も考えたんやけど。まぁ、そないウマくは行かんわな」

 

 ネット上で特定のキャラをロールプレイすることは珍しいことではない。なりたい自分を演じることもまた娯楽の一つだし、クロカンテの言う通り。普段の性格を矯正する練習にもなり得るだろう。

 

「でも、まさかドーラがネカマだったのは驚いたわ」

 

 カルパッチョがウーロン茶を啜りながら言った。ネカマは、ロールプレイの定番として挙げられる。当の本人も化粧などにかなり気を遣っているのか、芋娘より女性的な見た目をしていた。

 

「そう言うのを気にする時代はとっくに過ぎているって言うのに。全く、宇宙エレベーターがリアルに出来ても、考えは旧世紀のままなんだから。まぁ、アンタの芋さはある程度予想していたけれど」

「何か予想できる要素があったんですか?」

 

 元・フリーダムフリートのメンバーであるコウラは察することが出来なかったらしい。すると、彼の隣に座っていたグスタフが小さく手を上げていた。

 

「リアルの話。全然しなかったから……」

「後、前にコスメとかそっちの話をしようとしたら全力で話題を逸らされたからね。流石に少しは調べておきなさいよ。口を開けば、ネットミームばかりだし」

「これが有名配信者だったとかマジか?」

 

 マシマが何とも言えない顔をしていた。すると、ユーキが彼の肩を叩いた。隣には、ニシワキエンジニアリングの『ユイ』と『トーヤ』の姿もある。

 

「彼女と一緒にいると、マシマさんもおかしなことを言い出すことになるでしょう。早く、古巣に戻って来るべきだと思いませんか?」

「そうよ、そうよ。それに今回の件でビルドファイターとして有名になると思うし、もう一度プロとしてやって行きましょうよ!」

「マシマさんの奮戦ぶりを見て、向こうじゃ俺達ずっと悶えて声も出せずにいたんですから!」

 

 ちょっとユイとトーヤの感情が重かったので、マシマは苦笑いを更に深くしていた。場が盛り上がる中、イマイチ乗り切れないタオが助けを求めようとセリトに視線を向けると、彼はグスタフと楽しそうに話していた。

 

「それじゃあ、セリトもガンプラを作っているの?」

「うん。まだ、組み立てるだけで必死だけれど。何時かは、俺だけのレコちゃんを作ろうと思っている。グスタフはリアルでも組み立てるの?」

「1か月に1回だけ。ママに買って貰ったのを作って、見せるの。ちゃんと作れていたら、次のを買ってくれるから」

 

 大人にとっては気軽に買えるガンプラも、子供にとっては中々の出費となる。グスタフは品が良さそうなので不自由はしていないと思ったが、キッチリと躾はされているらしい。

 

「(ヤバイ。なんか、僕が蚊帳の外や)」

 

 ネットでは平然と話せてもリアルでは中々に難しい。こうなったら、アラタに話しかけるしかないと意気込んで彼の方を見た所、案の定というか。滅茶苦茶色々な人から話し掛けられていた。

 

「えー! アラタ君、自分の所の学園長にそんな風に啖呵を切ったの? やるねぇ~~~!」

「教師として、教え子がこんなに沢山の人達に慕われているのを見ると、なんだか誇らしい気持ちになるね」

 

 結構、ハイペースで行ったのか。既に出来上がっているミサがアラタの肩を叩いて、ゲラゲラ笑っていた。事情を説明していたフドウも楽しそうにしていた。

 

「アラタ君。フドウ先生と言い、マイスターと言い。今、僕達はトンデモないプロプレイヤーの会合を見ているんじゃないんだろうか?」

「でも、雲の上の存在って感じじゃない。先輩、アレを見て下さいよ」

 

 アラタが指差した先。矛先を変えたミサがタクマに凭れ掛かり、本人が視線を彷徨わせまくっている中。流石に羞恥心を感じたのか、リンが止めに入っていた。

 

「お姉ちゃん、皆の前だよ」

「ムフフ。皆に見せようね」

「ミサ。ツォーンを忘れたのか」

 

 前回の苦い経験を引き出した所で、聞く耳なんて持っている訳がない。

 GBBBBでは敵なしのマイスターがアラタに助けを求めている光景はシュールさの極みとも言えた。

 

「おやぁ。流石にマイスターも麗しのレイン君相手ではドモンになってしまうのか? 女将さん。そこの所、どうでしょうか?」

「嬉しいです。ようやくミサちゃんが、イージスばりのホールドを決めるつもりになって」

 

 こんなカオスにノリノリで応対できる辺り、この女将も相当だった。

 あるいは自分たち以上に彼らの関係を長く見て来た身として、待ちわびていたのかもしれない。皆の気がマイスターとミサに逸れた一瞬を狙って、タオはアラタに話し掛けた。

 

「皆、ノリノリよな……」

「色々あったし、こんなに面白いネタが目の前にあるからな」

 

 トッププレイヤーがこんな様を見せているのは、やはり皆の興味を引くらしく。マシマやシーナも目を輝かせ、カオス達も囃し立てている。

 

「ちょっとだけ、外にでぇへん」

「そうしよう。このノリは多分ロクでもない感じに行く」

 

 男子2人がこそこそと抜け出す……前に、実はちゃんと正気で常識的なマシマには伝言を残して、店の外に出た。そこには黒いスーツを着た屈強なSPが立っていたので、タオが驚いていた。

 

「え? え?」

「あんなことがあったから、念の為にってことらしい。浮かれている時が一番危険ってのは、オルガ団長も教えてくれただろ?」

 

 ハッピーエンドからバッドエンドへの転落は御免被りたい。なので、店から離れるような真似は止めて、表で火照った頭を冷ます程度に留めておいた。

 

「なぁ、アラタ。初めてGBBBBで会った時のこと、覚えている?」

「勿論。あんときは、ガンダムを知らない初心者としてプレイしていたからな」

 

 今でも思い出す。間違えてハードコアを選んで、ボコボコにされたこと。改めて受け直したミッションでは、歴戦の猛者達にGBBBBの風土を教えて貰ったこと。最初の仲間に出会ったこと。

 

「何? 思い出話?」

「リン。ミサさんは?」

「タクマさんに甲斐性見せて。って、言って押し付けて来た」

 

 彼女もじれったく思っていたのかもしれない。こうして、色々とあった後に最初の3人だけで集まるのも感慨深くもあった。

 

「これから、GBBBBとか文はどうなるんだろう?」

「少なくとも、近日中には結論は出ないだろうか。でも、また会えるとは思いたい」

 

 3人とも、この場にいないビアンカ最後のメンバーを思い出していた。彼女の言っていたことが思い出される。

 

「なぁ、もしもさ。GBBBBがサービス終了したり、飽きたりした時にさ。また、こうして会うことってあるんやろか?」

「会える。って言いたいけれど、現実にはそうはいかないと思う」

 

 その時に自分達を囲う環境や状況もあるだろう。中には、今日のオフ会で最後になる者もいるかもしれない。

 アラタがそう言ったのは、何処かで文とはもう会えないのではないかと言う悲観的な考えもあったが故かもしれない。

 

「もう! 折角、お姉ちゃん達が明るくやっているのに、私達も楽しい想像をしようよ!」

「例えば?」

「うんとね。この後、バトルトーナメント決勝戦は日を改めて開催されるの。そして、その大会の決勝戦でマイスターと戦った時にね。文が目を覚ますの」

「都合のええ妄想やなぁ」

 

 荒唐無稽と言えば、それまでだが。そんな未来があれば楽しいのは間違いない。そして、リンは続けた。

 

「でも、籠りがちだった私がさ。世界を救う位の夢を見せてくれたんだよ? それに比べたら、友達の1人が帰って来ることなんて、普通のことじゃん!」

「それは間違いない」

 

 思わず、アラタも笑ってしまった。彼女程ではないが、普通の折に閉じ込められて鬱屈していた自分を連れ出してくれたのも、このゲームだった。

 

「僕もさ。きっと、皆と出会ってなかったら。セリト君と友達になることも無かったやろうし。きっと、関わらんで終わってたと思う」

 

 今ではビアンカ内で非常に愉快な人間になっているが、彼もまたどうなっていたことか。……どっちが良かったかは何とも言えないが。

 

「そう言った経験はさ、俺達の中で残り続けるけれど。文にとっては、きっとそうじゃないんだろうな」

 

 もしも、ここに居る者達だけの話なら綺麗にコレで〆られたのだろう。だが、文がそうで無いことは分かっている。彼女にとってはGBBBBが全てなのだから。

 

『いえ、私はここに残っていますよ』

「え?」

 

 正に今、話題になっていた相手の声が聞こえて来た。何処からしたのかを見てみれば、アラタのスマホのトップ画面に文の姿があった。

 

「え? なんで?」

『アラタから腕パーツを奪った時にデータの一部を仕込んでおきましたので。いわゆる『トロイ』と呼ばれる物』

 

 確かに、あの現場ではネットではなくガンプラを読み込ませたり、直接的なやり取りが幾つかあったにせよ、いつの間にそんなことをしていたのだろうか。

 

「じゃあ、GBBBBの方の文はどうなるの?」

『こちらにいる私と同期しながら。ということになる。……でも、先に言わなきゃいけないことがある。ごめんなさい。私、皆と離れたくなくて悪いことをした』

 

 声は平坦で抑揚も無いが、AIに細かすぎる機微を求めるのも酷な物だろう。彼女の謝罪に対し、3人は首を傾げていた。

 

「そもそも、マザーAIで悪いことをしようとしたのはラシード達だったし」

「僕らは文が作ったフィールドで遊んどっただけやで?」

「もしも、俺のスマホに入って来たことが悪いと思うなら、全然気にしていないけど」

『……ありがとう』

 

 また、GBBBBで一緒に遊べるのは先になりそうだが、より近くにやって来たと考えると嬉しくもある。自分達の内、誰かが居なくなって終わるというビターなエンドも無くなった。クルリと、リンはアラタと向かい合った。

 

「ねぇ、アラタ。ここまで連れて来てくれて、ありがとう。それともう一つ、聞いて欲しいことがあるの」

 

 タオが空気を読んで店へと引っ込んで行こうとすると、何故かそこにはドンチャン騒ぎをしていたハズのマシマやらカオスやらがいた。皆助平根性丸出しだった。ミサの姿もあった。

 

「何?」

「私と……」

 

 皆がリンの絞り出そうとしている言葉を待っていた。タオが大人達の野次馬根性に呆れていると、リンはポケットに入れていたガンプラ用のプロテクタースーツを取り出していた。

 

「一対一で! ガンプラバトルをして!!」

「ヘタレ―!! この、ヘタレどもー!!」

 

 我慢できずに蛮勇を振るいまくっていた姉が何か言っていた。GBBBBと言うゲームを通じて生まれた無法地帯がリアルでも繰り広げられていた。

 




 これにて、完結です。皆さん、ここまで読んでいただきありがとうございました!
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